ORICON STYLE

2006年08月09日
YUKISPECIAL INTERVIEW

『ハチミツとクローバー』を頭に入れて・・・

――この曲はどのように作られたんですか?
【YUKI】 ずっとライブを一緒にやっているBand ASTROの皆とスタジオに入って、アレンジをしながら詰めていったんですけど、キーボードのみなちんによる曲の解釈が素晴らしくて、そのピアノに引っ張られた感じはあるかもしれないですね。あの解釈が、さらに情けないほうに持っていってくれているんです。そのときの気持ちや感情が入った仮歌がとても良くて、そのあと本番の歌入れをもう一度やったんですけど、この切羽詰まった感じがどうしても出なかったんです。だから仮歌をそのまま使いました。歌って感情なんだな、って改めて思い知らされる曲でした。


――曲を作るとき、『ハチミツとクローバー』という以外に、何かテーマはあったんですか?
【YUKI】 情けない自分、かっこ悪い自分、というのをそのまま歌に出そうというのがありました。どうしようもないなあ・・・・・・っていう歌にしたかったんです。前回の「ドラマチック」の時はもっと表面的に“青い”感じで、青春ストーリーというのがいいなと思ってああいう詞にしたんですけど、「ふがいないや」はもう少し内面に入っていったほうがおもしろいと思ったんです。漫画はずっと読んでいたので、お話の続きはわかっていたんです。だからシリアスな部分ももう読んでいて、それも頭に入れて書きました。私の中に『ハチミツとクローバー』はちゃんと入っているので特別に意識しなくてもその形にはなるんです。


──歌詞は、『ハチミツとクローバー』のストーリーと一緒で、「ドラマチック」のときよりもシリアスでヘビーになっていますよね。
【YUKI】 私、漫画が大好きなんですけど、特に後半から裏切りというか、“えー!?”っていう展開になるのが好きなんです。『ハチミツとクローバー』も前半と後半のイメージが全然違いますよね。登場人物が歳をとっている感じもあるし、ちゃんと成長している漫画でおもしろいなと思います。だから「ドラマチック」とは全く違う歌になりました。


私は“感情”そのものなんだなって

──歌詞には、「メランコリニスタ」のときと同様、“穴”の話が出てきますよね。
【YUKI】 これはボコボコと自分の体に穴が空いていて、毎日その穴を埋めようとして色々なことをやっているイメージなんです。自分の穴を埋めたい、でも空いていてほしい。そういう隙間がないと逃げられないというか。逃げるって良くないイメージがありますけど、真正面からいつも向かっていける人はなかなかいないと思うんです。ある程度自分を隠したり、自分と向き合うのをやめたりしないと、やっていけないんですよ。それが私の中の穴なのかな、って。逃げられる場所であり、自分の抜けている記憶の部分だったりするんです。


──“情けない”って、あまり他人には見られたくない部分ですけど、これだけ勢いよく歌ってもらえたら、すごく潔い気分ですよね。
【YUKI】 昔は、自分のことをすごく器用だと思っていたんです。私はよくできているはずだ、というところをコントロールしようと思っていたんですけど、もう無理だな、と。なぜならそれは、私自身が“感情”だということに気づいたからなんです。よく一喜一憂する人のことを“感情的な人”と言いますけど、私は“感情”そのものなんだな、って思うんです。つまり、“感情=歌”なので、歌は私そのものなんです。そして聴いた人の何かに触れるというか、私の歌を聴くことで私自身に触れることができるんです。20代最初の頃は自信過剰で無知で、それが若さの特権だったと思うんですけど、今はそういう風には思わなくなりました。だからこそ、こういう歌も歌えるんです。みんな情けないからもたれあって、ひとりじゃ何もできなくて全然大丈夫じゃないじゃん、っていうものを、やっと歌えるようになったんだと思います。

(文:矢隈和恵)
RELEASE
ふがいないや
YUKI
2006/08/09[シングル]
\1,223(税込)
エピックレコードジャパン
ESCL-2853
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PROFILE
YUKIの写真
1993年、JUDY AND MARYのボーカリストとしてデビュー。「Over Drive」「そばかす」「クラシック」など数々の大ヒット曲を生み出し、日本の音楽シーンに大きな影響を与える。
2001年、東京ドームでの2日間のライブを最後に、JUDY AND MARYを解散。
2002年2月6日、シングル「the end of shite」でソロ活動をスタート。 2005年2月23日、3rdアルバム『joy』をリリース。初登場1位を獲得。同年、ソロとしては初となる全国ツアーを大成功させる。
2006年8月9日、シングル「ふがいないや」をリリース。
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