ORICON STYLE

2004年7月28日
  セルタブ
  トルコの歌姫セルタブが聴かせる個性的なエスニックR&B/POP
トルコのイスタンブール生まれ。音楽学校を卒業後、キャバレーでのシンガーとしてプロ活動を始め、1992年アルバム・デビュー。
1994年以降立て続けにヒット・アルバムを発表し、押しも押されぬトルコのトップ・ディーヴァに。
1999年、リッキー・マーティンのアルバム『リッキー・マーティンーヒア・アイ・アム』の中の「プライベート・エモーション」でリッキーとデュエット(日本ではメイヤとのデュエット版が発売)。他にも3大テノールのひとり、ホセ・カレーラスとの共演。
2000年にヒット曲と新曲で構成されたヨーロッパ向けのアルバムを発表し、好評を博す。
2003年、ユーロビジョン・ソング・コンテストに出場し、みごと優勝。コンテストで歌った「エヴリ・ウェイ・ザット・アイ・キャン」は、スウェーデン、ドイツ、スイス、ギリシャなどで大ヒットを記録し、一気にインターナショナルな歌姫への階段を上り始める。
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セルタブ
『ノー・バウンダリーズ〜愛は境界線を越えて…』 MUCD-5059/シングル
2004.7.7/\2,100(税込)


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 彼女が歌う「ヒア・アイ・アム」が映画『箪笥(たんす)』のキャンペーン・ソングとなりヒット中。トルコの歌姫、セルタブが韓国映画のキャンペーン・ソングを歌い、日本で評判を呼んでいるというこの構造、これこそまさしく彼女のアルバム・タイトル『ノー・バウンダリーズ』(境界線なし)そのものじゃないか。ヨーロッパ中の人が見るというユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝し、一躍時の人なった彼女は、このたび世界に向けたアルバムを発表。『箪笥』公開に合わせて来日した彼女に、アルバムに込めた思い、音楽に対する考えを語ってもらった。


 「ヒア・アイ・アム」が映画『箪笥』のキャンペーン・ソングになってテレビでも流れていますけど、ホラー映画とこの歌の詞の内容がぴったり合っているというのが不思議な感じですよね。

【セルタブ】確かに。正直言えば、本当に合うのかな、とは思ったわ。ただ、日本に来て、映画を観たら、単なるホラーじゃなくて、愛がテーマとなった悲しいストーリーだったので、そういうことなのかと納得しました。

 その曲も収められたアルバム『ノー・バウンダリーズ』ですが、まず、弦楽器とか打楽器を使っての中東風のエキゾチック、民族音楽的なサウンドと現代風のヒップホップ/R&Bサウンドが融合するといった、いろんな要素が交じったカラフルなアルバムとなっています。このサウンドはどうやってできたんですか?

【セルタブ】私のアルバムから感じ取ってほしいと思ってたことは、まさにそのカラフルさなの。それって、私の音楽的ルーツから来てると思うけど。私は学校でクラシックのソプラノを学び、西洋の音楽に深く接してきたし、一方で父がトルコの伝統的な音楽が好きで、子供のときからいつも私に歌って聞かせてくれていたの。だから、私の中では西洋の音楽とトルコの伝統の音楽がいい具合にミックスされていて、それが基になって今の自分の音楽スタイルになってきてるんだと思うわ。

 ヒップホップ/R&B的要素もかなり入っているような気がするのですが。

【セルタブ】意識してヒップホップ/R&Bを取り入れようとは思わなかったわ。ただ、「エヴリ・ウェイ・ザット・アイ・キャン」を作ったときの話になるけど、ユーロビジョン・ソング・コンテストに出場するために、どんな曲を作って歌ったらいいのかって、考えていたときに、アイデアがひらめいたの。ちょうどその頃、ミッシー・エリオットをよく聴いていたんだけれど、"そうだ、伝統的なメロディーと、この強力なベースとドラムのビートを一体化させるんだ"って。ベースとドラムのビートに合わせて歌詞の頭の部分を乗せていったら、独自の不思議な感じのR&B/ヒップホップ曲になったわ。私たちはこれを"エスニックR&B"って呼んでるの(笑)。



 ユーロビジョン・コンテストって、ABBAも優勝した伝統のコンテストですが、実際出場してみて、どんな感想ですか?

【セルタブ】ヨーロッパのどこの国もそうだけど、このコンテストをテレビで見るってことは、子供のときからの習慣のようなものなのね。ただ、実を言うと、ユーロビジョンで歌わないかというオファーがあったとき、最初はお断りしたんです。私はプロとしてそれまで十分のキャリアを築いていると思ったから、今さら出場してもね、と。でも、トルコ以外のいろんな国の人に私を知ってもらうこともできるんじゃないかと思って、出場することに決めたの。実際のところ、出場は大きなチャレンジであり、いい経験でしたね。1億5000万人が見ているような巨大なイベントに出場したんだから。

 タトゥーもいっしょに出たそうですが、彼女たちの印象は?

【セルタブ】(彼女たちと競って)私が優勝したのよ!(笑)彼女たちけっこうナーバスになってたわよ。周りの人たちもピリピリしてたし。ちゃんと歌えるような状況じゃなかったんじゃないかしら。メディアを敵に回していたというのもあって、それもよくなかったんじゃないかと思う。

 アルバムの話に戻りますが、「ヒア・アイ・アム」のプロデューサー(&共作者)のピーター・クヴィントはブリトニー・スピアーズとの仕事でも有名ですが、彼とはどうやって知り合ったんですか?

【セルタブ】ロンドンのソニーの人が、彼(クヴィント)の作った「ヒア・アイ・アム」という歌があって、今回作る私のアルバムにぴったりだから、ぜひ入れたほうがいいと言ってきたんです。で、私も曲を聴いてみて、まず思ったのは"いい曲だけど何かが足りない"ってことだったんです。それで彼らに言ったんです。"トルコ的なひと味"みたいなものがほしいよね、って。それで、実際にクヴィントさんの所へ行ってレコーディングした後で、今度は彼にイスタンブールに来てもらって、トルコの打楽器とか、ストリングスとかの"トルコ的なひと味"を加えていったの。自分が思ってたような仕上がりになったわ。

 アルバム全体も、その"トルコ風"と"西洋風"がうまく融合した作品になっていますね。ところで、トルコでは有名な歌手なのに、日本では新人のアイドル歌手みたいにタイトなスケジュールでプロモーション活動をしなくてはならないというのは、けっこう辛いんじゃない?

【セルタブ】何か目標があると違うのよね。私には、日本のみなさんに私をもっとよく知ってもらいたいという目標があるおかげで、自分の中にエネルギーがどんどん沸き上がってくるのよ。だから、少しも大変だとは思わないし、むしろ楽しいわ。

 来日したのはちょうど気温が35度近い猛暑のさなか。さぞや辛いのではと思って聞いてみると、「この気候はトルコに似ていて好き」なのだとか。そんな夏女、セルタブの歌には暑さも吹き飛ぶ爽快さがいっぱい。中東の香り豊かな彼女の"エスニックR&B"は、この夏、実に気持ちがいい!
(文:高橋礼三郎)