新作では鈴木京香をプロデュース、“芸人”音楽プロデューサー藤井隆「芸人のクセに」が「芸人だから」に

 藤井隆が、女優・鈴木京香の芸能生活30周年を記念した初の音楽作品「dress-ing(ドレッシング)」を全面プロデュース。同作は2014年に藤井が立ち上げた主宰レーベル・SLENDERIE RECORD(スレンダリーレコード)より、2月27日に発売される。藤井は00年に浅倉大介プロデュースによるシングル「ナンダカンダ」で歌手デビュー、以来芸人としての活動のなかには常に“音楽”があった。音楽プロデュースを含め、異業種への挑戦は「悩みながら進む」の連続だと言うが、彼の存在はエンタテインメントシーンにシナジー効果をもたらしている。

楽曲は藤井がイメージする鈴木京香と“ムード”が近いクリエイターに依頼

 鈴木京香初の音楽作品「dress-ing」は、収録3曲のいずれも鈴木が作詞を担当。作・編曲を務めるのは冨田謙、DE DE MOUSE、tofubeatsという気鋭のクリエイター陣だ。鈴木の“落ち着いた大人の女性”といったパブリックイメージからは意外なほどの先鋭的なサウンド。それが優しくも切なさ漂う独特な声質と相まって、不思議な魅力を醸す作品に仕上がっている。とは言え、やはり意外な作家陣とのマッチング。藤井にはどんな計算があったのだろうか。
「京香さんから『やります』とおっしゃっていただいた時に、必ず鈴木さんのファンの方に喜んでいただけるものにしようと自分に誓いました。作家先生を考えた時に大切にしたのは制作過程で何かひらめいた時に対応してもらえたり、変更を私が直接お願いできるような信頼関係を築いてくださっている方に依頼しようと思いました。そうした交流をさせていただいているミュージシャンの方はありがたいことにほかにもいてくださっていますが、今回は私自身ではなく鈴木さんなので、私がイメージする鈴木さんのムードと景色が近い方って言うんでしょうか。街を歩いている時、電車に乗っている時、車を運転している時、それぞれの横に流れる景色の中で聴きたくなる音楽って誰しもあると思うんですが、京香さんが歌ってくださると決まった時点で『この方が作る音楽で京香さんの歌声が聴きたい』とイメージし、頭に浮かんだのが冨田さんとD? D? MOUSEさんとtofubeatsさんでした」(藤井)

 音楽作品での歌唱はもとより、作詞の才能を鈴木から引き出したことも大きい。

「本を出版なさっていて読ませていただいたのですが、お人柄そのままに素敵な本でした。今回の作詞では『この言葉を選ばれるのか』『このメロディーでこの言葉なんですね!』という楽しい発見や驚きがふんだんにありました。写真や美術にもお詳しいんですが、いろんなきれいな色が混ざった絵画的な歌詞に仕上げてくださって、それも淡い色ばかりではなく、驚くほどビビッドな色もある印象です。ぜひ歌詞も楽しみにしていただきたいです」(藤井)

いろんなジャンルの仕事に「戸惑う時もありました」

 そもそも芸人である藤井が音楽プロデューサーとしても活動していることを知らない人も多いかもしれない。92年に吉本新喜劇オーディションを経てデビュー。以来、芸人としてはもちろん、映画・ドラマ・舞台などマルチに活躍している。音楽活動の始まりは、00年のシングル「ナンダカンダ」での歌手デビュー。同曲は累積28.7万枚のセールスを記録し、『NHK紅白歌合戦』への出場も果たしている。しかし07年の松田聖子とのデュエット曲「真夏の夜の夢」のリリース後は、しばらく表立った音楽活動からは遠のいていた。
「今もですが、ものすごく恵まれていました。最初にお世話になったレコード会社の社長さんや社員さんが、吉本のスタッフ同様に本当に親切に向き合ってくださいました。右も左もわからない状態の私に、優しいお兄さんやお姉さんのような方たちが、レコーディングから始まりリリースしてプロモーションをして、番組などに出させていただくまでの期間やコンサートなどいつも本当に全力で支えてくださいました。一方で、自分が尊敬する芸人の先輩や仲間とは仕事の内容が違っていて、自分の悩む内容や喜ぶポイントが違うことも増えて戸惑う時もありました。

 音楽も昔から聴くのはずっと好きではありましたが、まさか自分がやるとは思っていませんでした。当時保守的な私に、会社の人はなぜかいろんなジャンルの仕事をチャレンジさせようとしてくれました。吉本新喜劇以外の演技の仕事もそうでしたが、それぞれの現場では育てようとしてくださる優しく厳しい監督さんやスタッフさんにお世話になることが多く、自分が器用にパパッと出来ないのでしごいていただくことも多かったです。自分の尊敬する芸人さんはなんでもパッとできる方々なんですが、自分は上手くできなくて、そんなことが続くと『なぜ不得手な仕事ばかりやらそうとするのだろう』と拗ねる時もありました」(藤井)
  しかし、ノーナ・リーヴスの西寺郷太氏のアドバイスで軽やかな気持ちになったという。

「音楽番組や音楽雑誌に呼んでいただいた時に、『芸人なのになんでCDを出すの?』という質問から始まるんですが、パーソナリティやライターさんに『芸人のくせに』と言われたこともありました。昔からレコードを出していたり、楽器を演奏する芸人さんもいたりするのになぜそう言われるのかわからず、それは『藤井のくせに』のところを『芸人のくせに』と言われているのかと思いなんだか辛く感じたり、熱意を持って携わってくれている音楽のスタッフさんに申し訳ないなと思った時期もありました。音楽活動をしていない間は忘れていたのですが、後に再開する際にノーナ・リーヴスの西寺郷太さんから『笑いはリズムやテンポが大切ですよね、芸人さんと音楽は近いところにあるんですよ。昔から芸人さんが演奏したり、歌ったりするのは、特別不思議なことではないんです』と教えてくださって。なるほど、別にいいんだ!と思えました」(藤井)

提供元: コンフィデンス

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