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“アナ雪”映画の記録的ヒットと日本語サントラの関係は?

“アナ雪”映画の記録的ヒットと日本語サントラの関係は?

  • 『アナと雪の女王』(C)2014 Disney. All Rights Reserved

    『アナと雪の女王』(C)2014 Disney. All Rights Reserved

 ディズニーアニメ映画『アナと雪の女王』が大ヒット中だ。5月12日の興行通信社の発表によると、累計動員1350万人、興収170億円を超えた。4月の段階ですでに『ファインディング・ニモ』(2003年公開)を抜き、日本での洋画アニメ作品ナンバー1を記録し、今もまだまだ動員が伸び続けている。

 ディズニーのミュージカルアニメとしては珍しい姉妹愛を描いた作品で、CGでの緻密な雪の描き方など、映像の美しさが公開前から大きな評判を呼んでいた。そして、実際にふたをあけてみたところ、日本でも大ヒットとなった訳だが、日本では映像の魅力以上に主題歌の「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」がヒットの立役者だった。日本語吹き替えの主題歌がこれだけ受けた洋画アニメは過去になかったように思う。

 今回、日本語主題歌が受けていることで、サントラアルバムが異例のセールスを続けている。3月に英語のオリジナル・サウンドトラック盤を発売。映画公開直後からセールスが爆発し1週間で最高3万1000枚を売り上げるヒットに。ところが、ファンからの熱い要望を受け、5月3日に松たか子や神田沙也加らが歌う日本語サントラ曲9曲を収録した2枚組特別サントラ盤を発売したところ、特別サントラ盤発売週の売り上げは一気に一週間で15万枚に達し、翌週はさらに伸びて16万6000枚になった。日本語曲を追加した特別盤発売後の5倍ものセールス急増ぶりは、まさに日本語サントラが映画大ヒットのけん引役となっていることを証明している。

 また、このサントラ盤は、今週、アルバム総合ランキングで2週連続1位を獲得した。これはアニメ映画として『銀河鉄道999』以来34年8か月ぶりの記録、そして累計売上46.6万枚は『宇宙戦艦ヤマト』を超え、何とアニメサントラ売り上げ歴代1位となっている。

 今、登下校中の小学生に耳を傾けてみてほしい。必ず何人かはこの曲を歌っている。古くは「スーダラ節」から始まり、「およげ! たいやきくん」など、社会現象といわれるヒット曲がいつの時代もある。そんな、時代時代に出現した社会全体を巻き込むヒットソングの域に早くも達している感があるのがこの曲「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」だ。

 実際、「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」のさまざまなランキング(いずれも5月12日付)を見てみると、TVPVオンエア数=松たか子1位、カラオケ=松たか子1位、May.j(エンドソング以下同)3位、i−tunes=松たか子1位、イディナ・メンゼル3位、May.J9位、オリコン着うた=松たか子1位、イディナ・メンゼル3位、オリコン着うたフル=松たか子1位、May.j2位、イディナ・メンゼル3位、レコチョク「着うた」松たか子1位、May.J4位、イディナ・メンゼル5位、レコチョクフル=松たか子1位、May.J2位、イディナ・メンデル4位と様々なランキングを総なめ状態であることがわかる。特にTVPVオンエア数は週間66回で、ここにきて同作過去最高のオンエア数を記録した。2位以下にはJ−POPの大物が並ぶ中での数字だけに、いかにこの曲が世の中で注目され、流れているのかがわかる。また、ゴールデンウイークには全国90の映画館で映画を見ながら一緒に歌おうという企画が催され、主題歌が映画館に足を運ばせるための要因となったことが見てとれるのだ。

 さて、この「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」だが、実はこの作品が大ヒットしたキモはメロディーと訳詞にあったのではないかと、僕は分析する。

 もともとオリジナルの英語の歌に対して自然な口の開け方が表現されたアニメ画。日本語で“ありの ままの〜”と歌っている部分は、英語では“Let It Go,Let It Go”となる。ここのメロディーに日本語の音は6つしか入らない。しかも、口の形がアップになる場面なので、日本語をあてはめる場合も、“Go”の発音と同じ口の形になる母音“お”の言葉を入れないと不自然になる。つまり“ありの/ままの”という言葉は原詞の内容をいかしながら、違和感なく画面とシンクロさせるための最良の選択だったと思える。


 この部分のメロディーなのだが、感動的な盛り上がりのパートであるにも関わらず、実は音域が低めで歌いやすい。だから、子どもから大人まで、誰もが無理することなく声を張り上げて“ありのままの〜”とスカッとしながら歌えるのだ。この訳詞の言葉選びとメロディーの音域、そして松たか子の清廉で清らかな歌声やMay.Jの力強く心の奥に飛び込んでくる歌声が魅力的なこと、これが一つ目のヒット要因だろう。

 もう一つ、歌詞を読みながら気づくことがある。それは歌詞の世界観がある大ヒット曲と同じテーマを歌っていることだ。

 「ありの ままの 姿見せるのよ〜」という歌詞は、アナの姉のエルサが人里離れた雪山の中で自分の能力を目一杯使いながら自由に自分の住む氷の城を築きあげる時、その自由さを喜び歌う歌なのだ。よく考えると、これって「ナンバー1にならなくてもいい 誰もが特別なオンリー1」と歌った「世界に一つだけの花」と同じ自己肯定ソングではないか。今の時代、自己肯定の世界観は共感度を得やすい。その歌詞の世界観への共感があり、さらに、ここにきてヒット規模が拡大し始めているとみる。

 つまり、最初は、訳詞とメロディー、そしてボーカルで人々を引き付け、次のステップは歌詞の内容への共感度が担う。まさしくヒット曲が広がっていくパターンの見本のような広がりを見せているのが「レット・イット・ゴー〜ありのままで〜」という訳だ。このまま順調にいけば、今年の年末に「アナ雪」または「ありのままで」が流行語大賞にノミネートされる可能性もある。映画「アナ雪」と主題歌「ありのままで」はゴールデンウイークを経て、新たな地平に足を踏み入れつつある。

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