「私が50分の円盤や90分の舞台で描きたかった全てが入っている」。シンガー・ソングライターの椎名林檎が帯文にこう寄せるほど、読んでいるうちにいろんな感情が行ったり来たりする小説『1ミリの後悔もない、はずがない』(新潮社)が、きょう31日に発売される。著者の一木けい氏は、今作で小説家デビュー。大の椎名ファンだという一木氏が、初めてメディアのインタビューに応じ、作品に込めた思いの丈を語った。
■中学生の淡い恋を疾走感たっぷりに表現 椎名林檎の手紙に大興奮
同書は全5編立てで構成されているが、ひとつ目の「西国疾走少女」は2016年に『第15回 女による女のためのR-18文学賞』読者賞を受賞した作品。中学生時代の淡い恋と胸の高鳴りが、タイトル通り疾走感あふれる文体で表現されている。女子生徒の由井は厳しい家庭環境に置かれながらも、同級生の男子生徒・桐原を支えにたくましく日々の生活を送る。一木氏は「どん底の生活の中にも、一筋の光があるということを書きたかったんです」と言葉に力を込める。
椎名がボーカルを務めていた5人組バンド・東京事変の楽曲「閃光少女」に背中を押されながら、「西国〜」を執筆。文体よろしく、椎名への思いも流れるように口からあふれ出る。「私は福岡県の室見っていうところで育ったんですけど、林檎さんの『正しい街』という曲の歌詞に『百道浜も君も室見川も』というのがあって、そこから林檎さんを知りました。それ以来、ずっとずっと林檎さんを聴いてきています。『西国疾走少女』を書く時には『閃光少女』を聴いていたんのですが、それが一番救われてきたし、今を大事にしようって思うんです。実は『今際の際とお葬式には、この曲をかけて』と家族と友人に伝えてあります」。
そんな一木氏にとって、帯文と同じくらいにうれしい出来事があった。椎名から直々に手紙が届いたのだ。「いただいた時は、もう踊るくらいでしたね。くるくる回っていました(笑)。早速コピーしまして、執筆の部屋の引き出しに入れて、開けたら見えるような位置に置きました。『よし頑張るぞ』って言って、書くようにしています」。
■執筆のきっかけは“生”への問い デビュー作で紡いだ“一筋の光”
現在は、タイ・バンコクに在住の一木氏だが「『5時に夢中!』は向こうにいても必ず見ていて、あそこに引っかかったニュースだけは知っています(笑)。実は(番組のレギュラーコメンテーターである)岩下尚史さんの一言を作品の中に使わせてもらうくらい、ゴジム大好きなんですよ。観ていて暗い気持ちにならないニュース番組って貴重ですよね」と声を弾ませて打ち明けるなど、作品のみならず自身もかなり魅力的な人物。物語を書くようになったきっかけを聞くと、鋭いまなざしになった。
「自分が何かを書くという気持ちはなかったのですが、大学生の頃に『この人を書きたいな』っていう女の子に出会ったのと、大学の先生と『家畜人ヤプー』の話で盛り上がって『けいさんはおもしろいことを書けると思いますよ』と言っていただいたことが大きかったです。それから子どもを産んで、父と先生と友だち4人が立て続けに亡くなった時に『私なんで生きているんだろう?』と沼にハマってしまって、自分で自分をカウンセリングするように書き始めました。『何のために生きていると思う?』っていろんな人に聞きまわっていたんですけど、本当に納得できる答えなんてそう簡単に出会えるはずないから、書きながら探すっていう感じだったのかもしれないですね」。
今作では“生”や“愛”が大きなテーマとなっているが、同じくらい一木氏が重きを置いているのが“家族”だ。「私の中では、もう次の4冊くらいは濃密に構想が決まっています。アルコール依存症、タイのこと、それから音楽に関する長篇も書きたいです。少年少女の合唱みたいなものをベースに、子どもたちがどういう家庭で育っているかも合わせて書きたい。今回の小説も『恋愛小説』と書いていただいたんですけど、私の中では重たくて暗い家族小説かなという想定でした」。このことからも、今作が扱っている幅の広さをうかがい知ることができる。
登場人物もバラエティーに富んでおり、それぞれのキャラクターについても話し合いたくなるほど、ディテールも凝りに凝った今作。幅広い層の読者の心に寄りそった作品となっているが、特に届けたい人がいる。「この先いいことなんかないって思っている人に読んでもらいたいです。この作品のように一筋の光がいつ出てくるかわからないし、もしかしたらもうあるかもしれない。私だって、林檎さんのことなんて妄想しなかったことが起こっていますから。生きていればいいことがあるよっていうことが伝わればうれしいです」。青春時代から家族でのひとときまで、あらゆる場面で放たれる“一瞬の光”を切り取った本作。椎名林檎ファンはもちろん、数多くの読者の胸を打つ内容に仕上がっている。
■中学生の淡い恋を疾走感たっぷりに表現 椎名林檎の手紙に大興奮
同書は全5編立てで構成されているが、ひとつ目の「西国疾走少女」は2016年に『第15回 女による女のためのR-18文学賞』読者賞を受賞した作品。中学生時代の淡い恋と胸の高鳴りが、タイトル通り疾走感あふれる文体で表現されている。女子生徒の由井は厳しい家庭環境に置かれながらも、同級生の男子生徒・桐原を支えにたくましく日々の生活を送る。一木氏は「どん底の生活の中にも、一筋の光があるということを書きたかったんです」と言葉に力を込める。
椎名がボーカルを務めていた5人組バンド・東京事変の楽曲「閃光少女」に背中を押されながら、「西国〜」を執筆。文体よろしく、椎名への思いも流れるように口からあふれ出る。「私は福岡県の室見っていうところで育ったんですけど、林檎さんの『正しい街』という曲の歌詞に『百道浜も君も室見川も』というのがあって、そこから林檎さんを知りました。それ以来、ずっとずっと林檎さんを聴いてきています。『西国疾走少女』を書く時には『閃光少女』を聴いていたんのですが、それが一番救われてきたし、今を大事にしようって思うんです。実は『今際の際とお葬式には、この曲をかけて』と家族と友人に伝えてあります」。
そんな一木氏にとって、帯文と同じくらいにうれしい出来事があった。椎名から直々に手紙が届いたのだ。「いただいた時は、もう踊るくらいでしたね。くるくる回っていました(笑)。早速コピーしまして、執筆の部屋の引き出しに入れて、開けたら見えるような位置に置きました。『よし頑張るぞ』って言って、書くようにしています」。
■執筆のきっかけは“生”への問い デビュー作で紡いだ“一筋の光”
現在は、タイ・バンコクに在住の一木氏だが「『5時に夢中!』は向こうにいても必ず見ていて、あそこに引っかかったニュースだけは知っています(笑)。実は(番組のレギュラーコメンテーターである)岩下尚史さんの一言を作品の中に使わせてもらうくらい、ゴジム大好きなんですよ。観ていて暗い気持ちにならないニュース番組って貴重ですよね」と声を弾ませて打ち明けるなど、作品のみならず自身もかなり魅力的な人物。物語を書くようになったきっかけを聞くと、鋭いまなざしになった。
「自分が何かを書くという気持ちはなかったのですが、大学生の頃に『この人を書きたいな』っていう女の子に出会ったのと、大学の先生と『家畜人ヤプー』の話で盛り上がって『けいさんはおもしろいことを書けると思いますよ』と言っていただいたことが大きかったです。それから子どもを産んで、父と先生と友だち4人が立て続けに亡くなった時に『私なんで生きているんだろう?』と沼にハマってしまって、自分で自分をカウンセリングするように書き始めました。『何のために生きていると思う?』っていろんな人に聞きまわっていたんですけど、本当に納得できる答えなんてそう簡単に出会えるはずないから、書きながら探すっていう感じだったのかもしれないですね」。
今作では“生”や“愛”が大きなテーマとなっているが、同じくらい一木氏が重きを置いているのが“家族”だ。「私の中では、もう次の4冊くらいは濃密に構想が決まっています。アルコール依存症、タイのこと、それから音楽に関する長篇も書きたいです。少年少女の合唱みたいなものをベースに、子どもたちがどういう家庭で育っているかも合わせて書きたい。今回の小説も『恋愛小説』と書いていただいたんですけど、私の中では重たくて暗い家族小説かなという想定でした」。このことからも、今作が扱っている幅の広さをうかがい知ることができる。
登場人物もバラエティーに富んでおり、それぞれのキャラクターについても話し合いたくなるほど、ディテールも凝りに凝った今作。幅広い層の読者の心に寄りそった作品となっているが、特に届けたい人がいる。「この先いいことなんかないって思っている人に読んでもらいたいです。この作品のように一筋の光がいつ出てくるかわからないし、もしかしたらもうあるかもしれない。私だって、林檎さんのことなんて妄想しなかったことが起こっていますから。生きていればいいことがあるよっていうことが伝わればうれしいです」。青春時代から家族でのひとときまで、あらゆる場面で放たれる“一瞬の光”を切り取った本作。椎名林檎ファンはもちろん、数多くの読者の胸を打つ内容に仕上がっている。
2018/01/31