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放送100年特集ドラマ『火星の女王』 出演する菅田将暉と主題歌を歌う君島大空のクロストークが実現
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(左より)君島大空、菅田将暉 撮影:田中達晃(パッシュ)
君島くんの歌を聴いたおかげでラブストーリーが体現できた(菅田)
菅田ドラマはSFの場面が満載で、CGもVFXも駆使しています。でも、僕の撮影現場はアナログだったんです。ロケの撮影が多くて、秘境のようなところへ行っては深い森をさまよい歩いていました。最先端の映像技術にはほとんど触れていません(笑)。一方、さまざまな国の人たちがそれぞれ母国語を話して、科学技術が言語の壁を取っ払っているという近未来の世界は疑似体験しました。台本には、日本語、英語、フランス語、スペイン語など、さまざまな言語のセリフがあって…、実際にはまだテクノロジーが追いついていないので、台本を読み解くのにかなり苦戦しました。
『火星の女王』では、地球で暮らすアオトと火星に滞在するリリ-E1102(スリ・リン)の宇宙空間を超えた恋愛も描かれる。
菅田リリ役のスリさんの実年齢は僕より7つくらい年下。彼女が演じるリリが火星にいて、アオトは地球にいて、なかなか会えないし、連絡も取りづらかったりするという状況下でラブストーリーが展開します。そんな中で、今の僕がどれくらい新鮮な熱量を持って恋愛模様をリアルに体現できるのかという悩ましさがありました。
アオトとリリを繋いでいたのは、音楽。ふたりは地球で活躍しているバンド“ディスク・マイナーズ”のファンという設定で、君島大空はドラマ内で姿こそ現さないが、ディスク・マイナーズのボーカル&ギターを担当している。
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菅田将暉 撮影:田中達晃(パッシュ)
主題歌の「記憶と引力」にはディスク・マイナーズがフィーチャリングされている。「記憶と引力」を作るうえで君島が一番参考にしたのは、撮影開始とほぼ同時に作られたドラマのキービジュアルや部分的な撮影映像だったと振り返る。
君島実際にイメージとなる映像を見て、空気感をつかんで曲を作ったんです。普段から、僕は映像をきっかけに曲を作ることが多いんですよね。もちろん、気持ちが先行して作る場合もありますが、映像が見えないと曲作りに向かっていけないことがほとんどです。
菅田普段は実際に見たシーンをきっかけにして曲作りに取り組むの? それとも頭に浮かんだ映像から曲を作り始める?
君島実際には見ていないものが多いですね。
菅田面白いね。奇しくも、この『火星の女王』との相性もいい! 劇中で人々が見えないものを探したりもするから。
君島が歌う主題歌「記憶と引力」は、同作の音楽を担当した現代音楽家の坂東祐大と、映画や著名アーティストの編曲など幅広く活躍するyuma yamaguchi、そして君島の共作だ。曲を制作するにあたって、3人で最初に決めたことがあったという。
君島強いメッセージを込めないようにしようと、3人で話し合ったんです。聴いている人にある程度預けるポケットを用意したうえで、主題歌を作ろうという方向性を決めました。
菅田すばらしい! 『火星の女王』は100年後の世界という未知の世の中を描いているドラマなので、余白のある音楽はぴったりです。
実際、どのように3人でメロディを作っていったのだろう。
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君島大空 撮影:田中達晃(パッシュ)
菅田最近、世界的にも共作の音楽が増えているよね。制作の裏話を聴くと、より興味深く感じるな。
君島1つの曲を複数人がプロデュースする「Co(共同)-Write(書く)」は流行っていますよね。僕も坂東さんもyumaさんも、その流れに憧れがあったし、この3人ならできると確信していたから「(共作で)やってみよう」って。音楽性は三者三様なのだけれど、3人ともお互いをリスペクトしながら制作できました。
詞も、詩人の文月悠光との共作だ。
君島僕のめちゃくちゃな歌詞を、文月さんが柔らかく軌道修正してくださいました(笑)。
菅田修正前の詞も見てみたかったな(笑)。
君島僕は変なことをしたがるんです。歌詞も変なところで行をまたいだりして、そうでありながらメロディには乗っているような感じで作りたがるんですよね。そんな型破りの詞を文月先生が整えてくださいました。作曲も作詞も刺激的な制作現場でした。
君島は、放送よりひと足先に、完成した「火星と女王」を視聴している。
君島「未来は明るい!」といった感じでハッピーなテイストではなく、空想的なフィクションなのだけどリアリティがあって、どちらかというと暗いトーンで描かれているなと思いながらのめりこんで見ていたんです。そうしたら、劇中歌で僕の歌う声が流れてきてハッとして我に返る、という繰り返しでしたね。
主題歌「記憶と引力」のカップリング曲「You are My Sunshine」も、君島が歌唱している。
君島「You are My Sunshine」とサウンドトラックに収録されている「Why Can’t We Be Friends?」「Have You Ever Seen the Rain?」は、劇中バンドのディスク・マイナーズの演奏という形で、僕がリーダーを務めるトリオでレコーディングすることになっていました。しかも、NHKのレコーディングスタジオに行ったら坂東さんに「君島くんの好きなようにやっていいよ」と言われたんです。少し戸惑いつつバンドのメンバーでブースに入って、ライブ形式で収録を行ったのですが、演奏が始まったらいい音でテイクを録れることが楽しくて。演奏を終えて、ブースの外にいるスタッフさんを見たら、イエーイって言いながらハイタッチしていました(笑)。
菅田掘ったインディ感が出ていて面白いなと、聴いていて思ったんです。僕が演じるアオトも、100年後の世界の住人なのだけどギークな青年で、昔のものも「イケてるじゃん」と評価するタイプ。ディスク・マイナーズの音楽は、洗練されすぎていない音楽だなと心地よさを感じながら聴いていましたし、「You are My Sunshine」のような名曲は時代が変わっても残っていくのだろうなとも思いました。
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菅田将暉 撮影:田中達晃(パッシュ)
異物のような音楽を奏でる存在でありたい(君島)
菅田高い声は派手に聞こえるから、ともすればうるさく感じたりするけど、君島くんの歌声はキーが高いけどうるささがなくて柔らかくて素敵だなっていつも思っていたんだよね。ギターのプレイもかっこいいし。特にフィッシュマンズのライブ映像で見た「Baby Blue」は最高で、いろんな人に「5分ちょうだい。かっこいいからこれ見て!」と言って見せています。
君島うれしい! あのライブは僕が演奏メンバーの中で一番後輩だったので、「かまさなくちゃ!」って思ったんです(笑)。
菅田すこぶるかっこよかった。君島くんが時折見せる「やってやるぞー、オラー!」という荒ぶる感じも大好きです(笑)。
会話の端々に音楽が大好きなことがうかがえるふたり。彼らはこの先どんな音楽を追求していくのだろう。
君島音楽は危険であるべきという思想があるんです。異物であるべきで、それが常態化しないような環境も追い求めています。今、町中に音楽は流れていますし、いろいろなメディアを通じて音楽を鑑賞することができる世の中になりましたが、僕は、簡単にアクセスできない、あたかも発禁本のような危険な音楽に魅力を感じているんです。ポップスなどが流れる世の中の大きな流れの中で、異物のような音楽を奏でる存在でありたいと考えています。
菅田君島くんの話を聞いていたら、『火星の女王』の主題歌を歌ったのは必然だなと思いました。君島くんの音楽は、謎めいていて、怖さもあるけれど興味もそそられるんです。そういえば、今作の台本を読んでいて、火星で起きる超常現象を「揺れない地震」と表現していたのですが、その言葉と君島くんの音楽に親和性も感じました。
君島今日は菅田さんのインタビュー記事を読んで来たんです。5年ほど前の記事だったのですが、俳優業のつらさなどを粛々と語ったあとに、音楽の話題になったら「大きい音が鳴っていると楽しい」ってはじけていて(笑)。
菅田そうそう! それは今も5年前と変わってないな(笑)。俳優業ではほとんど大音量を出すことがないからなのか、大きな音が鳴っていると楽しいんです。「大きな音を出す」ということは通常ならご近所様にご迷惑が掛かる行為だから、ある意味やってはいけない危険なこと。そういう意味でいえば、僕がライブで表現している音楽も、君島くんの音楽と通じるところがあるかもしれない。
菅田は俳優とミュージシャンの二刀流だが、君島もこの先俳優に挑戦してみたいという気持ちはあるのだろうか。
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君島大空 撮影:田中達晃(パッシュ)
菅田でも、ミュージシャンのお芝居って素敵だから、君島くんの芝居も想像しちゃうなぁ。
君島『火星の女王』でUAさんが見せたお芝居は、それこそ素敵でしたよね。僕はそのショートフィルムに出演した時、動きがぎこちなくなって悲しきロボットみたいになっちゃって、「僕を選んだお前が悪い!」って僕に声をかけた人を逆恨みしました(笑)。
菅田じゃあ、悲しきロボット役だったらいける?
君島それなら完璧です(笑)。
自分の純度のようなものを守り続けた先に見える歪なものを音楽で表現したいと思う一方、複数人で作業をするとなったらそのチャンネルに切り替えて、他者との化学反応を楽しみたいと意気込む君島。そして、ギターをもっとうまく弾けるようになって、俳優業とともに心を開放できるような音楽活動を続けていきたいと語る菅田。『火星の女王』という作品で出会ったふたりの表現者は、この先それぞれどんなパフォーマンスを展開するのだろう。ぜひともふたりの協働作業も見てみたいものだ。
取材・文:森中要子
■放送100年特集ドラマ『火星の女王』
【放送予定】2025/12/13(土)から毎週土曜22:00〜23:29(全3回)
【原作】小川哲
【脚本】吉田玲子
【音楽】坂東祐大 yuma yamaguchi
【出演】スリ・リン 菅田将暉 シム・ウンギョン 岸井ゆきの 菅原小春 宮沢氷魚
松尾スズキ UA 松岡茉優 鈴木亮平 滝藤賢一
デイェミ・オカンラウォン サンディ・チャン 宮沢りえ 吉岡秀隆 ほか
【主題歌】「記憶と引力」君島大空 坂東祐大 yuma yamaguchi feat. ディスク・マイナーズ
【制作統括】渡辺悟
【プロデューサー】石川慎一郎 原英輔 大久保篤 服部竜馬
【演出】西村武五郎 川上剛
【番組HP】(外部サイト)
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■ドラマ「火星の女王」オリジナル・サウンドトラック
【アーティスト】坂東祐大 yuma yamaguchi /君島大空
【発売日】2025年12月13日(土)
【価格】3500円(税込)
【品番】COCP-42616
【発売元】日本コロムビア
【収録曲】「火星の女王」メインテーマ、主題歌「記憶と引力」、エマの歌 feat.UA ほか
【商品情報】(外部サイト)
<ライブ情報>
■君島大空『夜会ツアー劇場版”汀線のうた”』
会場:東京ガーデンシアター
2026年1月23日(金) 開場 18:00 / 開演 19:00
■菅田将暉『菅田将暉 LIVE 2026』
会場:東京ガーデンシアター
2026年1月24日(土) 開場 17:00 / 開演 18:00
2026年1月25日(日) 開場 15:00 / 開演 16:00