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さだまさしのトリビュート・アルバム『みんなのさだ』が伝える音楽とメッセージの力

 10月25日にレコード・デビュー50周年を迎えたさだまさし。今年2月にグレープとして50周年記念アルバム『グレープセンセーション』をリリースし、そのわずか4ヶ月後の6月14日には、50周年記念オリジナルアルバム『なつかしい未来』を発売。50周年記念イベントを挟みながら春秋のツアーを続行し、その合間にラジオやテレビのレギュラーをこなすなど、70歳を超えてもますます精力的な動きを続けている。

レコード・デビュー50周年を迎えたさだまさし

レコード・デビュー50周年を迎えたさだまさし

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■14組のアーティストがさだまさし楽曲に挑戦

 そこに飛び込んできたのが、10月25日にアルバム発売のニュース。一体どれだけ超人なんだ!と驚いたが、新作アルバム『みんなのさだ』は、なんとトリビュート・アルバムだった。なるほど、2枚のオリジナルアルバムで今の自分の想いを表現し、50周年の仕上げは、他のミュージシャン達が外側から見て感じたさだまさし楽曲の姿。しかも同世代ではなく、子や孫ほども年の離れたミュージシャン達から見た楽曲の姿で、50年の間に大きくなったさだまさしという人物を、そしてその人物が生み出した楽曲を改めて見つめ直してみることだったということか。

 トリビュート・アルバムは15年前にも発売されている。デビュー35周年の2008年10月22日に発売された『さだのうた』だ。このアルバムには全10組が参加。BEGINTHE ALFEE森山直太朗平原綾香ら、さだ組といえるアーティストが結集し話題になった。とくにアマチュア時代からさだの音楽に影響を受け、さだまさしにロックを感じていたTHE ALFEE高見沢俊彦アレンジの「まほろば」、ステージでの人気トークを立川談春が落語にしたトークトリビュート「父さんとポチ」は大きな注目を集め、オリコン週間アルバムランキングで最高順位20位を記録するヒットとなった。

 今回のトリビュート・アルバムを企画したのは音楽プロデューサーの寺岡呼人氏。さだからは「俺は何も口出ししない。好きに料理してくれ」との一言だけで、すべてを委ねられたという。指示なしで委ねられた寺岡氏には相当なプレッシャーがかかっての人選であり曲選びだったのではないかと思うが、そのプレッシャーをはねのけるように、「さださん世代の一世代、二世代下のミュージシャンによる新しい解釈のトリビュート・アルバム」(寺岡氏)を作りあげた。

 参加するアーティストは全14組。人選は大変バラエティに富んでおり、それぞれがさだと何らかの縁を持つ。同郷長崎の後輩、ドラマの共演者、所属レーベルの仲間たち、フェスで一緒になった新人、などなど。ただ、同世代のアーティストはラインナップに入っておらず、意外性のあるアーティスト、注目の若手アーティストが多数参加しているのが、このトリビュート・アルバムの特徴だ。

参加全アーティストは全14組。右下は音楽プロデューサーの寺岡呼人氏

参加全アーティストは全14組。右下は音楽プロデューサーの寺岡呼人氏

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■音作りから感じられるリスペクトの心

 収録されているアーティストと楽曲に目を向けてみると…。

 ゆずは「道化師のソネット」を歌った。さだのゆるやかに天に向けて声を広げていくような優しい表現ではなく、「栄光の架橋」を想起させるようなフォークデュオならではのスケール感をこの曲にもたらした。

 槇原敬之は「案山子」を選んだ。カントリー調の温かなアレンジに乗せほのぼのと歌う。前作トリビュートではBEGINがこの曲を歌った。どちらもこの曲にぴったりの人選で思わず笑みがこぼれてしまう。

 上白石萌音はドラマで共演した縁で参加した。歌うのは「大好きな、偉大な曲」という「秋桜」。ピアノと弦がフューチャーされたアレンジに乗せてしっとりと歌った。

 三浦大知は「風に立つライオン」を自ら選んだ。世界の人々が平和であれと願い続けるさだが、アフリカの人々のために医療派遣の道を歩んだ日本人医師をテーマとして作った壮大なスケールの作品。三浦は「生半可な気持ちでは歌えない。新たな表現を生み出せたら」と思い切ったチャレンジを行った。アフリカの大地を空から見るようなスケール感が特徴だったオリジナルに対して、アフリカの大地を自らの足で踏みしめ歩くようなアレンジの作品に仕上げた。

 驚くのは「新約『償い』」だ。歌うのは若手ラップグループのMOROHA。友人の目から見た交通事故の加害者の心情を切々と歌い、その贖罪への物語が日本中で感動を呼んだのがオリジナルの「償い」だが、MOROHAは“贖罪の心と許し”というテーマは変えずに、コロナ禍の家庭内クラスター感染を題材にまったく新たな物語を作りあげた。なるほど、トークのトリビュートがあるならテーマのトリビュートがあってもいい。そんな自由さの中にさだに対するリスペクトの心があふれた作品を作り上げたのだ。

 他の作品もリスペクトの心が、その音作りから感じられる。

 同郷の福山雅治は弾き語りで丁寧に「雨やどり」を歌い、葉加瀬太郎はオーケストラの壮大なアレンジに乗せて「北の国から〜遥かなる大地より〜」をヴァイオリン演奏し、折坂悠太は軽快に「主人公」を、高橋優はむせび泣くギターをバックに「精霊流し」を、wacciはほんわかと「関白宣言」を、木村カエラは原曲の世界観を大事にしながら激しく「修二会」を、T字路sはストレートに「まほろば」を、琴音は自らの声を重ねて「防人の詩」を、そして最後に同郷MISIAは朗々と「虹〜ヒーロー〜」を歌い上げる。ファンにとっては、次にどんなアーティストがどんな表現をしてくれるのか、最後まで楽しみなアルバムになっているといえよう。

 さだが1987年から20年間、故郷長崎で広島原爆の日に無料開催していたのが平和祈念コンサート「夏 長崎から」だった。そこにゲスト出演したBEGINは、志を継いで、沖縄戦終戦の日に近い週末に沖縄で「うたの日コンサート」を2001年から開催。今でも毎年続けている。それと同様に、今回参加したアーティストそれぞれが、さだまさしをリスペクトし、各々の担当作品に取り組んだことをきっかけに、長年にわたって発信してきた平和への想いを次の時代へと引き継いでくれればと思う。実は、それこそがさだまさしがこのトリビュート・アルバムに期待するところではないだろうかとも思う。

『みんなのさだ』、このアルバムに託されたものは、実はとても大きい。

文・垂石克哉

<リリース情報>
デビュー50周年記念トリビュート・アルバム
『みんなのさだ』
2023年10月25日発売
VICL-65891/3850円(税込)

デビュー50周年記念トリビュート・アルバム『みんなのさだ』

デビュー50周年記念トリビュート・アルバム『みんなのさだ』

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<収録曲>
01.道化師のソネット / ゆず
02.案山子 / 槇原敬之
03.秋桜 / 上白石萌音
04.風に立つライオン / 三浦大知
05.雨やどり / 福山雅治
06.精霊流し / 高橋優
07.主人公 / 折坂悠太
08.修二会 / 木村カエラ
09.新約「償い」 / MOROHA
10.まほろば / T字路s
11.北の国から〜遙かなる大地より〜 / 葉加瀬太郎
12.関白宣言 / wacci
13.防人の詩 / 琴音
14.虹〜ヒーロー〜 / MISIA

■『みんなのさだ』特設サイト:https://www.jvcmusic.co.jp/sada/
■『さだまさし50th Anniversary コンサートツアー2023 〜なつかしい未来〜』:https://masasingtown.com/contents/feature/50th_anniversary

関連写真

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  • 参加全アーティストは全14組。右下は音楽プロデューサーの寺岡呼人氏
  • デビュー50周年記念トリビュート・アルバム『みんなのさだ』

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