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闘病中に作詞、道上洋三のCDが全国ヒットの兆し

 今年、放送開始30周年を迎えた大阪・ABCラジオの朝の人気番組『おはようパーソナリティ 道上洋三です』(月〜金 朝6時30分)に出演する道上洋三アナが9月26日(水)にアルバム『新しい朝』をリリース。デイリー・アルバムランキングでトップ20以内をキープ(最高5位)し続けており、10月3日(水)に発表されるウィークリーランキングでは、関西圏のみの活動による異例の全国ヒットとなるかが注目されている。

 道上洋三は、関西を代表する名物パーソナリティにして、50年来の阪神タイガースファンとして知られる。そんなベテランは自身の活躍の場であるラジオを「声を聴けば、前日の試合結果だって全て分かるメディア」と説明する。

ヒットについて語る道上洋三
 30年以上“朝の顔”として第一線で活躍してきた彼は、前日にタイガースが負けるとやはり、暗い。言葉は明るくても、リスナーからすぐ指摘がくる。さらに「メール、インターネットよりパーソナルに近い」と説明する道上は、今回のアルバムの好調の要因をマーケティングでは浮かび上がってこない“潜在的”なパワーだと分析する。「リスナーは、きっととなりのおっちゃんがしゃべっている感覚で聴いてると思うんです。そんな人たちって、実は年老いた方もいらっしゃるし、CDを売ってる場所はおろか、プレイヤーの操作方法だって知らない場合も多い。近年は、CDだけでなく音楽をダウンロードできるようになったけど、音楽を支えているのはそれだけじゃないし、若い人だけでもないと思う。さらに、リスナーから『何とかしたらなアカン!』って思われるのが、ラジオメディアじゃないですかね」。

 CDを出すまでには、いくつかの難関を越えなければならなかった。まずは昨年3月、『道上洋三30番勝負』という企画がスタート。最終的には、自ら作詞・作曲を行い“歌手”として大阪城ホールで披露するという壮大なプロジェクトへと発展した。しかし、その挑戦は途中で急停止することとなる。これまで、病気で休む経験が無かった道上が脳腫瘍の一種である髄膜種にかかり、番組を一時降板。手術は17時間にも及び、術後もすぐに番組へ復帰できる状況ではなかった。

「この時なんですよね。入院中にサビがふとリフレインして浮かんだ。でも、そこまで。年明けになって、ようやく30年の想いが素直に詞に書けましたね」。

 アレンジには、“なにわのモーツァルト”ことキダ・タローが担当。70日にもおよぶ戦線離脱だったが、それを糧にしてステップアップしていった執念が、見事“勝利”へとつながる。

 そして今年3月、大阪城ホールで開催されたイベントには、早朝からの放送にも関わらず何と1万2000人を超えるリスナーが駆けつけた。会場へ向かう列車は、軒並み通勤ラッシュ状態に。「言ってしまえば、完璧に新興宗教みたいなもんですよ」。歌手としての“初舞台”は見事、大成功。イベント後も「同じく大変な病気をされている方などからの反応が大きくて、こんなに多くの人が・・・と思いビックリしました」。この流れは、さらに大きな波となり最終的にはCDアルバム化が実現した。

 同番組では、実は以前にも注目を集めたことがある。阪神タイガースが日本一に輝いた1985年にリリースした「阪神タイガースかぞえ歌」は、レコード・カセットを合わせ累計約12万枚のヒットを記録。また、99年には、番組アシスタントの秋吉英美と「英美ちゃんのレッツ・ゴー!九九!」をリリースしている。

 今回のアルバムに関しては「あくまで番組の30周年を記念して作っただけだし、僕のことは関西以外では知られていない。ただ、収録曲に『六甲おろし』が入っているので、これを武器に全国展開しようとしたけど、阪神が泥沼の連敗でしょ(笑)。結局、リスナーが“宣伝マン”になってくれたってことですよ。『この人を何とかしてあげないかん!』ってね」と、リスナーに支えられてのヒットを実感している。

 ベテランならではの喜怒哀楽、そして大病を患う中で浮かんだ歌詞、そして大舞台への野望。あくまで「ヒットは狙わない」と謙虚な姿勢を崩さない彼のアルバムが今回、注目を集めたのは30年という長い年月で築き上げてきたリスナーとの“信頼”が、実を結び見事、花を咲かせた形になったからだろう。

<道上洋三『新しい朝』デイリーランキング推移>

25日付 18位
26日付 5位
27日付 5位


注目のウィークリーランキングは31日(水)に発表!
『新しい朝』
        

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