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矢沢永吉、50年の軌跡と東京ドームで魅せた圧巻のステージ 進化し続けるロック・レジェンド

 ソロ活動50周年を迎え、精力的な活動を展開してきたロック・レジェンド、矢沢永吉が、今、その動きをさらに加速させている。その象徴とも言える一大イベントが、11月8日、9日の2日間にわたって行われた東京ドーム公演『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』だ。ここでは、矢沢永吉の2025年の活動を振り返りながら、東京ドーム公演初日(8日)の模様をレポートする。

『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』(12月8日公演)より PHOTO:HIRO KIMURA

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 アニバーサリー・イヤーの始動は、4月8日の東京・豊洲の夜空。ドローンアートで東京ドーム公演の開催を発表し、矢沢永吉YouTube公式チャンネルで生配信するというサプライズは大きなニュースとなった。そして5月6日には、TOKYO FMとニッポン放送のスペシャル・コラボによって、自身がパーソナリティを務める特別ラジオ番組『矢沢永吉 I’m happy』を2局同時オンエアという前代未聞の試みが行われた。さらに同月22日には、京都・ロームシアター京都で開催された第1回『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』で、音楽業界の発展に貢献した功績から「MAJ TIMELESS ECHO」を受賞。セレモニーでのパフォーマンスはNHK総合で生中継され、レジェンドの健在ぶりを全国にアピールした。

 7月には、フジテレビ系連続ドラマ『最後の鑑定人』の主題歌として、最新曲「真実」がオンエア開始。矢沢が主題歌を手がけたのは28年ぶりであり、往年のファンのみならず、「名前は知れど、曲は聴いたことがなかった」という若い世代にも矢沢バラードを浸透させると、ついに9月24日、6年ぶりのリリースとなる通算35枚目のアルバム『I believe』をリリース。10/6付オリコン週間アルバムランキングで、歴代最年長76歳1ヶ月でアルバム1位を獲得し、同時に歴代1位となる「アルバムTOP10入り作品数」も56作と自己記録を更新した。

 このリリースに前後してテレビにも多数出演。なかでもTBS系『日曜日の初耳学』での特集(8月24日放送)や、NHK総合『NHK MUSIC SPECIAL 矢沢永吉 ヤザワ×イチロー〜俺たちの失敗〜』(9月15日放送)は大きな話題に。そして満を持して、2025年最初のワンマンライブの会場に矢沢が選んだのが、歴代最年長となる東京ドームのステージだったのだ。

『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』(12月9日公演)より PHOTO:HIRO KIMURA

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 この日、早い時間帯から東京ドームの周辺は独特の空気に包まれていた。これまで、数々の国内外ビッグネームがここでライブを開催してきたが、その中でも突出した一種独特の熱気。全国各地から詰めかけたであろう一人ひとりの全身からは、とにかく矢沢愛があふれ出ているのだ。その熱量はドームの中に入るとさらにヒートアップし、開演前から同時多発的に、あちらこちらで“永ちゃんコール”がこだましていた(矢沢ライブにおいて、常識範囲内での「声出し声援」は、開演前は許可されている)。

 そのにぎやかな“永ちゃんコール”は、場内の照明が消されると大歓声へと変わり、ドラムのビートに合わせて観客のリストバンド型LEDライトが一斉にブルーに点灯すると、5万人超の歓声は地鳴りのような絶叫へと変貌した。オープニングSE(サウンドエフェクト)すらはっきりと聴き取れないほどの歓喜の叫び。まばゆいばかりに照らされるライト。幾何学的に何本もの直線を描き出すレーザー光線。

 そこに、一人の男が姿を表した。黒のスーツにサングラスをした矢沢だ。すると、まだ1曲も始まっていないのに、既に東京ドームはクライマックス級の盛り上がりを見せる。なぜなら、顔や姿がはっきるとは見えないほどに遠く離れた客席からでも、ステージに立っているのは矢沢永吉だとはっきりわかる、絶大なオーラが見えるからだ。

 そんな矢沢はすぐさまコートを脱ぎ、サングラスを外すと、ライブは「さまよい」からスタート。ジェフ・コールマン(Gt)とトシ・ヤナギ(Gt)のツインギターが艶やかな音色を聴かせ、湯本スーパーホーンセクションが鳴り響くと、早くも矢沢は広大なステージを所せましと軽快に移動し、骨太でロックンロールな歌声と唯一無二のパフォーマンスで、その存在感を爆発させる。

『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』(12月8日公演)より PHOTO:HIRO KIMURA

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 「ようこそ、いらっしゃい! 矢沢永吉ソロ50周年、東京ドーム。最後まで一緒に、行こうぜ!」

 矢沢のシャウトにジェフ・ダグモア(Dr)と野崎森男(Ba)のラウドなグルーヴが重なって始まった「テレフォン」では、アネット、イマニ、アジーのソウルフルなコーラスに触発されるように、矢沢はパワフルにマイクターンを決め、観る者の鼓動を否応なしに高ぶらせていく。そしてガイ・アリソン(Key)のオルガンをバックに、スポットライトに照らされた矢沢が「ゴールドラッシュ」を歌うと、続くブルージーなロックンロール「世話がやけるぜ」では、ステージ後方の大型LEDビジョンにポマードでリーゼントをばっちりとキメた70年代の矢沢の姿が映し出される。その映像をバックに歌う、今の矢沢。50年の歳月を経ても変わらぬロックンロールスピリッツと、今だからこその説得力を増した歌声で、観客の心を鷲づかみにしていった。

 「矢沢が29、30くらいですかね。『ゴールドラッシュ』『世話がやけるぜ』を引っ提げて、街から街へ、ずっとライブをやってました。」

 最初のMCで矢沢はこう語り始めると、東京ドームの客席をぐるりと見渡し、「見て、バッチリ入ってない? うれしいよ!」と、その喜びを素直に観客へ伝えた。そして「世話がやけるぜ」の歌詞は、惜しくも今年の春に他界した矢沢の盟友、木原敏雄さんによるものであることを紹介すると、「もう1曲、木原の傑作と言っても過言ではない曲を紹介します」と「さめた肌」を披露。矢沢バラードの真骨頂と言える一曲に、スネーク・ディヴィス(Sax)のテナーサックスが、さらなる哀愁を重ねていく。

『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』(12月8日公演)より PHOTO:HIRO KIMURA

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 すると場内に雷鳴が轟き、LEDビジョンに映し出された閃光がダンサーのシルエットを描き出して「SOMEBODY’S NIGHT」が始まり、続く「“カサノバ”と囁いて」では、ゴキゲンな8ビートに乗って矢沢は巨大なステージの端まで行き、外野席(ステージ裏の一部まで観客を入れるほど満員だった)の観客を歓喜させた。

 ここでLEDビジョンに花畑や砂浜の印象的なモノクロ映像が映し出されると、ギターデュオがアコースティックなサウンドを静かに奏で、そこからエレキギターで“あの曲”のインロトが鳴らされた。するとステージ上手からは白スーツ、下手からは黒スーツを着た大量のキャストが登場してステージを横断し、それらがステージ中央で交差すると、その狭間で矢沢が「ラストシーン」を歌い上げる。次に、サーチライトのような直線的な照明が美しかった「共犯者」と、LEDビジョンを薔薇が埋め尽くした「MARIA」をメドレーで披露すると、矢沢はハンドマイクでステージ最前まで足を運び、観客を大いに盛り上げた。

 「ありがとう! Thank You! フォー! 2025年、今年最初のステージです。ハハハ。(いつものツアーは)まず2000人くらいのハコ(会場)からエンジンをかけていって、最後に武道館とかドームと行くんですけど、今年はなぜかドームからスタートって、ちょっとビビってるんですけど。ハハハ」と、矢沢は顔をくしゃくしゃにして、豪快に笑った。

『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』(12月9日公演)より PHOTO:HIRO KIMURA

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 そのままユーモアを交えたMCで会場の空気を和らげると、「懐かしいナンバーを紹介したいと思います」と、ギブソンのアコースティックギターを手に、(ピックを使わない)フィンガーピッキングで「もうひとりの俺」を歌い始めた。すると一転、エレキギターの轟音とともに何本もの炎柱が打ち上がり、「ワン・ナイト・ショー」へ。間奏では桑迫陽一(Per)らのパーカッション・ソロから、ギター、ベース、サックスとそれぞれの演奏がフィーチャーされ、「ロックンロールに感謝しようぜ!」という矢沢のシャウトとともに、この曲が締めくくられた。

 そして矢沢が「どうしても歌いたかった」とMCで語った、27歳の頃に書いた曲「古いラブレター」へ。「あの頃、渋い曲いっぱい書いてるな」と振り返り、「矢沢とともに、あの頃から応援してくれて、当時18歳くらいだったヤツは、60代後半になってるんじゃないかな。ありがとうございます」と、東京ドームに詰めかけた観客と、全国各地で生中継や生配信を見ているにファンにお礼を述べた。すると、「(スポットライトで)向こうがよく見えないんだけど、ちょっと真正面にいきます」と告げ、ツアー・フラッグをなびかせた無骨な大型米国車ハマーに乗り込むと、なんとグラウンドを一周。このサプライズに観客は悲鳴に近い大歓声を上げ、ドームは沸きに沸いた。

『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』(12月9日公演)より PHOTO:HIRO KIMURA

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 再びステージに戻った矢沢が、フィンガースナップでリズムを取りながらバラード・アレンジの「Risky Love」をワンフレーズ歌うと、「7年ぶり、一緒に歌います」と、愛娘の矢沢洋子(PIGGY BANKS/EL COYOTE)を紹介。親子であると同時に、2人の個性派シンガーの共演にひと際大きな拍手が送られると、再び一人で、ノスタルジックなバラード曲「HEY YOU…」を男のロマンたっぷりに歌い上げた。

 そこから、会場の空気は“静”から“動”へと一変。ロックンロールな「黒く塗りつぶせ」のイントロが大歓声を誘うと、呼応するかのようにレーザー光線が炸裂し、印象的な東京ドームの天井を彩っていく。すると矢沢は、観客に「オオオ!」との合唱を求め、まだまだ足りないとばかりに「バックコーラス(合唱)が聴こえない!」と観客を煽り、東京ドームの熱気は最高潮に達した。

『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』(12月9日公演)より PHOTO:HIRO KIMURA

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 昇り詰めたテンションを静めるかのようにピアノのフレーズが鳴り響くと、客席からはどよめきと拍手がさざ波のように広がっていく。1976年にリリースされた2枚目のソロアルバムのタイトル曲「A DAY」だ。8人編成のストリングスが加わって演奏が始まると、満員の観客は、センターステージで歌う矢沢の息遣いすら聴き逃すまいと、それまでの大歓声が嘘かのように静寂に包まれた。そこからメドレー形式で歌われたのは、1978年に大ヒットした代表作「時間よ止まれ」。この70年代の2曲に、これまでの人生のさまざまなシーンに想いを巡らせたファンは多かっただろう。

 ここで「YAZAWAをバチッと支えてくれているグレイトなメンバー」とバック・ミュージシャンが紹介され、彼らのロックンロールな、かつ品格のあるサウンドで「YOU」、そして「逃亡者」が演奏されると、あっと言う間にライブのエピローグ。大きなミラーボールがきらめき、東京ドームの客席が満天の星空のように輝くと、最新アルバム『I believe』から、ライブ・アレンジが施された「真実」が本編ラストに歌われた。ソロで50年という長いキャリア、そして数々の名曲を有しながらも、それら更新するほどの最高傑作との呼び声も高い、メロディが美しい珠玉のバラード。常に立ち止まることなく進化を続ける矢沢を象徴するかのようなこの曲を、圧倒的な説得力で歌い上げ、東京ドームを埋め尽くした満員の観客を魅了した。

 今回の東京ドーム公演は、もちろん目を見張るような演出は随所に見られたものの、昨今の大型イベントの主流である「見せる」ライブと言うよりは、「聴かせる」ことに主軸が置かれていたと言えよう。

 ただそれは、誰もができることではない。たった一人で、5万人超の観客の心を掴み、震わせ、そして躍動させることができる矢沢永吉だからこそのもの。言い換えれば、どんなにド派手な演出を施しても、矢沢の存在力には及ばないのだろうと思わせるほど、矢沢永吉というロックアーティストが音楽と向き合い続けた50年間という時間、その重みと凄みがひしひしと伝わってくるライブであった。

 同時に、この日のライブに、矢沢がロックスターとしての頂点に駆けあがった、今や伝説となっている1978年後楽園スタジアムライブを重ね合わせた往年のファンも多かったのではないだろうか。事実、(アンコールを含め)全22曲中7曲が後楽園スタジアムでも歌われた曲。本人がどこまでそのことを意識していたのかはわからないが、東京ドームの前身が後楽園スタジアムだったことも併せて考えると、実に感慨深いセットリストだった。

『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』(12月9日公演)より PHOTO:HIRO KIMURA

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 そんな中で迎えたアンコール。矢沢ライブでは、本編中の「声出し」「永ちゃんコール」「一緒に歌う」行為は禁止だが、それらもアンコールは公式に解禁。客席からは、開演前の数倍の音量で“永ちゃんコール”が叫ばれると、矢沢は真っ白なスーツで再びステージに姿を表す。LEDビジョンには、若かりし頃の矢沢と木原との2ショットが大きく映し出されて、「鎖を引きちぎれ」が始まった。

 ブレイクで矢沢は、「これ、テレビ、パソコン、映画館で観てる人もいるよね! いくよ!」と、生中継/生配信の視聴者にもメッセージを送ると、続いて「止まらないHa〜Ha」と、大定番曲を連投。レーザーが炸裂し、大量のスモークが噴出する中、5万人超の観客が高々とYAZAWAタオルを投げ上げる光景は圧巻だ。白いハットをかぶった矢沢も、センターステージで、この光景、この空間、そしてこの瞬間を堪能するかのような表情を浮かべる。

 そしてラストは、「酸素ボンベが爆発だ! おいらの恋も消えちゃった」という決まり文句から始まった「トラベリン・バス」。金テープとYAZAWAタオルが宙を舞い、フィナーレを惜しむかのようにコール&レスポンスが何度も繰り返されると、2時間20分にわたってパワフルかつエモーショナルなパフォーマンスを繰り広げてきた男とは思えないほど、矢沢は穏やかな微笑を浮かべ、そして深々と頭を下げて、東京ドームのステージから姿を消した。

 その後ろ姿は、この日のロックンロール・ショーの終わりを告げるのではなく、むしろここから、全国ツアー『EIKICHI YAZAWA CONCERT TOUR「DO It! YAZAWA 2025」』のスタートを切るぞという宣言にも似た、力強さと威厳を感じさせるものであった。76歳、矢沢永吉の2025年は、まだまだ終わらない。

取材・文:布施雄一郎
PHOTO:HIRO KIMURA

『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』(12月9日公演)より PHOTO:HIRO KIMURA

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■『EIKICHI YAZAWA LIVE in TOKYO DOME「Do It! YAZAWA 2025」』
2025年11月8日・9日 東京ドーム
【セットリスト】
11月8日(土)
01. さまよい
02. テレフォン
03. ゴールドラッシュ
04. 世話がやけるぜ
05. さめた肌
06. SOMEBODY’S NIGHT
07. “カサノバ”と囁いて
08. ラスト・シーン
09. 共犯者 〜 MARIA(メドレー)
10. もうひとりの俺
11. ワン・ナイト・ショー
12. 古いラヴ・レター
13. Risky Love(with yoko)
14. HEY YOU・・・
15. 黒く塗りつぶせ
16. A DAY 〜 時間よ止まれ(メドレー)
17. YOU
18. 逃亡者
19. 真実
ENCORE
20. 鎖を引きちぎれ
21. 止まらないHa〜Ha
22. トラベリン・バス

11月9日(日)
01. レイニー・ウェイ
02. Rambling Rose
03. ゴールドラッシュ
04. 世話がやけるぜ
05. さめた肌
06. SOMEBODY’S NIGHT
07. “カサノバ”と囁いて
08. ラスト・シーン
09. 共犯者 〜 MARIA(メドレー)
10. もうひとりの俺
11. ワン・ナイト・ショー
12. 古いラヴ・レター
13. Risky Love(with yoko)
14. HEY YOU・・・
15. 黒く塗りつぶせ
16. A DAY 〜 I LOVE YOU,OK(メドレー)
17. YOU
18. 真実
ENCORE
19. 鎖を引きちぎれ
20. 止まらないHa〜Ha
21. トラベリン・バス
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