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山崎育三郎インタビュー「“ミュージカルしかやらない”なんて言ってちゃダメだ、って気づいた」

映画『レ・ミゼラブル』の後に、チケットが瞬く間に即完したんです

――そうやって、映像の仕事に関わってみて、あらためてミュージカルの面白さはどんなところにあると思いましたか?
山崎育三郎やっぱり“非日常”ってことですよね。お客様にとってのミュージカルって、本番始まる前から始まっているんです。わざわざスケジュールを空けて、チケットを取って、おしゃれをして、帝国劇場に一歩入ると、赤い絨毯が敷かれていて、大階段の隣にあるステントグラスからカラフルな光が漏れている。ステージの脇から、オーケストラのチューニングの音が聞こえて、指揮者が挨拶して、幕が開く。そうすると、日常ではありえないような素敵な男性が現れて……みたいな(笑)。やっぱり、日常を忘れることができる夢の空間なんだと思います。お芝居は一回性の生(なま)ものだし、その日にしか味わえないめくるめく体験ができることが、最大の魅力なんじゃないでしょうか。

――ミュージカル界をとりまく状況も変わってきています。ミュージカル映画『レ・ミゼラブル』(2012年)やアニメ『アナと雪の女王』(2013年)の大ヒットがあって、ミュージカルに対する関心が高まっている。
山崎育三郎“レミゼ”のとき、それはすごく感じました。映画がヒットしたとき、僕はちょうど帝劇で“レミゼ”の舞台に立っていて、一度、国際フォーラムで、映画のメインキャストのヒュー・ジャックマンさんとアン・ハサウェイさんとコラボするイベントがあったんです。僕は日本代表として歌も歌わせてもらいました。もともと、“レミゼ”は人気の演目なんですが、イベントの後に売り出された大阪のフェスティバルホールのチケットが、本当に飛ぶように売れて。瞬く間に即完したんです。そのとき、「ミュージカルしかやらない」なんて言ってちゃダメだ。ミュージカルファンを増やすっていうことはこういうことなんだ、って気づいた。「もっと新しいチャレンジをしていこう!」って井上(芳雄)さんや浦井(健二)さんと話して、「StarS」という僕ら3人で歌うコンサートを武道館で開催することにしたんです。そのときも、12000枚のチケットが完売して、嬉しかったですね。

「いっくん、愛してる!」とかいう環境じゃない、トークはお客様に育てて頂いた

――ミュージカル俳優の皆さんって、キャラクターも立ってますし、しゃべりも上手ですよね。
山崎育三郎「見に来てくださるお客様がいて、自分たちの仕事は成立するんだ」ってことが、デビューの頃から身にしみてますからね。デビュー当時、僕のファンだっていう方が、2〜3人、出待ちしてくださって、「え? 僕のファンですか?」って最初は戸惑いながらサインして、握手して。それが、2〜3人が10人になり、30人になり、50人になり、徐々に増えていくんです。テレビに出てるわけじゃないので、急には増えない(笑)。ファンの方の顔が常に見えているし、よかったとかそうでもなかったっていうお客様の反応が、手に取るようにわかるんです。あと、ミュージカル俳優って、人前でしゃべる機会が多いんですよ。300人のお客さんの前でのディナーショーを、僕も20代前半から始めていて、そこは歌えばオッケー、芝居すればオッケーというわけではない。20歳で初めてファンクラブイベントをやったときなんか、「出たら“キャー!”ってなるのかな」なんて想像してたら、現実には拍手されただけ。「この子、何を話すのかしら?」って、目つきもなかなか厳しいんです(笑)。しかも、ほとんどが大人の女性で、お着物を着た方も少なくなくて。「ちゃんとしなきゃ!」って思いました(笑)。「いっくん、愛してる!」とかいう環境じゃなかったので、本当に、トークに関してはお客様に育てて頂いた感じです。

――なるほど(笑)。ミュージカルに関して、この先何か目標はありますか?
山崎育三郎いつか、日本のオリジナルミュージカルを作って、それが海外でロングランになる、っていうのが夢です。あとは、日本初のミュージカル映画、ミュージカルドラマなんかにも関わりたい。映画の『レ・ミゼラブル』って、歌がアフレコじゃなくて、その場で歌ってるんですよ。耳の中に小さいイヤホンを仕込んで、そこからピアノの音が聞こえてきて、演者は、自分の芝居のテンポで歌っている。僕の知り合いは、あの映画を観た後に「そういえば、歌ってた」と言ったぐらいです。そんなエピソード一つにも、まだまだミュージカルの可能性ってあるような気がしていて……。

――ミュージカルのことを話し出したら止まらない。生粋の“ミュージカルバカ”ですね(笑)。
山崎育三郎そんなことばっかり考えてます(笑)。
(文/菊地陽子)

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