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タレントの“歌手デビュー”の価値はデフレ化しているのか?
人気のバロメーターだった“歌手デビュー” 各界の人気者が名を連ねる
ちなみに、同時期に『笑っていいとも!』(フジテレビ系)では、同番組MCのタモリが大ファンだという吉永小百合の「奈良の春日野」(シカのフンの歌詞で話題)をさんまがギャグで発掘し、再ヒットさせているが、そもそも吉永小百合と言えば、女優としてブレイクすると同時に歌手デビューし、大ヒットを記録したいわば正統派とも言える存在である。
ほかにも、ビートたけしの一連の楽曲、ダウンタウンの浜田雅功(H Jungle with t)の「WOW WAW TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」(1995年)が200万枚超えの大ヒット、有吉弘行が在籍していた猿岩石の「白い雲のように」(1996年)もミリオンセラーになるなど、お笑いタレントの歌手デビューラッシュはバブル末期過ぎまでエスカレートしていくのだ。
またかつては、吉永小百合のオーソドックスなパターンを継ぐと言えば聞こえはいいが、若手女優が歌手デビューするのも定番で、広末涼子、内田有紀、深田恭子あたりもシングルをリリースし、それなりにヒットしていた。歌手デビューを果たすのは何も芸能人ばかりではない。スポーツ界にも多く、野球界では長嶋茂雄、王貞治、原辰徳、中畑清、掛布雅之、松岡弘、トーマス・オマリー……などなど、人気選手の歌手デビューの例は枚挙にいとまがない。角界でも元大関の増位山など、歌が激ウマであることはあまりにも有名だった(現在は歌手専業)。要するにかつては、歌手デビューができるということは、それが許されるだけの人気を獲得したという、誰もが認める証であったのである。
番組企画のキャラクターが“歌手デビュー”で一大ブレイク
「ヘキサゴンファミリー」としてアルバム4枚のリリース、コンサートの開催、ついにはNHKの『紅白歌合戦』への出場まで果たし、一大ブームを引き起こした要因はどこにあったのか?
「ひとえに島田紳助さんのプロデュース能力の賜物でしょう。一世を風靡した“おバカタレント”さん(上地雄輔、つるの剛士、里田まい、スザンヌなど)たちも、言ってしまえば、デビューしてしばらくくすぶっていたタレントたちにキャラ付けし、独り立ちさせた結果、歌手デビューまでいったということです。結局、キャラありきで、もっと言えば視聴率のおかげだったんです」(レコード会社営業スタッフ)
音楽のネット配信増加 価値薄れる歌手の肩書
ただ、これまでのようなある種の“バカバカしさ”がまったくなくなるのも、どこかさみしい。そんな中、オリエンタルラジオ(RADIO FISH名義)の「PERFECT HUMAN」が、配信のみで大ヒットしていることは興味深く、あらたな展開を予感させるものがある。そろそろ、「え!あの人が歌手デビュー!?」といった、新鮮な“驚き”や“プレミアム感”を与えてくれる有名人の歌手デビューを見てみたいものだ。