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【インタビュー】ネット発の音楽ユニット“今夜、あの街から” VALSHEとのコラボで見えてきた新たな物語

 高校時代からネットシーンで活躍し、若手ボカロPとして話題を集めるノラが、毎回異なる女性ボーカルを迎えて、Z世代の憂いを先鋭的なサウンドと美しくもパワフルなボーカルで描き出すユニット“今夜、あの街から”。詩情を感じさせるユニット名は、閉塞感漂う夜の街を脱出して世界を変えたいという「ノラ」と「レイラ」、男女2人の物語の作品名でもあり、シングル曲はそれぞれ物語の1章と位置付けられ、連載小説のようなスタイルで発表されてきた。2月18日にリリースされる7thデジタル・シングル「クウフク (starring VALSHE)」では、中性的なハスキーボイスで、ボカロシーンはもとよりアニソンのフィールドでも人気が高いVALSHE(バルシェ)をゲストボーカルに迎えている。圧倒的な歌唱力を持ち、ソロ作では作詞・作曲、アートワークまでをセルフプロデュースするデジタルロックシンガーと23歳の新世代ボカロPの才能が融合した本作の世界観と楽曲に込めた想いを2人に聞いた。

(左から)ゲストボーカルのVALSHEと、ボカロPノラ

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■曲ごとのボーカル変更で生み出される新しい世界

── シングル曲を連載小説のように物語の1章として連作形式で発表している “今夜、あの街から”からですが、ユニット名の句読点など、細部にもコンセプトが込められているようですね。

ノラ 男女2人組のユニットというのが基本的なスタイルです。「廃れた街からいつか抜け出したい」と願うノラとレイラという若い男女が主人公の物語を、音楽を通して紡いでいくというのがコンセプトです。作中のノラのキャラクターは僕自身が演じていて、レイラ役は曲に合わせて毎回違うゲストボーカルをお招きしています。ユニット名が物語を象徴するタイトルとなっています。その第1章が1stシングルの「ショウニントウソウ」で、今回リリースする「クウフク」が第7章になります。ユニット名に読点(、)はあっても、最後に句点(。)はありません。“あの街から”の先を求める物語を作っていきたいので、ユニット名からもさまざまなことを想像していただけるのではないかと思っています。

── 毎回異なる女性ボーカルと一連の物語を歌い継いでいくユニークな着想はどのように得られたのですか。

ノラ ボカロPノラを名乗り、ユニットを立ち上げたのが2021年です。まだ大学生でした。この物語はコロナ禍を強く意識して作ったわけではありませんが、根底には「このような暗い世界を抜け出したい」という感覚があったのかもしれません。それを物語化して、曲を作っていったとしても、1人から生まれる世界はどんなにがんばっても広がりません。そこに別の誰かのエッセンスを加えることで、新しい世界が生み出せるのではないかという予感がしました。僕の創作の原動力となっている「面白いことがやりたい」という思いで、新しいサウンド、聴いてくださる方を飽きさせない音楽を生み出す方法を考えたときに、毎回レイラ役の女性ボーカルが変わる、メンバーが固定されていないユニットであれば、曲ごとにノラとレイラから受ける印象にも変化が生まれ、新鮮な面白さを感じるのではないかと思いました。物語の展開次第ですが、今後の作品ではノラ、レイラと同じ思いを抱く新キャラクターが登場し、そのゲストボーカルを迎えるというアイデアもあります。

■ありそうでなかったサウンド感に惹かれた

── お二人の出会いは、22年に開催されたVALSHEのアニバーサリーライブ「VALSHE LIVE THE UNIFY 2022〜Follow the Tracks〜」だったということですが、その経緯を教えてください。

VALSHE ツアーのファイナル公演を、ノラくんが観にきてくれたんです。その前から存在は知っていましたが、終演後に「せっかくだからコラボレ−ションができたら良いですね」と言葉を交わしたんです。それから半月も経たないうちに、本当にコラボレーションをしましょうという提案をいただきました。その時は、ボーカリストとして一緒に歌うだけなのか、あるいは作家同士として一から作品作りを行うのかなど、共作の形についてイメージはまだ持っていませんでしたが、“今夜、あの街から”でノラくんがやってきたことを知り、レイラ役をお受けしました。

ノラ それまで音源でしか聴いたことのなかったVALSHEさんの生歌をライブで初めて体感したのですが、パワフルで芯があって、心にドカンと響く強いボーカルに魅せられました。「クウフク」は、ちょうどライブを観て衝撃を受けた時期に作っていたので、今振り返ると間違いなくVALSHEさんの影響を受けていたと感じます。

── VALSHEさんは、初めて「クウフク」のデモ音源を聴かれて、どんな印象を受けましたか。

VALSHE 自分が取り組んできた音楽のフィールドにありそうでなかった“サウンド感”がありました。幅広いジャンルの楽曲を歌うシンガーとしてさまざまなタイプの曲と向かい合ってきたわけですが、「意外とこういう曲には触れてこなかったな」と魅力を感じました。一方で、そのサウンド感は、実は自分の音楽的ルーツに根差しているものでもあり、ボーカロイド楽曲のメロディの運び方などを下地に積み重ねられた作品であることに気づきました。ユニットの意図から始まり、具体的にどういうストーリーで、どのようなボーカルワークを目指し、VALSHEに何を求めているのかを改めてヒアリングしたうえで、レコーディングに臨みました。

ノラ レコーディングでもすり合わせを重ねていきました。レイラを演じていただくにあたり、これまでリリースした6曲で積み上げてきたレイラ像を壊すことは避けたい。でも既存の6曲のレイラに寄りすぎてしまっては、新しい世界は生まれません。「クウフク」はVALSHEさんの個性や歌声にレイラフィルターをかけて歌うことで、新たな世界が見えてくると感じていました。

毎回ゲストボーカルを迎えて物語を歌い継いでいく“今夜、あの街から”

毎回ゲストボーカルを迎えて物語を歌い継いでいく“今夜、あの街から”

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■どれだけ食べても満たされない「クウフク」の世界観

── 心に突き刺さるような言葉で、怒りや不安、自らの存在意義などを見つめるノラとレイラをめぐる物語は、作品ごとに鮮烈な印象を残しますが、「クウフク」では、どのような世界を描こうとしているのでしょうか。

ノラ 「どれだけ食べても満たされない」状態です。「クウフク」は“愛”の歌でもあります。恋愛や家族愛、友情などたくさんの愛をもらいながらも、どこか満ち足りない気がしてしまう。空腹なときにたくさん食べた後の幸福感とその後の「本当に自分は満たされているのだろうか?」という感情になぞらえ、“食べる”行為を通して、愛を歌う曲に仕上げようと思ったのが、この曲の始まりです。

VALSHE 連続する物語を毎回異なるユニットで紡いでいくというのは、特別なことです。だから自分のボーカルワークをきちんと表現しつつ、過去の作品にも未来の作品にもつながりを持たせられるレイラにしたいという強い思いがありました。ノラくんが「クウフク」で伝えたい意図をどのように表現するかを探していくことにこだわりました。自分も物語性のある作品を作りますが、その場合の表現のジャッジは自分で下します。今回のようにノラくんに「こういうものを作ったんですけれど、どちらがおいしいですか?」と投げかけるプロセスは、正解を探り当てるような貴重な経験でした。

── パワフルな歌声のVALSHEさんを迎えた本作は、サウンドもロック色が際立ち、今夜、あの街からの転換点となる作品といえそうですね。

ノラ VALSHEさんをはじめ、いろいろな方と関わりながら音楽を作っていくなかで、僕の心情にも少しずつ変化が出始めています。それとシンクロするように作中のノラとレイラも開放的になってきました。7作目にして初めて、2人は外の世界への一歩を踏み出します。物語全体の鍵となる大事な章になるので、レイラに強さが欲しかったんです。

VALSHE 声に乗せる感情を主に、ボーカルのアプローチの選択肢は、自分も思いつく限り提案させていただきました。VALSHE自身のストレートな感情ではなく、レイラというフィルターを噛ませることによって「ここは少しクールにしてみよう」とか、「子どもっぽくしてみよう」といった提案をプリプロダクションの段階からたくさんさせていただきました。

ノラ 何度もやり取りを重ねたことで、明らかに歌にライブ感が生まれました。生の人間の手が加わったというか、心が入った歌になりました。

── 制作過程で、お互いに気づいた点があれば教えてください。

ノラ やはりVALSHEさんの歌唱力のすごさです。自分はついていくのに必死でした。発声の技術や説得力のある歌いまわしから生まれる強さ、自分はまだ寄り添えるだけのレベルにないということを感じさせられました。プロのシンガーとしてのすごみを肌で感じ、コラボ相手としてVALSHEさんと歌えるように頑張らなければいけないと、今の自分の足りない部分に気づかされました。

VALSHE 今夜、あの街からというユニットは、毎回どうなるか分からない不確定要素のあるゲストボーカルを招いて、それを最終的にノラくん自身も聴いた人たちも納得できるところまで持っていこうとしています。自分が決めたコンセプトからいかにぶれずに作ることができるかが難しいところで、そこに作品作りの面白さもあります。今回、1つの素材として参加させていただくなかで、VALSHEを使って「こういう音楽をこういう方法で作りたい」というノラくんの姿勢は、キャリアに関係なく、自らものを考えて作っている者として吸収できることがたくさんありました。それは今後の自分のソロ活動にも反映できると思っています。

── 「クウフク」は、TVアニメ「名探偵コナン」(日本テレビ系・土曜18:00〜)のエンディングテーマとして2月18日からオンエアされることが決定しています。VALSHEさんは、「Butterfly Core」(13年)のオープニングテーマ、「君への嘘」(15年)のエンディングテーマに続いての起用となりますね。

VALSHE 8年ぶりに「名探偵コナン」に携わらせていただけることがうれしいですね。当時よりも幅広い音楽的アプローチができるような成長ができているか、と自らを顧みる気持ちにもなりました。「名探偵コナン」は、自分の中ではご縁のある、大切な作品。「クウフク」が、「名探偵コナン」の作品の解釈を広げ、コナンファン、VALSHEファンはもちろん、初めて聴いてくださる方からも愛される楽曲になれば良いなと思っています。

ノラ 「名探偵コナン」という歴史ある作品で使っていただけるので、僕にとってもボーカロイド楽曲に初めて触れてくださる方にとっても、何か新しい動きが出てくれば良いなと思っています。

■1つ作品を作ると、次のストーリーが見えてくる

── “今夜、あの街から” の展開は今後、どうなっていくのでしょうか。すでに決まっている構想があればお話しください。

ノラ 大まかな構想はありますが、1つ作品を作ると次のストーリーが見えてくると思っています。導かれるままに物語を描いていく。細かな部分は楽曲に委ねようと思いますが、今より開放的になっていくような気がしています。また、これまで作ってきた曲を直接皆さんに届けたいという思いがありますのでライブを開催したいですね。“今夜、あの街から”では、まだライブをしたことがなく、これまでのレイラ役のシンガーを招いて、曲で描いてきた世界観を体感できるステージを実現させ、そこでVALSHEさんと「クウフク」をリアルで歌うことが大きな目標です。

 これまで曲作りのすべてを宅禄で行い、「音楽を小さな世界でずっとやってきました」と語るノラ。VALSHEが参加したことで、コラボレーションの相手と何度も意見を交換しながら作り上げた初めての作品となった「クウフク」を経て、作中のノラとレイラのように、ノラの視線はより広い外の世界に向き始めている。次はライブでの2人の共演を楽しみに待ちたい。

文・桑原雄太

今夜、あの街から 7th DIGITAL Single「クウフク (starring VALSHE)」
2023年2月18日(土曜)リリース

“今夜、あの街から” 7th DIGITAL Single「クウフク(starring VALSHE)」

“今夜、あの街から” 7th DIGITAL Single「クウフク(starring VALSHE)」

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今夜、あの街から オフィシャルサイト: https://yorumachi-nora.com/

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  • 毎回ゲストボーカルを迎えて物語を歌い継いでいく“今夜、あの街から”
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