ORICON STYLE

2009年10月21日
何にも寄りかからずに作った曲

――「涙」という曲は、今回のツアー中にできた曲と聞きました。
【森山】 今回は、CDリリースなしで全国ツアーに入ったんですよ。もともとはライブで曲を育てていって、ツアーの経験の中でその解釈が深まっていったり、もっともっと歌うことで“この曲はこんなふうに行きたがっているんだ”とか理解が深まっていくんですね。「涙」は、ツアーで歌っていくうちに、この歌の持っている宇宙というか・・・。涙ってどこから来てどこへ行くのかも知らないのに、涙の良しあしとか実は僕らには到底判断できないものなんじゃないか?って、歌いながら気づかされることがあって。実はこの歌の答えは何も出してないんです。ただ、そんなふうに感じているってことを歌っているんだけど、実はそんな想いってみんなの潜在的なところにあるんじゃないか?と。僕たちがなぜ生まれて、死んだあとにどこに行くかわからないように、この涙って、僕たちそのものを表しているなと、歌いながら気づかされる日があるんです。だから僕がどこかで嘘をついていたり偽りがあったりする日にこの曲を歌ったりすると、全くつまらない曲になります。でも自分のイマジネーションが幾重にも広がっているときとか、心の在り方が平穏なときは、この曲を表現していて、すごく楽しいというか。このツアーの中で「涙」という曲が、意外と成長したんですね。ってことは、この曲をリリースしてもいいんじゃないかな?って思ったんですよ。外に出たがっているんじゃないかな?って。


――今回の3曲を聴いて、自分の内部に耳を澄ませているシングルだなと思いました。
【森山】 たぶん・・・それがすべてなんだろうなぁと思うんですよね。僕自身がそれに対してイエス、ノーで答えるとしたら、イエスです。この曲は何も答えを言っていないし、感情移入とかの次元の曲じゃないから、たぶん内に向かっているのかな?と。何か想像できるものがあったり、面白いなと思える感性を持っている人だったら、その人は面白い人なんだろうし、つまらないと真っ先に思った人は、そことは違う価値観を持って生きている人じゃないかな?って思うんです。それくらい何にも寄りかからずに作って歌っている曲です。


ライブで培ったもの、そのリアリティを投影したい

――この3曲に共通していることはあるんですか?
【森山】 まず僕と御徒町凧で作っていることと、作った時期も似ていますね。あとは「ひとりごと」も「ベランダで虹を見た」も、ライブで育った曲とういうことです。「ベランダで虹を見た」は、ライブの1曲目に歌う曲なんですよ。本当は(シングル収録曲として)違うものを用意していたんですけど、ライブで培ったもののリアリティをシングルに投影したいということで、この曲になったんです。


――そのツアータイトル“どこまで細部になれるだろう”が、歌詞に出てきますよね。
【森山】 これは御徒町が書いた縦書きの詩なんですけど、その縦書きの1行が抜粋されてツアータイトルになったんで、ポエトリー・リーディングみたいな感じで添えてみました。


――なぜ3曲の共通点を聞いたかというと、私の中でこの3曲は繋がっているような気がしたからなんです。「ベランダで虹を見た」では、“胸は感情に支配され”という言葉が歌われていて、「ひとりごと」は、なぜかわからないけど聴いていたらドキドキしてくるんですよ。それって現実として感情に支配されているってことで、「涙」という曲では、その涙がどこからくるのか?という疑問を投げかけている。涙というものには何かしらの感情があると思うんです。
【森山】 僕は、あくまで歌の観点ですが、歌っていて「涙」も「ひとりごと」も、自分の心の静寂に立ち返ってもまだまだ理想の表現には辿り着けない、個人的には難易度の高い曲だったりするんですよね。でも、ライブをやりながら考えるんです。“表現って何だろう?”って。もしかしたら、この想いを伝えたい、こうあってほしい、ここにいる自分を見つけてほしいとか、いろんなモチベーションがあると思うんだけど、きっと時を重ねるにつれ、何でもないものになるという状態。要するに自分たちが人間である前に生き物である、そういう響きを感じ合えるような空間だったり元になる表現だったりを、性別も歳の差も国籍も、自分たちの立場も関係なく、僕が歌い手であることさえも関係ないような、そんな空間になることが、きっと表現の最大の役割であるような気が、このツアーを通じて僕はしていて。その中にもちろん人間的な要素はたくさんあるので、常に真っ白な状態ではないんですけれどね。弱さとか喜怒哀楽とか、お茶目な一面もあると思うんだけれども、まずその前に生き物として、ということを捨てたくない自分がどこかにいるんです。そのモチベーションを上げてくれるのが「涙」であり「ひとりごと」であるわけです。


僕は感覚的な大雑把な人間

――細胞レベルですね・・・。
【森山】 そうなんですかね?そこまで行っちゃうと僕には手に負えない話になっちゃうからやめときますけど(笑)。


――御徒町さんがブログで“宇宙について”語っていたのですが、やはり同じものを作っている人は、心のベクトルが同じ方向を向くのかなと。
【森山】 僕自身は感覚的な大雑把な人間で、彼は繊細で字詰めでものを潰していくタイプの人間。でもそれを辿っていくと、逆に僕よりも超感覚的なんですよね。僕なんかの感覚は実は、意外といろんなものを理論立てていかないと怖いという臆病な部分があったりするし。そういう意味ではタイプも違うし、一周して同じところにいる感じなんで、話せば話すほど、とりとめのない話になって言っちゃったりしますけどね。


――お2人だと、いつも話が尽きないんですね。
【森山】 まあでも、僕はだいたい寝ていますけどね。彼が話しているときは聞いているようなふりをして“確かに”とか言いながら(笑)。

(文: 三沢千晶)
Release
『涙』【初回限定盤】

『涙』【初回限定盤】
森山直太朗
発売日:2009/10/21[シングル]
価格:¥1,500(税込)
NAYUTAWAVE RECORDS
品番:PCH-89063
CDを購入する(Amazon) 着うた配信 このCDについて語ろう

『涙』【通常盤】

『涙』【通常盤】
森山直太朗
発売日:2009/10/21[シングル]
価格:¥1,200(税込)
NAYUTAWAVE RECORDS
品番:UPCH-80151
CDを購入する(Amazon)

Profile

2002年10月2日、アルバム『乾いた唄は魚の餌にちょうどいい』でメジャーデビュー。2003年の「さくら(独唱)」など、数々のヒット作品をリリースする。
2008年1月30日、シングル「スノウドロップ」をリリース。
2008年3月05日、アルバム『諸君!!』をリリース。
2008年8月27日、シングル「生きてることが辛いなら」をリリース。
2009年10月21日、16thシングル「涙」をリリース。

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