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【ライブレポート】稲葉浩志、圧倒的な歌唱力と表現力で観客を魅了 ソロライブだからこそ味わえるありのままの魅力

 ソロ名義としては10年ぶりとなる6枚目のアルバム『只者』を6月26日にリリースした稲葉浩志が全国アリーナツアー『Koshi Inaba LIVE 2024 〜enIV〜』を実施。全17公演中、折り返し地点となる9公演目が、7月20日Kアリーナ横浜で開催された。

稲葉浩志『Koshi Inaba LIVE 2024 〜enIV〜』

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■力強さと妖艶さ 変幻自在に操る表現力

 誰もが知るロックバンドB'zのボーカリスト、稲葉浩志。1988年のデビュー以降、日本のロック/ポップス史に燦然と輝く名曲たちを歌い、ランキングや売り上げといった数字においても数々の記録を打ち立ててきたことは今さら説明の必要はないだろう。そんな彼が、B'zのフロントマンとはまた別の人格として、「何者でもないひとりの人間」が日々を過ごす中で出会う、何気ない情景や遍在的な苦悩や葛藤を歌った作品が、最新作『只者』だ。

 もちろんリスナーからすれば、稲葉が只者であろうわけがない。圧倒的な歌唱力と声量。アスリートのごとくストイックに音楽と向き合う姿勢。力強さと妖艶さを変幻自在に操る表現力。威風堂々さと謙虚さを持ち合わせながら、熱量の高いパフォーマンスの狭間に一瞬見せるチャーミングさ。改めて言うまでもなく、彼ほどスペシャルなアーティストは、そうはいない。しかしだからこそ、大半の人々が日々の生活の中で気づかずに通り過ぎてしまったり、見逃してしまったりするような感情の機微を、歌詞とメロディという形で表現することができるのだ。そんな誰しもが経験する、日常のドラマが収められたアルバムが『只者』であり、それをフィーチャーした今回の全国アリーナツアーは、一方でまるで只者ではない、圧巻の歌と圧倒的なバンドサウンドで、聴く者を圧倒した。

稲葉浩志『Koshi Inaba LIVE 2024 〜enIV〜』

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 オープニング。会場が暗転すると、赤い光で縁取られたステージに、重厚なリズムと、アルバム音源には入っていなかったピアノのフレーズが鳴り響く。そしてステージに姿を現した稲葉が歌い始めたのは、新曲「NOW」。

 激動の時代だからこそ、“今”がすべてであると歌い終えた稲葉が、「みなさん、こんばんは! ようこそいらっしゃい!」と明るく声を発すると、ハードロック感を増し、久々のツアー参加となったShane Gaalaas(Dr)のラウドなビートが下っ腹に食い込んでくる「マイミライ」、そこから間髪入れずに始まった徳永暁人(Ba)の激しいベースソロで「BANTAM」へ。曲の間奏で、稲葉はステージに寝転がり、そのまま手足を動かす。それをステージ天井のカメラで撮ると、床面LEDビジョンの映像を背景に、まるで稲葉が空中遊泳をしているかのような幻想的なシーンがステージ奥の大型LEDビジョンに映し出された。そしてラスト、超絶なハイトーン・シャウトで曲を締め括る。

「外は暑かったでしょ? すみませんね、本当に。でもみなさん、この会場に足を運んでいただいたからには、一番上の隅の席から前の隅の席まで、ここに集まってくれたみなさんが帰る時に、ちょっとHappyになって帰ってもらえるように、我々全員、力を尽くして、愛を込めて、歌って、演奏したいと思います。ゆっくり、たっぷり、楽しんでいってください!」

 MCを挟んで、Sam Pomanti(key)がオルガンを奏でると、マラカスを手にした稲葉の背景をミラーボールの映像が煌めき、ワウを効かせたDuran(G)のフレーズが印象的な「くちびる」、不穏なコード進行の中で稲葉のシャウトとギターがハイトーンの“狂演”を繰り広げた「念書」、そこから一転、ストリングスのピチカートが心地よく響く穏やかなバラード「シャッター」と、ミディアムロックの「Golden Road」へ曲が続く。

稲葉浩志『Koshi Inaba LIVE 2024 〜enIV〜』

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 ここで再びMCとなり、自身初となるKアリーナ横浜について、上方まで客席がそびえ立つような造りに「高っ!」と驚きの声を上げながら、新譜について短く語る。

「つい先日、10年ぶりとなるソロアルバムが発売になりました。久しぶりに、時間に追われることもなく、ゆっくりと(曲のアイデアが)コップを満たしていくような感覚があって、それをひとつずつ形にしていきました。ですからみなさんも、焦ることなく、みなさんの生活の中で聴いてもらえると嬉しいなと思います」

 ここから、アルバム同様に歪んだラジオボイスの歌声で始まった「ブラックホール」、この時点では未発表であったミュージックビデオ映像も披露した「Chateau Blanc」、火の粉の映像とステージ前方のリアルな炎の狭間で、圧倒的な歌唱力を魅せた「我が魂の羅針」と新曲が続く。そして、アコースティックギターを手にした稲葉は、「新曲なので馴染みがないでしょうが、簡単なメロディラインなので、歌えるかなと感じた方は、音が外れようが構いませんので、どうぞ一緒に歌ってください」と、観客の歌声を誘いながら、アルバムではアウトロに入っている「VIVA!」のスキャットをバンドメンバーと笑顔でハモリ始める。

 この曲に続いて、曲の前半をアコースティックギターの弾き語り調で歌い上げた「あの命この命」、柔らかいピアノの音色をバックに歌詞の世界観をドラマチックに歌で表現した「空夢」。この2曲は、まさしく彼の歌の魅力に会場全体が、静かに、そして熱く包み込まれた瞬間だった。それはある意味で、“稲葉浩志”というソロアーティストの人格そのものの表現であり、B'zライブとはまた違う、ソロライブだからこそ味わえる稲葉の奥深い表現だと言えよう。

稲葉浩志『Koshi Inaba LIVE 2024 〜enIV〜』

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■歌う歓び、音を鳴らす楽しさ 観客とともに共有できる幸せ

 ここからはライブも後半戦。「oh oh!」のコール&レスポンスから始まった「oh my love」に続いて、バンドセッションから衣装替えをした稲葉が再登場しての「Stray Hearts」、「声を聴かせてくださいよ!」という彼のかけ声で大合唱ロックとなった「Seno de Revolution」、バンドメンバーの顔がスロットのように組み合わさって映し出されたユニークな映像がインパクト大の「CHAIN」、ダンサブルなロック「羽」、アルバムタイトルにある「只」の文字のようにステージから左右に2本伸びた花道を行き来しながら歌った「YELLOW」と、ライブならではの目と耳を刺激するパフォーマンスを畳みかけていく。その間のMCでは、かつて40年ほど前、この会場近くに下宿していたと語り、「まさか、みなとみらいにこんなにビルが立ち並んで、その中のひとつのコンサート会場で私が歌っているなんて(想像できなかった)」と当時を振り返った。

「ちょっとHappyな気持ちになってきたでしょうか? 我々、今日は、下から、正面から、上の方から、そして空の方から、ワーッと歓声を浴びて、ものすごく幸せな“元気”をいただきました。本当に集まってくれて、本当に嬉しいです。幸せです」

 こう語ると、宇宙をイメージさせる映像をバックに本編ラストとなる「Starchaser」を歌い終えた稲葉は、最後に会場全体を見渡して、笑みを浮かべ「横浜! 最高でした、ありがとうございます!」とステージを後にした。

稲葉浩志『Koshi Inaba LIVE 2024 〜enIV〜』

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 とにかく、この日のライブを観て強く印象に残ったことは、誰よりも稲葉本人が、心からバンド、そしてライブを楽しんでいる姿だった。誤解のないように断っておくと、B'zのライブと比べてどうこうと言っているのではない。ソロライブならではの、ミュージシャンとしてよりプリミティブな歓びに満たされる楽しさというものは、おそらくB'zというモンスターバンドの看板を背負いながらロックスター然として歌うライブの充実感、満足感とは、また種類の違う快楽なのだろう。そういう意味で、極めてシンプルに、歌う歓び、仲間と音を鳴らす楽しさ、それを観客と共有できる幸せを、彼は実にピュアな気持ちで満喫しているように見えた。

 もっと言えば、おそらく彼自身、自分のソロライブという感覚よりも、5人組の「稲葉浩志」というバンドのライブをやっているような感覚だったのではないだろうか。それはきっとサポートメンバーも同様だっただろう。だからこそ生まれた、観客の下っ腹に食いこんでくるような大迫力のバンドサウンド。だが、それを生み出したのは、観客の歓声があったからこそだと稲葉は語った。

「今日のKアリーナ横浜、まさに“浴びる”という言葉が相応しいような声援を浴びまくって、それが我々(メンバー)のエネルギーになって、また演奏し、歌を届けるという、浴びては歌い、浴びては歌いという幸せの連鎖でした。歌い始めて随分と経ちますが、ずっとやり続けることで、初めての会場で素敵なみなさんと出会えて、素敵な声援を浴びながら音楽ができるという、そんなすごいことを今日、改めて感じることができました。みなさん、暑い中、大事な時間を割いてKアリーナに足を運んでくれたこと、感謝しています」

 アンコールで「気分はI am All Yours」「遠くまで」を歌い終えた稲葉はこうMCをすると、ひと際大きな声で、「Thak you YOKOHAMA!」とシャウトし、この日一番の大歓声を浴びながら最後の曲「Okay」で、この日のライブを終えた。

 音楽を奏でることや、楽器を演奏することを英語で表現する際、「play」という単語が使われるが、まさに音楽を楽しむ、楽器(バンド)で遊ぶといった心持ちを体現していたかのようなステージ。それに対する、Kアリーナを埋め尽くした観客の歓声を、稲葉は「上から雨が降ってくるかのような歓声、下から湧き上がるような歓声、正面からぶん殴られるかのような歓声」と表現した。まさしく、バンドサウンドと歓声の音楽的なコール&レスポンス。それを幸せと感じる稲葉と、そんな姿を観て幸せを感じる満員のファン。稲葉は、何度も何度も観客への感謝の念と「幸せ」という言葉を繰り返したが、それは観客も同じ気持ちだっただろう。それこそが“今”を大切に生きるということなのだ。ライブを観終えて、オープニング曲の歌詞を改めて反芻し、そしてもう一度、この日に歌われたすべての曲の稲葉の歌声を噛みしめたくなる、そんな一日だった。

文・布施雄一郎

稲葉浩志『Koshi Inaba LIVE 2024 〜enIV〜』

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稲葉浩志『Koshi Inaba LIVE 2024 〜enIV〜』
2024年7月20日(土)Kアリーナ横浜

■SET LIST
01. NOW
02. マイミライ
03. BANTAM
04. くちびる
05. 念書
06. シャッター
07. Golden Road
08. ブラックホール
09. Chateau Blanc
10. 我が魂の羅針
11. VIVA!
12. あの命この命
13. 空夢
14. oh my love
15. Stray Hearts
16. Seno de Revolution
17. CHAIN
18. 羽
19. YELLOW
20. Starchaser
encore
21. 気分はI am All Yours
22. 遠くまで
23. Okay
※※曲名「Seno de Revolution」の「Seno」の「e」はアルファベットの「e」の上に「〜」が正式表記
■稲葉浩志 Official Website「en-zine」:https://en-zine.jp/pc/index.html

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