シンガー・ソングライターの中島みゆきが2024年1月から5月にかけて開催したコンサート「歌会 VOL.1」を映像化したライブBlu-ray/DVD『中島みゆき コンサート「歌会 VOL.1」』が3月12日に発売された。コロナ禍を経て4年ぶりに行われたコンサートには、演者と観客の「待ってたよ。会えて良かったよ」という気持ちがあふれていた。全国各地を回る「ツアー」ではなく、東京・東京国際フォーラム ホールAと大阪・フェスティバルホールの2会場で4ヶ月にわたり「コンサート」という形で16公演が開催された「歌会 VOL.1」について、中島みゆきの音楽プロデューサー・瀬尾一三氏に話を聞いた。
■「歌会 VOL.1」は、ラスト・ツアーの続きであり、新しい物語の始まり
約4年ぶりのコンサートとなった「歌会 VOL.1」。その前のツアーは、2020年に開催されたラスト・ツアー「結果オーライ」だった。この時のツアーに参加した人や後日発売された映像作品を見た人ならご存じかもしれないが、ツアーが始まって早々に新型コロナウィルス感染者の増加により、ツアーが途中で中止となってしまったのである。「ラスト・ツアー」というツアータイトルだったこともあり、もう二度と中島みゆきのライブを生で見ることはできないのではないか、と思った人も多かったのではないだろうか(実際には、各地を回るツアーが最後で、コンサートの終了を意味するものではなかった)。ツアーを“強制終了”させられた中島みゆきをはじめとするアーティスト、スタッフも無念の思いであったという。
それから4年の歳月が流れ、新たな形でのコンサート「歌会 VOL.1」が2024年にスタートした。その時の思いについて瀬尾氏は「『歌会 VOL.1』は、ラスト・ツアー『結果オーライ』の続きであり、新しい物語の始まりでもありました」と語る。
「ラスト・ツアーが中途半端な状態で終わってしまったため、ファンのみなさんも我々も気持ちの整理がつかないまま時間が経ってしまった。その気持ちの整理をつけるために作品(ライブCDアルバム『中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」』)をリリースしましたが、やっぱり頭の片隅に引きずっている部分があって。だから、ラスト・ツアーの最後に歌った「はじめまして」を『歌会 VOL.1』の1曲目に持ってきたんです。こうすることで、ラスト・ツアーの続きでありながら、“新しい物語の始まり”というメッセージを込めることができました」。
久しぶりにコンサートという形で多くのファンと再会することは、「改めて音楽と向き合う場」になったと言う。「これだけの時間が経っても、変わらずに待っていてくれる人がいるということが、どれだけ幸せなことかを再確認しました。コンサートは、演者と観客が一緒に作るものなんです。だから、ステージに立ったときに客席からの熱気を感じた瞬間、4年のブランクなんて関係ないと思いました。むしろ、その時間があったからこそ、より強い絆を感じられたのかもしれません」と、改めてコロナ禍を乗り越えて行われたコンサートの印象を語る。
その一方で、4年間の葛藤についても教えてくれた。
「この4年間で音楽業界の環境も変わりましたし、個人的にも、より一曲一曲に対する向き合い方が変わった気がします。長く活動していると“続けることが目的”のようになってしまう瞬間もあるのですが、時間が空いたことで、『なぜ自分はこの仕事を続けているのか』『音楽を通じて何を伝えたいのか』という根本的な部分を再確認する機会になりました。中島さんもきっと、同じようなことを感じていたんじゃないかと思います」。
その変化を経たからこそ、これまでに何度も演奏してきた楽曲だとしても「違った表現ができるはずだ」と感じていたという。
■音楽舞台『夜会』の世界観をコンサートに取り込み、新たな息吹を与える
そんな中、「歌会 VOL.1」で印象的だったのは、中島みゆきのライフワークの一つ、音楽舞台『夜会』のダイジェストメドレーである。瀬尾氏も「夜会のエッセンスをどう取り入れるかは、かなり考えました」と語る。
「『夜会』はストーリー仕立てになっているので、単にヒット曲を並べるのではなく、楽曲同士のつながりを意識して仕上げました。舞台演出にも夜会の雰囲気を反映させているので、これまで『夜会』を見たことがないというファンの人たちにも『夜会』の雰囲気を感じながら楽しんでもらえる、そういうバランスを意識しました。また、照明や映像の使い方、衣装のデザインなどの細部までこだわって作ったので、『夜会』らしさも感じてもらえたらと思います」。
「歌会 VOL.1」は東京と大阪の2会場で合計16公演を実施。全国各地を回り、少しずつ内容が練りあげられていく「ツアー」とは異なり、特定の会場で行う16公演の「コンサート」は、取り組み方にも違いがあったようだ。
「今回のコンサートは、これまでのツアーのように回数を重ねるごとに成熟していくという調整ができないので、最初から完成度の高いものを作る必要がありました。そのため、リハーサルには通常よりも多くの時間を割いています。もちろん、中島さんをはじめ、スタッフやバンドメンバーはベテラン揃いなので、ある程度のものは言わなくてもできる状態ではありますが、“1回1回のコンサートが初日であり集大成である”、そんな意識で取り組んでいました。みんなが一丸となって前に進めたのは大きかったと思います」
集大成という言葉通り「歌会 VOL.1」では、1970年代に発表された「店の名はライフ」から最新シングル「心音(しんおん)」まで、時代を超えた名曲の数々が披露された。まさに、ラスト・ツアー「結果オーライ」の続きであり、新しい物語の始まりを象徴するコンサートだったのだ。
ライブ映像の最後で最高の笑顔を見せた瀬尾氏に、その時の気持ちを聞くと、「ステージを観に来てくれたお客様への感謝の気持ちと、4年ぶりにファンの人と会えてすごく満足度が高かったのかもしれませんね。僕は、お客様に背中を向けて(指揮をして)いるので表情は見えないかもしれないですが、ステージではいろんな表情をしているんですよ」と照れながら語ってくれた。
ライブ映像では、中島みゆきの細かな表情や歌唱、メンバーやスタッフとの阿吽の呼吸ともいえるステージワークが、メイキング映像を合わせて隅々まで楽しめる。ライブCDには、中島みゆき本人がセレクトした珠玉の11曲を収録。コンサート会場のセンター席で中島みゆきの音楽を独り占めしているような、そんなぜいたくな気分をぜひ味わってみてほしい。
文・ちはらみどり
■瀬尾一三氏プロフィール
1947年9月30日生まれ。兵庫県出身。音楽プロデューサー、編曲家、作曲家。
1969年フォークグループ「愚」として活動。73年にソロシンガーとしてアルバム『獏』をリリース。同年に『LIVE’73』を吉田拓郎と共同プロデュース。その後、中島みゆきをはじめ、吉田拓郎、長渕剛、徳永英明(※「徳」=旧字体)など、日本のポップス、ロックシーンの黎明期から現在まで、アーティストたちの作品のアレンジ(編曲)やプロデュースを手がけ、中島みゆきにおいてはコンサート『夜会』『夜会工場』の音楽プロデュースも務めている。
【作品情報】
『中島みゆき コンサート「歌会 VOL.1」』初回盤(2枚組)
発売日:2025年3月12日
■Blu-ray
品番:YCXW-10030〜1/価格10,000円(税込)
■DVD
品番:YCBW-10109〜10/価格9,000円(税込)
『中島みゆき コンサート「歌会 VOL.1」』通常盤(1枚組)
■Blu-ray
品番:YCXW-10032/価格8,800円(税込)
■DVD
品番:YCBW-10111/価格7,700円(税込)
収録曲(共通)
【Disc 1】
01. はじめまして
02. 歌うことが許されなければ
03. 倶(とも)に
04. 病院童(びょういんわらし)
05. 銀の龍の背に乗って
06. 店の名はライフ
07. LADY JANE
08. 愛だけを残せ
09. ミラージュ・ホテル
10. 百九番目(ひゃくきゅうばんめ)の除夜(じょや)の鐘(かね)
11. 紅い河
12. 命のリレー
13. リトル・トーキョー
14. 慕情
15. 体温
16. ひまわり“SUNWARD”
17. 心音(しんおん)
18. 野ウサギのように
19. 地上の星
【Disc 2】(初回盤ボーナスDisc)
『中島みゆき コンサート 「歌会 VOL.1」 16/16+ 』
コンサート・ドキュメンタリー映像
『中島みゆき コンサート「歌会 VOL.1」-LIVE SELECTION-』
発売日:2025年3月12日
品番:YCCW-10427/価格3,300円(税込)
収録曲
01. 倶(とも)に
02. 病院童(びょういんわらし)
03. 銀の龍の背に乗って
04. LADY JANE
05. 愛だけを残せ
06. リトル・トーキョー
07. 慕情
08. 体温
09. ひまわり“SUNWARD”
10. 心音(しんおん)
11. 地上の星
■「歌会 VOL.1」は、ラスト・ツアーの続きであり、新しい物語の始まり
約4年ぶりのコンサートとなった「歌会 VOL.1」。その前のツアーは、2020年に開催されたラスト・ツアー「結果オーライ」だった。この時のツアーに参加した人や後日発売された映像作品を見た人ならご存じかもしれないが、ツアーが始まって早々に新型コロナウィルス感染者の増加により、ツアーが途中で中止となってしまったのである。「ラスト・ツアー」というツアータイトルだったこともあり、もう二度と中島みゆきのライブを生で見ることはできないのではないか、と思った人も多かったのではないだろうか(実際には、各地を回るツアーが最後で、コンサートの終了を意味するものではなかった)。ツアーを“強制終了”させられた中島みゆきをはじめとするアーティスト、スタッフも無念の思いであったという。
「ラスト・ツアーが中途半端な状態で終わってしまったため、ファンのみなさんも我々も気持ちの整理がつかないまま時間が経ってしまった。その気持ちの整理をつけるために作品(ライブCDアルバム『中島みゆき 2020 ラスト・ツアー「結果オーライ」』)をリリースしましたが、やっぱり頭の片隅に引きずっている部分があって。だから、ラスト・ツアーの最後に歌った「はじめまして」を『歌会 VOL.1』の1曲目に持ってきたんです。こうすることで、ラスト・ツアーの続きでありながら、“新しい物語の始まり”というメッセージを込めることができました」。
久しぶりにコンサートという形で多くのファンと再会することは、「改めて音楽と向き合う場」になったと言う。「これだけの時間が経っても、変わらずに待っていてくれる人がいるということが、どれだけ幸せなことかを再確認しました。コンサートは、演者と観客が一緒に作るものなんです。だから、ステージに立ったときに客席からの熱気を感じた瞬間、4年のブランクなんて関係ないと思いました。むしろ、その時間があったからこそ、より強い絆を感じられたのかもしれません」と、改めてコロナ禍を乗り越えて行われたコンサートの印象を語る。
その一方で、4年間の葛藤についても教えてくれた。
「この4年間で音楽業界の環境も変わりましたし、個人的にも、より一曲一曲に対する向き合い方が変わった気がします。長く活動していると“続けることが目的”のようになってしまう瞬間もあるのですが、時間が空いたことで、『なぜ自分はこの仕事を続けているのか』『音楽を通じて何を伝えたいのか』という根本的な部分を再確認する機会になりました。中島さんもきっと、同じようなことを感じていたんじゃないかと思います」。
その変化を経たからこそ、これまでに何度も演奏してきた楽曲だとしても「違った表現ができるはずだ」と感じていたという。
■音楽舞台『夜会』の世界観をコンサートに取り込み、新たな息吹を与える
そんな中、「歌会 VOL.1」で印象的だったのは、中島みゆきのライフワークの一つ、音楽舞台『夜会』のダイジェストメドレーである。瀬尾氏も「夜会のエッセンスをどう取り入れるかは、かなり考えました」と語る。
「『夜会』はストーリー仕立てになっているので、単にヒット曲を並べるのではなく、楽曲同士のつながりを意識して仕上げました。舞台演出にも夜会の雰囲気を反映させているので、これまで『夜会』を見たことがないというファンの人たちにも『夜会』の雰囲気を感じながら楽しんでもらえる、そういうバランスを意識しました。また、照明や映像の使い方、衣装のデザインなどの細部までこだわって作ったので、『夜会』らしさも感じてもらえたらと思います」。
「歌会 VOL.1」は東京と大阪の2会場で合計16公演を実施。全国各地を回り、少しずつ内容が練りあげられていく「ツアー」とは異なり、特定の会場で行う16公演の「コンサート」は、取り組み方にも違いがあったようだ。
「今回のコンサートは、これまでのツアーのように回数を重ねるごとに成熟していくという調整ができないので、最初から完成度の高いものを作る必要がありました。そのため、リハーサルには通常よりも多くの時間を割いています。もちろん、中島さんをはじめ、スタッフやバンドメンバーはベテラン揃いなので、ある程度のものは言わなくてもできる状態ではありますが、“1回1回のコンサートが初日であり集大成である”、そんな意識で取り組んでいました。みんなが一丸となって前に進めたのは大きかったと思います」
集大成という言葉通り「歌会 VOL.1」では、1970年代に発表された「店の名はライフ」から最新シングル「心音(しんおん)」まで、時代を超えた名曲の数々が披露された。まさに、ラスト・ツアー「結果オーライ」の続きであり、新しい物語の始まりを象徴するコンサートだったのだ。
ライブ映像の最後で最高の笑顔を見せた瀬尾氏に、その時の気持ちを聞くと、「ステージを観に来てくれたお客様への感謝の気持ちと、4年ぶりにファンの人と会えてすごく満足度が高かったのかもしれませんね。僕は、お客様に背中を向けて(指揮をして)いるので表情は見えないかもしれないですが、ステージではいろんな表情をしているんですよ」と照れながら語ってくれた。
ライブ映像では、中島みゆきの細かな表情や歌唱、メンバーやスタッフとの阿吽の呼吸ともいえるステージワークが、メイキング映像を合わせて隅々まで楽しめる。ライブCDには、中島みゆき本人がセレクトした珠玉の11曲を収録。コンサート会場のセンター席で中島みゆきの音楽を独り占めしているような、そんなぜいたくな気分をぜひ味わってみてほしい。
文・ちはらみどり
■瀬尾一三氏プロフィール
1947年9月30日生まれ。兵庫県出身。音楽プロデューサー、編曲家、作曲家。
1969年フォークグループ「愚」として活動。73年にソロシンガーとしてアルバム『獏』をリリース。同年に『LIVE’73』を吉田拓郎と共同プロデュース。その後、中島みゆきをはじめ、吉田拓郎、長渕剛、徳永英明(※「徳」=旧字体)など、日本のポップス、ロックシーンの黎明期から現在まで、アーティストたちの作品のアレンジ(編曲)やプロデュースを手がけ、中島みゆきにおいてはコンサート『夜会』『夜会工場』の音楽プロデュースも務めている。
【作品情報】
『中島みゆき コンサート「歌会 VOL.1」』初回盤(2枚組)
発売日:2025年3月12日
■Blu-ray
品番:YCXW-10030〜1/価格10,000円(税込)
■DVD
品番:YCBW-10109〜10/価格9,000円(税込)
『中島みゆき コンサート「歌会 VOL.1」』通常盤(1枚組)
■Blu-ray
品番:YCXW-10032/価格8,800円(税込)
■DVD
品番:YCBW-10111/価格7,700円(税込)
収録曲(共通)
【Disc 1】
01. はじめまして
02. 歌うことが許されなければ
03. 倶(とも)に
04. 病院童(びょういんわらし)
05. 銀の龍の背に乗って
06. 店の名はライフ
07. LADY JANE
08. 愛だけを残せ
09. ミラージュ・ホテル
10. 百九番目(ひゃくきゅうばんめ)の除夜(じょや)の鐘(かね)
11. 紅い河
12. 命のリレー
13. リトル・トーキョー
14. 慕情
15. 体温
16. ひまわり“SUNWARD”
17. 心音(しんおん)
18. 野ウサギのように
19. 地上の星
【Disc 2】(初回盤ボーナスDisc)
『中島みゆき コンサート 「歌会 VOL.1」 16/16+ 』
コンサート・ドキュメンタリー映像
『中島みゆき コンサート「歌会 VOL.1」-LIVE SELECTION-』
発売日:2025年3月12日
品番:YCCW-10427/価格3,300円(税込)
収録曲
01. 倶(とも)に
02. 病院童(びょういんわらし)
03. 銀の龍の背に乗って
04. LADY JANE
05. 愛だけを残せ
06. リトル・トーキョー
07. 慕情
08. 体温
09. ひまわり“SUNWARD”
10. 心音(しんおん)
11. 地上の星
2025/03/12




