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石川さゆり『今後の音楽との向き合い方とは? 民生、林檎らアーティスト仲間とのコラボ第2弾完成』

2012年9月に発売したアルバム『X-Cross-』の第2弾『X-CrossII-』は素晴らしい出会いの数々をそのまま音楽化したようなクリエイティブな傑作だ。椎名林檎、TAKURO(GLAY)、奥田民生、森山直太朗、樋口了一といった多彩な顔ぶれが結集。X(クロス)は交わるという意味の言葉であるのと同時に、かけ算記号でもある。音楽の楽しさ、素晴らしさがかけ算的に広がったこの作品は、いかにして生まれたのだろうか?

さまざまなアーティストとの出会いで、新しい旅が始まった

――『X-CrossII-』は2012年の『X-Cross-』に続く作品ですが、そもそもジャンルの枠を越えて、楽曲を制作する発想はどんなきっかけから生まれたものなのでしょうか?
石川さゆり数年前、どんな新曲を作ればいいのか、わからなくなってしまった時期があったんですよ。というのは、これまで楽曲を手掛けてくださっていた阿久悠先生、三木たかし先生、そして吉岡治先生が亡くなってしまったから。10代、20代の頃から「さゆりこっちだぞ! 頑張れ!」って私を引っ張って、石川さゆりの音楽の血肉を一緒に作ってきてくださった方々がみんな、この世の中から消えてしまった。

――偉大な先生方ですよね。
石川はい。この先、自分の歌の世界をどうやって見つけたらいいんだろう……って途方に暮れていた時に、吉岡先生の奥様から「パパの新しい歌はもう生まれないの。だからあなたは自分で見つけていかなければいけないのよ」って背中を押していただいて、自分から出会いを求めて、歌うべき楽曲を見つけなきゃいけないんだって気付きました。それで、ジャンルの枠を越えていろんな方のライブを見させていただいたり、話をさせていただいて、その内にアルバムを作ろうという話しになりました。

――それが、2012年9月19日発表の『X-Cross-』ということになるわけですね。くるりの岸田繁さん、THE BOOMの宮沢和史さん、奥田民生さん、山崎ハコさんなどとのコラボレーションが実現して、鮮度の高い見事な作品が完成しました。
石川みなさん音楽への想いを深く持っていて、素敵な歌を作っていただいて。言葉にすると、チープになってしまうんですが、愛をいただいた気がしました。いただいた愛に対しては自分がこの声でしっかり表現をすることで、お返しするしかない。そうやって仕上がったのが『X-Cross-』です。

――石川さんの歌声が、とても新鮮に響いてきました。新しい出会いによって音楽の新たな可能性を切り拓いていて、第2弾となる『X-CrossII-』でさらにその可能性の幅が広がっているという印象を受けました。
石川今まで先生方に育てられてきた石川が、ほかのアーティストのみなさんと出会って、自分の足で歩き始めて、この2枚目で新しい旅が始まったと感じています。

――椎名林檎さんはシングル「暗夜の心中立て」でも参加された経緯をうかがっていますが、ほかの方々とはどのような経緯で一緒に楽曲を作ることになったのでしょうか? 奥田民生さんは前作でも参加されていますが、今回は「雨のブルース」で参加しています。
石川奥田さんとはくるりの『京都音楽博覧会』で出会いました。終わった後の打ち上げがめちゃくちゃ楽しくて、一緒になんかやりたいねっていう話しになりまして。シングル「Baby Baby」、前作『X-Cross-』、そして今回のIIと一緒に作らせていただきました。

――「空を見上げる時」も素晴らしい曲ですが、森山直太朗さんとの出会いは?
石川もともとはまだ彼が歌い手ではない頃、森山家の長男として出会っていたんですが、直太朗くんの歌を聴いて一緒にやりたいなぁと思って、声をかけさせていただきました。曲が上がってきて、素敵な大人になったんだなって感じました。歌の中にチクッと痛いところもあって、少年の頃の繊細さと豊かな感受性を備えたまま大人になられていて、とても嬉しかったです。

“時代と一緒に歩いていける歌”を歌っていけたら

――GLAYのTAKUROさんは「Ra.n.se」、「千年逃亡」という2曲の作詞・作曲で参加しています。
石川ご自分たちが歌っている曲もそうなんですが、ほかのアーティストに提供している楽曲も素敵だなと思っていたのでお願いしました。TAKUROさんとは楽曲を創りながらお友だちになっていきましたね。

――芯が強くてパワフルな歌声が新鮮に響いてきました。
石川マーティ(・フリードマン)のアレンジがかなりギンギンで、今までこういう歌の攻め方はしてこなかったので楽しかったです。「この曲を書いている間、ずっとさゆりさんのことを考えていて。歩いている時でも思いついたらその場で録音して、曲を創っていきました」って言っていただき、ありがたかったです。真摯に音楽と向き合っているアーティストの方々と一緒にアルバムを作れるのはヴォーカリストとしても嬉しいです。

――「朝花」の作者である樋口了一さんと作った「こころの歌」では、素直な歌声が染みてきました。この曲では小学生の合唱も入っていますが、これは?
石川3月11日以降、東北にうかがう機会が増えまして、自分にできることは続けていこうって心に誓ったんですよ。そこで石巻のみなさんから“みんなで楽しめる自分たちの歌がほしい”という話を聞いて、すぐにくるりの岸田くんに電話をして「石巻復興節」を一緒に創ったんです。それから3年の月日が経って現地の子どもたちと触れ合う中で、子どもたちが友だちのように寄り添っていける歌、思い出の一部になる歌があったらと思い、樋口さんにお願いをして、岩手の小学生たちと一緒に歌いました。樋口さんも病気と闘っていらっしゃいます。いろいろな気持ちを込めて歌いました。

――アルバムのラストには椎名さん作詞・作曲の「最果てが見たい」が入っていますが、<果てを確かめたい>というフレーズは音楽という旅をしている石川さんの姿勢とも重なって響いてきました。ここから先、どこを目指そうと?
石川わからないです(笑)。というのは、あまりこれって決めすぎるとつまらないから。その時に自分が感じたことから、次なる道を探していけばいいのかなって。もし山があったら登っていけばいいですし。昔“歌は世につれ、世は歌につれ”と云われましたが、今はそういう言葉が当てはまる音楽が少なくなっている気がするので、時代と一緒に歩いていける歌を歌っていけたら。

――北島三郎さんが昨年で『紅白歌合戦』を勇退されたこともあり、日本の音楽シーンを引っ張っていく立場でもあると思うのですが、ご自身の役割について思われることはありますか?
石川いえ、引っ張っていくとか、そんなおこがましいことは思っていないです。ただ、“音楽ってこんなに楽しいんだ”ということを感じながら、音楽と真摯に向きあっていけたらと思っています。音楽の出会いは嬉しいです。“こんなに楽しいの見つけちゃった!”って、つい広めたくなってしまう(笑)。美味しいご飯屋さんを見つけたら、友だちに教えたくなるのと一緒ですね(笑)。“素敵なもの”を探して、しっかり創って、みなさんに届けていけたらと思っています。
(文:長谷川誠)

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