森川美穂、子育て経て再び歌手活動を本格化 セルフカバーベストで新境地

個人レッスンに講義も、大阪芸大の准教授として活躍

 さて。森川は今、大阪芸術大学の准教授という顔も持つ。かつてボイストレーニングを受けていた先生からお願いされ、最初はやるつもりも、出来る気もまったくなかったのに、先生になってもう10年になる。

「基本的には実技、1人ひとりにボーカルレッスンをします。講義も週に1回1時間半。その準備にも時間がかかりますね。今は2年生50人を受け持っていますが、200人いるコース全体の運営もほかの先生たちとやっていて、入試にも関わり、毎日忙しいですよ」

 森川が教える学生たちは学区内で出逢い、バンドを組み、卒業後も続ける子たちも多いとか。主にインディーズでデビューする場合が多く、そうしたバンドを支援もしている。

「オープンキャンパスなどのイベントでギャラをきちんと払って演奏してもらいます。学生にも、見学に来た高校生にも刺激になりますから。今はほとんどインディーズで活動してメジャーには乗っかれないし、乗っかりたくない子もいます。でも私はチャンスがあるならメジャーに一度乗っかりなさいと言います。インディーズとは違う仕事の流れを体験し、そこからまた自分たちで考えればいいんだと話すんです。うちの学校からメジャーデビューした子では、最近だと日本コロムビアからデビューしたcolor-code(カラーコード)というボーカルダンスユニットのメンバーがいます。レディ・ガガの生肉ドレスを作ったファッションディレクターのニコラ・フォルミケッティがプロデュースしていて、彼女たちも大学でやったコンサートに出てもらいました」

「音楽が好き」という気持ちを大切に、森川が学生に伝えるメッセージ

 音楽を生業にするのが難しい今。それでも音楽をやろうとする学生たちは、「1年生で入って来るときはミュージシャンになりたい、歌い手になりたいって当たり前に言います。それが段々『難しいんだな』と気づくと、『音楽に携わる人になりたい』と言葉が変わってくる」んだとか。

 それでもどうでも学生たちは4年間、音楽を学び続ける。そこに森川が伝えるのはどんな言葉なんだろう?

「大切なのは好きだってことです。それがあれば、いろんなことを乗り越えて行ける。自分が演者じゃなく裏方の仕事をしようとも、音楽が好き!というところがすごく大事だと伝えます」

 好きこそものの上手なれ。昔から言われているこの言葉、これこそが真実だというが、それをどう生かすかは自分次第だとも伝える。

「そして好きなら練習しろと言います。どんなことも、1万時間練習しないとプロにはなれないと言うじゃないですか。1万時間、1日30分しかやらなかったら30何年もかかってしまう。だから寸暇を惜しんで練習しろと。練習は決して裏切らない。技術は身に付くし、自信が生まれ、いろんなことがそれについてくるから、自分の好きなことに時間を費やすんだよ! 学生の今しかできないんだから頑張れって伝えています」

 デビューから間もなくして森川美穂はラジオ番組のDJをスタート。そのおしゃべりは音楽を聴かないリスナーをもファンにする魅力にあふれ、ちょっと毒舌なところが良かった。今もそのおしゃべりは変わらず。いや、年月を重ねて人間力が加わり、ますます素晴らしい。話を伺いながら、こんな先生に教わりたいなぁと思った。そしてもちろん、今こそ彼女の歌を聴いてみたい、そう強く感じた。

文/和田靜香

提供元: コンフィデンス

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