オリコンニュース

ぴあ・イープラス・ローチケが本気で取り組むチケット業界の働き方改革

 新型コロナウイルス感染拡大の長期化によって、リアルライブ復活の欲求がますます高まるなか、チケットエージェンシー大手の「株式会社イープラス」「ぴあ株式会社」「株式会社ローソンエンタテインメント」が非営利の組合を組成して、チケット票券業務の共通基盤の開発に乗り出すことを発表した。サービス開始は2022 年春を目標としており、イベント主催者に向けて無償提供されるという。チケット業務の効率化を目的としたこのサービスは、ライブエンタメ業界やユーザーにどのようなメリットをもたらすのか。コロナ禍に、この一大事業に取り組む3社に話を聞いた。

チケット大手3社が開発するイベント情報管理の共通基盤

チケット大手3社が開発するイベント情報管理の共通基盤

写真ページを見る

この記事の写真はこちら(全7枚)


■共通基盤開発でイベント主催者業務の大幅な効率化に貢献

 言うまでもないことだが、チケット販売を行ううえで、イープラス、ぴあ、ローソンエンタテインメントは競合関係にある。その3社がこのほど、同割合で計8億円を拠出して組合「TAプラットフォームソフトウェア共同事業体」を組成し、チケット業務の共通基盤(イベント情報管理システム)の開発にあたっている。イベント主催者とチケットエージェンシー間でやり取りされる、チケットに関するすべてのデータをプラットフォーム上で一元管理できる「TAプラットフォーム」が完成すれば、イベント主催者業務の大幅な効率化に貢献するという。

 今回の共通基盤の開発、運用に携わる「TAプラットフォーム株式会社」(※20年に社名変更)は、15年に3社が出資に参画して設立された「オーガスアリーナ株式会社」が前身となる。同社では主にコンサート会場のレイアウトや座席管理などの機能を持つチケット管理・施設予約管理システム「オーガスアリーナ」を運用している。

 「各チケットエージェンシーとイベント主催者が共通利用することで、双方のチケット管理業務に関する人的負担を軽減させることを目的としたプラットフォームとして、現在では国内に流通するチケットの約3分の1がオーガスアリーナのシステムで管理されるまでに普及しました」(TAプラットフォーム代表取締役・加藤貴久氏)

 とは言え、イベントの規模はさまざまであり、特に小規模イベントの場合は「座席管理だけではメリットが感じられない」と導入を見合わせる主催者や施設もあった。そこで、TAプラットフォームはオーガスアリーナの機能を大幅にバージョンアップさせることによって、使いやすく分かりやすいシステム構築を目指す。

 「ただシステムを構築するだけでなく、本システムを広く利用してもらうことによって、はじめて業務の大幅な効率化が実現します。そのために、国内で流通するチケットの多くのシェアを占める我々3社が団結する必要がありました。システム開発への投資を目的とすることを明確にするため“組合”という形にしたのも、今回の共通基盤の構築は事業収益を目的としたものではないからで、イベント主催者には共通部分(基本メニュー)のサービスは無償提供していきます」(イープラス代表取締役・倉見尚也氏)

 「TAプラットフォーム」は3社以外のチケットエージェンシーも利用できる「オープンプラットフォーム」として開発されている。ゆくゆくは国内で流通するチケットすべての業界標準を推進したい考えだ。

■ポストコロナ時代のライブエンタメのさらなる盛り上がりに寄与したい

 チケットのウェブサイト購入・予約もすっかり定着し、近年ではスマートフォンそのものがチケットとなる電子チケットが浸透しつつある。しかし、主催者とチケットエージェンシーのデータがシステム連携されていないため、そのデータのやり取りの部分に関しては極めてアナログな作業が多い。

 例えば、イベント主催者とチケットエージェンシーの間でやり取りされる「イベントの内容」や「販売方法(◯日◯時より先行予約受付、△日△時より一般発売…etc」「各チケットエージェンシーへの配券枚数」「売れ行き状況」などといった情報の授受の多くは、今なお電話やファックス、メール、つまりマンパワーを駆使しているのが現状である。

 イベント主催者はチケット販売を委託するチケットエージェンシーの数だけ同じ作業を行い、一方でチケットエージェンシーもイベント主催者から上がってくるこれらの情報を自社システムに逐一、手作業で入力しなければいけないという有様だった。ちなみに3社で取引があるイベント主催者は、年間で数万社にも及ぶという。働き方改革が叫ばれる中でこうした"業界の慣習"は時代にそぐわないものとなっていた。

 「業務改善が急務であることは各社ともに痛感していたものの、年々拡大し続けるライブエンタメ市場の日常の業務に追われてなかなか着手できない状況にありました。ところがこのコロナ禍でリアルライブが激減し、ライブエンタメ市場は一気に冷え込みました。しかし、ライブエンタメ市場は必ず復活します。このタイミングに先行投資をすることで、ポストコロナ時代のライブエンタメのさらなる盛り上がりに寄与したいという3社共通の思いが、共通基盤の開発の動きを一気に加速させました」(ローソンエンタテインメント上級執行役員 ライブエンタメグループ統括・佐々木宏司氏)

■より魅力的なライブエンタメコンテンツの開発に期待

 TAプラットフォームは、あくまでチケット業界で利用されるBtoBサービスであるため、エンドユーザーには直接的なメリットは見えにくいかもしれない。しかし、チケットにまつわる業務が大幅に効率化されることによって、より魅力的なライブエンタメコンテンツの開発が期待できる。これは朗報と言えるのではないだろうか。

 「チケット管理業務には"作業"の側面に多大なマンパワーと時間が費やされています。しかしライブエンタメの本質は、お客様を楽しませること。作業の効率化によって公演のアイデアを工夫したり、追加公演や追加チケットの販売をいち早く判断したり、ユーザーにより届きやすい形で公演情報をお届けしたり、スムーズにチケットのリセールをしたりといった"エンタメ本来の業務"にコストと人員を投じることができれば、結果的にこの共通基盤はユーザーにも貢献するものになるのではないかと考えています」(ぴあ取締役・村上元春氏)

 アナログな作業が多いゆえに、イベント主催者、チケットエージェンシーともに長い間、休日出勤や深夜にまで及ぶ残業といった"悪しき慣習"から抜け出せないでいた。しかし、コロナ禍をきっかけにリモートワークが普及したように、社会ではデジタルトランスフォーメーションの概念が一気に広がりつつある。そういう意味で、今はまさにチケット業界の改革にうってつけのタイミングとも言えるのかもしれない。

 何よりポストコロナを見据えて、ユーザーのリアルライブへの欲求はますます高まっている。コロナ禍で大きな痛手を負ったライブエンタメ各社が、健全に事業を継続させるための取り組みの1つとしての、TAプラットフォームの開発と普及促進に注視したい。
(文・児玉澄子)

関連写真

  • チケット大手3社が開発するイベント情報管理の共通基盤
  • 写真左よりTAプラットフォーム・加藤貴久氏、ローソンエンタテインメント・佐々木宏司氏、イープラス・倉見尚也氏、ぴあ・村上元春氏
  • 競合するチケットエージェンシー大手が非営利の組合を組成
  • イープラス代表取締役・倉見尚也氏
  • ぴあ取締役・村上元春氏
  • ローソンエンタテインメント上級執行役員・佐々木宏司氏
  • TAプラットフォーム代表取締役・加藤貴久氏

オリコントピックス

求人特集

求人検索

メニューを閉じる

 を検索