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大槻ケンヂ(筋肉少女帯)、人生の“おまけのいちにち”の連続は“闘いの日々”

筋肉少女帯は“世界の奇祭”みたいな構図があると思う

――ちなみに大槻さんはミュージシャンではありますけど、若いアーティストは大槻さんの小説などからも影響を受けていますよね。ご自身の“肩書”って一言で言うとなんだと思いますか?
大槻 本当にわかんないの、俺、自分が(笑)。もうじき50になるんだけど、まだ50とも言えるけど、他に向いてる仕事があるんじゃないかって今でも思うもん。カリスマパティシエとか、ブラック企業のトップとか……。サブカル界ってさ、何かもう日本の妖怪界みたいになってるよね。何だかよくわからないことをしている人たちを、とりあえずサブカルと言っとけみたいな。終着地点は『ヨルタモリ』で能町みね子さんの隣に座ることなんだろうか(笑)。でもそれが筋肉少女帯の面白いところで、他のメンバーはとにかく音楽というものを突き詰めてる人間なわけですよ。それに対して、僕だけがふらふらやってて……そういう人を音楽のスペシャリストたちが固めてくれてるっていうのは、すごく面白い構図ですよね。筋少というのは“世界の奇祭”に近い構図があるなって。東南アジアとかのお祭りで、異様に盛り上がってて、町一番の力持ちがヤァヤァと持ち支える御神体。あれって端から見るとなんだあれ? って思うけど、周囲は異様な盛り上がりを見せているという。

――その中でも、大槻さんって“好奇心”をすごくお持ちだと思うんですね。かつての大槻さんの創作を突き動かす原動力と、今の原動力になっているもので違いはありますか?
大槻 それがですね、“好奇心”が最近なくなってきてしまっていていかんなと…それで新たな自分を求めて、よみうりカルチャースクールとかも調べてるんですけど(笑)。これは男子に限って言いますけど、若い頃って性的リビドーが人生のかなりの時間を占めるんですよ。とは言え、ほとんどの男子はそのリビドーが満たされることはないからプロレスを見てわーっと騒いだり、ロックを聞いて燃えたりするわけですよね。ところが加齢とともにリビドーがガクーンと落ちていく。そうすると1日の大半に費やしていた時間がポッカリ空くんですよ。そうすると恐ろしいもので、何をするでもない退屈な時間が洪水のように降り注いでくるんですよ。

──たしかにそれは恐ろしい……。
大槻 あのね、僕ら神様に騙されてたの。神様だかなんだかわかんないけど、種族繁栄のために、エロいことばかり考えていなさいと遺伝子で操作されていたわけだ。でも、こいつは子どもを作る年齢でもないなとなったら、お前もういらないってスポーンってその部分を抜かれるの。そうすると空っぽな人間ができるわけですよ。じゃあそのときに何が助けてくれるかというと、若い頃に自分が蓄積したものなんです。たとえば僕の時代だと、あのポルノ映画を撮った監督は誰だったんだろうとか、あの女優さんはどうしてるだろうとかね。そういう若い頃に見た、聞いた、経験したものたちが退屈な時間をポンプで吸い上げてくれて、人生の後半をまた充実させてくれるんですよ。

取って付けたようではありますが、今回のアルバム、最高です!

  • 筋肉少女帯『おまけのいちにち(闘いの日々)』ジャケット写真

    筋肉少女帯『おまけのいちにち(闘いの日々)』ジャケット写真

──つまり、中二病は存分にこじらせたほうが人生も豊かになるということですね。
大槻 だってね、この年までロックをやってるなんてどうかしてると思うんです。だけど50近くなると、人生ってだんだん『おまけのいちにち』の連続になっていくんですよね。おまけのクセにけっこうキツイこともあったり、悲しいこともあったりと『闘いの日々』なんですよね。

──おお、ここでようやくアルバムのタイトルにつながりました。
大槻 あっ、そうです。筋少のインタビューで僕が出て行くと、自分のことばっか話してプロモーションにならないって、27年間メンバーに怒られ続けてきたんですよ。

──いえ、若いファンはもとよりオールドファンにも響くお話で、ちゃんとプロモーションになっていたと思います。
大槻 アルバムのテーマが“過去・現在・未来”というものだったんです。未来ある若者は、たとえば筋少に影響を受けたと言ってくれる若いアーティストから僕らのことを知ることもあるでしょう。あるいは『うしおととら』といったアニメとか、声優さんとかね、筋少がコラボさせてもらったコンテンツをきっかけに買ってくれることもあるでしょう。でも、過去において筋少の歌に救われたとか、大槻ケンヂの小説を読んで感じるところがあったという人が、たまたまこのジャケットを目にしたら絶対に足が止まると思うんです。あれ、これなんだっけ? ああ、オーケンの『新興宗教オモイデ教』だ。筋少よく聞いてたなあ……って、そんなふうになってくれたら、彼の過去が現在になるんですよ。

──素晴らしいまとめですね。
大槻 僕の悪いところは、新譜のプロモーションをしなきゃいけないのに、自己心理分析的なことばっかりしゃべって、結果プロモーションどころかバンドの首を絞めるようなことを言ってしまう傾向があるんですけど、もうそういうのもいけないなと思いまして、だから最後に取って付けたようではありますが宣言しておこう、今回のアルバム、最高です! 本当、最高!!

(文/児玉澄子 写真/草刈雅之)

大槻ケンヂ(筋肉少女帯)動画インタビュー

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