ORICON STYLE

2008年02月27日
最強のミュージックマンが音楽を語る!! vol.3
ビクターエンターテイネンメント執行役員Victor Records長植田勝教氏
profile

植田 勝教 氏
1982年ビクター音楽産業(現ビクターエンタテインメント)入社。洋楽宣伝業務5年〜編成業務5年〜洋楽部長を経て、6年前から邦楽制作宣伝。現在は執行役員 Victor Records長。編成担当として直接手がけた作品に、レイ・チャールズ『エリー・マイ・ラブ』、カヴァーガールズ『ショウ・ミー』、シニータ『TOY BOY』、ハロウィン他欧州へヴィーメタルものなど。

「ナイアガラ音頭」/布谷文夫withナイアガラ社中 「ナイアガラ音頭」/布谷文夫withナイアガラ社中

 若かりし頃最も熱心に聴いたラジオ番組を一つ、と言われれば、迷うことなく答えは“GO!GO! NIAGARA”だ。月曜深夜三時は、必ずカセット録音しつつ、なおかつ生でラジオにかじりついていた。『ニッポンイチの風邪ひきオトコ、Each Ohtaki』こと大瀧詠一さんの愛情たっぷりの語り口で、キャロル・キング、スペクターからニューオリンズ、クレイジーまでホントに色んな音楽の愉しさ、面白さを教えてもらった。当然大瀧さんとその周辺の音楽もへヴィーに聴きこんでいたが、インパクトの強さだったらこの曲。本物のお囃子・合いの手にのって、 Blues Creationのヴォーカリストだった布谷さんが、『新民謡歌手』に変身してこぶし炸裂しまくり、坂本教授のクラビネットが鳴り響く中、ハックルバック田中章弘も鮮やかにチョッパ−をキメル音頭もの!というアバンギャルドというか、サイコーにぶっ飛んだ曲。この辺から私もNiagaraの底なしの沼に完全に入り込んでいくのでした。そういや、ニッポン放送の、喉自慢大会まで行きましたね。

「Communication」/ボビー・ウーマック 「Communication」/ボビー・ウーマック

 雑食性で何でも聴いていた中高生もだんだんと自分の好みを自覚するようになる。 Humble Pie、 Faces、 南部、なんかクロイものが好きなんだなあ(何故か一方でNiagaraな訳ですが)・・・で行き着いたのが大学時代のSOULスナックでのバイト。 マスター直輸入のシングル盤がぎっしり詰まったジュークボックスで一番好きだったのがBobby Womackの「That's The Way I Feel About Cha」。
粘りつくようなギターのリフレインと、何といってもその声、声、声。ちょうど、必殺の新作『The Poet』が出たこともあって、Marvin, Dells, Zapp なんかと並んでBWは当時の私の最大のアイドルになったのでした。余談ながらこのジュークボックスとは、その後原宿某氏のお宅で再会を果たし、更には乃木坂G.で三度の出会い、何百回とGood Old Soul Musicを愉しませてくれたのでした。今何処?合掌to Mr.Itoi@Captain

『マービン・ゲイ ライブ』/マービン・ゲイ

 結局、一人、となれば、やっぱりこの人か。理由は、曲がいい、声がいい、とにかくすべてカッコいいからだ。「What's Going On」「Let's Get It On」「I Want You」と続く70年代の3作はソラでいけるほど聴いた作品だが、敢えて、1曲のスサマジサ、でこれ、74年に発表された米国Oaklandでのライブアルバム。この時代のMarvinの勢い、人気の凄さがクライマックスの「What's Going On」にすべて凝縮されていると感じるから。力強さと艶にあふれたMarvinの唄声と、Ed Green、 James Jamerson & David T.の鉄壁のリズムセクション、そして、オーディエンスの盛り上がり。ソウル・ミュージックのライブに求めるグルーヴ、高揚感、全てが存在する。サザンソウルの汗臭さじゃない、スタンダップ・コーラス・グループの粋とも違う、圧倒的なスターがそこにいるのだ。

ビクターエンタテインメント(株) 執行役員スピードースターレコーズ長豊島  直己氏

豊島 直己 氏
1976年、ビクターエンタテインメント(株)入社。営業部、洋楽部を経て80年インビテーションレーベル宣伝に所属。創成期の邦楽ロックやジャズ、主にサザンオールスターズ、阿川泰子、BUCKーTICK等を担当。97年にスピードスターレコーズ制作部長。03年同部本部長を経て、現在、執行役員スピードスターレコーズ長。主な担当はレミオロメン、くるり、Cocco等。

「抱きしめたい』(シングル盤)/ザ・ビートルズ 「抱きしめたい』(シングル盤)/ザ・ビートルズ

 時はエレキ・ギター・ブームで、ベンチャーズなどのエレキ・インスト物を聴いていました。ある日、家族団欒でテレビを見ていた時、たまたまエド・サリバ ンショーが放映されていて、ゲストにビートルズが登場。この曲を演奏しました。
もう、ビックリ!まずはエレキギターを演奏しながら歌うことに、新鮮さを感じました。うるさいという噂は聞いていましたが、激しさだけではない、スピード感、洗練されたスタイリッシュ感、そして何よりも曲自体に、胸に込み上げて来る甘酸っぱさがありました。
(後になって、「そういう雰囲気を《ポップ》と言うのだな」 と思いました)。とにかくあまりに新鮮な衝撃に、翌日ドーナツ盤を購入。
鏡を見ながら前髪を下ろし、オカッパ頭で曲を流しながら踊っているところを、 親に見つかり、殴られました(笑)。
まあ、それ以来のロック街道まっしぐら は、言うまでもありません。

『Led Zeppelin 3』/Led Zeppelin 『Led Zeppelin 3』/Led Zeppelin

 17才の11月、リリース直後に、噂のゼップ初体験(既にアルバム3枚目)。ソラリゼーションのかかった、ジャケットのメンバーフォト。不気味でした。特にロバ ート・プラント、化け物みたい!1曲目『移民の歌』、期待にたがわない、化け物の雄叫び。
4曲目『貴方を愛し続けて』、スローなテンポでスタート。徐々に盛り上がって来る・・・体験したことのないヘビーなサウンドの中で表現されるのは、抑えきれない情念の叫び、絶望、焦燥感。そして胸がかきむしられるギター、曲は最高のクライマックスを迎え終了します。正に驚愕でした。後にこの曲の醸し出す、独特な《魂の叫び》とでも言うべき雰囲気の原点は、黒人のブルースと言うモノであることを知りました。そして、このアルバムのこの曲をきっかけに、音楽のリスニング範囲は、ブルース、ソウル、ジャズと広がって行くことになりました。

『ありがとう』/ 小坂忠  『ありがとう』/ 小坂忠 

 当時、細野晴臣氏を筆頭に(はっぴいえんど)のメンバーが参加しているということで、まあフォークシンガーのアルバムなんだろうなと思って聞きました。まずサウンドが独特なアコースティックな空気感の中で、小坂忠さんの歌と渾然一体と成ってグルーヴしていることが、一般的なフォークとは圧倒的に一線を画しているなと感じ、そこに魅了されました。 そしてそこで歌われている詞の世界感が、また独特でした。 四季折々の田舎の情景描写と、そこに生活している人達の心象風景が中心です。 どこの国の田舎なのか、日本のような、そうでないような不思議な空間です。それ以前に個人的に体験したロックのノリとは明らかに違うし、更にフォークでもない違ったロックな雰囲気を感じました。今で言う《癒し》のようなことでしょうか(笑)。 僕の友人の何人かは、このアルバムに影響され、ドロップアウトとか、就職せずに田舎に引きこもり、人間本来の生き方を目指すとか、いろいろいましたね。 僕にはこれまた、この後にジェームス・テイラー、ジャクソン・ブラウン等のアコースティック系のロックにリスニングの範囲を広げて行く、きっかけのアルバムでした。

株式会社テイチクエンタテインメント真田佳明氏

真田 佳明 氏
1972年早稲田大学政経学部政治学科卒業後、テイチク(株)入社。洋楽宣伝を経て邦楽制作を担当。「BAIDIS」レーベルを設立しPERSONZ、sionなどを手がける。1992年、東芝EMI(株)(現界MIミュージック・ジャパン)移籍。wands、大黒摩季のヒットを手がけたあと、VIRGIN 本部本部長として宇多田ヒカル、椎名林檎などを送り出す。2001年に取締役、2003年VIRGIN MUSIC Co. プレジデント就任。acid man、林明日香、RADWIMPS」などの新人を輩出。2007年4月 株式会社テイチクエンタテインメント インペリアルレコード制作宣伝本部長に就任、現在に至る。  


『Hot Five & Hot Seven』/Louis Armstrong 『Hot Five & Hot Seven』/Louis Armstrong

 小学校5年生の時トランペットを手にした私は、このことで自分の人生が変わっていくことを認識するわけもなかった。中学・高校とブラスバンド部に入りほとんどの時間をトランペット演奏に費やしていた。大学に入ってもトランペットをプレイできるサークルを探した。そして、今までの音楽とはまったく異なるジャズのサークルに入った。そこで出会ったのがこのレコードだった。もちろん、彼を知らないわけではなかった。知っていたのは「ハロー・ドーリー」「セシボン」などのポピュラー・ミュージックをプレイする彼だった。しかし、このアルバムで繰り広げられる彼の音楽は今まで聞いてきたものとはまったく別世界だった。そこには、この新しい世界にはまり込んでいく自分があった。このレコードは私のその後の人生が音楽へと傾いていくきっかけになった。


『Show Case』/Vic Dickenson 『Show Case』/Vic Dickenson

 サッチモを聞けば聞くほどその素晴らしさに自信を喪失していたころ、この洗練された音楽にどっぷりとつかっていた。いまだに、これほど回数を重ねて聞きこんだレコードやCDは存在しない。ルビー・ブラフの息遣いまでもコピーしたくて文字通り昼夜の別なく聴きまくっていた。ヴィックのトロンボーンやエド・ホールのクラリネットを見事にコピーしてきた先輩たちに迷惑をかけたくなくて死に物狂いで聴きまくったものだ。今でも、ほとんどの曲の他の楽器のプレイまでも口ずさめるほど。また、このレコードはそれに値する素晴らしい演奏とセンスが記録されている。そして、私の進むべき道はプレイヤーではないと念を押されたレコードでもある。


『First Love』/宇多田ヒカル

 レコード会社のスタッフとなり、幸いなことにいくつかのミリオン・ヒットも経験することができた。その中の一枚がこのアルバム。デビュー曲「Automatic」で十二分にその才能を世間に知らしめた彼女が、更に強力な天才性を余すところなく発揮している。日本の音楽シーンに衝撃を与えた作品。従って、私が何を論評しようがこの作品への評価は既になされている、というよりもその売上枚数が全てを物語っていると思う。そして私にとっては、この音楽の近くにいたことでその後の音楽人生が変化していくのだ。今でもこの作品や彼女のその後の作品が、私の音楽人生に新たなる指針を与えてくれている。
トランペットを手にした時には気づかなかった音楽人生の幕開けの音だったが、私のクロージング・テーマは果たしていつ聞こえて来るのだろうか。