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音楽業界もまだまだ夢がある? 意外と知らない楽曲印税の仕組み

 10月4日で最初のテレビ放送から20年という歴史を刻んだ大ヒットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(テレビ東京系)。物語の時代設定にあたる2015年を迎えてもなお、新作への期待を集める同作品を代表する音楽といえば、テレビ版のオープニングテーマ「残酷な天使のテーゼ」だ。その作詞者でもある及川眠子が先日のテレビ番組で「(「残酷な〜」の)印税で億稼いだ」と告白し話題を呼んだ。音楽不況といわれる現代にあって、1つの楽曲で“億単位”の金額を生み出す「印税」という仕組み。果たして印税はどのくらいの利益を関係者にもたらすのか、改めてその内訳について紹介してみよう。

原盤印税よりも大きなウエイトを占める著作権印税

  • パチンコ『新世紀エヴァンゲリオン〜最後のシ者〜』イメージソングの「残酷な天使のテーゼ 2009 VERSION」(2009年5月13日発売)

    パチンコ『新世紀エヴァンゲリオン〜最後のシ者〜』イメージソングの「残酷な天使のテーゼ 2009 VERSION」(2009年5月13日発売)

 のっけから“億”なんて金額が飛び出してくれば、さすがに「印税ってすごいなあ」と思わずにはいられない。いくら「CDが売れない」「音楽不況だ」と言われていても「いやいやいや、そんなことないでしょ」と疑惑の目で見てしまいそうになる、というものだ。加えて、カラオケランキングで現在も上位をキープしているゴールデンボンバーの「女々しくて」の印税がかなりの額に上っていることを作詞・作曲した鬼龍院翔が公言したり、スタンダードナンバーとなっている「ロード」を書いた高橋ジョージのもとにはいまだに年間1千万円以上の印税収入があるというから、うらやましいという感情を通り越して呆然としてしまう。

 その印税だが、大きく分けて2つのものが存在する。1つは原盤印税。簡単に言うとCDの売り上げに応じて発生する印税だ。音楽は、CDが売れれば当然その関係者(アーティスト、レコード会社、プロダクションなど)に売れた分の対価がフィードバックされる。1枚当たり○円という契約に基づき手続きが行われていく。このあたりは、通常の小売業と同じだ(ごくまれに、印税契約ではなく、最初に一括して支払われる「買い取り」という契約もあったり、インディーとメジャーでは印税の割合が異なったりもするのだが、ここでは割愛する)。異なるのはそこから先。音楽という“著作物”に「著作権」が存在するのは誰もが知るところだ。この権利に則って、作詞・作曲を手がけた作家(もしくはアーティスト自身)や楽曲の管理を行っている音楽出版社などに対し、楽曲使用料などが支払われていくのが著作権印税というものだ。「音楽ビジネスは権利ビジネス」とよく称されるように、原盤印税よりも大きなウエイトを占めてくるのがこの著作権印税である。

 しかし、これら著作権印税の徴収・分配には煩雑な処理と時間が必要となる。それらを代行し、著作権を管理しているのがJASRAC(日本音楽著作権協会)をはじめとする著作権管理団体だ。ここで徴収された料金が規定の割合のもとに印税として各所へ振り分けられていくわけだが、その際にも様々な取り決め、分配率が存在する。

近年はパチンコ印税で莫大な金が動く

 一般的に有名なのが、放送を通じて楽曲が使われるケースだろう。CMのイメージ曲やドラマのテーマ曲、映画の主題歌、そして当然歌番組などでの歌唱もこのケースに含まれる。これに有線放送などを通して店舗等でBGM的に使用される場合も加わるので、1回1回の金額は微々たるものでも、まとまると“それなりの”額に達するわけだ。ただ悲しいかな、ここで印税の対象となるのは楽曲を手がけた人とそれを管理している団体のみ。作詞・作曲を自身で手がけていなければ、歌ったり演奏しているアーティストに印税が支払われることはない(歌番組での歌唱・演奏については、“出演料”という形での金銭の発生となる)。不平等なようだが、それが“楽曲”にまつわる著作権となれば致し方ないところだ(アーティストに対して保護されるのは肖像権やパブリシティ権などで、上記のケースではそこに抵触する料金の発生というものもないわけではないのだが、こちらもここでは割愛する)。

 カラオケでの楽曲利用にまつわる著作権料も同様だ。「女々しくて」で言えば、どれだけカラオケで歌われようとゴールデンボンバーに著作権印税が支払われることはない。曲を手がけた鬼龍院翔のもとに利用料金が流れていくこととなる。「ロード」もTHE 虎舞竜ではなく、作詞・作曲者である高橋ジョージがそうした印税の支払い対象者となるわけだ。冒頭で例に挙げた「残酷な天使のテーゼ」の作詞者・及川眠子の場合は、こうしたカラオケや有線での根強い人気もさることながら、“パチンコ”台に『エヴァ』が起用されたことが大きかった。パチンコでは効果的に音楽が使われる。しかもその台の導入数は1つのパチンコ店で1台や2台といったものではない。それが全国展開されるのに加え、1つの機種に導入されるとなれば、キャラクターから映像、そして楽曲までまるごとの契約ということになり、それらのロイヤルティの金額が上積みされてくる。だから、金額が膨大なものとなるのだ。

 これらのことからも、大ヒットが生まれればそれを歌った人物よりもそれを作った人物により多くの金額が“のちのち”流れていく可能性は高いと言えるだろう。「一発屋」と揶揄されることも多い芸能界だが、楽曲という“権利”を作り出した人物にとっては、長年にわたって大きな利益を運んできてくれる偉大な「一発」ということになる。ミュージシャンにとって辛い環境にあると言われることの多いミュージックシーンだが、自分で楽曲を手がけることで印税が生み出す“一発逆転”の人生と出会えるかもしれないことを考えれば、まだまだ夢のある業界ではないだろうか。

(文:田井裕規)

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