小野彩(このさい)というペンネームで作家活動も展開している藤あや子が7月9日、自身の作詞・作曲による「想い出づくり」と、フランツ・リストのピアノ曲「ラ・カンパネラ」に詞をつけた「小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜」の両A面シングルをリリースした。昭和・平成・令和と演歌界を牽引する一方で、近年は日本の歌謡・ポップス史に残る名曲をカバーしたアルバムやジャズ・アルバムをリリースするなど、アーティストとしての幅を広げている藤が、「自分の内面をストレートに表現した」と語る本作の誕生のきっかけや作品に込めた想いを聞いた。
■作家としてストレートにありのままの今の自分をさらけ出した初作品
自身の作詞・作曲による「想い出づくり」は、「両親への想い、子どもへの想い、友への想い、夫への想いという、今現在の自分の中にある想いを包み隠さず詞にした」という藤あや子のリアル・ライフから生まれた作品。誕生のきっかけはプロデューサーからの「これまでいろいろな女性を歌ってきたけれど、今回はご自身を歌ってみたらどうですか?」との提案だったという。
「小野彩としてこれまでも楽曲を作ってきましたが、自分のことを歌うという発想は私の中にはなかったので、最初はちょっとビックリしました。でも、プロデューサーとの話の中で、私が今まで出会った人たちとの思い出を綴った感じで書いてみてはどうかということになりまして。人生って想い出づくりの旅だし、たとえば今、私が抱いている両親への感謝とか子どもや孫への想いというのは同世代の人も共有できる普遍的なものだろうから、共感していただける歌になるのではないかと思って、包み隠さず今の自分の本音を描いてみようと思いました」
作家として「こんなにも自分をストレートにさらけ出したのは初めて」という藤。経験したことがない作業だっただけに、最初の一歩はなかなか踏み出せなかったという。
「これまで詞を書くときはいろいろな女性をイメージしながら書いていましたから、自分のこととなると、なかなか難しくて。でも、まず両親への想いを書こうと思ったとき、私は晩年のケアをし、看取りもしましたけれど、それでも後悔が残っている部分があって、今でも美味しいものを食べれば、これを食べさせてあげたかったなとか、旅行に出ればこの景色を見せてあげたかったなと思う自分がいるんです。その想いをそのまま言葉にしてみたら、スムーズに書けまして。子どもや孫のこと、夫のこと、友人のことも、どんな歌詞にしようかと考えを練って作り込むことは一切せず、自分の中にあるそのままの想いを綴りました」
メロディーもまた、歌詞と同じく自然と内から湧き上がってきたという。
「メッセージソングなので、皆さんに気軽に歌ってもらえるようなメロディーがいいなとは思っていたのですが、歌詞を書いているときに同時にメロディーも自然と出てきて、歌いながら作っていきました。もともと演歌を聞いて育ったわけではないので、頭の中に流れてきたのは演歌ではなく、昔よく聞いていたポップスやロック、フォークでした。たとえば最初のフレーズは甲斐バンドさんの「安奈」が頭の中に浮かんで、それがヒントとなって出来上がったんです」
■クラシックの名曲に詞をつけて歌うという難題に、キラキラなワクワク感を持ってトライ
もう一方の「小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜」も「素のままの自分をさらけ出した」1曲。誕生のきっかけも「想い出づくり」同様、第三者からの勧めだった。
「私は欲がなくて、自分からあれをやろう、これをやろうと企画して発信するということがまったくないんです(笑)。ジャズのアルバムを出したときも、前作の『雪の花』のカップリングの『月亮代表我的心』を中国語で歌ったときも、勧められたのがきっかけでした。ダメだったらやめればいいのだから一応やってみようと思うタイプで。「ラ・カンパネラ」は、かねてより大ファンだったフジコ・ヘミングさんも愛された、クラッシックの曲で、私のミュージックビデオを長年制作していただいている、映画監督の小松莊一良さんが繋いでくださったご縁で、フジコさんともお会いすることができました。いつか一緒にレコーディングできたらと夢見ていたので、本作はそんな思いも込めてレコーディングしました。
課題を与えられたときに「『無理です』とは決して言わずに、キラキラなワクワク感を持ってトライしたいといつも思っている」という藤だけに、今回も「面白そう!」と、自身が詞をあてることを決意。しかし原曲がクラシックなだけに、ハードルはなかなか高かったようだ。
「最初に工藤拓人さんが編曲してくださった音を聞いたときは、ちょっとこれ無理でしょうって思いました。『ラ・カンパネラ』の特徴でもありますが、単調な繰り返しのメロディーが多いですし、音域も歌にするのには非常に難しくて。すぐには詞をつけられずに放っておいたんです」
そんなとき藤の内面を沸き立たせ、詞を紡ぐ原動力となったのが、テレビで見たニュースだった。
「トランプさんとゼレンスキーさんの会談でした。激しく言い争っている映像を見たときに、『どうか鎮めさせて』という詞がパッと頭に浮かんできたんです。その後も映像を見ながら次々と言葉が浮かんできて、メロディーに当てていきました」
その心底にあるのは、「平和への想い」だ。
「みんな幸せになるために生まれてきています。そのために大切なのは一人ひとりが平和を願うことだと思うんです。カンパネラというのは鐘という意味。平和を願う小さな鐘の音をみんな一つずつ持って鳴らしていき、それがいっぱい増えてやがて大きな音となり、世界中に鳴り響いて平和をもたらしたら、という想いを込めました。この曲が、幸せとか、人に優しくとか、聞いてくださった人に何かひとつでも気づきをもたらすことができればいいなと思っています」
■憧れの吉幾三さんにちょっと近づくことができたかな?
自身の内面をストレートに出した2作を通じて、「こういう歌が書けるようになったんだと自分自身発見するとともに転機になった気がする」と語る藤。そして、「憧れの吉幾三さんにちょっと近づけてきたかな」と、チャーミングな笑顔を見せる。
藤が作詞・作曲を手がける際に使っているペンネームは、「デビュー前から吉幾三さんのようなシンガー・ソングライターになりたいと思っていた」ことから、吉幾三が「よし、いくぞー!」からつけられたのなら、「この際、やってみよう!」から小野彩(このさい)にしたそう。前作の「雪の花」は、そんな吉が藤に「詞を書いてくれたら曲を付ける」と約束し実現したコラボ作。藤は「夢のひとつが叶ったという喜びとともに、小野彩の名前でやってきたことが決して間違いではなかったし、これからも続けていいよって合格をいただいた感覚でした」と喜びを語る。
そして、実は現在もまた、「弟子に歌わせる曲の詞を書いてくれないか」と吉さんからオファーを受けているのだとか。そんな藤に小野彩としての活動の醍醐味を聞いてみた。
「最初はガチガチになっていい詞、いい曲を書こうと思っていましたが、続けるうちに、またいろいろな経験を重ねるうちに、ちょっと力が抜けたというか、引き算で見られるようになったり、いろいろなパターンを考えられるようになって歌うだけでは見えなかった世界の扉がちょっとずつですけど開いて、広く景色が眺められるようになった気がします」
近年は、愛猫マルとオレオ(マルオレ)との日々を綴ったSNSや写真集、保護猫活動等、歌とは異なるジャンルでも等身大の魅力を発揮している。デビューから38年、還暦を過ぎた今、「私は幸せです」って言えると胸を張る。
「昔は幸せになりたいって願望ばかりでしたが、今は幸せですって断言できる自分にようやくなりました。だからこそ、『想い出づくり』や『小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜』のような歌が書けたと思いますし、また逆に、これを書いて幸せですって言い切れる自分を自覚した気もします。昔は40歳で死ぬつもりだったので、今の自分の年齢を考えるとすごく信じられない思いなのですが、踏ん張って頑張ってきたからこそ今がある。だからみなさんも、今だけを見つめないで、今の積み重ねの先にきっと楽しい自分が待っている。だから決してあきらめずに人生を『幸せです』と言い切れるように持っていきましょうと発信したいですね」
「想い出づくり/小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜」のジャケットに写るのは愛猫マルオレちゃんとともに自然な笑みを浮かべる藤。自宅でパートナーがスマホで撮った1枚なのだそう。等身大の藤の魅力が詰まった本作で、アーティスト・藤あや子の“現在地”をぜひ確かめてみてほしい。
取材・文:河上いつ子
<作品情報>
藤あや子 両A面シングル「想い出づくり/小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜」
発売日:2025年7月9日
品番:MHCL-3140/価格:1600円(税込)
M1. 想い出づくり
M2. 小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜
M3. 想い出づくり(オリジナル・カラオケ)
M4. 小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜(オリジナル・カラオケ)
■作家としてストレートにありのままの今の自分をさらけ出した初作品
自身の作詞・作曲による「想い出づくり」は、「両親への想い、子どもへの想い、友への想い、夫への想いという、今現在の自分の中にある想いを包み隠さず詞にした」という藤あや子のリアル・ライフから生まれた作品。誕生のきっかけはプロデューサーからの「これまでいろいろな女性を歌ってきたけれど、今回はご自身を歌ってみたらどうですか?」との提案だったという。
「小野彩としてこれまでも楽曲を作ってきましたが、自分のことを歌うという発想は私の中にはなかったので、最初はちょっとビックリしました。でも、プロデューサーとの話の中で、私が今まで出会った人たちとの思い出を綴った感じで書いてみてはどうかということになりまして。人生って想い出づくりの旅だし、たとえば今、私が抱いている両親への感謝とか子どもや孫への想いというのは同世代の人も共有できる普遍的なものだろうから、共感していただける歌になるのではないかと思って、包み隠さず今の自分の本音を描いてみようと思いました」
作家として「こんなにも自分をストレートにさらけ出したのは初めて」という藤。経験したことがない作業だっただけに、最初の一歩はなかなか踏み出せなかったという。
「これまで詞を書くときはいろいろな女性をイメージしながら書いていましたから、自分のこととなると、なかなか難しくて。でも、まず両親への想いを書こうと思ったとき、私は晩年のケアをし、看取りもしましたけれど、それでも後悔が残っている部分があって、今でも美味しいものを食べれば、これを食べさせてあげたかったなとか、旅行に出ればこの景色を見せてあげたかったなと思う自分がいるんです。その想いをそのまま言葉にしてみたら、スムーズに書けまして。子どもや孫のこと、夫のこと、友人のことも、どんな歌詞にしようかと考えを練って作り込むことは一切せず、自分の中にあるそのままの想いを綴りました」
メロディーもまた、歌詞と同じく自然と内から湧き上がってきたという。
「メッセージソングなので、皆さんに気軽に歌ってもらえるようなメロディーがいいなとは思っていたのですが、歌詞を書いているときに同時にメロディーも自然と出てきて、歌いながら作っていきました。もともと演歌を聞いて育ったわけではないので、頭の中に流れてきたのは演歌ではなく、昔よく聞いていたポップスやロック、フォークでした。たとえば最初のフレーズは甲斐バンドさんの「安奈」が頭の中に浮かんで、それがヒントとなって出来上がったんです」
もう一方の「小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜」も「素のままの自分をさらけ出した」1曲。誕生のきっかけも「想い出づくり」同様、第三者からの勧めだった。
「私は欲がなくて、自分からあれをやろう、これをやろうと企画して発信するということがまったくないんです(笑)。ジャズのアルバムを出したときも、前作の『雪の花』のカップリングの『月亮代表我的心』を中国語で歌ったときも、勧められたのがきっかけでした。ダメだったらやめればいいのだから一応やってみようと思うタイプで。「ラ・カンパネラ」は、かねてより大ファンだったフジコ・ヘミングさんも愛された、クラッシックの曲で、私のミュージックビデオを長年制作していただいている、映画監督の小松莊一良さんが繋いでくださったご縁で、フジコさんともお会いすることができました。いつか一緒にレコーディングできたらと夢見ていたので、本作はそんな思いも込めてレコーディングしました。
課題を与えられたときに「『無理です』とは決して言わずに、キラキラなワクワク感を持ってトライしたいといつも思っている」という藤だけに、今回も「面白そう!」と、自身が詞をあてることを決意。しかし原曲がクラシックなだけに、ハードルはなかなか高かったようだ。
「最初に工藤拓人さんが編曲してくださった音を聞いたときは、ちょっとこれ無理でしょうって思いました。『ラ・カンパネラ』の特徴でもありますが、単調な繰り返しのメロディーが多いですし、音域も歌にするのには非常に難しくて。すぐには詞をつけられずに放っておいたんです」
そんなとき藤の内面を沸き立たせ、詞を紡ぐ原動力となったのが、テレビで見たニュースだった。
「トランプさんとゼレンスキーさんの会談でした。激しく言い争っている映像を見たときに、『どうか鎮めさせて』という詞がパッと頭に浮かんできたんです。その後も映像を見ながら次々と言葉が浮かんできて、メロディーに当てていきました」
その心底にあるのは、「平和への想い」だ。
「みんな幸せになるために生まれてきています。そのために大切なのは一人ひとりが平和を願うことだと思うんです。カンパネラというのは鐘という意味。平和を願う小さな鐘の音をみんな一つずつ持って鳴らしていき、それがいっぱい増えてやがて大きな音となり、世界中に鳴り響いて平和をもたらしたら、という想いを込めました。この曲が、幸せとか、人に優しくとか、聞いてくださった人に何かひとつでも気づきをもたらすことができればいいなと思っています」
■憧れの吉幾三さんにちょっと近づくことができたかな?
自身の内面をストレートに出した2作を通じて、「こういう歌が書けるようになったんだと自分自身発見するとともに転機になった気がする」と語る藤。そして、「憧れの吉幾三さんにちょっと近づけてきたかな」と、チャーミングな笑顔を見せる。
藤が作詞・作曲を手がける際に使っているペンネームは、「デビュー前から吉幾三さんのようなシンガー・ソングライターになりたいと思っていた」ことから、吉幾三が「よし、いくぞー!」からつけられたのなら、「この際、やってみよう!」から小野彩(このさい)にしたそう。前作の「雪の花」は、そんな吉が藤に「詞を書いてくれたら曲を付ける」と約束し実現したコラボ作。藤は「夢のひとつが叶ったという喜びとともに、小野彩の名前でやってきたことが決して間違いではなかったし、これからも続けていいよって合格をいただいた感覚でした」と喜びを語る。
そして、実は現在もまた、「弟子に歌わせる曲の詞を書いてくれないか」と吉さんからオファーを受けているのだとか。そんな藤に小野彩としての活動の醍醐味を聞いてみた。
「最初はガチガチになっていい詞、いい曲を書こうと思っていましたが、続けるうちに、またいろいろな経験を重ねるうちに、ちょっと力が抜けたというか、引き算で見られるようになったり、いろいろなパターンを考えられるようになって歌うだけでは見えなかった世界の扉がちょっとずつですけど開いて、広く景色が眺められるようになった気がします」
近年は、愛猫マルとオレオ(マルオレ)との日々を綴ったSNSや写真集、保護猫活動等、歌とは異なるジャンルでも等身大の魅力を発揮している。デビューから38年、還暦を過ぎた今、「私は幸せです」って言えると胸を張る。
「昔は幸せになりたいって願望ばかりでしたが、今は幸せですって断言できる自分にようやくなりました。だからこそ、『想い出づくり』や『小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜』のような歌が書けたと思いますし、また逆に、これを書いて幸せですって言い切れる自分を自覚した気もします。昔は40歳で死ぬつもりだったので、今の自分の年齢を考えるとすごく信じられない思いなのですが、踏ん張って頑張ってきたからこそ今がある。だからみなさんも、今だけを見つめないで、今の積み重ねの先にきっと楽しい自分が待っている。だから決してあきらめずに人生を『幸せです』と言い切れるように持っていきましょうと発信したいですね」
「想い出づくり/小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜」のジャケットに写るのは愛猫マルオレちゃんとともに自然な笑みを浮かべる藤。自宅でパートナーがスマホで撮った1枚なのだそう。等身大の藤の魅力が詰まった本作で、アーティスト・藤あや子の“現在地”をぜひ確かめてみてほしい。
取材・文:河上いつ子
<作品情報>
藤あや子 両A面シングル「想い出づくり/小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜」
発売日:2025年7月9日
品番:MHCL-3140/価格:1600円(税込)
M1. 想い出づくり
M2. 小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜
M3. 想い出づくり(オリジナル・カラオケ)
M4. 小さな鐘の音〜ラ・カンパネラ〜(オリジナル・カラオケ)
2025/07/09




