桜=春=卒業という流れが生まれた近年の音楽シーン
 今でこそ毎年のように新しい“卒業”ソングが生まれるけれど、シンガーソングライターが登場するまで、この分野は決して充実していたわけではない。それは卒業というものが、個人の思い入れにリンクするものであり、卒業を経験した人にダイレクトに届くような歌詞を歌謡曲の作家(いわゆる専業作詞家)が手がけなかったからだ。それが、1970年代に入ってシンガーソングライターのポジションが確立されると、彼らは自分の“卒業”に対する想いを歌詞にしたため、曲にのせて歌うようになった。このとき、卒業ソングは「仰げば尊し」や「螢の光」といった学校唱歌からポピュラーソングへと大きくスライドしていったことになる。
 今回のアンケートで最も「卒業シーズンに聴きたい曲」として選ばれたのは、レミオロメンの「3月9日」。もともとは友人の結婚式のために作られた“お祝いの歌”だが、この3月9日という日が彼らにとって節目の日となっていったことや、季節感も含めて“卒業”の代名詞的歌へと進化したようだ。「応援したくなる気持ちと別れを惜しむ気持ちが書かれた歌詞が多い」(大阪府・10代男性)と、1980〜1990年代にかけて歌われた長渕剛の「乾杯」に近いニュアンスなのかもしれない。
  2位にはユーミンが荒井由実時代に作った永遠のスタンダード「卒業写真」がランクイン。比較的近年の曲が挙げられる中で、海援隊の「贈る言葉」と並んで1970年代からの選出。時代が移っても鮮度を失わないこの2曲(「想い出がいっぱい」なども入るんだろうけど)は、やはり“別格”“定番”ということだろう。

3位は尾崎豊の「卒業」。ソフトでセンチメンタルなアプローチの多かった卒業ソングに、鋭利で攻撃的な楽曲をぶつけてきた尾崎の出世作。学校のための“卒業”ではなく、自分自身のための“卒業”というロジックが多くの共感を呼び、その後の学園ソングに多大なる影響を与えたことでも印象的な1曲だ。 ちなみに、この曲が発表された1985年の春は、「卒業」というタイトルの曲が一斉に4曲誕生し話題になったことでも有名。10位の斉藤由貴「卒業」もそのうちの1曲である。

 4位は2003年の大ヒット曲「さくら(独唱)」。森山直太朗の名を世に知れ渡らせたこの曲の発売は3月5日。アルバムで好評を博したことによるシングルカットだったが、ヒットチャートを駆けのぼったのは卒業式シーズンの少し後、ちょうど“桜前線”が北上していくのに合わせるかのように全国へと広がっていった。「卒業式で歌った曲だから」(佐賀県・10代女性)と、2003年春の卒業式でこの曲を歌った人には、より鮮烈な思い出のある曲かもしれない。

 5位も同じ“桜”をモチーフにしたコブクロの原点「桜」。「ちょっと切ない歌詞が、卒業の別れを連想させる」(愛知県・10代女性)と、7位に入ったケツメイシの「さくら」もそうであるように、桜=春=卒業という流れが生まれるのだろう。その一瞬にして散ってしまう儚い運命が卒業の持つセンチメンタリズムをより増長させるのだろうか。

コブクロ
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スピッツの写真 ゆず
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卒業ソングの“切り札”を持つアーティストがランクイン
一方、「卒業シーズンに似合うアーティスト」としてNo.1に選ばれたのは、コブクロ。彼らにはこの他にも「YELL〜 エール〜」や「ここにしか咲かない花」など背中を押してくれる曲が 多数あり、そうした背景も“門出の場”にふさわしいアーティストとして認知されているのかもしれない。

 そういう意味では、2位以下でピックアップされたアーティストも、“包み込む”というよりは“背中を押してくれる”という曲調のイメージが強い。「Tomorrow never knows」のMr.Children、「栄光の架橋」のゆず、「空も飛べるはず」のスピッツ、「旅立ちの日に・・・」を歌った川嶋あい、「未来予想図II」のDREAMS COME TRUEなど、いずれもが卒業ソングの“切り札”を持つアーティストが並んだ。

  EXILEの「道」をはじめ、FUNKY MONKEY BABYS「Lovin' Life」やアフロマニア「永遠に」、GReeeeN「道」など、今年もこの季節にぴったりの曲が続々とリリースされている。この中から新たな“卒業の名曲”は生まれるのだろうか。
(文:田井裕規)


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【調査方法】
216日(金)〜219日(月)、自社アンケート・パネル【オリコン・モニターリサーチ】による全国の10代、20代、30代の男女、計1,200人にインターネット調査したもの。