BTS、TWICEなど世界的アイドルを輩出する韓国 日本と異なるバンド事情

 今の日本の音楽番組ではアイドルとバンドが二大勢力となっているが、韓国では基本的にアイドルが主流だ。日本では本格派バンドとして毎年アリーナツアーを行い、ロックフェスにも出演するFTISLANDやCNBLUEも、新曲リリース時こそ音楽番組に出演するものの、大衆の認知はダンスグループと同じアイドルに含まれる。そうしたなか、BTS(防弾少年団)がビルボードチャートの1位を獲得し世界に羽ばたいた今年、バンドシーンでも、韓国のインディーズバンドHYUKOH(ヒョゴ)がワールドツアーで海外での評価を高めている。韓国におけるロックバンドの位置づけと、今後を考察してみたい。

韓国のロックバンド事情

 日本と韓国のバンドの圧倒的な違いは、ライブ環境にある。日本では友だち同士でバンドを結成し、小さなライブハウスでファンを増やしてメジャーデビューを狙い、デビュー後は、Zepp、ホール、アリーナへとライブ会場やツアー規模をステップアップしていく。しかし、韓国にはライブが行える会場が圧倒的に少ない。弘大(ホンデ)という学生街には下北沢のように小規模のライブハウスが点在し、インディーズバンドが出演しているが、そこからステップアップしていく会場がないため、音楽活動の収入だけでは食べていけずに解散してしまうバンドも少なくない。また、時おりテレビの歌謡番組で見かけるベテランバンドのヒット曲はバラードで、日本のロックバンドとは少々異なるポジショニングである。

 日本では毎年、アリーナツアーを行う人気バンドFTISLANDやCNBLUEも、韓国ではバンドとして出演したり演奏したりする場が限られるため、アイドルとしてドラマやバラエティにも出演する一方で、日本ではライブを中心に活動を行い、ロックバンドらしいオリジナル曲を発表している。この流れで今、日本と韓国で精力的に活動しているのが、彼らと同じ事務所FNCエンターテインメントのN.Flyingと、2PM、GOT7、TWICEが所属するJYPエンターテインメントのDAY6である。

K-POPらしさと2ボーカルの新体制でパワーアップしたN.Flying

 N.Flyingはメインボーカルがラッパーという、ラップ×ロックのニュー・トレンド・バンド。2013年にイ・スンヒョプ(Vo/Rap)、クォン・グァンジン(B)、チャ・フン(G)、キム・ジェヒョン(Dr)の4人で、日本でインディーバンドとして活動後、15年に「ギガマッキョ」で韓国デビュー。16年には「Knock Knock」で日本メジャーデビューを果たした。現在は、国民的人気アイドルWanna Oneを輩出した大ヒットオーディション番組『PRODUCE101 シーズン2』(17年)に出演したユ・フェスンが新メンバーとして加入し、2ボーカル体制の5人組となり、めきめきと実力と人気を高めている。

N.Flying

N.Flying

 彼らの魅力は、確かな演奏力とパワフルなフェスンの歌声とスンヒョプのラップのミクスチャーで、ロックの爽快感を味わわせてくれる点だ。7月に行われた赤坂BLITZの2Days公演は満員。12月には、初の東名阪ツアーが行う予定だ。

 楽曲に関するリスナーのコメントを見ると「力強い声と透き通った声の2ボーカルで、曲全体にメリハリがある」(20代女性/神奈川県)、「K-POPらしい洗練されたサウンド」(40代女性/愛知県)、「テンポがよく、気持ちがアップする。ボーカルの声が好き」(50代女性/東京都)と、そのポジティブな音楽性とボーカル力が評価されている。また、彼らの所属事務所が毎年、ファミリーコンサートを行っていることや、先輩バンドの日本公演のオープニングアクトを務めていることで、弟グループとして認知されている様子もうかがえた。

JYPエンタ初のバンドグループ DAY6は、自作曲で作る世界観が高評価

 DAY6は、J.Y.Park(パク・ジニョン)のプロデュースでスーパーアイドルを世に送り出してきたJYPエンターテインメントの初のバンドである。アイドルを目指し事務所に入った彼ら自身も、バンドとして組織されるのは意外だったそうだが、「バンドならオリジナル曲は必至」というJ.Y.Parkの命で楽器と作詞・作曲を学び、15年に全曲自作曲のミニアルバム『The Day』で韓国デビューを飾った。

 ソンジン(Vo/G)、ジェイ(g/Vo)、ヨンケイ(B/Vo/Rap)、ウォンピル(Key/Vo)、ドウン(Dr)からなる5ピースバンドで、メンバー全員が作詞作曲に携わり、5人のうち4人がメインボーカルを務めるのが、このバンドの特徴でありカラーでもある。18年に自作曲「If 〜また逢えたら〜」で日本デビュー。ドラマ『リピート〜運命を変える10か月〜』主題歌という華々しいデビューを飾り、日本2ndシングル「Stop The Rain」では、生形真一氏(Nothing's Carved In Stone, ELLEGARDEN)をプロデューサーに迎えている。

 一聴するとUK寄りのサウンドという印象を受けるが、作曲するメンバーやメインボーカルの声質によって、楽曲ごとにさまざまな表情を見せる。それもあって、アンケートでも「楽器のスキルの高さが伝わる。Bメロからサビにかけての疾走感のある流れが気に入った」(20代女性/神奈川県)、「メンバーの雰囲気はダンスグループのようだがバンドなのが新鮮。ボーカルが固定じゃないのが良い。全編英語なら世界でも通用しそう」(20代女性/石川県)、「ハイトーンボイスと厚いサウンドが合っている。他の曲も聴いてみたい」(40代女性/愛知県)など、楽曲への評価が高い。10月17日にはJAPAN 1st ALBUM『UNLOCK』を発売したばかり。「音楽のジャンルにとらわれず、演奏し、歌を聴かせていきたい」と考える彼らの意図が込められた、様々なジャンルがミックスされたアルバムに仕上がっている。

アンダーグラウンドから世界へ飛び出したHYUKOH

 韓国でテレビというオーバーグラウンドを主戦場とする前述の2組の対極にあるのが、アンダーグラウンドのインディーズバンドとして活動しているHYUKOH(ヒョゴ)だ。弘大(ホンデ)のライブハウスに出演していたHYUKOHは、14年にデビューするとその独特な音楽性が口コミで広がり、マック・デマルコ、ハウ・トゥ・ドレス・ウェル、アーランド・オイエなど海外アーティストの来韓公演のオープニングアクトに抜擢され、韓国の名だたるロックフェスや日本のサマーソニックにも出演して、洋楽ファンの間でも一躍話題のバンドとなった。

HYUKOH

HYUKOH

 ロック、ファンク、AOR、R&B、ソウル、ヒップホップが混在するサウンドは、「K-POPというより洋楽のよう」(50代男性/福岡県)、「スケールが大きいし、テーマが深い。世界で通用するかも」(50代女性/愛知県)、「去年、サマソニで見た時も最高だった」(20代男性/神奈川県)と、洋楽と肩を並べる世界水準の楽曲とパフォーマンスが評価されている。その印象通り、昨年は30公演を超えるワールドツアーを行い、現在もワールドツアーの真っ最中である(ジャパンツアー:10月15日〜18日)。

 93年生まれのオ・ヒョク(Vo/G)、イム・ドンゴン(B)、イム・ヒョンジェ(G)、イ・インウ(Dr)の4人で構成されるHYUKOHのバンド名は、フロントマンでソングライターのオ・ヒョクの名前を逆さにしたもの。大学教授の両親のもと中国で育った彼は、音楽活動のために高校を卒業と同時に韓国に移住。海外育ちで中国語、韓国語、英語を話す多様な文化が音楽性にも影響しているようだ。また、ユニークなファッションやアートワークでも、カルチャー発信源としても注目されている。

新世代バンドの海外活動に期待!

 アイドルバンドの道を切り拓いてきたFTISLANDも韓国デビュー11年のベテランに。日本ではライブバンドとして確固たる地位を築き、ONE OK ROCKのTakaと楽曲を共作するなど日本のバンドとの交流も深い。そのONE OK ROCKを筆頭に、RADWIMPS、SEKAI NO OWARI、SPYAIRなど多くの日本バンドが今年、韓国公演を行うなど、韓国でも日本のバンドムーブメントが起きつつある。ここで紹介したDAY6やN.Flyingが、今後、日韓でどんな活躍を見せてくれるのか。そして、海外ツアーを積極的に行うHYUKOHは、バンド界のBTS(防弾少年団)になれるのか。韓国バンドの動向に期待したい。

(文/坂本ゆかり)
<調査概要>
調査内容:K-POPに興味・関心を持つ人にDAY6、N.Flying、HYUKOHの楽曲を聴いてもらいその好感と理由を聞いた
調査対象:全国男女10〜50代
サンプル数:2695人
調査期間:2018年10月3日(水)〜10月5日(金)
調査手法:インターネット調査
調査機関:オリコン・モニターリサーチ

提供元: コンフィデンス

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