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GLAY・TAKURO 「前例がなければつくればいい」アーティストが権利を持つことの重みとは?

 GLAYのすべての音楽と映像を配信する公式サブスクリプション型アプリがリリースされた。デビューから現在までに発売したすべての音源や、100を超えるミュージックビデオ、書籍など、“GLAYのすべて”がつまっている。GLAYファンには夢のようなこのアプリ発売の背景や、自己責任のもとコンテンツを管理することの意味合いなど、デビューから24年間、第一線を走り続けてきたGLAYのリーダー・TAKUROに話を聞いた。

GLAYにおける、あらゆる権利がないと、自分たちの夢が実現できないと思った

――さまざまな音楽配信サービスが発足している中で、400以上という音源をはじめ、ここまで厚いボリュームでアーティストに特化したアプリサービスは、珍しいと思いますが、なぜこのようなサービスを始めようと思ったのでしょうか?
TAKURO まず、GLAYが1994年にデビューしてから、やりたいことがあっても前例がなくてできないということが多々あったんです。当時の音楽業界の在り方とか考え方と違うなと思う部分があり、じゃあ自分たちで道を切り拓いていこう、GLAYが前例を作ればいいじゃないか、と思ったんです。デビューして10年が経ったときに、すべてにおいて自分たちでハンドルを握っていこうと、事務所を立ち上げたんです。

 そこでまず考えたのは、ファンの人たちが一番楽しめる形であること。そして、GLAYのメンバーの表現を、時間や予算に関係なく好きなだけやれる環境を提供すること。その2つを両輪として掲げたのですが、そのためには、どうしてもGLAYのあらゆる権利が自分たちのもとにないと、自分たちの夢が実現できないと思ったんです。そこで、2004年に今まで作ったGLAYの楽曲原盤権や映像原版、ファンクラブ運営の権利……あらゆるGLAYに関わる権利を、僕の個人会社に買い取る交渉をし、2007年までにはすべての作品の権利を手にすることができました。まずその前提があって、今回のGLAY公式サブスクリプション型音楽アプリのスタートへとつながったんです。

――CDが売れないといわれている時代の中で、CD以外で発信していくというのは、アーティストの新たな指針になりえるコンテンツではないかと思います。そこに対して、TAKUROさんはどのような可能性を見出していますか?
TAKURO 今や人々の生活スタイルがレコード屋さんや本屋さんに買いに行くのではなく、“スマホでポチ”に移ってきています。音楽は定額で聞けるのが当たり前な世の中になっている中で、新しいテクノロジーを否定しても何もはじまらないし、大いなる人類の一歩に対して、僕らが嘆く必要はまったくないんですよね。

 多様化したそれぞれのライフスタイルに対して、GLAYができることはなんだろうと考えたときに、むしろそういった現状と僕らも共存、競争したほうが粋じゃないかと思ったんです。そして、1アーティストである自分たちがライセンスを持って、コンテンツホルダーになって、プラットホームを作ってみたっていいじゃないかと、GLAYの大きな活動のうちのひとつとして、活動のすべてが必要最小限の手間とスピードで網羅できる、GLAYに特化したアプリを発足させたんです。

自身たちで権利を持つ意味を、GLAYがうまく体現していきたい

――正直、これだけ多くのコンテンツを提供することに恐れはありませんでしたか?
TAKURO GLAYの作品の中には廃盤になっているものもたくさんあるので、最近ファンになってくれた人にとっては、どこに行っても手に入れられない音源が存在してしまうんです。ですから、“ここに来れば、GLAYのすべてがある”そんなアプリを作りたかったんです。もちろん「GLAYも好きだけど、ほかのアーティストも好き」だって人は、ほかのサブスクリプションで楽曲を聴けばいいと思いますが、GLAYアプリに関しては、他の音楽配信サービスと比べても絶対に負けないものにしたかったんです。そのためには、これくらいやらないと! という感じですね。

――ここまですごいものを出されてしまうと、「GLAYがもうCD出さないのでは?」と心配してしまうファンもでてきてしまうのでは?
TAKURO CDに思い入れがあるファンもたくさんいると思うので、CDに対してもこだわりを変えるつもりはなく、丁寧に作り続けていきます。ただ、20年来のファンの人にとっても、このアプリが尊いものであってほしいので、例えば、「あのときのライブ映像を見たいな」って思ったら、スマホがあればすぐに見ることができたり、さまざまな形で一緒に歩んできた歴史を振り返ることができますし、同時に僕らの新たな情報をキャッチすることもできるんです。

――完全にシフトチェンジするのではなく、ファンの人たちが望む従来のスタイルも並行していくんですね。でも、物事を1から始めることって辛いことがたくさんあるんじゃないですか?

TAKURO まず野っ原の雑草を刈るところから始めなきゃいけないですからね(笑)。でも、面倒くさいことはあるけど、辛いことはないかな。ほかのアーティストのことは知らないけど、GLAYのことは全部知ってるし、GLAYのことを思うのは24時間苦でもない。だって、俺らはGLAYが好きだし、GLAYのプロだから(笑)。とはいえ、これまでたくさん失敗もしてきて、49の喜びと51の反省が残り、課題が生まれ、あらゆるGLAYに関わるライセンスが手に入るのであれば、知らない間にどこかに権利を売られて、勝手にベスト盤を売られて怒るより、一文無しになってもいいから自分たちの手元に置いておくべきだなと思ったんです。もちろん自分たちが頑張らなければ、権利と言ったって、ぼろクズに過ぎない。だけど、頑張れば、それは無限の価値になるわけで。

――アーティストが権利を持つ意味とは?
TAKURO 僕らは10年20年かけて、アーティストが権利を持つことの大切さを知りました。アーティストが、自分たちの活動を思う存分できて、ファンを大事にすることにもつながる、そして、おいしいものを食べることができる(笑)。これからのアーティストもそうあったらいいなって思いますし、自身たちで権利を持つ意味が、大人の事情とか、ずるさみたいな陳腐な話でないことを、GLAYを通してうまく体現していきたいなと思っています。

――今回のアプリは音楽をビジネスとして扱う上で、著作権を新しい形で使用する試みでもあると思いますが、これまでもアーティストが行う野外フェスや、ビデオシングル、シングルの連続リリースなど、バンドの先駆者としてGLAYは時代をけん引してきました。それらの試みによって、音楽業界に影響を与えたいという思いはありますか?
TAKURO 音楽業界に…というよりは、自分の夢のため、愛すべき誰かのために頑張りたいなって。僕は“誰かの役に立つこと”が仕事だと思っているんですけど、僕らの場合、その誰かはファンなんです。曲がいいのはプロだから当たり前だけど、CDを100万枚売ることよりも、ファンの信頼を得ることのほうが僕は大事だと思っていて。そのためには1個ずつコツコツやるしかないと思うし、何よりファンの人を悲しませたくないから、どんなことがあっても解散を選ばなかったし、休止もしなかったんです。そりゃ休みたいときもあったけど(笑)。

――ファンにとって、“続けてくれる”ということも、この上なく嬉しいことですよね。
TAKURO でしょ! そう思ったら、つらい時も乗り越えられたんですよ!(笑)

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