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音楽番組における“口パク”歌唱の是非を問う

 昨今、音楽番組における“口パク”への風当たりが強い。ネットでは口パク問題の議論がさかんに交わされ、さらに近頃は“当事者”であるプロのアーティストの中からも、口パク問題についての言及している。たしかに、アーティストの生歌を望む声は多いが、番組の特性上、「口パクもやむなし」との声も。果たして視聴者は、そしてアーティスト自身は、“口パク”歌唱にどのような想いを抱いているのか?

アーティストが口パクで歌う、約7割が「NO!」

  • あなたは口パクでの歌唱に賛成か、反対か!?

    あなたは口パクでの歌唱に賛成か、反対か!?

 今回、ORICON STYLEでは10代〜50代の男女を対象に、「あなたは口パクでの歌唱に賛成か、反対か!?」という調査を実施。その結果、【賛成】が9.4%、【やや賛成】が21.2%、【反対】が41.8%、【やや反対】が27.6%と、約7割が「反対」または「やや反対」と解答。圧倒的とまでは言わずとも、「口パクはNO!」という声が大多数を占めた。

 【反対】の多くの思いは、やはり「生の歌が聴きたい」(愛知県/30代/女性)という声に集約される。「生歌のほうが臨場感があって好き。録音とは迫力が違う」(愛知県/10代/女性)、「口パクならCDで聴けば十分」(埼玉県/10代/男性)、「多少音程が合っていなくても、生歌で勝負して欲しいと思う」(東京都/20代/女性)と男女とも全世代がアーティストの生歌に期待していることが伺える。それだけに、いざ“口パク”だと分かったらガッカリしてしまうのも仕方がないことかもしれない。

 一方で、“条件付き”で口パクを容認する声も少なくない。その多くが、「ダンスを売りにしているアーティストにとって両方はさすがに大変だから」(東京都/10代/女性)、「パフォーマンスを完璧にしてくれるなら口パクでも問題ないと思う」(埼玉県/10代/女性)、「パフォーマンスを優先させるなら、歌いながらは難しい」(東京都/20代/男性)といったパフォーマンス重視派の意見だ。

 さらにパフォーマンス重視派の中からは、「歌の上手さより完璧なパフォーマンスを見たい場合もある」(愛知県/50代/女性)、「高度なパフォーマンスを実現する為には口パクをするしかない場面もある。視聴者は口パク、生歌それぞれのメリットや特性を踏まえて、両方とも楽しむべきだと思う」(千葉県/20代/男性)との意見も出ている。また、プロとは言ってもアーティストも生身の人間。「喉の調子もあるだろうから絶対生歌じゃないといけないとは思わない」(香川県/20代/女性)とアーティストの体調を気づかう声もあがっている。

芸能界からも賛否両論の声が! サザン桑田は肯定派

 では、“当事者”に近い芸能人たちは口パク問題をどのように捉えているのだろうか? 自身のTwitterで「あれ?毎年の楽しみの番組が口パクになっている…」とツイートしたのは、東野幸治。「ちょっとショックです。生歌が良かったのに…」と残念がる声を残している。また、ナインティナインの岡村隆史は、自身のラジオ番組『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』(毎週木曜 25時〜 ニッポン放送系)で「緊張感がなかった」と不満の声を漏らした。

 一方、アーティスト側であるGLAYのTERUは、自身のTwitterで「『HOWEVER』と『百花繚乱』の僕の歌が、オンエアでは綺麗になってたので、ん?と思い何回か見直した結果、やはり差し替えられてるのが分かった」と発言。その後、「先ほど、エンジニアに確認とったら、やはりそうでした。でもほんの少しだけですって言われましたが…次回は、生で出演できるように頑張ります!」とツイートしている。なお、つんく♂も「口パク騒動」についてTwitterで言及しており、「いろんな意見あるとは思うけど、口パクの件と生演奏の件がごっちゃになってるから、なかなか一般には伝わらない部分も多いよね」と当事者に近い立場として冷静なコメントをしている。

 意外にも「口パク全肯定派」としての声をあげたのが、サザンオールスターズの桑田佳祐だ。自身のラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』(毎週土曜 23時〜 JFN系)で「口パクは大賛成」と発言。『エド・サリヴァン・ショー』(1948年〜1971年に米放送局CBSで放送されたバラエティ番組)を引き合いに出し、「昔の洋楽の音楽番組はみんな口パクだった」とまとめている。

 口パクは是か非か、賛成派と反対派の意見は今後も平行線を辿るだろう。視聴者の価値観が多様化しているだけに、この問題に明確な結論を出すのは難しいかもしれない。ひとつの答えとして、前述のTERUのコメントを振り返ってみよう。生歌を届けたいと全力で歌っていたと思っていたのに、一部とはいえ、自身の意向ではないところで歌声が差し替えられたことには、アーティストとして忸怩(じくじ)たる思いがあったはず。それでも様々な事情を飲み込んだ上で、前向きな発言ができるのは、さすがベテランアーティストと言える。

 事実、音楽番組をスムーズに制作・進行するためには口パクもやむを得ない場合もある。編集の利かない生放送はなおさら、推して知るべしだ。それでもやはり、7割が【反対】であることからも、視聴者からは当然“生歌”を求める声が多い。であれば、「この番組はオール生歌&生演奏です」と全面に打ち出した音楽番組があれば、高視聴率が期待できるのではないだろうか? 今後、アーティストはもちろん、音楽番組の制作スタッフたちの“英断”に期待したいところだ。
【調査概要】
調査対象:自社アンケート・パネル【オリコン・モニターリサーチ】会員10代、20代、30代、40代、50代の男女1000名
調査地域:全国
調査方法:インターネット調査

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