メンバー全員が作詞・作曲・アレンジに携わるコンポーザーであり、確かな演奏スキルによって強固なグルーヴを作り出す巧者でもある4人。はたして彼らは2019年の結成からどのような道程をたどり、このスタイルやセンス、そして本作でも見せる“カラー”を手にしたのだろうか?
ORICON NEWSは今回、フロントマンの谷にインタビューを行い、バンドの音楽的なルーツや本作の制作エピソードを聞いた。
――1st EP『Mix Wave』からは、1970年代のスタジオミュージシャンが集まった作品のような雰囲気を感じました。みなさんはどのように出会ったのですか?
【谷】自分とベースの鳥飼、ドラムの出原は、同じミュージックバーで働く同僚だったんです。鳥飼と出原は、高校時代に一緒にバンドを組んでいて、 ジミ・ヘンドリックスやブラックミュージックをやっていたそうです。で、2人がウチの店で久々に再会して、自分も含めた3人でセッションをするようになったんですよ。
――そこから「バンドを組もう」と?
【谷】いえ、僕はその頃アコースティックの2人組で活動をしていて、最初は2人にサポートをお願いしようと考えていました。出原とは音楽の趣味がまったく違っていたので、バンドを組むことはないだろうなと勝手に思っていたんです(笑)。でも、向こうから「バンドをやろう」と連絡をもらって。
――大井さんとの出会いは?
【谷】その少し前に大井が地元・下関から仕事の都合で福岡に来ていて、2人で弾き語りとかもやっていたので、「それなら4人でバンドを組もうか」と。だから、バックボーンも音楽の好みも結構バラバラな4人が、不思議な縁でつながった感じなんです。
――谷さん自身は、どういう音楽を聴いてきたのですか?
【谷】家族全員が音楽好きで、僕は小さい頃からコブクロや175Rを聴いて歌っていたんです。初めてバンドというものを意識したのはBUMP OF CHICKENを聴いたときで、中学時代にバンドを始めました。
――4人ともそうやって、音楽の下地がある上で出会ったんですね。
【谷】はい。大井はずっとギターの教室に通っていたらしく、今でもストイックに練習する“努力の結晶”みたいな人。福岡にはあまりいないタイプのギタリストで、出会ったときに「こいつは捕まえておこう」と思いました(笑)。出原はスタジオミュージシャンの経験があったし、鳥飼もいろんなセッションバーに出ていたので、リズム隊の2人は当時からサポートで引っ張りだこでした。
――そういうメンツが集い、どのようにバンドのカラーを作っていったのですか?
【谷】最初は、自分がアコースティックでやっていた曲をバンドでアレンジするところから始めました。ただ、出原以外の3人は特に音楽に詳しいわけでもなく、好きなことをがむしゃらにやっていただけなんですが、僕が「こういう曲にしたい」と言えば、それを形にできるメンバーだったんです。そこからセッションで曲を作るようになりました。
■自由な創作とロジカルな思考が融合する独自の活動スタイル
――全員が作曲をするという現在のスタイルも面白いですね。
【谷】2021年に「フラッシュバック’82 feat.Rin音」と「SUNSET CHEEKS feat. Michael Kaneko」と「Just Dance feat. kiki vivi lily」と、コラボ曲を3作連続でリリースしたときに、ほかのミュージシャンと制作するにはデータが必要だと知ったんです。それで4人ともDTMを始めました。
――制作で使用しているDAWソフト(※「Digital Audio Workstation」の略。PC上で作曲や録音、ミックスといった制作作業全般を行うためのソフトウェア)は?
【谷】僕と出原はLogicで、鳥飼と大井はAbleton Liveで作曲をしています。これは後から知ったんですが、出原は当時「全員をミュージシャンとして独り立ちさせたい」という裏テーマを持っていて、僕ら3人にDTMをやるように促したそうなんです。結果、そこから特にジャンルも決めず、メンバーそれぞれがやりたい曲を作るようになりました。
――となると、収録曲を選ぶときには苦労もあるのでは?
【谷】リリースをするとき、僕らはいつもバンド内でコンペを開くんですけど、今回も“リード曲コンペ”をやって、各人が思うそれぞれのポップスを作ったんです。だから、音楽性がバラバラな曲たちが生まれて…結構悩みました(笑)。
――ただ、その多様性がバンドの個性になっていますね。
【谷】「ジャンルを決めた方がいいんじゃないか」と話していた時期もあったんです。でも、音楽性がバラバラだからこそ、「人生をかけてこれをやる!」というジャンルを決めようとすると4種類出てきちゃうんですよ(笑)。それに、例えば「ロックをやる!」と決めてしまったら、後で「フォークっぽいこともやりたい」となったときに、自分で自分の首を絞めてしまうんじゃないかと。
――バンドとして今後の可能性を残すためにあえてジャンルを固めなかった、と。
【谷】はい。「やりたい音楽を一生懸命やろうよ」というところに落ち着きました。その考え方が、たぶんバンド形成に一番大きな影響を与えていると思います。それに僕らって、音楽は自由に作りつつもバンドの運営はかなり会社的なんですよ。4人だけで活動していた頃は、出原が運営や金銭管理をやっていたりして、“個の集合体”といった感じでした。
■プロジェクト的な制作を経ることで研ぎ澄まされる“エゴ”
――昔ながらのプロっぽい出会い方をしながら、運営は極めて現代的ですね(笑)。そして、今回のリード曲コンペで選ばれたのが、谷さん作詞作曲の「ゴースト」だったと。
【谷】その前までは、すごく内向的な詞を書いたり、1行ずつメモを書いて、曲ができた後に散文的に別々のメモをつなげて歌詞を作っていたんです。弾き語りで作ると、どうしても曲が似通ってしまうから。でも、メジャーデビューというタイミングで、本当に好きなことや自分が思うことを書こうと思ったんですね。
――なるほど。
【谷】だから、「ゴースト」は自分のエゴからスタートして、すごく暗くて…自分の話ばかりしているような曲になりました。でも意外なことに、みんなが共感してくれて。共感からは一番遠いところで作ったつもりだったんですが、実はみんなも同じような面を持っていて、そこに共感してもらえたという不思議な構図になりました。
――今作では、ほかに「フーリッシュサマー」と「Left Alone」で作詞、「Miragesong」では出原さんとの共作で詞を書いていますが、それらはまた違った書き方だったのですか?
【谷】この3曲は今のバンド形態になったときにポップスを目指して作った曲で、作家的に歌詞を書きました。例えば「Miragesong」は、作曲した出原から「こういう歌詞を」とLINEで超長文のオーダーが届いて(笑)、それをもとに作家モードで書いたんです。そういうプロジェクト的な作り方も好きなんですけど、このポップス3曲を経て、「ゴースト」の歌詞はいろんなことを全部無視して書いたという流れでした。
――「ゴースト」は、今回のEPで唯一ヒップホップ的なトラックですよね。
【谷】ドラムは打ち込みだし、ベースもシンセベース。今までならたぶんこうはならなかったでしょうね。メンバーの視野が広がって、「曲のためにどういうアレンジが一番いいか」を考えられるようになった結果だと思います。音楽に対する“こだわり”は大事だと思うんですけど、単なる自尊心を満足させるだけの“プライド”は必要ないと思っていて。アレンジは出原がやってくれたんですが、2人ともそういう考え方になれたのかなって感じています。
――メンバー以外のミュージシャンとのコラボでも、また新たな発見があったのではないかと思います。「Left Alone feat. 土岐麻子」 での土岐麻子さんとの制作はいかがでしたか?
【谷】これは全員が口を揃えて言っているんですけど、ものすごく勉強になりました。完成形まで持っていく速さ、デモ段階でのクオリティーの高さ。歌に関して言えば、土岐さんならではの歌い回しや、サビに出てくる独特なハモり方、メロディー、歌詞の練り方は特に勉強になりましたね。あと…グルーヴと呼ぶんでしょうか、「母音をここに置くから歌の美味しさが出るんだ」といったようなところに、ものすごく刺激を受けました。
――谷さんの中にはない発想だった?
【谷】僕はこれまで歌詞を大きめの枠で捉えて、一文の中での抑揚や表現を考えていたんです。でも、土岐さんの歌は一文字単位でニュアンスや音階、すべてが細かく考えられていて。プロの仕事のきめ細やかさ、こだわりの大切さを知って、歌に対する解像度を上げられた感覚があります。
――緻密に練り上げる歌唱法や作詞法から刺激を受けたんですね。
【谷】その一方で、感覚も大事にしたいと思っていて。僕はライブという空間が大好きなので、一瞬しかない熱量を大事にしたいんです。バンドの運営はどんどんロジカルになっていくけど、音楽をやるときの感覚や熱量は忘れないようにしたい。その両方を融合させられたら最強なんじゃないかと思うんですよ。そういう意味でも自分はバンドの“感覚担当”だと自覚して、これからもやっていきたいと思っています。
谷のメインギターはブラックカラーの2017年製Godin A6 Ultra。ハムバッカーPUとアンダーサドル型トランスデューサーを搭載し、エレキとアコギの両サウンドを出力できるハイブリッドな1本 (C)ORICON NewS inc.
セミアコースティック構造ながら、45ミリ厚の薄いボディーと約43ミリのナローネック仕様で、エレキギターと同様の演奏感を得られることも特徴=Godin A6 Ultra (C)ORICON NewS inc.
【谷】初期はギターも弾いていたんですけど、ステージが大きくなるにつれて「歌もギターも中途半端で立っていいステージではない」と感じて、今は歌に専念しています。ただ、インスタライブではアコギを弾いていますね。
オリジナルハムバッカーPU(GHN-1)とEPMのアンダーサドル型トランスデューサーを搭載し、エレクトリックとアコ―スティックの両サウンドを出力できるGodin A6 Ultra (C)ORICON NewS inc.
【谷】僕はセミアコが好きなので、博多駅の楽器店で働く知り合いに薦められて、Godin(ゴダン)のA6 Ultraを買いました。アコギとエレキの両方の音が出せるハイブリットなギターなんですけど、ロック系で使っている人はあまり見かけないし、僕は家電でも「1台で全部できます!」的なものが好きなので、自分の性格がすごく出ているなと思います(笑)。
シダートップ+シルバーメイプル&バスウッドのダブルチェンバードボディーが特徴のGodin A6 Ultra。ボディー背面には谷が敬愛する小山田壮平(ex.andymori)の直筆サインも (C)ORICON NewS inc.
【谷】きっとみなさんは今回のEPを聴き込んでライブに来てくださると思いますけど、ウチのメンバーは全員一筋縄ではいかないキャラクターなので、音源とはまた別のライブアレンジを楽しんでほしいです。
――今作の収録曲がどんな変化を遂げるのか楽しみにしています。
【谷】ありがとうございます。人って、本当にヤバいものを目の当りにしたら、手を叩いて笑っちゃうじゃないですか。僕らもお客さんに「ヤバいヤバい!」って笑ってもらえるライブがやりたいと思っていて。4人とも根がロックなので、曲のアウトロではだいたい爆発するんですね(笑)。「ライブってこうだよね」っていう、その爆発ぶりを味わいに来ていただけたらすごくうれしいです。
■Deep Sea Diving ClubメジャーデビューEP『Mix Wave』収録曲
01. bubbles
02. フーリッシュサマー
03. Left Alone feat. 土岐麻子
04. リユニオン
05. Miragesong
06. goodenough.
07. ゴースト
■『Mix Wave Tour』日程
7月7日(金) 福岡・福岡OP's
7月16日(日) 大阪・心斎橋Pangea
7月17日(月・祝) 東京・Spotify O-nest
文・布施雄一郎
★YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」
【 RELEASE 】
— Deep Sea Diving Club (@d_s_d_c_) May 9, 2023
Major Debut EP 「Mix Wave」
本日リリースいたしました?
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1. bubbles
2. フーリッシュサマー
3. Left Alone feat.土岐麻子
4. リユニオン
5. Miragesong
6. goodenough.
7. ゴースト
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