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ディズニー・アニメーションの求心力(5)60代のクリエイターが活躍

 大ヒット公開中の『モアナと伝説の海』を監督したジョン・マスカー氏(63)&ロン・クレメンツ氏(63)は、ディズニーの中でも大ベテランの巨匠。セル画を使った伝統的な手法で作られた最後の作品となった『リトル・マーメイド』(1989年)でディズニー長編アニメーションの黄金期の扉を開き、『プリンセスと魔法のキス』(2009年)で2Dアニメーションを復活させるという、輝かしい経歴を誇る。そんな2人が5年の制作期間をかけ、初のCGアニメーションに挑戦した作品が『モアナと伝説の海』だ。

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■六十の手習い、CGアニメーションに初挑戦する気概

 この作品に参加した日本人クリエイターの一人、エフェクト担当のアニメーター・成田裕明氏(33)は「CGについてどこまで理解されているかわからなかったので、最初は少し戸惑いました」と明かす。

 「僕らが普段どおりCG用語を使って話していたら、実は伝わっていなかったとか(笑)。後で『それはどういう意味なんだい?』『あ、すみません、こういう意味です』というやりとりもありました。でも、すごいのは、今までCGに関わったことがなくても一度説明したら、『こういうことだよね』とすぐに理解してしまう。すぐに専門用語を覚えてくださって、コミュニケーションもとりやすくなりました」(成田氏)。

 マスカー&クレメンツ監督も「僕らは、アニメーションのすべてのプロセスを再び学ばないといけなかった」と認め、その上で、「僕ら60代にとって、新しい何かをやるのは興味深い。とても新しい経験だった。いままでとは違うエネルギーが湧いてきたよ」と、驚くほど前向き。

 成田氏は「元々手描きアニメーションを作ってこられた方たちなので、ひとつひとつのショットの画の美しさや構成にすごくこだわっていて、とても勉強になりました。『自分たちはこの部分にフォーカスしたいと思っているから、周りはこうしてほしい』といった指示も明確で、『あぁ〜、なるほど』と思うことばかり。それに、普段から面白いんです(笑)。おふたりが話しているとコントみたいになるんです(笑)」と、両監督と仕事ができた喜びと感謝を語る。

 プロデューサーとして制作面の管理などを担当するオスナット・シューラー氏は、「いまディズニーで仕事をしているアニメーターの多くは、最初からCGアニメーションを学んできた人たち。ロンやジョンと仕事をする機会があるなんて思いもしなかったはず。多くのアニメーターたちにとって、それは夢だったの。なぜなら、アニメーションの世界に入ったきっかけは、『リトル・マーメイド』や『アラジン』(92年)だったから。若いアニメーターたちには、この映画ですごく多くのことを学んだと思う」と話していた。

■部分的に手描きアニメーションが復活

 実は『モアナと伝説の海』には、伝統的な手描き要素もある。劇中歌「俺のおかげさ/You're Welcome」のシーンでも大活躍のマウイのタトゥー“ミニ・マウイ”の陽気でコミカルな動きは、手描きアニメーションで作られているのだ。人間の手で紙に絵を描く昔ながらの方法で作られたミニ・マウイを、CGで作られた大きな身体にマッピングして仕上げている。

 担当したのは、エリック・ゴールドバーグ氏(61)。『アラジン』でジーニーなどを生み出し、『プリンセスと魔法のキス』では、ワニのルイスのアニメーションを担当し、自身3度目のアニー賞キャラクター・アニメーション賞を受賞している、彼もまた伝説のアニメーターだ。

 「例えば大きなマウイがお腹の上にいるミニ・マウイをつつくなど、2人がやり取りする場面では、手描きアニメーターとCGアニメーターの間で多くの共同作業が必要とされました。ビッグ・マウイが正しく下を見て、ミニ・マウイが正しく見上げているように、気をつけないといけなかったんです。でも、シーンの中で彼らがどういうやり取りをするか、CGアニメーターたちと一緒に演技を考えていく作業はとても楽しかった」(ゴールドバーグ氏)。

 取材日にゴールドバーグ氏が着ていたシャツは、ミニ・マウイが描かれたオリジナルの図案で型染めを施した世界に一つしかないもの。それも日本で型染めを習得した妻スーザンさんの手作りなんだと、笑顔で明かしてくれた。久しぶりに長編映画で手描きアニメーションが復活した喜びがあふれ出ていた。

 「手描きアニメーションとCGアニメーションのコンビネーションが可能な作品が今後も作れたら、すばらしい。ディズニーは、レガシーにものすごく敬意を払っているスタジオです。それは、とても健全なことだと思う。どんなに新しい作品を作っても、手描きアニメーション作品の価値は変わらないし、そのエッセンスはキャラクターや、そのパーソナリティーに受け継がれていくと思うんです」。

 ベテランにあって若手に足りない、アニメーション映画づくりの経験。ベテランが知らなくて、若手が得意としている日進月歩のCGの技術や知識。そんな強みを生かしあう制作現場だからこそ、多くの人の心を揺さぶる作品が生まれるのかもしれない。



関連写真

  • ディズニー・アニメーション『モアナと伝説の海』(上段左から)ジョン・マスカー&ロン・クレメンツ監督、(下段左から)オスナット・シューラー氏、エリック・ゴールドバーグ氏 (C)ORICON NewS inc.
  • ミニ・マウイを手掛けた伝説のアニメーター、エリック・ゴールドバーグ氏(C)2017 Disney. All Rights Reserved.
  • (左から)オスナット・シューラー氏(プロデューサー)、ロン・クレメンツ監督、ジョン・マスカー監督(C)2017 Disney. All Rights Reserved.
  • ミニ・マウイの下書き (C)ORICON NewS inc.
  • エリック・ゴールドバーグ氏が描いた『アラジン』のジーニー (C)ORICON NewS inc.
  • ディズニー・アニメーション『モアナと伝説の海』より(C)2017 Disney. All Rights Reserved.
  • ディズニー・アニメーション『モアナと伝説の海』ジョン・マスカー監督とロン・クレメンツ監督(2017年1月、LAで撮影) (C)ORICON NewS inc.
  • ディズニー・アニメーション『モアナと伝説の海』プロデューサーのオスナット・シューラー氏(2017年1月、LAで撮影) (C)ORICON NewS inc.
  • ディズニー・アニメーション『モアナと伝説の海』エリック・ゴールドバーグ氏(2017年1月、LAで撮影) (C)ORICON NewS inc.
  • ディズニー・アニメーション『モアナと伝説の海』(左から)オスナット・シューラー氏(プロデューサー)、ロン・クレメンツ監督、ジョン・マスカー監督(C)2017 Disney. All Rights Reserved.

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