東京五輪・パラ五輪に向け、日本の文化を世界に発信するイベント『This is NIPPON プレミアムシアター』。その一環として開催された「Perfume×TECHNOLOGY」presents“Reframe”(3月20日、21日)の模様が、4月29日にNHK BSプレミアムで放送される。Perfume×テクノロジーの挑戦に密着した同番組の注目すべきポイント、取り組みの狙いなどについて、佐渡岳利プロデューサーに話しを聞いた。
◆新規開発されたソフトやアイデアを活用 複合的に組み合わされたパフォーマンスに
そもそも『Perfume×TECHNOLOGY』とは、常に最新テクノロジーと高精度な身体的パフォーマンスを活用した表現に挑むPerfumeの演出法を丁寧に解説していくプロジェクトとして展開しているもの。今回は『This is NIPPON〜』の一環としてイベントを実施、番組収録した。佐渡氏は、これまでNHKで放送された数々のPerfume関連ドキュメントを手がけてきた。今回の試みは、多様な技術に支えられてきた彼女たちのパフォーマンスの集大成という意味合いもあるのだろうか。
「現段階までの技術の蓄積が詰め込まれているという点では、たしかに“Reframe”は集大成。ですが、あくまで通過点の1つです。2020年に向け、さまざまなテクノロジーをどうエンタメに昇華するかを検証し開発する試みの1つとして、Perfumeさんとのプロジェクトは継続しています。ライゾマティクスさんや振付・演出のMIKIKO先生などと一緒に、チームとして動いていますし、今回のステージもディスカッションを続けながら一緒に取り組み、構成しました。
これまで『NHK紅白歌合戦』や『SXSW』(世界最大規模の音楽・テクノロジー・カルチャーの見本市)などでトライしてきた経験だけでなく、今回のために開発された専用の制御ソフトや、改善されたテクノロジー、新規投入のアイデアなども複合的に組み合わされたパフォーマンスになっています。表現の幅も深度も、成長し進化していますね」(佐渡岳利氏、以下同)
番組は、基本的にそのステージのパフォーマンスをまとめた、いわゆる音楽ライブコンテンツ構成。あえて「この演出はこんな技術を使って、この技術と組み合わせている」といった細かな解説はしないという。だが、特に今回のようなステージでは、それがどれだけの準備作業を要する画期的な演出なのかを判断する、補助線のようなものも重要になってくるのでは?
「『あれって生じゃないんじゃないの?』というご意見も多く、現場の苦労が伝わらない時もありますね(苦笑)。ですが本来、裏側で働いているテクノロジー自体がテーマではなく、いかにして表現そのもので人の心を動かすかが最優先のはず。そういう意味では、例えば「手紙を読む」といった昔ながらの極めてアナログな手法でも、人々は感動します。
我々の役割は、最新技術によってそれを新たな感動体験として昇華できるか、という部分にある。理想としては、人の情緒を最高レベルで揺さぶるために、最も高度な技術を使ってベストマッチを成立させるということになります」
◆特設サイトでは、演出の技術的な背景を解説する“研究ページ”の展開も検討中
特設サイトで事前に一般から募集した“大切な写真”を演出に施した「願い」という楽曲は、今回のハイライトの1つ。
「これはPerfumeと一般の方々の気持ちをリンクさせる仕掛けとして考えたものです。会場やテレビの画面で観て、単純にキレイだな、で済んでしまってもいいんです。でも、思いを込めた写真を応募した方にとっては、きっと特別な体験になる。“Reframe”では、そうしたテクノロジーによる演出が各場面に散りばめられていますが、全体の構造が1つの物語仕立てになっています。
音楽を含め、過去から現在に至るPerfume の多様な要素を分析して再構築し、原点を確認しつつ次のフェイズに向かう。そうした流れにも注視してほしいですね。そこから舞台裏のテクノロジーにまで興味を持っていただき、それこそ画面に映らない技術スタッフも含め、1つのコンテンツを成立させるためにどれだけの努力が費やされているのかまで知ってもらえたら、また別の感動があるはずだと思います」
そのための導線として、演出の技術的な背景を詳しく解説する、研究室的なページを特設サイト内に追加するアイデアも検討中とのこと。実現すれば、日本のエンタメ演出の質そのものを底上げする刺激剤として機能することは確実だ。
文/及川望
■「Perfume×TECHNOLOGY」presents“Reframe”
NHKBSプレミアム 4 月29日(日)
23:30 〜 24:30
※NHKワールドJAPANでは、『Entertainment Nippon 2018「Perfume」』として、5月20日(日)8:10 〜、14:10 〜、19:10 〜、26:10 〜(日本時間)放送予定
■Profile/さど たけとし
1990年NHK入局。『紅白歌合戦』、『MUSIC JAPAN 』、『スコラ 坂本龍一音楽の学校』など、音楽を中心に数々のエンタテインメント番組を手がける。また、15年には『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』を監督するなど、活躍の場を広げている。2014年からNHKエンタープライズに所属し、制作本部 エンターテインメント番組 エグゼクティブ・プロデューサーとして活躍する。
(『コンフィデンス』 18年4月23日号掲載)
◆新規開発されたソフトやアイデアを活用 複合的に組み合わされたパフォーマンスに
そもそも『Perfume×TECHNOLOGY』とは、常に最新テクノロジーと高精度な身体的パフォーマンスを活用した表現に挑むPerfumeの演出法を丁寧に解説していくプロジェクトとして展開しているもの。今回は『This is NIPPON〜』の一環としてイベントを実施、番組収録した。佐渡氏は、これまでNHKで放送された数々のPerfume関連ドキュメントを手がけてきた。今回の試みは、多様な技術に支えられてきた彼女たちのパフォーマンスの集大成という意味合いもあるのだろうか。
「現段階までの技術の蓄積が詰め込まれているという点では、たしかに“Reframe”は集大成。ですが、あくまで通過点の1つです。2020年に向け、さまざまなテクノロジーをどうエンタメに昇華するかを検証し開発する試みの1つとして、Perfumeさんとのプロジェクトは継続しています。ライゾマティクスさんや振付・演出のMIKIKO先生などと一緒に、チームとして動いていますし、今回のステージもディスカッションを続けながら一緒に取り組み、構成しました。
これまで『NHK紅白歌合戦』や『SXSW』(世界最大規模の音楽・テクノロジー・カルチャーの見本市)などでトライしてきた経験だけでなく、今回のために開発された専用の制御ソフトや、改善されたテクノロジー、新規投入のアイデアなども複合的に組み合わされたパフォーマンスになっています。表現の幅も深度も、成長し進化していますね」(佐渡岳利氏、以下同)
番組は、基本的にそのステージのパフォーマンスをまとめた、いわゆる音楽ライブコンテンツ構成。あえて「この演出はこんな技術を使って、この技術と組み合わせている」といった細かな解説はしないという。だが、特に今回のようなステージでは、それがどれだけの準備作業を要する画期的な演出なのかを判断する、補助線のようなものも重要になってくるのでは?
「『あれって生じゃないんじゃないの?』というご意見も多く、現場の苦労が伝わらない時もありますね(苦笑)。ですが本来、裏側で働いているテクノロジー自体がテーマではなく、いかにして表現そのもので人の心を動かすかが最優先のはず。そういう意味では、例えば「手紙を読む」といった昔ながらの極めてアナログな手法でも、人々は感動します。
我々の役割は、最新技術によってそれを新たな感動体験として昇華できるか、という部分にある。理想としては、人の情緒を最高レベルで揺さぶるために、最も高度な技術を使ってベストマッチを成立させるということになります」
◆特設サイトでは、演出の技術的な背景を解説する“研究ページ”の展開も検討中
特設サイトで事前に一般から募集した“大切な写真”を演出に施した「願い」という楽曲は、今回のハイライトの1つ。
「これはPerfumeと一般の方々の気持ちをリンクさせる仕掛けとして考えたものです。会場やテレビの画面で観て、単純にキレイだな、で済んでしまってもいいんです。でも、思いを込めた写真を応募した方にとっては、きっと特別な体験になる。“Reframe”では、そうしたテクノロジーによる演出が各場面に散りばめられていますが、全体の構造が1つの物語仕立てになっています。
音楽を含め、過去から現在に至るPerfume の多様な要素を分析して再構築し、原点を確認しつつ次のフェイズに向かう。そうした流れにも注視してほしいですね。そこから舞台裏のテクノロジーにまで興味を持っていただき、それこそ画面に映らない技術スタッフも含め、1つのコンテンツを成立させるためにどれだけの努力が費やされているのかまで知ってもらえたら、また別の感動があるはずだと思います」
そのための導線として、演出の技術的な背景を詳しく解説する、研究室的なページを特設サイト内に追加するアイデアも検討中とのこと。実現すれば、日本のエンタメ演出の質そのものを底上げする刺激剤として機能することは確実だ。
文/及川望
■「Perfume×TECHNOLOGY」presents“Reframe”
NHKBSプレミアム 4 月29日(日)
23:30 〜 24:30
※NHKワールドJAPANでは、『Entertainment Nippon 2018「Perfume」』として、5月20日(日)8:10 〜、14:10 〜、19:10 〜、26:10 〜(日本時間)放送予定
■Profile/さど たけとし
1990年NHK入局。『紅白歌合戦』、『MUSIC JAPAN 』、『スコラ 坂本龍一音楽の学校』など、音楽を中心に数々のエンタテインメント番組を手がける。また、15年には『WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT』を監督するなど、活躍の場を広げている。2014年からNHKエンタープライズに所属し、制作本部 エンターテインメント番組 エグゼクティブ・プロデューサーとして活躍する。
(『コンフィデンス』 18年4月23日号掲載)
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2018/04/28