ORICON NEWS

超個性で世界の音楽フェスを席巻する新しい学校のリーダーズ、半端ない訴求力の訳

 今やTikTokやSNSで見かけない日がないほど、新しい学校のリーダーズ人気が広がっている。その勢いは海外にも波及しており、2023年を象徴する存在と言っても過言ではない。どのように彼女たちの人気に火が付いたのか、そしてブレイクまでにどんな取り組みがあったのか、所属事務所であるアソビシステム代表取締役・中川悠介氏に話を聞いた。

破竹の勢いでファンを増やしている新しい学校のリーダーズ  Photo by usami ryo

破竹の勢いでファンを増やしている新しい学校のリーダーズ Photo by usami ryo

写真ページを見る

【写真】その他の写真を見る


■ターニングポイントとなった88risingレーベルとの出会い コロナ禍に「ATARASHII GAKKO!」として世界デビュー

 4人組ダンスボーカルユニット・新しい学校のリーダーズが話題を集めるようになったのは22年秋のこと。イベントで披露した「オトナブルー」の首を横にスライドさせる“首振りダンス”がTikTokで流行り始めたのが始まりだった。それを受けて今年初頭のテレビ番組出演をきっかけに、ストリーミングの再生数が急上昇。関連動画の再生数は4億回を突破し、急きょ同曲のミュージックビデオ(3月16日公開)を制作したことで、いっそう人気に拍車がかかっていった。こうした話題性を起点に、楽曲そのもののユニークさや、セーラー服を衣装にしたキレのあるライブパフォーマンスも評価されるようになり、多くの音楽ファンを魅了することになった。

「実はこの1〜2年の間に、当社所属のバンドKlang Rulerがカバーした「タイミング 〜Timing〜」や、アイドルグループFRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」がTikTokでバズって、ヒットとTikTokが近いものになってきたことを感じていました。新しい学校のリーダーズ人気は、それを改めて痛感するもので、とても今っぽい流れだと思っています。しかもバズった「オトナブルー」は20年にリリースした曲。過去曲であってもヒットする点なども面白いですし、もはやリリース日やデビュー日すら関係ない時代になってきていると感じています」(アソビシステム代表取締役・中川悠介氏/以下同)

新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」(Official Music Video)

新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」(Official Music Video)

写真ページを見る

 15年に結成した新しい学校のリーダーズは、この夏で活動9年目を迎えた。21年1月には、アメリカを拠点にアジアのカルチャーを世界に発信する88risingレーベルから「ATARASHII GAKKO!」として世界デビュー。これが彼女たちの大きなターニングポイントとなった。同レーベルのCEOショーン・ミヤシロ氏は、新しい学校のリーダーズの圧倒的なパフォーマンスに惚れ込んでおり、中川氏は同レーベルとの契約を即決した。

「ロスアンゼルスに行ったのは(20年)2月末。ちょうどコロナ禍に入る直前で、いろんなコンサートが中止になり始めた時期でした。それでもショーンさんに会いに行って、契約書にサインしました。『今しかない』と思ったんです。そこは大きなポイントだったし、彼女たちの活動も含めて、コロナ禍でも止まらずに動き続けたことが結果として良かったのかなと思っています」

■重要なのは好きなことを楽しみながら突き詰めること、コミュニティを繋げること

 コロナ禍という予測不能な事態に見舞われながらも、チャンスを逃さないために常に準備し続けてきた中川氏の決断が功を奏し、新しい学校のリーダーズは翌22年8月にロスアンゼルスで開催された、88rising主催の都市型音楽フェス『Head In The Clouds』、12月には同フェスのインドネシア・ジャカルタ、フィリピン・マニラ公演(12月)に立て続けに出演し、大きな話題をさらう。だが、彼女たちは海外進出のために何か特別なことをやったわけではなく、「本人たちのモチベーションや姿勢は、8年前と何ら変わっていない。それはスタッフサイドも同じ」なのだという。

きゃりーぱみゅぱみゅの時もそうでしたが、海外に合わせるのではなく、日本で今やりたいことをやり続けたことに答えがあるように思います。すでに海外を狙って何かをやるという時代から、国境は関係なく、『良いものは良い』と受け入れてくれる時代に変わりつつある。しかもSNSやストリーミングサービスの盛り上がりで、その傾向が加速しているように思います」

今夏は数々の夏フェスに出演し渾身のパフォーマンスを披露

今夏は数々の夏フェスに出演し渾身のパフォーマンスを披露

写真ページを見る

 SNSで世界各地の出来事をリアルタイムに知ることができる環境で育ってきた若い世代には、「日本だから、海外だからということを意識する人がすごく減ってきている」と中川氏は感じている。だからこそ、相手に合わせて作ったコンテンツで海外進出を狙うのではなく、自分が本当に好きなことを楽しみながら突き詰めていくことで、グローバルに存在する「同じことが好きな人たち」をどう繋げていくかが、とても重要なのだという。そこで、注目しているのが「アジアコミュニティ」だと話を続けた。

「これからは、日本人、韓国人、中国人で括るのではなく、オールアジアとして考える。我々は同じアジア人のコミュニティなのだ、と発想することが大切だと考えています。22年4月に、きゃりーぱみゅぱみゅの『コーチェラ・フェスティバル』出演のために、約1ヶ月ロスアンゼルスに滞在したのですが、その時に、現地の二世、三世のエイジアンアメリカンも含めて、コーチェラの会場に集まった同じルーツや感覚を持つコミュニティの強さを肌で感じると同時に、『日本だから』とそれまで国単位で考えていたことがとても小さなことに思えたのです」

 もちろん日本人ならではの良さや強みは間違いなく存在し、中川氏はそれを「繊細さ」と表現する。新しい学校のリーダーズで言えば、それは自分たちで振り付けを考え個性を大切にしようとする点や、TikTokに日々投稿し続けるという地道なことを継続していける点であり、それが彼女たちの強さにつながっていると言う。

「そうした日本人の良さを生かしながら、『日本から世界に』よりも、アジア人として出ていくことに強さがあるのではと考えています」

個性的で躍動感あふれるステージが魅力 Photo by @estherjy.kim

個性的で躍動感あふれるステージが魅力 Photo by @estherjy.kim

写真ページを見る

■マネジメントに求められるアーティスト特性に合ったヒットのサポート、コラボによるスピードアップ

 アーティストの意識が変われば、その活動をバックアップするマネジメントの考え方や役割にも変化が必要だ。それについては、アーティストの特性に合ったヒットのサポートと、他社とのコラボレーションの2点を挙げる。

「CDの売上をはじめ、ストリーミング再生数やライブ動員数、YouTubeやTikTokの再生数など、今の“ヒット”にはたくさんの指標があります。ヒットの概念が1つではなくなり、その種類と活動の仕方が多様化している。だからこそ、アーティストがどう活動したいのか、その気持ちをいかに汲み取ってサポートしていけるかがポイントになってきています」

 他社とのコラボレーションについては、かつては自社だけで100メートルを10秒で走ろうとしていたが、今は他社と組んで3秒で走れるならそちらを選ぶというように考え方にシフトしているという。

「世界で当たり前のように活動しようとすればするほど、自分たちに足りない部分がたくさんあって。それを学ぶことも大切ですが、足りない部分を補ってくれるパートナー探しは、より重要になっています。これだけ時代の変化が速いと、今日のヒットは明日のヒットではなくなる。だからこそ自分たちの速度を上げていくことが必要なのです」

 88risingとタッグを組んで実現させた新しい学校のリーダーズの世界デビューは、まさしく他社とそれぞれの強みを生かしたコラボレーションの成功例と言えるだろう。また、中川氏らが発起人となり今年5月に誕生した一般社団法人「Channel47」も、さまざまな業界が組むことで「地域創生」と「日本のエンタテインメントカルチャーのグローバル進出」を推進させようという共通した考え方が根底に流れている。しかも同プロジェクトのエンターテインメント領域に着目してみると、全国各地にいる若い才能を東京に一極集中させるのではなく、地域で育成した後に全国あるいは世界に羽ばたかせようという、人への投資に重きを置いた事業であることがわかる。

今年5月に開催した全国ツアー『日本にいるけど一時帰国ツアー2023』ファイナル公演 Photo by usami ryo

今年5月に開催した全国ツアー『日本にいるけど一時帰国ツアー2023』ファイナル公演 Photo by usami ryo

写真ページを見る

■「何が足りないか?」ではなく「何をすべきか?」日本発エンメを世界市場へアピールするのは今

「日本のエンターテインメントを世界に持っていくために、今考えるべきことは『何が足りないか?』ではなく『何をすべきか?』です。だけど日本人は慎重すぎて、答えが出るまでなかなか動かない。でも本気で日本発エンターテインメントを海外で展開しようとするなら、僕は今しかないと考えています」

 ジャンルは違うものの、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手も、誰のためでもなく、自分のために本気で野球を楽しんでおり、その姿に世界中の人々は魅力を感じ、大谷選手のファンとなっていく。それは、好きなことをやり続けて世界的な人気を得た新しい学校のリーダーズと何らかの共通点がありそうだ。

 エンターテインメント界において言えば、コンテンツの中身だけを議論するのではなく、それをクリエイトする人材を育て、クリエイター自身が本気で楽しみながらモノ作りを継続できる環境作りも重要だ。そこで生まれるものはニッチなもののようにも思えるが、SNSで一瞬にして世界中とつながれる現代においては、むしろグローバルに発展させられる可能性を大いに秘めていると言えるのではないだろうか。ただし、チャンスが訪れるスピードが増した分だけ、過ぎ去っていくスピードも猛烈に速くなっている。中川氏が言うように、日本発エンターテインメントを世界市場にアピールするチャンスは、まさに今しかないのかもしれない。

文・布施雄一郎

新しい学校のリーダーズの個性的な新ビジュアル

新しい学校のリーダーズの個性的な新ビジュアル

写真ページを見る

■新しい学校のリーダーズ Profile

個性と自由ではみ出す4人組ダンスボーカルユニット。2021年1月にアジアのカルチャーを世界に発信するレーベル88risingより世界デビューし、同年11月にマニー・マークをプロデューサーに迎えた作品「SNACKTIME」をリリース。TikTokのフォロワー数は480万人超え。振付師集団としても多数のオファーを受け、活動の幅を広げている。8月16日にEP『マ人間』をリリース。10月29日に東京体育館で「新しい学校のリーダーズ・初アリーナ!ワンマンライブ at 東京体育館」開催。11月から12月にかけてグループ初の海外ツアー「ATARASHII GAKKO! THE SEISHUN TOUR」を開催。米ロサンゼルスからスタートし、北米、メキシコのほか、香港、バンコクを含めた計10公演を予定している。

新しい学校のリーダーズ 新EP『マ人間』

新しい学校のリーダーズ 新EP『マ人間』

写真ページを見る

■作品情報
新しい学校のリーダーズ EP『マ人間』
2023年8月16日発売

【収録曲】
1. マ人間(テレビ朝日系ドラマ『警部補ダイマジン』オープニングテーマ)
2. 恋文
3. ケセラセラ
4. オトナブルー - From THE FIRST TAKE
5. 狙いうち

関連写真

  • 破竹の勢いでファンを増やしている新しい学校のリーダーズ  Photo by usami ryo
  • 新しい学校のリーダーズ「オトナブルー」(Official Music Video)
  • 今夏は数々の夏フェスに出演し渾身のパフォーマンスを披露
  • 個性的で躍動感あふれるステージが魅力 Photo by @estherjy.kim
  • 今年5月に開催した全国ツアー『日本にいるけど一時帰国ツアー2023』ファイナル公演 Photo by usami ryo
  • 今夏は数々の夏フェスに出演し渾身のパフォーマンスを披露
  • 今年5月に開催した全国ツアー『日本にいるけど一時帰国ツアー2023』ファイナル公演 Photo by usami ryo
  • 今年5月に開催した全国ツアー『日本にいるけど一時帰国ツアー2023』ファイナル公演 Photo by usami ryo
  • 新しい学校のリーダーズの個性的な新ビジュアル
  • 新しい学校のリーダーズ 新EP『マ人間』

オリコントピックス

あなたにおすすめの記事

>

メニューを閉じる

 を検索