ドーム公演 音響に目覚ましい進化

「ラインアレイ」では、水平方向にしか音が広がらないため、余計な反響を抑えることができ、クリアな音声伝達が可能となる。さらに、音の減衰率が低く、最前列でも聴きやすく、最新のものならば100m先でもほぼ同じ音を届けることができる

「ラインアレイ」では、水平方向にしか音が広がらないため、余計な反響を抑えることができ、クリアな音声伝達が可能となる。さらに、音の減衰率が低く、最前列でも聴きやすく、最新のものならば100m先でもほぼ同じ音を届けることができる

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 近年、増加している大規模ライブで顕著になってきているのが、「音質」の改良である。それにはスピーカーシステムの進化が大きく寄与している。特に2000年代前半に登場した「ラインアレイ」スピーカーはアーティスト、プロモーター、エンジニア等、ライブに関わる多くの人々に恩恵をもたらすこととなった。

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■スピーカー&PAの進化が観客動員増にも貢献

 通常、音は上へと抜けていくものであり、過去のスピーカーでも、それは同様だった。そのため、ドームやアリーナなど、ホール以外の会場の場合は特に、上へ抜けた音が天井から返り、余計な反響を生んでしまった。さらに野外では、そのまま空へ吸い込まれてしまい、全席に均等に音を届けることは非常に難しかった。「ラインアレイ」はこうした問題を解決するものとして登場した。

「それまで後方座席用に設置していたディレイスピーカー用のタワーを立てる必要がなくなり舞台施工時間の短縮とともに、お客様の視界を広げることができました。さらに、メインスピーカーの小型化も進んだことで、ステージ両サイドも、さらに座席を用意することができ、1公演あたりの動員を増やすことができています」(ディスクガレージ担当者)

 一方で、数十年前から変わらない課題点として騒音問題がある。ここに画期的な解決策が生まれれば、さらにライブの可能性は広がる。

「例えば東京・立川の国営昭和記念公園は、駅直結の立地であり、数万人規模の公演も可能ではありますが、公演実施ができない理由として近隣の皆様に関わる音の問題が大きな理由となっています」(ディスクガレージ担当者)


■音を鳴らしながら止めるという新しいチャレンジに取り組む

 MSIジャパンは、騒音規制が厳しい大阪・万博記念公園もみじ川芝生広場での野外イベント(FM802主催「MEET THE WORLD BEAT」など)で必ず指名を受けるほど、プロモーターや制作サイドから厚い信頼を得ている。そんな同社であっても、近年の野外イベントに関しては、「本来は音を鳴らすためのPAだが、最近は、音を(エリア外に)漏らさないことに苦慮している」(日本エム・エス・アイ担当者)と語る。

 そのような状況下で、同社がPAシステムを手がけた『TOKYO アニメパーク BANDAI NAMCO ANIMECAMP 2014(潮風公園・特設野外ステージ)』では、ステージから400mしか離れていない近隣ホテルから、2日間で問題となるようなクレームはなかったという。その陰には、同社が導入している新スピーカー・システム「MLA」の存在が大きい。

「「MLA」は、コンピューター・シミュレーションで空間の音場を制御できるシステムで、エリア内に均一の音を届けると同時に、エリア外への音漏れを抑えられます。法的な騒音規制が厳格な英国で開催されるグラストンベリー・フェスティバルでもすでに導入されており、近隣の住宅街からのクレームを激減させたと同時に、ミキサー席では、これまでにないほどの音圧感を実現できたのです」(日本エム・エス・アイ担当者)

 同社が「MLA」を国内初導入した12年の東方神起・東京ドーム公演では、アリーナ公演で必須と言われるディレイスピーカー(タワー)を必要としないサウンドで、その実力を証明。さらに、タワーによる“見切れエリア”を解消したことで数千席を確保できたことは、制作サイドにとって大きな“副産物”となった。

 また、会場の無駄な響きを抑え、きれいな響きを付加することも可能であり、体育館でも生の豊かな響きを再現し、多目的ホールでもクリアなビートを届けられるなど、環境によらない響きが得られることは、制作サイドやアーティストにとっても大きなメリットとなるだろう。

「私たちが目指しているのは、どのエリアのお客様にも同じサウンドを楽しんでいただきつつ、アーティストが演奏しやすい環境を作ること、プラス、野外では騒音を上手にコントロールすることです。そのためにも、音を鳴らしながら止めるという、新しいチャレンジに取り組んでいます。これは実現できると思っていますし、技術もさらに進んでいくと考えています」(日本エム・エス・アイ担当者)

 また同社は、香港、上海、北京、台湾でも事業を展開。今年6月に開催された福山雅治の台湾公演でも「MLA」を提供し、海外でも成功を収めている。このように、日本人アーティストがアジア公演を行う際も、日本と同じ環境でライブが開催できるよう、日々、努力を重ねているということであった。

 多くの音楽ファンが、圧縮音源をイヤホンで楽しむ時代に、豊かなサウンドを圧倒的なダイナミックレンジで体感できる環境は、もはやライブ会場でしか実現できないと言っても過言ではないだろう。一方、ライブ音響を手がける側も、アリーナでもスタジオ品質に近いサウンドを実現すべく技術力を高めている。

(ORIGINAL CONFIDENCE 14年11月10日号掲載)

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