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博多土産『めんべい』わずか20年で業界トップに、100年続く老舗菓子ひしめく激戦区でなぜ?
“割れやすさ”は土産菓子の致命傷、それでも「うまさを優先」
当時、博多には辛子明太子の製造会社が多数あったが、辛子明太子が“博多名物”として広く全国に知られるようになったのは1975年、山陽新幹線が博多駅に乗り入れたことがきっかけ。しかし、生ものであるために、遠方に帰る客には買ってもらいにくいという難点もあった。
そこで同社は、「消費期限が長く、常温で持ち運べる明太子を使った博多の新名物を作りたい」という思いからお菓子の開発をスタート。当時は斬新だった“明太子味”に挑戦した。
せんべいに着目したのは、人気のお土産の三大要素といわれる「安い・軽い・美味しい」を兼ね備えていたから。キャッチーなネーミングは、新入社員のアイデアだったという。とはいえ、完成までの道のりは決して楽なものではなかったようだ。同社の広報担当に話を聞いた。
「おせんべいの材料はお米や小麦粉などがありますが、『めんべい』はじゃがいもでんぷんをベースにしています。また、旨味もエキスやパウダーを使うのではなく、自社の明太子にイカ、タコという素材を練り込みました。さらに明太子だけだと塩味がきつくなるので、イカやタコをバランスよく混ぜることで旨味を引き出すよう苦心したそうです。ただ、具を練り込んだおせんべいは、どうしても割れやすく、でも、割れないように調合を変えると、味が落ちてしまう。最終的には、割れやすさは承知のうえで、おいしさにこだわりました」
博多人が「自信をもってオススメできる」、口コミが全国へ拡大
そんな『めんべい』の知名度が全国区に拡大したのは、10年目のこと。口コミによる人気の広がりを受けて、情報番組『がっちりマンデー?』(TBS系)やバラエティ番組『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)などで紹介され、土産売り場での存在感をさらに増していった。
「福岡空港や博多駅には、『め』と大きく書かれた当社の紙袋を持っている方々が大勢歩かれていて、それもさらなる宣伝効果になったかもしれません。見た目は地味かもしれませんが、食べると美味しさに惹かれるというお声をたくさんいただきました」
「ついに叶った!!」SNSで話題、チロルチョコやカルビーとの注目コラボも
さらにコロナ禍で旅行客が減り、大打撃を受けた中でも、土産ではなく“自家消費用”として訴求する『めんべいチップス』や、『めんべい』にデコレーションができる『めんべいお絵かきキット』といった新商品を開発。迎えた20周年企画では、7種類目のレギュラー味『めんべい香味えび』を発売中。さらに夏には、『めんべい』味を再現した一口サイズのせんべい『博多のめ印』も、全国で発売予定という。
「当社は“感動と喜びをずっと提供し続ける”をモットーとしているので、20年経った今でも、どんどん面白いことをしたいという考えは変わっていません。この地位に甘んじないよう、日本中の皆さまに楽しんでもらえる商品を提供できればと考えています」
コロナ禍、元気のない日本を、お菓子の力でどんなふうに盛り上げてくれるのか。『めんべい』の今後の挑戦にますます期待を寄せたい。
(取材、文/河上いつ子)