ORICON STYLE

2011年02月23日

1曲目から確信…“桑田佳祐、健在!

MUSIC MAN

 とめどなく溢れ出す才能のほとばしりに圧倒される70分――桑田佳祐のニューアルバム『MUSICMAN』はそんなアルバムだ。

 闘病による制作作業の中断と、そこからの復活劇。桑田佳祐渇望論が繰り広げられる中で完成を見たこの作品に、さまざまなメディアが賛辞を寄せることだろう。それらに対して、復帰作に対する“声援”も多少混じっているのでは?と斜めから見てしまう人もいるかもしれない。しかし、そんな色眼鏡は一切不要だ。どんな高評価も、どんな礼賛も、そのまま素直に受け取って間違いない。それだけの傑作であることは、一度耳にするだけですんなりと認めることができるはずだから。

 現代を生きる人々を鼓舞するシニカルな歌詞と独特の節回しで“桑田佳祐、健在!”を示すオープニングナンバー「現代人諸君!!」。透明感溢れるイントロから滑り込んでいく、ロマンティックな流れを有するラブソング「ベガ」。スピーディなリズムとビートで、心地よく展開していくポップ・ロックでありながら“国家の代表者”を痛烈に皮肉る「いいひと〜Do you wanna be loved?〜」にニンマリしていると、次にはダークでウエットな曲調の「SO WHAT?」が耳だけでなく身体に貼りついてくる………といった感じで、めくるめくようにアルバムは進行していく。歌詞に共感し、サウンドのバリエーションに聴き惚れ、唯一無二のボーカルワークに身を任せる――という陳腐な表現がイヤになるほど、ここには贅の極みが満ち充ちており、さらなる展開に心は躍る。

一見不可能に思えるようなことを形にして表現する“才能”

 桑田作品では幾度となく舞台として選ばれてきた鎌倉・湘南を、時空を超えて旅するかのような爽やかなナンバー「古の風吹く杜」。60’sの匂いが香ってくるスケール感溢れる「恋の大泥棒」にはいろいろな仕掛けが詰まっていて、レコーディング時の楽しさまでも伝わってくるようだ。フジテレビ系ドラマ『CONTROL〜犯罪心理捜査〜』で一足早く耳にすることができた「銀河の星屑」が語りかける独特の人生観は、ジプシー調の哀愁を帯びたバイオリンのリフレインとともに深みを増していく。重厚なサウンドと痛烈なアイロニーで楽しませてくれたアルバム『孤独の太陽』にも通ずる、ノスタルジック&ドラマチックな風合いで厭世観(えんせい・かん※人生を価値のないものと思うこと)までをも操ってしまった「グッバイ・ワルツ」。同じ“別れ”でもポップスの極みでさらりと、でもセンチメンタルに彩ってくれるのは「君にサヨナラを」。アルバムの折り返し地点に配されたこの2曲のコントラストにもしてやられる。

 甲子園の阪神戦!?の中継音声が間奏に流れるというユニークなスタイルを採った「OSAKA LADY BLUES〜大阪レディ・ブルース〜」では、曲に耳を傾ける前に、まず歌詞だけを読み込んでほしい。関西弁がフィーチャーされたこんなユニークな歌詞を、どうやって歌うんだろうという素朴な疑問が湧いてくるはずだ。そして、曲を聴いて驚くと同時に納得するという二重構造。一見不可能に思えるようなことをしっかりと形にして示してくれるのが桑田佳祐という“才能”なのである。

 先行シングルとして(それもかなり贅沢な内容のシングルとして)発表されていた「EARLY IN THE MORNING〜旅立ちの朝〜」と「本当は怖い愛とロマンス」の持つ“愛のカタチ”のポップさについては改めて記すまでもないだろう。この2曲の間に収まっている「傷だらけの天使」では、男同士の友情がテーマとなっている。ポンと肩に手をかけてくれるようなぬくもりが心地いい。心が疲れた日には側に置いておきたい曲だ。

“音楽の女神”に認められた彼だからこその作品

MUSIC MAN

 桑田佳祐復活伝説の幕開けとなった昨年末の『第61回 NHK紅白歌合戦』で、最初に披露されたナンバーが「それ行けベイビー!!」。軽快なタイトルそのままに、エレキギター1本(&ハーモニカ)の弾き語りで展開していく、ストレートなフォーク・ロック調がこれまたすんなりと心に溶け込むが、そこには、桑田自身を含むあらゆる人へのエールが見て取れる。ある意味、桑田らしいジャンクで遊び心いっぱいの曲と言えるのが「狂った女」だ。間奏の大胆な展開やエンディングのオマケ的なアプローチなど、細かいところまで聴く者の耳を捉えて離さない“サービス精神のかたまり”に拍手。そんな荒々しさの次には、洗練されたヨーロッパ映画のサウンドトラックのような伸びやかなフレーズをまとった「悲しみよこんにちは」が登場。1曲ごとにあっちへこっちへと心が振り回されていくが、締めくくりのナンバー「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」では、現実世界へとしっかり着地を決めさせてくれる。力強いメッセージと広がりのある重厚なバラードのエンディングには、感動を抑えることができないはずだ。

 「仲間たちとの技術、気持ちのつながりでできた“総力戦”のようなアルバム」「いろんな音楽を作り、自信と後悔を繰り返して到達した世界」と桑田自身は語っている。確かに、たくさんの音楽と触れ合うことで、さまざまな音楽仲間と出会い、音楽の女神に認められた彼だからこそ完成させることのできた作品なのかもしれない。あらゆる音楽の要素が入り乱れながらも、整然と主張し、ファンタジー的な歌詞の展開の中にも聴く者の心に刺さるフレーズが散りばめられている。音楽の持つ偉大なる“力”がここには確かに存在している。待っていてよかった。信じていてよかったと言える“逸品”がいよいよ世に出る。さあ、真の“MUSICMAN”桑田佳祐の才能のほとばしりに圧倒されてくれ!

(文:田井裕規)

RELEASE

MUSICMAN【初回生産限定“MUSICMAN”Perfect Box】

MUSICMAN【初回生産限定“MUSICMAN”Perfect Box】
桑田佳祐
2011/02/23[アルバム]
¥4,500(税込)
ビクターエンタテインメント
品番:VIZL-560

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MUSICMAN【通常盤】

MUSICMAN【通常盤】
桑田佳祐
2011/02/23[アルバム]
¥3,300(税込)
ビクターエンタテインメント
品番:VICL-63600

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MUSICMAN【アナログ盤】

MUSICMAN【アナログ盤】
桑田佳祐
2011/02/23[アルバム]
¥3,900(税込)
ビクターエンタテインメント
品番:VIJL-60700/1

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収録曲

PROFILE

  • 桑田佳祐
  • 1956年2月26日生まれ、神奈川県出身。日本を代表するグループ・サザンオールスターズとして、1978年6月にシングル「勝手にシンドバッド」でデビュー。代表作は「いとしのエリー」「TSUNAMI」など。また1987年に、シングル「悲しい気持ち」でソロデビュー。「波乗りジョニー」「白い恋人達」などがミリオンセラーとなる。
  • 1978年06月25日、サザンオールスターズとしてシングル「勝手にシンドバッド」でデビュー。
  • 1987年10月06日、シングル「悲しい気持ち」でソロデビュー。最高位2位、約35万枚のヒットに。
  • 1988年03月16日、シングル「いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)」をリリース。最高位2位、24万枚を超えるヒットに。
  • 1988年07月09日、アルバム『Keisuke Kuwata』をリリース。最高位1位、65万枚を超えるヒットに。
  • 1990年9月8日、映画『稲村ジェーン』で監督を務める。
  • 1992年06月27日、アルバム『フロム イエスタデイ』をリリース。最高位2位、約110万枚の大ヒットに。
  • 1993年10月06日、シングル「真夜中のダンディー」をリリース。最高位1位、約71万枚のヒットに。
  • 1994年08月24日、シングル「月」をリリース。最高位4位、約35万枚のヒットに。
  • 1994年09月23日、アルバム『孤独の太陽』をリリース。最高位1位、約87万枚の大ヒットに。
  • 1994年10月31日、シングル「祭りのあと」をリリース。最高位2位、約81万枚のヒットに。
  • 1995年01月23日、桑田佳祐&Mr.Childrenとしてシングル「奇跡の地球」をリリース。最高位1位、約172万枚の大ヒットに。
  • 2001年07月04日、シングル「波乗りジョニー」をリリース。111万枚を超える大ヒットに。
  • 2001年10月24日、シングル「白い恋人達」をリリース。最高位1位、123万枚を超える大ヒットに。
  • 2002年06月26日、シングル「東京」をリリース。最高位1位、約55万枚のヒットに。
  • 2002年09月26日、アルバム『ROCK AND ROLL HERO』をリリース。最高位2位、約64万枚のヒットに。
  • 2002年11月27日、ベストアルバム『TOP OF THE POPS』をリリース。最高位1位、約170万枚の大ヒットに。
  • 2007年05月16日、シングル「明日晴れるかな」をリリース。5年ぶりのソロシングル初登場1位を獲得。約36万枚のヒットに。ソロ作の4作連続1位歴代単独トップとなる。
  • 2007年08月22日、シングル「風の詩を聴かせて」をリリース。ソロアーティストの5作連続1位は、史上2人目。
  • 2007年12月05日、シングル「ダーリン」をリリース。
  • 2009年11月29日、CM『UL・OS(ウル・オス)』(大塚製薬)に出演。
  • 2009年12月09日、シングル「君にサヨナラを」をリリース。最高位1位、約11万枚のヒット に。
  • 2010年08月25日、シングル「本当は怖い愛とロマンス」をリリース。最高位2位。
  • 2011年02月23日、アルバム『MUSICMAN』をリリース。

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