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紅白効果で出演歌手がランキング上位に再浮上〜ダークフォースの誕生いまだ健在

紅白効果で出演歌手がランキング上位に再浮上〜ダークフォースの誕生いまだ健在

1月――それは最もランキング変動の大きな月と言っていいだろう。新譜が多いということではない。既発の作品が再び上昇カーブをたどるからだ。年の暮れにテレビ番組などで総括される「1年のヒット曲」の数々。それらに大衆がビビッドに反応した結果がランキングとなって表出される時期、それが1月のヒットランキングと言える。そして、その“中核”に位置するのが、年を締めくくる音楽番組として放送される『NHK紅白歌合戦』だ。『紅白』がヒットランキングにもたらす影響の大きさとはどのようなものなのか、考えてみたい。

「紅白効果」で初のTOP10入りしたアーティストも

  • 福田こうへい

    福田こうへい

 既にさまざまなところで報道されているように、昨年2013年の大晦日に放送された『NHK紅白歌合戦』は、44.5%(第2部、関東地区。ビデオリサーチ調べ)の視聴率を記録。瞬間最高視聴率では、50.7%という数字を残した。50%、すなわち日本中のテレビ視聴世帯の半数が『紅白』にチャンネルを合わせていたことになる。テレビの視聴体系の変化を理由に存在意義が議論されることも少なくない『紅白』だが、年間で最も世の中が観ている番組であることに変わりはないのはさすがだ。

 そして、そんな高い視聴率を背景に、今年の年頭のシングルランキング(2014/01/13付)においても、さまざまな「紅白効果」が確認できる。筆頭は、福田こうへいの「南部蝉しぐれ」。12年10月にリリースされたこの曲は、じわじわと支持が広がり、ロングセラー化していたが、『紅白』での歌唱などが手伝い、63週目にして初のTOP10入り(9位)を果たした。大島優子の“卒業宣言”が話題となったAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」も21位→15位へと再浮上。NMB48の「カモネギックス」も24位→19位へと躍進している。そして、どのようなステージを見せるのかに衆目が集まったLinked Horizonも、「自由への進撃(紅蓮の弓矢/自由の翼/もしこの壁の中が一軒の家だとしたら)」が28位→17位を記録した。

 このほかにも、水樹奈々×T.M.Revolution「革命デュアリズム」が54位→31位、EXILE「EXILE PRIDE〜こんな世界を愛するため〜」が81位→34位、E-girls「ごめんなさいのKissing You」が50位→38位、西野カナ「さよなら」が85位→39位と、『紅白』で歌われた曲が高位へと浮上した。

『あまちゃん』関連作品が大幅ランクアップ

 さらに、今回の『紅白』の目玉企画と目され、演目別の視聴率でもトップを分け合った北島三郎の“大トリ”と、『あまちゃん』メドレーからは、北島が(『紅白』での歌唱曲とは異なるが)新曲「人道」を149位→12位に、『あまちゃん』からは天野春子(小泉今日子)の「潮騒のメモリー」が149位→42位にそれぞれランクイン。『あまちゃん』関連では、『あまちゃん 歌のアルバム』がアルバムランキング185位→37位とTOP100内に返り咲いてもいる。

 だが、「紅白効果」の極めつけは、やはり楽曲のロングセールス化に伴って、それを歌っているアーティストが“全国区”へと知名度を拡大させていく過程を見ることだろう。近年で言えば、植村花菜の「トイレの神様」、秋元順子の「愛のままで…」、すぎもとまさとの「吾亦紅」、秋川雅史の「千の風になって」などがそれにあたる。なかでも、「愛のままで…」は紅白歌唱翌年の2009年の年間4位を記録し、「千の風になって」も紅白翌年2007年の年間1位を記録する大ヒットとなった。もともと楽曲に秘められていたポテンシャルの高さが、『紅白』出場によって引き出され、全国へと拡大していく。加えて、曲が浸透していく過程で、『紅白』を見逃していた層にも作品力が認められ、その効果は放送後当初の数倍にまで膨れ上がるというものだ。「紅白効果」はヒット曲のみならず、歌い継がれる「名曲」をも生み出す。今回の『紅白』にそれを求めるなら、福田こうへいの「南部蝉しぐれ」がその最右翼と言えるだろう。

『紅白』を通して音楽との新たな“出会い”や“発見”を――

 では、『紅白』とほかの歌番組の違いとは何なのだろうか。大きなポイントが出演歌手の選定だ。通常の歌番組(レギュラー枠で放送されているもの)の大半は、「今こんな歌が人気がある(これからヒットしそうだ)」「こんな歌手が注目されている(人気が高まりそうだ)」というコンセプトで構成されている。これに対して、『紅白』は「この1年、どんな歌手の、どんな歌が日本中に流れていたか」が鍵を握っている。年末になると、報道特集として、その年の重大ニュースを振り返る番組がオンエアされるが、その“音楽バージョン”と言っていいのかもしれない。1年の最後の夜に、音楽を聴きながらその年を振り返る――音楽が持つ記憶とリンクしやすい特性を考えれば、ある意味自然な成り行きかもしれない。もちろん、そんな思いとは関係なく、お目当ての歌手が出演しているからとか、一種の習慣的なものといった理由で視聴している世帯もあるだろうが、大晦日という“クライマックス感”と、通常の歌番組とは異なる出演者の衣装(演出も含め)なども手伝って、「あー、今年ももうすぐ終わるんだなあ」としみじみと画面に見入る人の数は決して侮れない。12月現在の“旬”なヒット曲でもない、ただ単なる懐メロでもない、というところに位置する曲――そういう曲を、普段は音楽番組に接する機会の少ない人々(何と言っても国民の半分だ)が、1年を通しての気持ちの整理をしながら耳にするとき、「あ、こんな歌、あったんだ」「この曲、初めて“通し”で聴いたけれど、こういう曲展開になっていたんだ」という“出会い”や“発見”が生じる可能性は大きい。あるいは、今回の『紅白』でグランドフィナーレを飾った北島三郎のように、その圧倒的な存在感や表現力に魅了され、この人のほかの曲も聴いてみようと思う人だって大勢いる(それが、「人道」の好アクションに繋がっていないとは言い切れないはずだ)。

 幅広い年代が視聴する『紅白』においては、常日ごろ音楽を購入していない高齢者の割合も高い。配信ではなく、パッケージメディアに慣れ親しんだ世代にとって、そうした「気になる作品」は、耳に馴染みやすいフレーズや、誰もがすぐに口ずさめるサビなど、(妥当な表現とは言えないかもしれないが)“手軽”に楽しめる要素――演歌や歌謡曲的要素を残したポップスが対象となるケースが多いことだろう。これに対して、メッセージ色豊かな作品やフェス系で高反響を呼びそうなアーティストの楽曲については、「もっと深く知りたい」とばかりにアルバムへと流れる傾向が強いのかもしれない。「紅白効果」によって生まれるヒットにおいて、演歌や歌謡曲系の作品が中心となるのは、そうした『紅白』独自の音楽ファンが大きく関わっていることも忘れてはならない。
(文:田井裕規)

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