デビュー35周年を迎えたBEGINが7月2日、7年ぶり通算21枚目となるオリジナルアルバム『太陽』をリリースした。今一度、自分たちの歌づくりの原点から楽曲制作を行うことを根幹とし、メンバー・比嘉栄昇(Vo)、島袋優(Gt/Vo)、上地等(Pf/Vo)の故郷である石垣島で制作した意欲作だ。“MADE IN 石垣島”にこだわった理由、そして、9月から始まる35周年記念の全国ツアーについて3人に話を聞いた。
――まずはデビュー35周年を迎えての心境を聞かせてください。
【上地】自分自身は「35周年」という実感があまりないんですけど、それでも3月に、35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!! 』を日本武道館と大阪城ホールでやらせていただいて、たくさんのお客さんが集まってくれて、みんなで歌っているシーンを目の当たりにすると、これが35周年なんだと感じられて、よい機会を与えてもらえたと思っています。
【島袋】35年前に生まれた人って、男の子だったら、今はまあまあのおじさんになっているわけで(笑)、それを考えるとすごく長い年月だなとは思うんですけど、3人で自分たちが好きなこと、自分たちにしかできないことを追求してきた結果として武道館や大阪城ホールで記念ライブができて、そこに来られなかった方も含めて、応援してくださった皆さんのおかげだなと改めて感じています。
【比嘉】アマチュア時代に『(三宅裕司の)いかすバンド天国』に出場させていただいたのが1989年なので、「ずっと前からいるよね」って認識されていますけど、でも自分たちとしては、小さな石垣島から3人揃ってのデビューなんてあり得なかったことで。思い返すと、デビューして地元でのライブが“凱旋”みたいなことになって、当時、空港で両親から花束をもらって…。“親から花束をもらう人生キタ!”みたいな、そういうことがありましたけど(笑)。それから35年経った今、僕は石垣島で暮らしていて、ホームセンターに行っても誰からも何とも思われなくなっていて…(笑)。
【島袋】いや、みんな思ってるよ、ちゃんと(笑)。
【比嘉】「この差は何?」っていう35年で(笑)。
【上地】あはははは(笑)。
【比嘉】いやいや、それは冗談で、本当にありがたい限りだなと思っています。
――その35周年に完成した7年ぶりのフルアルバム『太陽』は、良い意味で、何か着飾ったりするような作為性のない、BEGINならではの歌がピュアに追求された作品だと感じました。
【比嘉】僕らがデビューした1990年は、レコードからCDに変わっていった時代で、何千万円もするような卓(ミキシングコンソール)がある大きなスタジオでレコーディングをやっていました。そんな時代から、今回は石垣島で、PCを使って自分たちで録って。ものすごい変化のあった35年で、今やCDを作らずとも音楽配信でもいいし、YouTubeで歌を届けることもできる。いろんなやり方がある中で、僕らはやっぱりライブなんです。でも、たとえばチケットが1000枚売れたと言っても、必ず何人かは事情で来られなくて、100%全員が一堂に会すことってものすごく難しい。だから僕の場合、曲を作る時も、売れるとか売れないとかそんな話ではなく、ライブ会場にいらしてくれた方にどんな歌を届けたらいいんだろうと考えるし、今回も、自然とそこに向かっていけた気がします。特に歌は「言葉を使う」ものですから、その言葉を誰に投げかけているのかと考えた時に、いつもお客さんの顔が目に浮かぶんです。
【島袋】それに今回は、ほとんどを石垣島でレコーディングすることができて。BEGINはずっと変わらないスタイルがあって、3人が“せーの”で演奏する、一発録りみたいな形でレコーディングをしているんですけど、それを石垣島で、じっくりと3人顔を合わせて制作できたって、実はデビューして35年間なかったことなんですよ。僕らは3人とも石垣島で生まれ育って、今は(比嘉)栄昇だけが石垣に住んでいますが、僕と(上地)等は里帰りしても、滞在は2〜3日で。それが今回、ずっと石垣島のパワーとか、いろんなものを感じながらレコーディングに臨めたので“MADE IN 石垣島”と言えるアルバムになったと思っています。
【上地】石垣島にずっと住んでいる栄昇からすれば「“MADE IN 石垣島”って何だよ」と思うかもしれないけど、僕も(島袋)優と同じことを感じて。これまで、石垣で作業すること自体はあったけど、最初の素材作りからすべてを石垣で制作したのは、本当に初めてだったかもしれません。
【比嘉】僕が(東京から)石垣島に帰ったのは、もちろん家族と一緒に暮らしたいという気持ちが一番ではあったんですけど、「島人ぬ宝」や「涙そうそう」「三線の花」を歌う者として、やっぱりその歌に似合う人間でなければいけないなと思うんですよね。だから僕にとっては、石垣島での暮らしがあって、そこで培うバランス感覚があるから全国へライブに行ける。そういうふうに実感しています。それに石垣島でレコーディングすると、曲のテンポが変わるんですよ。僕らの場合、メトロノーム(クリック)を使わないで「じゃあ、このくらいのテンポかな」みたいな感じで演奏するので、テンポや演奏のグルーヴが、明らかに東京と石垣島では変わるわけです。だからたとえば、「なんくる君であれ」のような、あのゆったりしたテンポ感は、たぶん都会では録れなかったと思います。
――まさしく石垣島で、自然体でレコーディングに臨めたわけですね。
【上地】そうですね。35周年だから、石垣島でといったこと以上に、フラットな気持ちでレコーディングできたことが大きかったように思います。よりシンプルになれてきたのかなって。昔は「こうしてやろう、ああしてやろう」という思いが僕の中にもあったけど、それがだんだん抜けてきたように感じます。
【島袋】3人ともそれぞれ、いろんなことをやろうともがいていた時期があったと思うけど、でも今はナチュラルに。たとえば、「太陽」という曲は(比嘉)栄昇が書いたんですけど、もう35年も一緒にやっているから、デモを聴いただけで、「あの人のこと歌ってるんだな」って、みんなわかるんですよ。そうしたこと自体が、自分たちに対しての35年分のプレゼントで。だから「じゃあこの曲を、こうやってキラキラさせよう」とかっていう作為的な試みなんて、まったくないんです。しかも、栄昇も言っていたように、その日の天気によっても曲が変わるんですよ。「今日はどんよりしているから、このくらいのテンポかな?」とか、ピーカンの晴天だったらもっと速い曲になるかもしれないし、「雨だから今日は休もうか」となったり。大きなコンテナの中にあるスタジオなので、雨が降ると雨音がうるさいんですよ。そうやって石垣島の自然もすべて受け入れながらのレコーディングでしたから、より作為的なものがどんどんなくなっていって、良い意味で緩やかにアルバムを作れたんじゃないかなという気がしています。
【比嘉】プレイ的にも2人とも、たとえばギター・ソロやピアノ・ソロは、のびのびと弾いているような気がしました。ちょっとライブの感覚に近い感じで。それも石垣島で録ったからかもしれませんね。
――石垣島で暮らしている比嘉さんにとっても、今回のレコーディングで、何か今までとは違ったものを感じる部分はありましたか?
【比嘉】今って、プレスリーやビートルズだって、デジタルでリマスターされてピカピカの音で聴けるじゃないですか。そうすると、もうどの音楽が古いもので何が新しいのかわからない。だけど言葉に関しては、たとえば「ポケットベル」っていう言葉は、もう今は使えませんよね。言葉は常に変化していく。歌はメロディと言葉が合わさって生まれるものだから、時代にマッチするために、やっぱりどうしても新曲が必要になってくるんですね。それで今、ふと思ったんですけど、僕らが7年間もアルバムを作らなかったのは――それは“作れなかった”のかもしれないけど――もしかしたら僕らの中で、今、時代は新曲を必要としていないんじゃないかっていう気持ちがあったのかもしれません。既にある言葉とメロディで足りていたんじゃないかなって。流れが停滞していた。そこから少しずつ流れ始めて、僕ら作る側として、リスナーのみなさんが新しい曲を欲するようになってきたんじゃないか、皆さんの耳が飽いてきたんじゃないかって、そういう気がしてきて。それも今回、このタイミングでアルバムを作るきっかけになったように思っています。
――歌を通して、時代とコミュニケーションをしようという気持ちなんですね。
【比嘉】そうなんです。僕らがデビューした頃と違って、今はSNSでバズったらいいなという軽い気持ちで歌を発表できる。それって素晴らしいことだと思う反面、僕自身も含めて、本当に新しい歌を必要としている人、歌のおかげで救われているという人たちに、今、どういう歌を届けるのかが、すごく重要な時代だと思っていて。だから今回のアルバムには、僕らBEGINがどうこうということじゃなくて、全国にいらっしゃる歌仲間に「みんな、今、どうなんだい?」といった、そんな想いもあるんです。
――なるほど。島袋さんと上地さんは、今回のレコーディングで印象に残っていることや、新たな発見のようなものはありましたか?
【島袋】僕は今回、自分が歌うため、ギターを弾くために曲を書いたんです。3人とも自分で書いた曲を歌っていて、それは面白いチャレンジでした。そうなると普通、曲ごとに3人の個性が際立つはずなんだけど、逆に良い方向で個性が混ざり合ったように感じていて。今、完成したばかりのアルバムを自分なりに聴き込んでいるんですけど、何回聴いても飽きないんですよ。至るところにスパイスが効いていて。そういう意味でも、面白いアルバムを作れたのかなと満足しています。
【上地】僕が面白いなと感じたのは、やっぱりBEGINだから、この3人がプレイするからこういう曲になったんだなって感じられる点です。特に強く感じたのが、自分が書いた曲(「星空の下のRADIO」)で、この曲は、ギターのストロークを「ジャンジャガジャンジャガ」っていう(シンプルな)イメージで作ったんですが、いざ3人で演奏を始めたら、栄昇が「ジャッグジャッグ」って、ちょっとジャジーな感じで弾き始めたんですよ。そうしたら、自然と(島袋)優もジャズっぽくギターを弾いて、僕までそういうテイストの演奏になっていったんです。
【比嘉】えっ、あの弾き方、嫌だった?(笑)
【上地】嫌じゃない、嫌じゃない(笑)。それこそがBEGINのマジックだと思って。栄昇が「ジャッグジャッグ」って弾き始めたことで曲のタッチが変わっていったのがすごく面白くて。それってやっぱり、3人だからこそ生まれた作品なんだなってすごく感じました。
【比嘉】アルバムとなると、やっぱり“作品”という呼び方が似合うなって感じます。たとえば映画に置き換えると、『スタンド・バイ・ミー』はこういう映画で、『アメリカン・グラフィティ』は若かりし頃の誰々が出演していて…といった形で、“作品”としてパッケージされるじゃないですか。それを何年か後に振り返った時に、とても懐かしく思えるし、その時には出演者も年齢を重ねて、もういなくなってしまった人もいたりするけど、そういった切なさも含めて僕は「いいな」と思うんですよね。だから、アルバムとして『太陽』というひとつの“作品”を作ることができて、何十年も経って振り返った時に、「あのアルバムの時はね」って語れるものが35周年のタイミングで作れたことは、本当によかったなって、そう思っています。
――新譜の曲も披露されるであろう、9月から始まる35周年記念の全国ツアー『BEGIN「さにしゃんサンゴSHOW!!」〜35年目の音楽旅団ツアー〜』は、どんなツアーになりそうですか?
【比嘉】新作アルバムを引っ提げてのツアーは7年ぶりなんですが、35年間やってきた中で、「この曲だけはライブで外せない」という曲がとてもたくさんあるので、そこに新曲をどう入れていくか、それが本当に難しくて。ライブって本当に一期一会だから、その日しか会えないかもしれないみなさんが聴きたい曲をやりたいという気持ちが強いんです。でも今回は、35周年ということに甘えさせてもらって、新曲も多めにやるとは思いますけど、その分、他の楽曲のテンポを少し速くしたりして(笑)、できるだけたくさんの歌を聴いてもらえたらと思っています。
文・取材:布施雄一郎
<作品情報>
BEGIN『太陽』
2025年7月2日(水)発売
【通常盤】CD
品番:AMEJ-1002/価格:3500円(税込)
【初回限定盤】CD、Blu-ray、32Pフォトブック
品番:AMEJ-1001/価格:8800円(税込)
【完全限定生産】CD、Blu-ray、“太陽”オリジナルグッズ(フード付き冷感タオル)
※アスマート限定
品番:AMEJ-1003/価格:10350円(税込)
■CD収録曲(共通)
01. 太陽
02. ほなバイバイ〜大阪マドロス女〜
03. 沖縄Sunshine Day
04. ワイキキシェル
05. 星空の下のRADIO
06. 4匹のチワワ
07. ただ雲になる
08. 開拓者
09. 夜空にブルースを
10. 空気いただきます
11. なんくる君であれ
■Blu-ray収録内容(初回限定版、完全限定生産共通)
・BEGIN35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!!』(3月30日 日本武道館公演)
特典映像
・35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!!』バックステージムービー at 日本武道館
・Album「太陽」ジャケット・ブックレット撮影ドキュメント&メンバートークセッション
・BONUS TRACK - 大阪城ホール公演への感謝を込めて-
35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!!』「おつかれさん」「防波堤で見た景色」ライブ映像 at 大阪城ホール
<ライブ情報>
BEGIN「さにしゃんサンゴSHOW!!」 〜35年目の音楽旅団ツアー〜
2025年9月より35公演の全国ホールコンサートツアー開催
特設サイト:https://www.begin1990.com/35show-tour/
――まずはデビュー35周年を迎えての心境を聞かせてください。
【上地】自分自身は「35周年」という実感があまりないんですけど、それでも3月に、35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!! 』を日本武道館と大阪城ホールでやらせていただいて、たくさんのお客さんが集まってくれて、みんなで歌っているシーンを目の当たりにすると、これが35周年なんだと感じられて、よい機会を与えてもらえたと思っています。
【島袋】35年前に生まれた人って、男の子だったら、今はまあまあのおじさんになっているわけで(笑)、それを考えるとすごく長い年月だなとは思うんですけど、3人で自分たちが好きなこと、自分たちにしかできないことを追求してきた結果として武道館や大阪城ホールで記念ライブができて、そこに来られなかった方も含めて、応援してくださった皆さんのおかげだなと改めて感じています。
【比嘉】アマチュア時代に『(三宅裕司の)いかすバンド天国』に出場させていただいたのが1989年なので、「ずっと前からいるよね」って認識されていますけど、でも自分たちとしては、小さな石垣島から3人揃ってのデビューなんてあり得なかったことで。思い返すと、デビューして地元でのライブが“凱旋”みたいなことになって、当時、空港で両親から花束をもらって…。“親から花束をもらう人生キタ!”みたいな、そういうことがありましたけど(笑)。それから35年経った今、僕は石垣島で暮らしていて、ホームセンターに行っても誰からも何とも思われなくなっていて…(笑)。
【島袋】いや、みんな思ってるよ、ちゃんと(笑)。
【比嘉】「この差は何?」っていう35年で(笑)。
【上地】あはははは(笑)。
【比嘉】いやいや、それは冗談で、本当にありがたい限りだなと思っています。
――その35周年に完成した7年ぶりのフルアルバム『太陽』は、良い意味で、何か着飾ったりするような作為性のない、BEGINならではの歌がピュアに追求された作品だと感じました。
【比嘉】僕らがデビューした1990年は、レコードからCDに変わっていった時代で、何千万円もするような卓(ミキシングコンソール)がある大きなスタジオでレコーディングをやっていました。そんな時代から、今回は石垣島で、PCを使って自分たちで録って。ものすごい変化のあった35年で、今やCDを作らずとも音楽配信でもいいし、YouTubeで歌を届けることもできる。いろんなやり方がある中で、僕らはやっぱりライブなんです。でも、たとえばチケットが1000枚売れたと言っても、必ず何人かは事情で来られなくて、100%全員が一堂に会すことってものすごく難しい。だから僕の場合、曲を作る時も、売れるとか売れないとかそんな話ではなく、ライブ会場にいらしてくれた方にどんな歌を届けたらいいんだろうと考えるし、今回も、自然とそこに向かっていけた気がします。特に歌は「言葉を使う」ものですから、その言葉を誰に投げかけているのかと考えた時に、いつもお客さんの顔が目に浮かぶんです。
【島袋】それに今回は、ほとんどを石垣島でレコーディングすることができて。BEGINはずっと変わらないスタイルがあって、3人が“せーの”で演奏する、一発録りみたいな形でレコーディングをしているんですけど、それを石垣島で、じっくりと3人顔を合わせて制作できたって、実はデビューして35年間なかったことなんですよ。僕らは3人とも石垣島で生まれ育って、今は(比嘉)栄昇だけが石垣に住んでいますが、僕と(上地)等は里帰りしても、滞在は2〜3日で。それが今回、ずっと石垣島のパワーとか、いろんなものを感じながらレコーディングに臨めたので“MADE IN 石垣島”と言えるアルバムになったと思っています。
【上地】石垣島にずっと住んでいる栄昇からすれば「“MADE IN 石垣島”って何だよ」と思うかもしれないけど、僕も(島袋)優と同じことを感じて。これまで、石垣で作業すること自体はあったけど、最初の素材作りからすべてを石垣で制作したのは、本当に初めてだったかもしれません。
【比嘉】僕が(東京から)石垣島に帰ったのは、もちろん家族と一緒に暮らしたいという気持ちが一番ではあったんですけど、「島人ぬ宝」や「涙そうそう」「三線の花」を歌う者として、やっぱりその歌に似合う人間でなければいけないなと思うんですよね。だから僕にとっては、石垣島での暮らしがあって、そこで培うバランス感覚があるから全国へライブに行ける。そういうふうに実感しています。それに石垣島でレコーディングすると、曲のテンポが変わるんですよ。僕らの場合、メトロノーム(クリック)を使わないで「じゃあ、このくらいのテンポかな」みたいな感じで演奏するので、テンポや演奏のグルーヴが、明らかに東京と石垣島では変わるわけです。だからたとえば、「なんくる君であれ」のような、あのゆったりしたテンポ感は、たぶん都会では録れなかったと思います。
【上地】そうですね。35周年だから、石垣島でといったこと以上に、フラットな気持ちでレコーディングできたことが大きかったように思います。よりシンプルになれてきたのかなって。昔は「こうしてやろう、ああしてやろう」という思いが僕の中にもあったけど、それがだんだん抜けてきたように感じます。
【島袋】3人ともそれぞれ、いろんなことをやろうともがいていた時期があったと思うけど、でも今はナチュラルに。たとえば、「太陽」という曲は(比嘉)栄昇が書いたんですけど、もう35年も一緒にやっているから、デモを聴いただけで、「あの人のこと歌ってるんだな」って、みんなわかるんですよ。そうしたこと自体が、自分たちに対しての35年分のプレゼントで。だから「じゃあこの曲を、こうやってキラキラさせよう」とかっていう作為的な試みなんて、まったくないんです。しかも、栄昇も言っていたように、その日の天気によっても曲が変わるんですよ。「今日はどんよりしているから、このくらいのテンポかな?」とか、ピーカンの晴天だったらもっと速い曲になるかもしれないし、「雨だから今日は休もうか」となったり。大きなコンテナの中にあるスタジオなので、雨が降ると雨音がうるさいんですよ。そうやって石垣島の自然もすべて受け入れながらのレコーディングでしたから、より作為的なものがどんどんなくなっていって、良い意味で緩やかにアルバムを作れたんじゃないかなという気がしています。
【比嘉】プレイ的にも2人とも、たとえばギター・ソロやピアノ・ソロは、のびのびと弾いているような気がしました。ちょっとライブの感覚に近い感じで。それも石垣島で録ったからかもしれませんね。
――石垣島で暮らしている比嘉さんにとっても、今回のレコーディングで、何か今までとは違ったものを感じる部分はありましたか?
【比嘉】今って、プレスリーやビートルズだって、デジタルでリマスターされてピカピカの音で聴けるじゃないですか。そうすると、もうどの音楽が古いもので何が新しいのかわからない。だけど言葉に関しては、たとえば「ポケットベル」っていう言葉は、もう今は使えませんよね。言葉は常に変化していく。歌はメロディと言葉が合わさって生まれるものだから、時代にマッチするために、やっぱりどうしても新曲が必要になってくるんですね。それで今、ふと思ったんですけど、僕らが7年間もアルバムを作らなかったのは――それは“作れなかった”のかもしれないけど――もしかしたら僕らの中で、今、時代は新曲を必要としていないんじゃないかっていう気持ちがあったのかもしれません。既にある言葉とメロディで足りていたんじゃないかなって。流れが停滞していた。そこから少しずつ流れ始めて、僕ら作る側として、リスナーのみなさんが新しい曲を欲するようになってきたんじゃないか、皆さんの耳が飽いてきたんじゃないかって、そういう気がしてきて。それも今回、このタイミングでアルバムを作るきっかけになったように思っています。
――歌を通して、時代とコミュニケーションをしようという気持ちなんですね。
【比嘉】そうなんです。僕らがデビューした頃と違って、今はSNSでバズったらいいなという軽い気持ちで歌を発表できる。それって素晴らしいことだと思う反面、僕自身も含めて、本当に新しい歌を必要としている人、歌のおかげで救われているという人たちに、今、どういう歌を届けるのかが、すごく重要な時代だと思っていて。だから今回のアルバムには、僕らBEGINがどうこうということじゃなくて、全国にいらっしゃる歌仲間に「みんな、今、どうなんだい?」といった、そんな想いもあるんです。
――なるほど。島袋さんと上地さんは、今回のレコーディングで印象に残っていることや、新たな発見のようなものはありましたか?
【島袋】僕は今回、自分が歌うため、ギターを弾くために曲を書いたんです。3人とも自分で書いた曲を歌っていて、それは面白いチャレンジでした。そうなると普通、曲ごとに3人の個性が際立つはずなんだけど、逆に良い方向で個性が混ざり合ったように感じていて。今、完成したばかりのアルバムを自分なりに聴き込んでいるんですけど、何回聴いても飽きないんですよ。至るところにスパイスが効いていて。そういう意味でも、面白いアルバムを作れたのかなと満足しています。
【上地】僕が面白いなと感じたのは、やっぱりBEGINだから、この3人がプレイするからこういう曲になったんだなって感じられる点です。特に強く感じたのが、自分が書いた曲(「星空の下のRADIO」)で、この曲は、ギターのストロークを「ジャンジャガジャンジャガ」っていう(シンプルな)イメージで作ったんですが、いざ3人で演奏を始めたら、栄昇が「ジャッグジャッグ」って、ちょっとジャジーな感じで弾き始めたんですよ。そうしたら、自然と(島袋)優もジャズっぽくギターを弾いて、僕までそういうテイストの演奏になっていったんです。
【比嘉】えっ、あの弾き方、嫌だった?(笑)
【上地】嫌じゃない、嫌じゃない(笑)。それこそがBEGINのマジックだと思って。栄昇が「ジャッグジャッグ」って弾き始めたことで曲のタッチが変わっていったのがすごく面白くて。それってやっぱり、3人だからこそ生まれた作品なんだなってすごく感じました。
【比嘉】アルバムとなると、やっぱり“作品”という呼び方が似合うなって感じます。たとえば映画に置き換えると、『スタンド・バイ・ミー』はこういう映画で、『アメリカン・グラフィティ』は若かりし頃の誰々が出演していて…といった形で、“作品”としてパッケージされるじゃないですか。それを何年か後に振り返った時に、とても懐かしく思えるし、その時には出演者も年齢を重ねて、もういなくなってしまった人もいたりするけど、そういった切なさも含めて僕は「いいな」と思うんですよね。だから、アルバムとして『太陽』というひとつの“作品”を作ることができて、何十年も経って振り返った時に、「あのアルバムの時はね」って語れるものが35周年のタイミングで作れたことは、本当によかったなって、そう思っています。
――新譜の曲も披露されるであろう、9月から始まる35周年記念の全国ツアー『BEGIN「さにしゃんサンゴSHOW!!」〜35年目の音楽旅団ツアー〜』は、どんなツアーになりそうですか?
【比嘉】新作アルバムを引っ提げてのツアーは7年ぶりなんですが、35年間やってきた中で、「この曲だけはライブで外せない」という曲がとてもたくさんあるので、そこに新曲をどう入れていくか、それが本当に難しくて。ライブって本当に一期一会だから、その日しか会えないかもしれないみなさんが聴きたい曲をやりたいという気持ちが強いんです。でも今回は、35周年ということに甘えさせてもらって、新曲も多めにやるとは思いますけど、その分、他の楽曲のテンポを少し速くしたりして(笑)、できるだけたくさんの歌を聴いてもらえたらと思っています。
文・取材:布施雄一郎
<作品情報>
BEGIN『太陽』
2025年7月2日(水)発売
【通常盤】CD
品番:AMEJ-1002/価格:3500円(税込)
【初回限定盤】CD、Blu-ray、32Pフォトブック
品番:AMEJ-1001/価格:8800円(税込)
【完全限定生産】CD、Blu-ray、“太陽”オリジナルグッズ(フード付き冷感タオル)
※アスマート限定
品番:AMEJ-1003/価格:10350円(税込)
■CD収録曲(共通)
01. 太陽
02. ほなバイバイ〜大阪マドロス女〜
03. 沖縄Sunshine Day
04. ワイキキシェル
05. 星空の下のRADIO
06. 4匹のチワワ
07. ただ雲になる
08. 開拓者
09. 夜空にブルースを
10. 空気いただきます
11. なんくる君であれ
■Blu-ray収録内容(初回限定版、完全限定生産共通)
・BEGIN35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!!』(3月30日 日本武道館公演)
特典映像
・35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!!』バックステージムービー at 日本武道館
・Album「太陽」ジャケット・ブックレット撮影ドキュメント&メンバートークセッション
・BONUS TRACK - 大阪城ホール公演への感謝を込めて-
35周年記念公演『さにしゃんサンゴSHOW!!』「おつかれさん」「防波堤で見た景色」ライブ映像 at 大阪城ホール
<ライブ情報>
BEGIN「さにしゃんサンゴSHOW!!」 〜35年目の音楽旅団ツアー〜
2025年9月より35公演の全国ホールコンサートツアー開催
特設サイト:https://www.begin1990.com/35show-tour/
2025/07/02


