JASRAC、EU著作権新指令の経過報告 プラットフォーマーのバリューギャップ解消へ

 日本音楽著作権協会(JASRAC)は4月2日、欧州議会が「デジタル単一市場におけるEU著作権新指令」(EU新指令)の最終案を3月26日に正式に承認したことを受け、CISAC(著作権協会国際連合)事務局長のガディ・オロン氏、CISAC アジア太平洋地域代表のベンジャミン・グー氏、CISAC アジア太平洋委員会委員長の渡辺聡氏、JASRAC 理事長の浅石道夫氏による説明会を開催した。

■全世界のSpotifyやAmazonの支払額はYouTubeやFacebookの4〜17倍

 本指令は、CISACおよび欧州における創作者コミュニティが3年以上にわたる活動の末にもたらされた成果であり、その内容には動画投稿サイト等におけるサイト運営者がコンテンツ利用の主体であること、また同サイト運営者が違法コンテンツ利用を防止する義務、著作権者への適正な報酬を支払う義務を負うことなどが明示されている。

 ネット上での実効性のある著作権保護を働きかけてきたCISACのガディ氏は、「価値の移転」(バリューギャップ)の解決が今回のもっとも大きなポイントとする。「価値の移転」とは、オンラインコンテンツ共有サービスなどが創作物の利用から利益を得ている価値に対して、創作者に還元される価値が少ないという不均衡に根ざしており、コンテンツに投資したり、生み出したりすることのないプラットフォームサービスが個別のユーザーにコンテンツを利用可能にするという、「創作者からプラットフォームへの価値の移転」を指す。これが今日の問題となっており、新指令は対処している。

 ガディ氏は、全世界の管理者団体における徴収の現状を「具体的な金額は出せませんが、SpotifyやAmazon、Appleといったサービス事業者は、YouTubeやFacebookなどのプラットフォーマーの4〜17倍の著作権料を支払っている」と具体例を挙げながらプラットフォーマーとの交渉の難しさを明かし、「デジタル環境が現在とは異なっていた2000年に導入されたセーフハーバー条項を盾に、適正な著作権料の支払いに応じなかったデジタルプラットフォーマーにも新指令が適用されるようになり、大手から小規模までのプラットフォーム、権利者、ユーザーの利害関係のバランスの取れた解決策が導入されるほか、権利者側は許諾交渉の際により強いポジションに置かれることになる」と説明する。

 現在、本指令は欧州議会の理事会による最後の承認に移っており、その後、移行期間を経てEU加盟国の各法に落とし込まれていく予定。施行されるのは数年後になるという。

■日本では法改正を待たずサービス事業者との契約でカバー

 一方、JASRAC 理事長の浅石道夫氏は、日本の状況について「日本におけるJASRACが管理する楽曲においては、法改正を待たず、YouTubeやニコニコ動画など個別にサービス事業者との間で、ユーザーがリスクなくコンテンツを利用できる契約を結んできています。EUとは状況が異なり、すでにこの部分は契約においてカバーし、お互いにWIN-WINの関係を築いています」と強調する。

 現在のところ、JASRACから国に対してEU新指令に基づく著作権法改正を求めていく考えはないとのことだが、法律になることのメリットはJASRAC以外の管理団体や個人など広く音楽関係者全体におよぶほか、音楽以外の著作物にも広く関わってくることから、今後、透明性を保持したバリューギャップの解消に向けた、各権利者団体や業界団体との協議などは行われていくことがあるかもしれない。

関連写真

  • CISAC アジア太平洋地域代表のベンジャミン・グー氏(左)とCISAC(著作権協会国際連合)事務局長のガディ・オロン氏
  • JASRACが開催した「著作権に関する新たなEU指令」についての説明会

提供元:CONFIDENCE

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