ORICON NEWS
「カルビーの看板は背負わない!」“じゃない方商品”だからこそ愛された『じゃがりこ』27年の軌跡
「細いということにどれだけ価値があるのか?」担当者も予想だにしなかった反響
「1995年の発売開始以来、お客様からもっと長いものが食べたいとか、もっと太いものが食べたいなど、様々なリクエストをいただいてきました。それを受けて、これまでロングサイズや一口サイズなどの商品を発売してきましたが、次は太さにチャレンジしてみようと。太いものに関しては、量産化にあたり、まだ難しい点が多々ある状態なのですが、細いものは、約4年の歳月をかけて開発に成功し、今回、ローソンさんのご協力を得て、テスト販売が実現しました」
限られた地域で、または販売店を限定して、一定期間試験的に販売し消費者の商品に対する反応を調べてから本格販売を行うか否かを検討するテスト販売は、メーカーが新商品を開発した際によく行う手段。そんな中『じゃがりこ』が斬新だったのは、パッケージに「テスト販売中」と堂々と謳い、開発途中であることを想像させる未完成感たっぷりなモノクロのデザイン、商品名に「(仮称)」と付けるなど、テスト販売であることを強調する手法をとったことだった。
「名称に関しては、『ほそりこ』『ほっそりこ』『スマートリコ』など、社内で議論を重ねましたが、考えているうちに、いっそお客様に聞いてみたらいいのではないかということになりまして。テスト販売ということをお客様にハッキリお伝えして、同時に名称を募集し、パッケージも含め、本発売の際にきちんとした完成形に仕上げようということになりました」
一方で「細いということにどれだけの価値があるのか?」という疑念もあったが、実際にテスト販売を実施してみると、Twitter投稿は過去最高のインプレッションを獲得。反響が多く寄せられた。
「意外だったのが小さいお子さんやご高齢の方が『これだと食べやすい』と言ってくださいました。形状はまだまだやっていないことがたくさんあります。例えば、ハート型や星型もできたらいいなと。中身は同じサラダ味なのに、細くするだけで、こんなにみなさまから反響をいただけたので、まだまだ『じゃがりこ』ってやれることがいっぱいあるなと改めて感じています」
「カルビーでは飛び道具的存在」美味しさ以上の“何か”が求められる? 『じゃがりこ』の使命
そんな同商品について、「カルビーでは飛び道具的存在」と語る。
それはこれまで約150種類ものバリエーションを世に送り出してきたことにも表れている。
「スナック菓子は、事前に買う商品を決めてお店に行くものではなく、お店に並んでいるものを見て、買うものを決める“非計画購買”が9割と言われています。ポテトチップスやフルグラといった主力商品がカルビーを引っ張っている中、じゃがりこは、お客様に向けて、常に驚きや楽しさといった新しい刺激をお届けし、元気なブランドであると思っていただけることを目指しています」
食感と味、持ち歩いて食べられることをコンセプトにした便利さ、サラダ味やチーズ味といった定番商品の安定感など、商品のアイデンティティは変えることなく守り続ける一方で、楽しさ、面白さを追求し、常に進化にも挑戦しているのが“じゃがりこスピリッツ”というわけだ。
「みんなにイジってもらえるパーソナリティーを忘れずにいたい」
2007年より会員制ファンサイト「それいけ!じゃがり校」を開設し、ユーザーとともに『アスパラベーコン味』や『ガリバタ醤油味』など、味だけでなく、パッケージデザイン、キャラクター、ダジャレまでを作り上げる新商品開発を毎年実施。昨年3月の「じゃがり校」終了以降も、引き続き公式Twitterでアイデアを募集。直近ではTwitter投票で選ばれた人気フレーバーを復刻する“帰ってきた”シリーズの第2弾商品として、『帰ってきた梅と韓国のり風味』を2月より期間限定発売。さらに、昨年実施された「#みんなで創るじゃがりこ2021」企画に寄せられた6万件以上もの応募・投票の中から選ばれた『味噌バターコーン味』が今年6月、発売予定だ。
現在、Twitterのフォロワー数は、なんと30万人を突破。「細いやつ」の名称募集にも6000件を超すアイデアが寄せられているというが、それほどの人気を確立しているのも「お客様とともに」という“じゃがりこスピリッツ”があってのことだろう。
「これまで少人数で企画・開発にあたってきましたが、おかげさまで数十万人のチームとなりましたので、今後もお客様とともに新商品の開発を目指し、お客様に育てていただけるブランドにしていきたいと思います」
その裏で、「皆さまにいじってもらえるパーソナリティーも忘れずにいたい」という、いかにも『じゃがりこ』らしいこだわりもみせる。アレンジメニューやパッケージデザインを使った創作物など、様々なカタチでも楽しまれているが、そこも“ならでは”の魅力ととらえ、「皆さまにとってツッコミ甲斐のある商品でいたいと思う」と抱負を語る。
さらに3年後に迎える30周年に向けてはこんな夢も描いているという。
「『じゃがりこ』ブランドを担当してきた先輩方から引き継いでいるのが、世界に出ていきたいという夢です。今、アメリカ、中国、シンガポールでは販売していますが、世界を見渡してもあまり類を見ないスナック菓子なので、日本発のオンリーワンの良いお菓子として、世界中に広められたらと思っています」
「世界に出たら、次は宇宙にも行きたいですね」
“食べだしたらキリン(きり)がない”のキャッチコピーで、発売から27年間、美味しさだけでなく、楽しさにもこだわり、成長を続けきた『じゃがりこ』。今後もオリジナリティあふれる“じゃがりこスピリッツ”で、他では味わえないワクワクをもたらしてくれることだろう。
(取材・文/河上いつ子)