ロックバンド・Hi-STANDARDでメロディックパンクシーンをけん引し、2004年からはKen Yokoyamaとしても絶大な存在感を放ち続けているギタリスト・横山健が、9月26日にGretschから最新シグネチュアモデル「Kenny Falcon II」を発表した。
多くのギタリストに衝撃を与えた初代シグネチュア「Kenny Falcon」発売から8年。「Kenny Falcon Jr.」や「Kenny Wild Penguin」といったモデルも世に放ちつつ、自身もライブで様々なニューモデルを起用し、ギターサウンドの探求を続けていた。
そんな横山が生み出した新シグネチュア「Kenny Falcon II」には、はたしてどのような思い、こだわり、遊び心が宿っているのだろうか。その秘密を解き明かす前に、インタビュー前編となる本記事では、ギタリスト・横山健の“ギターキッズ魂”に迫る。
■横山健のギター熱を“雪だるま式”に高めた箱モノギターとの出会い
――健さんがいわゆる「箱モノ」と呼ばれるセミアコタイプのエレキギターを使い始めたのは2013年でした。
【横山】GibsonのES-335を最初に手にして、家で弾くのが楽しかったんですね。そうなったら、箱モノのもう一方の巨頭であるGretschはどうなんだろうと。それまで触ったことがなかったんで、試しにGretschの代表モデルであるG6120(ブライアン・セッツァー・モデル)を買ってみたんです。
――ソリッドギターだけを弾いてきたギタリストにとって、箱モノは一見扱いにくそうな構造や仕様になっていますから。
【横山】だから正直、最初は人前で弾くためのギターじゃなくて、コレクションの1本として買ってみようと思ったぐらいだったんです。ところが、実際に弾いてみたらものすごい操作性がよかった。それで次にWhite Falcon(G6136)も買って、Gretsch欲が高まっていったんですよ。当時Gretschの日本代理店をしていた会社の担当者とも知り合って、もう…そこから先は雪だるま式(笑)。
――健さんのシグネチュアモデルを作ろうという話のきっかけは?
【横山】たぶん僕から言ったんだと思います。「作れませんか?」って。
――鳴り方もソリッドギターとは違いますよね。ご自身のアンプで、しかも歪みのチャンネルで鳴らしたときの印象は?
【横山】当然ながらソリッドギターとは違うけど、使えるなと。音の帯域が違うから「これはナシ」って思う人もいるかもしれないけど、僕はすごくアリだと感じたんです。Gretschのフルアコをバリバリに歪ませて弾く人もそんなにいないでしょ。どうしても「カントリーやウエスタン、古いロックンロールのためのギター」っていうイメージがあるじゃないですか。それを鬼のように歪ませて弾くという行為がめちゃくちゃ楽しくて(笑)。地方のライブハウスに行ったとき、友達でもあるライブハウスのオーナーがすっ飛んで来ましたよ。「スッゲーな!バカじゃね〜の?(笑)」って。それが10年前の出来事でした。
■衝撃を受けた箱モノならではの“エアー感” その魅力は自身のシグネチュアモデルへ…
――箱モノは構造上、中域の膨らみが豊かな音質特性になりますから、歪ませて弾くとミッドレンジの存在感も際立ってきますか?
【横山】そうですね。ボディーに空気が入から、音が持つエアー感はバカにできない。絶対にソリッドギターでは出せない味が出ますね。それがすごく刺激的でした。
――弾いているとボディー鳴りや響きも体感できますよね。強いピッキングのときはすごく振動しますし、弾き応えもある。
【横山】そう、鳴るんですよ、ホントに。ボディーの裏とかが震えるんです。で、股間にブルル…つって(笑)、その刺激で「生きてる!」って実感が(笑)。でも、震えにくい個体もあるし、逆に鳴りすぎて「ちょっとコントロールしづらいな」って思う人もいるだろうと思うので、一概には言えません。ただ個人的には、もし裏が震えて股間がビリビリと来たら当たりだと思ってほしいです(笑)。
――健さんなりの判断基準も備わった上で、ご自身のシグネチュアモデルを制作する際、重要なポイントとしたのは?
【横山】Gretschは現在140年、僕が初めてシグネチュアモデルを制作した時点でも130年もの伝統があるブランドで、「伝統と関わるんだ」というのはすごく意識しました。面白いこともしたいけど、まずは伝統の一部になることを…と。僕はすでにエキセントリックな使い方をしていたので、見た目は真っ当にカッコいいものを作ろうと思っていました。
――結果、誕生したのがKenny Falconというモデルでした。
【横山】カラーバリエーションがそんなになかったFalconに、Country Club(G6196)という機種で広く認知されているキャデラックグリーンという色をぶち込んじゃおうと。ちょっとした冒険心で収めました。それで伝統の一部になってみようと。
――往年のGretschファンからも認められるモデルにしようと?
【横山】それはもちろん。ただ、当時はちょっと悩みました。「キャデラックグリーンはFalconの色じゃない」って言われるかもな…とか。僕は昔から「守破離」という言葉がすごく好きなんですよ。日本の武道の言葉で、「伝統を守って、破って、そこから離れた新境地へ行く」という修行の過程を伝えているんですが、Gretschのような伝統のあるブランドと関わるときも、そのやり方が一番正しいんじゃないかなと思ったんですね。なので、新しいモデルを作る上でチャレンジはするけど、しっかりと伝統の一部にもなろうと。
■「こういう世界もあるよ」――レジェンドが僕らに伝えるギターの面白さ
――Kenny Falconは健さんのファンにもすっかり浸透しましたね。
【横山】もともとのGretschファンの方がどう思ったかは正直分からないんですよ。「こういうのが出てくるのはイヤだな」って思った人もいたかもしれない。でも、Gretschのことをあまり知らなかった人たちに受け取ってもらえたのがうれしかったです。
――ギターを始めようとする若い人にとって、Gretschや箱モノというギターは最初ハードルが高いというか、あまり視界に入りずらいタイプのギターだと思うんです。でも健さんがきっかけとなり、「試しに手に取ってみようかな」と思った人も多いはずです。
【横山】一部でしょうけどね。操作性も良くて現代的なプロダクツのギターを手に取りたくなるものだと思うんです。ただ、「こういう世界もあるよ」って提示するのとしないのとでは、大きな差かなと思っています。
――Kenny Falconをはじめ、現在までにリリースしたシグネチュアモデルは、すべて股間まで響くボディー鳴りをするのですか?
【横山】シグネチュアモデルは過去に3機種(Kenny Falcon、Kenny Falcon Jr.、Kenny Wild Penguin)出していて。Penguinはチェンバード構造ではあるけど基本的にソリッドボディーなので、あまり股間には来ない。でも、ほかの2本はバッチリ来ますね(笑)。
――きょう一番の笑顔で話すじゃないですか(笑)。
【横山】ハハハ(笑)。実は今、Penguinがちょっとスネていて、最近あんまりいい音を出してくれないんです。ギターって面白いんですよ。しばらく弾かずにいたとき、突然弾いてやると「ここを逃したらいけない」ってぐらいに思いっきり鳴るギターもいるし、逆に「ずっと弾いてくれなかったくせに」ってスネるギターもいる。…今、ちょっと頭のおかしいことを言い始めたとか思われていません?(笑)
――ギタープレイヤーならわかる話です。ギターごとに個性、その日の機嫌が確実にありますから。
【横山】そうそう、ギターにも絶対にバイオリズムってあるんですよね。もともと木で作られているから季節の影響もすごく受けるし。僕はギターをたくさん持っているので、久しぶりにコイツを弾こうってなったとき、最初はそのギターのご機嫌をすごくうかがいます。そういう人間味があるところも面白いんですよ。
――健さんが過去に発表したシグネチュアモデルは、それぞれのシェイプやモデル名などGretschの伝統を重んじていますね。
【横山】「守破離」の「守」なんです。「守」の中で、「横山健のシグネチュアだよ」という主張をKenny Falcon Jr.でもKenny Wild Penguinでも少しだけ入れさせてもらいました。カラーリングであったり、ちょっとした遊び心であったり。そして今回、新たに市販されるKenny Falcon IIは、「守破離」で言うと「破」の段階に行ったんじゃないかなと思っています。
文:長谷川幸信
写真:岡本麻衣(ODD JOB)
多くのギタリストに衝撃を与えた初代シグネチュア「Kenny Falcon」発売から8年。「Kenny Falcon Jr.」や「Kenny Wild Penguin」といったモデルも世に放ちつつ、自身もライブで様々なニューモデルを起用し、ギターサウンドの探求を続けていた。
そんな横山が生み出した新シグネチュア「Kenny Falcon II」には、はたしてどのような思い、こだわり、遊び心が宿っているのだろうか。その秘密を解き明かす前に、インタビュー前編となる本記事では、ギタリスト・横山健の“ギターキッズ魂”に迫る。
――健さんがいわゆる「箱モノ」と呼ばれるセミアコタイプのエレキギターを使い始めたのは2013年でした。
【横山】GibsonのES-335を最初に手にして、家で弾くのが楽しかったんですね。そうなったら、箱モノのもう一方の巨頭であるGretschはどうなんだろうと。それまで触ったことがなかったんで、試しにGretschの代表モデルであるG6120(ブライアン・セッツァー・モデル)を買ってみたんです。
――ソリッドギターだけを弾いてきたギタリストにとって、箱モノは一見扱いにくそうな構造や仕様になっていますから。
【横山】だから正直、最初は人前で弾くためのギターじゃなくて、コレクションの1本として買ってみようと思ったぐらいだったんです。ところが、実際に弾いてみたらものすごい操作性がよかった。それで次にWhite Falcon(G6136)も買って、Gretsch欲が高まっていったんですよ。当時Gretschの日本代理店をしていた会社の担当者とも知り合って、もう…そこから先は雪だるま式(笑)。
――健さんのシグネチュアモデルを作ろうという話のきっかけは?
【横山】たぶん僕から言ったんだと思います。「作れませんか?」って。
――鳴り方もソリッドギターとは違いますよね。ご自身のアンプで、しかも歪みのチャンネルで鳴らしたときの印象は?
【横山】当然ながらソリッドギターとは違うけど、使えるなと。音の帯域が違うから「これはナシ」って思う人もいるかもしれないけど、僕はすごくアリだと感じたんです。Gretschのフルアコをバリバリに歪ませて弾く人もそんなにいないでしょ。どうしても「カントリーやウエスタン、古いロックンロールのためのギター」っていうイメージがあるじゃないですか。それを鬼のように歪ませて弾くという行為がめちゃくちゃ楽しくて(笑)。地方のライブハウスに行ったとき、友達でもあるライブハウスのオーナーがすっ飛んで来ましたよ。「スッゲーな!バカじゃね〜の?(笑)」って。それが10年前の出来事でした。
■衝撃を受けた箱モノならではの“エアー感” その魅力は自身のシグネチュアモデルへ…
――箱モノは構造上、中域の膨らみが豊かな音質特性になりますから、歪ませて弾くとミッドレンジの存在感も際立ってきますか?
【横山】そうですね。ボディーに空気が入から、音が持つエアー感はバカにできない。絶対にソリッドギターでは出せない味が出ますね。それがすごく刺激的でした。
――弾いているとボディー鳴りや響きも体感できますよね。強いピッキングのときはすごく振動しますし、弾き応えもある。
【横山】そう、鳴るんですよ、ホントに。ボディーの裏とかが震えるんです。で、股間にブルル…つって(笑)、その刺激で「生きてる!」って実感が(笑)。でも、震えにくい個体もあるし、逆に鳴りすぎて「ちょっとコントロールしづらいな」って思う人もいるだろうと思うので、一概には言えません。ただ個人的には、もし裏が震えて股間がビリビリと来たら当たりだと思ってほしいです(笑)。
――健さんなりの判断基準も備わった上で、ご自身のシグネチュアモデルを制作する際、重要なポイントとしたのは?
【横山】Gretschは現在140年、僕が初めてシグネチュアモデルを制作した時点でも130年もの伝統があるブランドで、「伝統と関わるんだ」というのはすごく意識しました。面白いこともしたいけど、まずは伝統の一部になることを…と。僕はすでにエキセントリックな使い方をしていたので、見た目は真っ当にカッコいいものを作ろうと思っていました。
――結果、誕生したのがKenny Falconというモデルでした。
【横山】カラーバリエーションがそんなになかったFalconに、Country Club(G6196)という機種で広く認知されているキャデラックグリーンという色をぶち込んじゃおうと。ちょっとした冒険心で収めました。それで伝統の一部になってみようと。
――往年のGretschファンからも認められるモデルにしようと?
【横山】それはもちろん。ただ、当時はちょっと悩みました。「キャデラックグリーンはFalconの色じゃない」って言われるかもな…とか。僕は昔から「守破離」という言葉がすごく好きなんですよ。日本の武道の言葉で、「伝統を守って、破って、そこから離れた新境地へ行く」という修行の過程を伝えているんですが、Gretschのような伝統のあるブランドと関わるときも、そのやり方が一番正しいんじゃないかなと思ったんですね。なので、新しいモデルを作る上でチャレンジはするけど、しっかりと伝統の一部にもなろうと。
■「こういう世界もあるよ」――レジェンドが僕らに伝えるギターの面白さ
――Kenny Falconは健さんのファンにもすっかり浸透しましたね。
【横山】もともとのGretschファンの方がどう思ったかは正直分からないんですよ。「こういうのが出てくるのはイヤだな」って思った人もいたかもしれない。でも、Gretschのことをあまり知らなかった人たちに受け取ってもらえたのがうれしかったです。
――ギターを始めようとする若い人にとって、Gretschや箱モノというギターは最初ハードルが高いというか、あまり視界に入りずらいタイプのギターだと思うんです。でも健さんがきっかけとなり、「試しに手に取ってみようかな」と思った人も多いはずです。
【横山】一部でしょうけどね。操作性も良くて現代的なプロダクツのギターを手に取りたくなるものだと思うんです。ただ、「こういう世界もあるよ」って提示するのとしないのとでは、大きな差かなと思っています。
――Kenny Falconをはじめ、現在までにリリースしたシグネチュアモデルは、すべて股間まで響くボディー鳴りをするのですか?
【横山】シグネチュアモデルは過去に3機種(Kenny Falcon、Kenny Falcon Jr.、Kenny Wild Penguin)出していて。Penguinはチェンバード構造ではあるけど基本的にソリッドボディーなので、あまり股間には来ない。でも、ほかの2本はバッチリ来ますね(笑)。
――きょう一番の笑顔で話すじゃないですか(笑)。
【横山】ハハハ(笑)。実は今、Penguinがちょっとスネていて、最近あんまりいい音を出してくれないんです。ギターって面白いんですよ。しばらく弾かずにいたとき、突然弾いてやると「ここを逃したらいけない」ってぐらいに思いっきり鳴るギターもいるし、逆に「ずっと弾いてくれなかったくせに」ってスネるギターもいる。…今、ちょっと頭のおかしいことを言い始めたとか思われていません?(笑)
――ギタープレイヤーならわかる話です。ギターごとに個性、その日の機嫌が確実にありますから。
【横山】そうそう、ギターにも絶対にバイオリズムってあるんですよね。もともと木で作られているから季節の影響もすごく受けるし。僕はギターをたくさん持っているので、久しぶりにコイツを弾こうってなったとき、最初はそのギターのご機嫌をすごくうかがいます。そういう人間味があるところも面白いんですよ。
――健さんが過去に発表したシグネチュアモデルは、それぞれのシェイプやモデル名などGretschの伝統を重んじていますね。
【横山】「守破離」の「守」なんです。「守」の中で、「横山健のシグネチュアだよ」という主張をKenny Falcon Jr.でもKenny Wild Penguinでも少しだけ入れさせてもらいました。カラーリングであったり、ちょっとした遊び心であったり。そして今回、新たに市販されるKenny Falcon IIは、「守破離」で言うと「破」の段階に行ったんじゃないかなと思っています。
文:長谷川幸信
写真:岡本麻衣(ODD JOB)
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2023/10/16



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