椎名林檎、人気曲とイメージワードから浮かび上がる「強さ」と「未知の可能性」
10代ではYouTubeの存在が大きく影響、「好きになったきっかけ」と回答
98年にシングル「幸福論」でデビュー。2ndシングルの「歌舞伎町の女王」がスマッシュヒットしたことで、「新宿系」として注目が集まり、その後1年あまりの間にリリースした「ここでキスして。」「本能」「ギブス」「罪と罰」はいずれも彼女の代表曲となった。しかし、03年に一時ソロ活動を停止。04年よりバンド「東京事変」としての活動も並行して行う。12年に東京事変を解散後、14年にNHKサッカーテーマ「NIPPON」を発表。16年のリオ五輪閉会式での「フラッグハンドオーバーセレモニー」の演出・音楽監督に就任するなど、活躍の場を広げている。
センセーショナルに世間を驚かせた初期、バンド活動の中期を経て今に至る間、彼女はどのようなファンに支えられてきたのか。それを明らかにするために、今回「椎名林檎が好き」と回答した10代から50代まで各190名、合計950名の男女にアンケート調査を行った。
最初の質問は、「椎名林檎を好きになったきっかけ」で、その結果が表1だ。年代を問わず最も多かったのは、やはり「TVの音楽番組での歌唱」(57.9%)。続いて「友人・家族の口コミ」(15.3%)、「ドラマ主題歌」(14.6%)と続くのだが、注目は4位の「YouTube」(14.4%)。この回答者は圧倒的に男性が多く、10代男性に限れば39.1%と、3人に1人がYouTubeを介して椎名林檎を好きになったことになる。
初期の作品が中心の人気曲、世代により好みの違い
最も人気が高かった楽曲が、99年に発表した「ここでキスして。」。2位は同じく99年に発表した1stアルバム収録曲「丸ノ内サディスティック」、3位も99年発表の「本能」、4位はデビュー曲の「幸福論」、5位が「歌舞伎町の女王」だった。
これらを含む人気の上位10曲が、どの世代にどのぐらいの支持を集めたのかを明らかにしたのがグラフ1だ。
また、「幸福論」「ここでキスして。」は、リリース時に10代だった30代女性に強烈な印象を残していたようで、いずれも50%以上が「好き」と回答。また、10年代に発表した「NIPPON」「長く短い祭」「獣ゆく細道」は、ともに10代の男性ファンから高い支持を受けていた。彼らにとって椎名林檎は、これらの曲に近いイメージのようだ。
30〜40代女性が抱くイメージ“生き方の見本のような存在”
調査方法は、こちらが提示した「28のキーワード」のなかで、彼女のイメージだと思うものを自由に選んでもらうというもの。その結果を元に作成したのがグラフ2とグラフ3だ。見方は、「30代」「40代」などのセグメントとキーワードとの距離が近いほうが、より関連性が強いと理解してもらいたい。
グラフ2を見れば、その意味がわかるはずだ。ここではファンが明確に3つに分かれている。中心的な存在の30〜40代が抱くイメージは、「自立」「知的」「こだわり」「計算されつくした」。「個性的」「強い」といった言葉もあり、この世代にとって“生き方の見本”のような存在であることがわかる。
少し上の世代の50代になると、「強烈」「挑戦的」「解放的」という言葉に代表されるように、古い慣習を打破する存在として頼もしく思っている様子がうかがえる。「才能がある」「かっこいい」という言葉にも、新しい時代を築く期待値が表れている。
こうした上の世代に比べ、10〜20代における彼女に対するイメージは、まだ明確になっていない様子。「明るい」「面白い」といったワードが近くにあること自体、30代以上のファンにとっては驚きに違いないが、それは椎名林檎というアーティストに対する新たな発見かもしれない。
これからも彼女は、自らの信念に従って変化し続けるのであろう。我々はそんな彼女の変化を、これからも追い続けていくに違いない。
[調査概要]
調査対象:全国10〜50代男女、椎名林檎を「とても好き」「好き」の回答者
サンプル数:950サンプル(各年代 190サンプル)
調査期間:2019年10月25日(金)〜30日(水)
調査手法:インターネット調査
調査機関:オリコン・モニターリサーチ