Chara+YUKI『echo』アルバムレビュー 気鋭のクリエイターたちと作り出した音楽が示す2人の「今」
独創的なCharaとYUKIの音楽や言葉を、ゲスト陣がスタイリング
そうした2人のスタンダード的な音楽性に、もうひとつの"今"と言うべき音楽的トレンドを注入しているのが、各曲で招かれたサウンド・プロデューサー陣たちによるトラックだ。例えるならば、独創的なCharaとYUKIの音楽や言葉を、ゲスト陣がスタイリングをすることで、2人は、普段着でもよそ行きの服でもない、「Chara+YUKI」という新たな衣装を身にまとうことができ、結果、その骨格である2人の音楽が、より際立っているといった具合だ。そう考えると、一般的には「CharaとYUKIのコラボレーション」として語られることが多いユニットだが、本作に関しては、「Chara+YUKI」という確固とした音楽性を持ったひとつのユニットとゲストのサウンド・プロデューサー陣とのコラボレーションだと考えた方がしっくりとくる。
続く「You! You! You!」では、新進気鋭のトラック・メイカーSeihoによるトラックと、楽器的にエディットされた2人の歌をビートで聴かすクラブ・チューン。そこから、大沢伸一のアレンジによるテクノ・ポップ風の「ひとりかもねむ」へ。あまり起伏のないメロディをウィスパーボイスで淡々と歌いながらも、耳に残るフレーズと、歌詞カードで確認したくなるワードが随所に散りばめられている。なお、タイトルは、百人一首から引用されたものだそうだ。
現代人の緊張感をほぐす心地よい“隙間”
物理的に音がないという意味での隙間だけでなく、最初から最後までフルで力を込めるのではなく、緩急によって力の抜きどころを作ってくれることで、聴き手に安心感を与えてくれる隙間でもある。また、言葉の解釈として、聴き手の状況や心情によって、いろんな意味に理解できるという点でも、言葉の隙間(=余白)と言えよう。そうした隙間こそが、Chara+YUKIの音楽の特色なのだ。
そして、ドラマーであり音楽プロデューサーの白根賢一の手による「YOPPITE」は、まさに大人の甘さが漂う一曲。リバーヴィーなCharaとYUKIのユニゾンボーカルが幻想的に響くと、Charaが作曲し、彼女と親交のあるKan Sanoによるプロデュース曲「鳥のブローチ」では、まるで夢の中の物語かのような情景を作り出している。この曲は、本作では数少ないバンド・アレンジで、ベースを高桑圭(Curly Giraffe)、そしてギターの小林祐介、ドラムに吉木諒祐(THE NOVEMBERS)が、2人のキュートさを独自のシューゲイザー・サウンドで表現している。
とにかく聴き終えた後に、いろんなものが浄化されたような、そんな余韻に浸れる作品。バレンタイン・デーにCharaとYUKIから送られた、大切なプレゼントとなるだろう。