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globe デビュー30周年記念 日本の音楽シーンに革命をもたらした伝説的グループの軌跡

 今から30年前の1995年8月9日、90年代J-POPを象徴する1曲がリリースされた。曲名は「Feel Like dance」。アーティストはglobe。当時はまだ、Windows95すら発売されておらず(日本語版Windows95は同年11月23日発売)、SNSどころかインターネットすら普及していなかった時代。この曲も、「小室哲哉が新しくスタートさせたユニットのデビー曲(らしい)」と、まだプロジェクトの全貌がよく見えない少ない情報の中でリリースされた。しかし、その歌とサウンド、グルーヴはまたたく間に世の中を席巻し、時代を彩る音楽として、90年代を生きた人々の記憶に深く刻まれていった。そんなglobeとは、一体どのような音楽ユニットなのだろうか。

名実ともに90年代J-POPを彩ったglobe

名実ともに90年代J-POPを彩ったglobe

小室哲哉が全身全霊をかけて取り組んだ 90年代J-POPにローカライズしたダンス・ミュージック

 90年代の音楽シーンを語るうえで欠かせないキーパーソンのひとり、それが小室哲哉だ。小室は1983年、バンド・TM NETWORK(後にTMN)を結成し、翌年にデビュー。コアな人気を誇った彼は、90年代に入ると音楽プロデューサーとして才能を爆発させ、観月ありさ、篠原涼子、trf(後にTRF)、hitomi、H Jungle with t、さらに華原朋美、安室奈美恵など多数のアーティストをプロデュース。作詞・作曲・編曲も自ら手がけ、数々のヒット曲を打ち立たてると、それらのアーティスト/楽曲は“小室ファミリー/TKサウンド”などとカテゴライズされ、一種の社会現象を巻き起こしていった。まさに「時代の寵児」という言葉がぴったりだった小室が、多忙を極めた真っ只中にオーディションで選び出したKEIKOをボーカル、そして日本語、フランス語、英語のトライリンガルであるMARC PANTHERをラッパーに迎えて結成したのがglobeだった。

 小室がプロデューサーとして絶頂期にあった時期に誕生したglobe。しかしながら、他のプロジェクトと決定的に異なる点がひとつある。楽曲提供のみならず、globeには小室自身もメンバーのひとりとして参加し、歌い、プレイし、ステージに立ったのだ。実は当初、KEIKOとMARC PANTHERの2人組ユニットを小室がプロデュースするという構想だった。しかし、2人の才能に光を見出しながらも、プロミュージシャンとして未知数だった彼らを牽引する役割として、小室自身がメンバーとして加わることになる。

 それは、他のプロデュースワークを超える存在へglobeの音楽性を引き上げるためでもあり、彼はそれまでのキャリアと音楽性を投入。同時に、海外の最新音楽トレンドを意欲的に取り入れていった。このように小室がメンバーとしてパーマネントに参加したグループは、キャリアのスタートとなったTM NETOWRKと、このglobeだけ。それくらいglobeは、小室が全身全霊をかけて取り組んだ、かけがえのない彼の居場所のひとつであったのだ。

待望の1stアルバム『globe』(1996年3月31日リリース)

待望の1stアルバム『globe』(1996年3月31日リリース)

 もちろん小室をそこまで本気にさせたのは、KEIKOとMARC PANTHERの存在があってこそ。KEIKOは94年8月、小室が主宰するイベントでのオーディションに出場。それまでKEIKOは、高校時代に文化祭のために組んだバンドでボーカルを担当したことがある程度で、特にレッスンなどを受けていたわけではなかったと言うが、その歌声を小室が絶賛。小室は彼女の歌声を、美空ひばりや松田聖子、エンヤ、チャカ・カーンといった国内外の“歌姫”たちを例にあげて論じたほどに高く評価した。それだけではない。同オーディション時、ステージから誤って落下しながらも最後まで歌い切ったという武勇伝エピソードや、プロとしての初ステージが、なんと東京と大阪で計6万人を集めたイベント『avex dance Matrix '95 TK DANCE CAMP』(後の『a-nation』にも通ずる野外フェス)であり、そこで堂々と歌い切った度胸の良さ、そして誰からも愛される“姉御キャラ”もまた、彼女の大きな魅力だった。

 そんなKEIKOを支えつつ、音楽面・精神面の両方でトップ・アーティストの小室とKEIKOの間を取り持ったMARC PANTHERの存在も見逃せない。彼は12歳で映画デビューし、その後もモデルや、音楽専門チャンネル『MTVジャパン』初代VJとして活動する中で小室と出会い、H Jungle with t「WOW WAR TONIGHT〜時には起こせよムーヴメント〜」でラップを担当。実はKEIKOが出場したオーディションの司会も担当しており、そこで一堂に会した3人がglobeへとつながっていく流れも運命的だ。

 そうは言っても、KEIKO同様、ミュージシャンとしての経験はゼロに等しかった彼だが、音楽的なセンスの良さと、明るく思いやりの深い人柄ですぐさまglobeに欠かせない重要なピースとなり、まだまだ日本ではアンダーグラウンドな存在だったラップを巧みに取り入れ、globeの先進性と独自性を確立する起爆剤となっていった。

 90年代初頭から小室がいち早く意欲的に取り入れていったダンス・グルーヴと、彼のシグネチャー・サウンドとも言うべきピアノ&シンセ・プレイ。リスナーに歌詞をしっかりと届けられる歌声と、優れた音楽性とテクニックを併せ持ち、なおかつ90年代的な新しさと80年代から続く歌謡曲的な歌の要素を兼ね備えていたKEIKOのボーカル。そして、独自の感性でJ-POPに洋楽的な空気感を注入したMARC PANTHERのラップ。一見すると相入れ無さそうなこれらの要素を完全にミクスチャーするのではなく、あえて3つのブロックの差異を際立たせながらも違和感なくつなげていき、全体をポップにトリートメントした楽曲こそが、冒頭で紹介したglobeのデビュー曲「Feel Like dance」だった。

 しかも、ダンス・グルーヴにしてもラップにしても、欧米のクラブで鳴っているようなゴリゴリの本場テイストではなく、きちんと90年代J-POPにローカライズしてリスナーに提示したあたりが小室プロデュースのなせる業であり、globe最大の功績と言えるだろう。加えて、少々マニアックな目線で見ると、ダンス・ミュージックながらもハードなギターを鳴らし、さらにドラムとベースでグルーヴを生み出すというバンド・スタイルでライブを行うなど、ロック的要素を取り入れていた点も見逃せない。これもまた、他の“TKサウンド”と一線を画す大きなポイントだった。ダンス・ミュージック=globeという方程式には間違いなくとも、そこにはトランスも、プログレも、ハードコアテクノも含まれていたのだ。

4作連続のミリオン達成 名実ともに90年代J-POPを彩ったglobeのサウンド

2ndアルバム『FACES PLACES』

2ndアルバム『FACES PLACES』

 globeは、デビュー曲「Feel Like dance」からわずか7週間後の9月27日に2ndシングル「Joy to the love (globe)」をリリースすると、1995/10/9付オリコン週間シングルランキングで初の1位を獲得。同年11月1日には3rdシングル「SWEET PAIN」を立て続けにリリースし、そして1996年1月1日に発売された4thシングル「DEPARTURES」は、初週で62.9万枚を売上げ、その時点での小室プロデュース楽曲の初週最高記録を樹立した(1996/1/15付/その後、1997/3/3付で、安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」が82.8万枚で記録更新)。

 それまでのノリの良いダンス・チューンから一転、KEIKOのボーカルが大々的にフィーチャーされたバラード曲「DEPARTURES」でダブルミリオンを記録したことで、globe人気が単なる流行り廃りのブームではなく、小室が書き上げる歌詞の世界観も含めて(globeの歌詞は、MARC PANTHERによるラップや一部の曲を除き、ほぼすべて小室が手がけている)、globeの楽曲が多くの音楽ファンの心に届き、感情を揺さぶる力を持っていたことが証明された。その結果として、1996年度シングル年間ランキング2位(227.2万枚)、歴代シングルランキングでも15位(228.8万枚)となり、「DEPARTURES」はglobe最大のヒット曲となったのだ。そして1996年3月31日、待望の1stアルバム『globe』をリリースすると、初週売上119.6万枚と、1stアルバムとしての初週売上新記録を樹立。1996/4/8付〜1996/4/15付では、これまた史上初となる2週連続週間売上100万枚以上という記録を作り、登場5週目で累積売上300万枚突破という最速記録も打ち立てた(1996/5/6付)。名実ともに、まさしくglobeの時代が到来したのだ。

3rdアルバム『Love again』(1998年3月31日リリース)

3rdアルバム『Love again』(1998年3月31日リリース)

 こうして、ある意味でglobeの第一目的を達成すると、3人の関係性はよりフラットなものとなり、「小室プロデュースの3人組ユニット」から、「3人で音楽をクリエイトしていく集団」へと進化していく。もちろん、楽曲制作という点では変わらず小室が主導権を握っていたものの、小室が作り出した楽曲に対して、よりプロフェッショナルにKEIKOとMARC PANTHERが対峙していくことで、さらに楽曲のクオリティが高まり、3人の個性も濃密に絡み合っていった。そして完成した2ndアルバム『FACES PLACES』は、サウンド的な面も含め、ロック色の強いものとなった。

 そんな新しいglobeサウンドを携えて、1997年3月には、前代未聞、史上初となる4大ドームツアー『globe@4_domes』を開催(当時、大阪、福岡、名古屋、東京の4つのドームが開業していた)。そのツアー中にリリースされた2ndアルバム『FACES PLACES』は、1997/3/24付オリコン週間アルバムランキングで初登場1位を獲得。初週売上は164.9万枚でオリコン史上初の1stから2作連続初週ミリオンを記録すると、さらには1997/5/26付で累積300万枚を突破。オリコン史上初となる2作連続での累積トリプル・ミリオンを達成した。その人気は、国内のみならず台湾でも急上昇し、結成時に“globe”というネーミングに込められていた「グローバルな活動」にも満を持して踏み出していった。

4thアルバム『Relation』(1998年12月9日リリース)

4thアルバム『Relation』(1998年12月9日リリース)

 その後も、1998年3月31日に3rdアルバム『Love again』、同年12月9日には4thアルバム『Relation』を発表。『Relation』は初登場1位(1998/12/21付)となり、オリコン史上初となる1stアルバムから4作連続の首位を獲得。さらにもうひとつ、こちらもオリコン史上初となる1stアルバムから4作連続の累積ミリオンも達成し、初ランクインから2年9ヶ月でアルバム総売上枚数1000万枚突破という、当時の最速記録も樹立した(ともに1998/12/28付)。

 ストリーミングが主流の現代、ランキングの記録やCD売上枚数を聞いても、そのすごさはなかなか想像しにくいかもしれないが、当時、誰もが見ていたテレビを点ければ必ずglobeの曲が流れ、街を歩けばどこからともなくglobeの曲が聴こえきたと言っても決して大袈裟ではないほどに、globeの音楽は“街鳴り”していた。そして、海外のテクノやヒップホップ、ジャングル、ドラムンベースといった先進的なリズムや、日進月歩で進化を遂げていた斬新なシンセサウンドをJ-POPのバックグラウンドに忍ばせることで、現代のダンス・シーンにつながる最初の入口を、大衆文化の中に作り上げた功績は大きいと言えるだろう。

 globeの歌詞は、10年後に響くことをイメージしながら書き、歌われていたという。あれから30年、当時、globeを聴いていたリスナーは、その後の人生を歩んできたからこそ、彼らの歌にまた新鮮な気付きを覚えるかもしれない。そしてそれは、新しい「超私的平成史」の一編となり得るだろう。一方で当時を知らない若い世代のリスナーにとっては、“今”そのものをリアルに切り取る歌が主流の“令和J-POP”の中にあって、“平成J-POP”を代表するglobeの歌には、また何か違った響きと感情の機微を感じ取れるかもしれない。

 その絶好の機会として、globe30周年連続リリース企画がスタートした。8月9日(1stシングル「Feel Like dance」の発売日)に第1弾として、全シングル・タイトル曲36曲+“これぞglobe”と言うべきその他30曲を厳選した究極のベストコレクション盤『ALL SINGLES & OTHER BEST 30 SELECTION』をリリース。さらに第2弾として、9月27日(2ndシングル「Joy to the love(globe)」の発売日)には、globe初の単独ツアーとなった『house of globe』が、初めてフルサイズ完全版『preview Another Edition Private Tour house of globe -代々木ホワイトシアター1996.9.27-』として、29年後の同じ日にリリースされることが決定。また、11月1日(3rdシングル「SWEET PAIN」の発売日)には、410万枚以上のセールスを打ち立てた1stアルバム『globe』をはじめ、いずれもメガヒットした計4枚のアルバムをアナログ化。『4Mega Hits Album Records』と銘打って、「レコードの日2025 Day1」エントリーアイテムとして発売される。

文:布施雄一郎
globe デビュー30周年記念特設サイト(外部サイト)

『ALL SINGLES & OTHER BEST 30 SELECTION』

『ALL SINGLES & OTHER BEST 30 SELECTION』

8月9日発売
『ALL SINGLES & OTHER BEST 30 SELECTION』
品番:AVCG-70128〜33/価格6,600円(税込)

『preview Another Edition Private Tour house of globe -代々木ホワイトシアター1996.9.27-』

『preview Another Edition Private Tour house of globe -代々木ホワイトシアター1996.9.27-』

9月27日発売
『preview Another Edition Private Tour house of globe -代々木ホワイトシアター1996.9.27-』
品番:AVXG-72065/価格:7,150円(税込)

11月1日発売
『4Mega Hits Album Records』
「globe」 品番:VJG-70134〜35/価格:6,600円(税込)
「FACES PLACES」 品番:AVJG-70136〜37/価格:6,600円(税込)
「Love again」 品番:AVJG-70138〜39/価格:6,600円(税込)
「Relation」 品番:AVJG-70140〜41/価格:6,600円(税込)

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