還暦・沢田研二、壮絶6時間42分ドーム公演 80曲目は 「愛まで待てない」

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 大団円は笑顔だった。午後3時に始まった宴は、夜9時42分、主役の思いきりのスマイルで幕を閉じた。12月3日(水)、東京ドームでの沢田研二「人間60年 ジュリー祭り」。先週末の大阪・京セラドームに続くジュリー初の巨大ドーム公演は、途中休憩を除いても6時間20分に及ぶ、圧巻の超ロングライヴ。ラスト80曲目は「愛まで待てない」だった。

「6月25日に無事還暦を迎えました。今日は80曲歌います!」

 前半は42年のキャリアのたどり直しである。60年代のGSアイドルとして君臨したザ・タイガースの「シーサイド・バウンド」「君だけに愛を」では当時からのファンが大歓声。萩原健一らとの短命のスーパー・バンド=PYGの「花・太陽・雨」は重厚なサイケデリック・バラードだ。続いてソロ期に突入し、70年代前半の「許されない愛」「追憶」、エキゾティクスを従えた80年代の「6番目のユ・ウ・ウ・ツ」「晴れのちBLUE BOY」。ヤマ場は、内省的な「ある青春」に続いての26曲目「いくつかの場面」(75年作/作詞作曲は故・河島英五)だった。<いつも何かが歌うことを支え 歌うことが何かを支えた>と歌う沢田が感極まり、「最近は涙腺がゆるくて、もうグチョグチョ!」。その波動が客席に伝わってゆく。

 第2部に入ると、甘さと強さの共存するボーカルがそのロマンチックな味わいをより増してゆく。なんという声のたくましさ! しかも広い舞台を走り、花道を駆けて、だ。これはコンサート・ツアーを毎年全力でやってきた彼の積み重ねの賜物だろう。

「ありがとう。サンキュー。ありがとうね!」

 48曲目はドラマチックな「サムライ」、58曲目は東京ドームに似合いすぎの「TOKIO」、手拍子が響いた66曲目「危険なふたり」。しかしこうした昭和時代のスーパー・ヒットに拮抗する存在感を見せたのは、アルバム中の隠れた名曲や沢田自身が思い入れのある歌の数々だ。とくに幸せをつかむことや生きる喜びを歌ったここ20年あまりの楽曲には、彼の人生観が深く宿っている。本編最後は最新アルバムの表題曲「ROCK’N ROLL MARCH」。両翼スタンドに陣取る総計1000人の正装のコーラス隊が4曲で加わった以外は、4人編成のシンプルなバンド演奏のみ。特別なゲストも派手な演出もないのが今の沢田らしさを示していた。

 「ザ・タイガースの時代は、私にとって本当に宝です。それから今もずっと夢の中にいます。いましたが、僕はその上で夢見ることはできませんでした。現実を見つめることだけをやってきました。そして日常を、日々の暮らしを一歩一歩歩んできました。ですが、また今日、夢の中に連れてってもらえました」
「また明日から、しっかりと日常を暮らしていきたいと思います。一日も長く唄っていたいと思います。今日は本当にありがとうございました」

 「勝手にしやがれ」「時の過ぎゆくままに」等を投下し、ついに迎えた80曲目はポップなロックンロール「愛まで待てない」だった。沢田は自身の頑なさゆえに楽ではない道のりを選んできた。しかし過去を安売りしないその姿勢があったからこそ、彼はシンガーとしての気高さと色気ときらめきを保ったまま還暦を迎えられたのだと思う。 「明日からまた頑張りまーす! 夢をありがとう!」

 3万人の多くは、笑顔で去ろうとするこの最高のシンガーに拍手を送りながら思ったはずだ。「感謝したいのはこちらです。私たちに今でも夢を見せてくれているのは、ジュリー、あなたじゃないですか!」と。(文・青木優)

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