2026年9月、デビュー7周年を迎えたSARD UNDERGROUNDが、全国4会場を巡るホールツアー『SARD UNDERGROUND LIVE TOUR 2026「YOU ARE FREEDOM」』を開催した。5月から8月にかけて行われた全国11ヶ所を巡るライブハウスツアー『TO MY FREEDOM』に続く今回のホールツアー。“私の自由へ”から“あなたは自由”へ――。ZARDの楽曲を受け継ぎながら、自身のオリジナル曲とともに新たな表現へと昇華する、ボーカル・神野友亜の音楽的な広がりと飛躍を感じさせるステージとなった。
<本文>
SARD UNDERGROUNDは、90年代J-POP黄金期を代表するアーティスト、ZARDのトリビュートバンドとして2019年9月18日にアルバムデビュー。現在は、神野のソロプロジェクトとしてオリジナル作品もリリースしながら歩みを続け、デビュー7周年を迎えた翌日の9月19日、神野の地元である滋賀県・ひこね市文化プラザグランドホールから本ツアーをスタート。そしてツアーの2公演目となったのが、今回レポートする9月25日、東京・かつしかヒルズモーツァルトホール公演だ。
ブルーの照明に照らされたステージに、映画のオープニングを思わせるストリングスやティンパニが鳴り響く壮大なSEが響き渡ると、車谷啓介(Dr.)、麻井寛史(Ba.)、大楠雄蔵(Key.)、栄先思希(Gt.)から成る4人のバンドメンバーが登場。そしてステージ中央上段にデザインされた星型セットの中から神野が登場すると、観客は総立ちに。すぐさま大きな手拍子が沸き起こる中で、ZARDのカバー曲「Get U’re Dream」でライブは幕を開けた。
この後もZARDカバー曲が続き、8分音符刻みのストリングスと優雅なピアノの調べに乗せて「明日を夢見て」を歌い終えた神野は、「今月でデビュー7周年を迎えました。こうやって活動できていること、本当にみなさんのおかげです。その感謝を、今日は音楽でお伝えできたらと思います」とコンパクトなMCを挟むと、ZARDのシングル曲ではないものの、ファンの間で人気の高い楽曲「好きなように踊りたいの」へ。次に、波音のSEとラジオから鳴っているかのようなローファイなサウンドで始まったのは「夏を待つセイル(帆)のように」。神野はステージ中央の階段に座り、ゆったりと深みのある歌声を聴かせると、カラフルな照明でステージが彩られた「心を開いて [tribute 2024]」では観客と一緒に自身も手拍子をしながら笑顔を見せた。
■“私の自由”から“あなたは自由”へ 7周年で見せた新たなステージ
冒頭から5曲続けてZARDのカバー曲を披露すると、神野は多くの観客が歌を口ずさむ様子に「一緒に歌ってる感じがすごく嬉しいです」と語り、MCへ。
「今回、『YOU ARE FREEDOM』というタイトルでツアーをやらせていただいています。自由に、心を解放して楽しもうという気持ちを込めてつけたタイトルですので、みなさんも自由に踊っちゃいましょう! そのためにも、振り付けを考えてきました」
こう告げた神野は、次の曲のサビの振り付けをレクチャー。手を高く上げる場面では、「日頃の嫌な事を“飛んでけ!”(と拳に込めて)」と、まさに観客の心を少しずつ解放させていく。するとそのまま、ツアータイトルの元となっている『TO MY FREEDOM』へ。ちょうど一年前にリリースした3rdオリジナルアルバム『故障した車』からの楽曲だ。こうして、ここからライブ中盤はSARD UNDERGROUNDのオリジナル曲コーナーとなっていった。
ビート感が加速していくポップナンバー「世界で一番遠い人」の間奏では、メンバー紹介を兼ねてベース、ギター、キーボード、ドラムの各ソロ演奏が披露されると、車のエンジン音とヘッドライトをイメージさせる照明から始まった「琵琶湖大橋」では、カーナビアナウンスを模した「まもなく目的地周辺です。東京、かつしか」という台詞を曲中に入れ、さらに両手を交互に動かす振り付けで会場を大いに盛り上げた。
■ZARDの継承と自身の表現 神野友亜が見せたボーカリストとしての進化
こうした「世界で一番遠い人」と「琵琶湖大橋」というオリジナル曲の間に歌われたのが、ミラーボールが美しくきらめいたZARDのカバー曲「この涙 星になれ」であった。
SARD UNDERGROUNDとしてはまだ公式に取り上げられておらず、このツアーで初披露となったカバー曲だが、このセクションが本ツアーの大きなポイントであった。
もちろん、会場に詰めかけたZARDファンに対するサプライズプレゼントであったという意味でも大きな一曲となったが、見逃せない点は、SARD UNDERGROUNDのオリジナル曲とZARDのカバー曲を交互に続けても、まったく違和感なく、見事にひとつのストーリーを紡ぎ出していたということだ。別の言い方をするならば、神野がボーカリストとして、真の意味でZARDの歌を自分のものとして、より高いレベルで昇華したシーンだったと言えるだろう。
“ZARDトリビュートバンド”と公言するSARD UNDERGROUNDにとって、ZARD、すなわち坂井泉水の歌を継承するという最重要テーマと、“神野友亜”という一人のボーカリストとして自己を確立するという命題は、ある意味で相反するとても大きな難題だ。単なるZARDの歌真似では、ボーカリストとしての存在感を確立するのが難しい。一方でオリジナリティを押し通す歌唱では、ZARDファンの支持は得られない。
この7年の間に彼女は、テクニカルな面でもメンタル面でも、この上ないプレッシャーと闘った時期もあったに違いない。だが今回のライブで神野の歌声を目の当たりにして感じたことは、ZARD・坂井の歌唱スタイルや歌い回しは継承しながら、坂井の歌の透明感とはまた個性の異なる独自の声色を十分に活かして、自分ならではの音楽的表現を行っていたということだ。つまり、90年代のZARDを2020年代に再現するのではなく、現代にアップデートさせて伝承させているのだ。
だからこそ、自身のオリジナル曲で聴かせてくれた歌声も実に生き生きとしており、それらがZARDのカバー曲と同じ線上に並んだ時にもとても輝いて聴こえてきた。まさに、神野の柔らかくも芯のある歌声を存分に聴かせてくれたバラード曲「輝く旅人よ」と、大楠のピアノと2人だけで歌われたZARDのカバー曲「翼を広げて」、そして切ないメロディを、温かく、艶のある歌声で聴かせてくれた「夏の終わりに…」といったライブ中盤の流れは、ボーカリストとしての神野の真髄が表れた、とても魅力的なパフォーマンスであった。
■会場をひとつにした歌声 “FREEDOM”を体現したフィナーレ
こうした思わず歌に聴き入ってしまうシーンから一転、「しあわせ」の2コーラス目にはステージ上空から無数の星型オブジェが舞い降りて、会場が明るい雰囲気に包まれると、神野はMCで、次に披露する「黒い薔薇」の思い出を語り出した。
「次の『黒い薔薇』は、私が作詞をすることになった初期に書いた曲です。同時進行で3曲の歌詞を書いていて、それが『黒い薔薇』と『ブラックコーヒー』と『イチゴジャム』でした。『イチゴジャム』は、最初は『この恋に鍵をかけて』というタイトル(の予定)で、最後の最後に急きょタイトルが変更になって。だから(書き換える)前の歌詞が今も頭に浮かんでくるんです」
こんなエピソードを明かした神野は、もともと書いていた、書き換える前の歌詞で「イチゴジャム」のワンフレーズを披露。その貴重な歌に客席から拍手が起こると、「すみません。次の曲と全然関係ない話をしちゃいましたけど(笑)、私が10代の頃に書いた曲です」と笑いを誘いながら、ラウドなバンドサウンドで「黒い薔薇」へ。このハードに歪んだギターがゴーサインとなり、ステージ最上段で歌う神野のハイトーンが力強く響いた「全部自己責任」、スネアドラムの4分のリズムが軽快だった「DAN DAN 心魅かれてく [tribute 2024]」と、ステージはさらなる盛り上がりを見せていく。
「ライブも終盤にさしかかってきました。もっと力をもらえますか? もっと声を出せますか!?」という神野のシャウトに観客が大きな歓声で応えて始まった、ポップでキュートな「イチゴジャム」では、神野に加えてベースの麻井とギターの栄先もステージフロントでプレイし、観客のテンションを上げていく。そこから、この曲の“お楽しみタイム”へ。サビのフレーズを即興で変える恒例のコール&レスポンス・コーナーだ。「二人で作ったイチゴジャム」というフレーズを「今年はツアーで東京2回来れました!」と変えて歌う神野のコールに観客がレスポンスすると、続いて神野に指定された各メンバーたちもその場のアドリブでコールを行い、会場全体が笑顔となるハッピーな空気で包み込んでいった。
会場の熱量がますます高まっていくと、「空っぽの心」の間奏では客席から「オイッ! オイッ!」のコールが自然発生し、続くアップテンポの「涙色で」では、神野もステージ上手から下手まで大きく動きながら熱唱する。ここまで19曲を全力で駆け抜けながら、声量、ピッチ、抑揚、そして表現力が揺らぐことなく、実に安定感のある歌を聴かせてくれたことは見事のひと言。むしろ、それを当たり前のこととして歌い上げる自信すら感じる堂々たるステージングであった。そんな中でラストは、大盛り上がりのZARDのカバー「マイ フレンド [tribute 2024]」でライブ本編が締めくくられた。あまりの盛り上がりに神野は、この曲を始める前に「最後の曲です」と言い損ねてしまったというハプニングもあったが、これもご愛敬。むしろ、これぞライブならではの醍醐味だ。
そして、鳴りやまない手拍子と「アンコール!」という歓声に応えて、再び神野はステージに姿を現した。
「本当に、年々一体感が増していきますね。みなさん最高です! 大好きです! さあみなさん、もう心は解放できましたか? 次は、もうこの曲を歌わないと終われないでしょうという曲をお届けしたいと思います。全力でいきます!」
こうしてフィナーレに歌われたのは、もちろんZARD不屈の名曲のカバー「負けないで [tribute 2024]」だ。間奏のギターソロが終わると神野は「一緒に歌いましょう!」とマイクを客席に向け、サビのワンコーラスを丸々観客が合唱。その合唱に再び神野が重なる形でホール全体がひとつの歌声となり、華やかにこの日のライブが締め括られた。
「本当に、SARD UNDERGROUNDとして活動させていただけて、そしてみなさんと出会えて幸せです。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします! また東京で会いましょう!」
こう語った後も、メンバー、スタッフ、観客に何度も「ありがとうございました」と感謝の言葉を発した神野。そして最後に、マイクを使わずに大きな声で「今日は本当にありがとうございました!」と言って一礼し、手を振りながら、彼女はステージ袖へと姿を消していった。
ZARDのカバーが10曲、オリジナルが11曲の計21曲をたっぷりと堪能させてくれた約2時間のライブ。ZARDのファンとして会場を訪れた観客の中にも、この2時間を通してSARD UNDERGROUNDそのものの魅力に引き込まれた人は少なくなかったのではないだろうか。2026年、まさしくSARD UNDERGROUNDにとっての“FREEDOM”を感じさせたツアーであった。
取材・文:布施雄一郎
■ 『SARD UNDERGROUND LIVE TOUR 2026[YOU ARE FREEDOM]』
9月25日(金) 東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
【SETLIST】
01. Get U’re Dream
02. 明日を夢見て
03. 好きなように踊りたいの
04. 夏を待つセイル(帆)のように
05. 心を開いて [tribute 2024]
06. TO MY FREEDOM
07. 世界で一番遠い人
08. この涙 星になれ
09. 琵琶湖大橋
10. 輝く旅人よ
11. 翼を広げて
12. 夏の終わりに…
13. しあわせ
14. 黒い薔薇
15. 全部自己責任
16. DAN DAN 心魅かれてく [tribute 2024]
17. イチゴジャム
18. 空っぽの心
19. 涙色で
20. マイ フレンド [tribute 2024]
encore
21. 負けないで [tribute 2024]
<本文>
SARD UNDERGROUNDは、90年代J-POP黄金期を代表するアーティスト、ZARDのトリビュートバンドとして2019年9月18日にアルバムデビュー。現在は、神野のソロプロジェクトとしてオリジナル作品もリリースしながら歩みを続け、デビュー7周年を迎えた翌日の9月19日、神野の地元である滋賀県・ひこね市文化プラザグランドホールから本ツアーをスタート。そしてツアーの2公演目となったのが、今回レポートする9月25日、東京・かつしかヒルズモーツァルトホール公演だ。
ブルーの照明に照らされたステージに、映画のオープニングを思わせるストリングスやティンパニが鳴り響く壮大なSEが響き渡ると、車谷啓介(Dr.)、麻井寛史(Ba.)、大楠雄蔵(Key.)、栄先思希(Gt.)から成る4人のバンドメンバーが登場。そしてステージ中央上段にデザインされた星型セットの中から神野が登場すると、観客は総立ちに。すぐさま大きな手拍子が沸き起こる中で、ZARDのカバー曲「Get U’re Dream」でライブは幕を開けた。
この後もZARDカバー曲が続き、8分音符刻みのストリングスと優雅なピアノの調べに乗せて「明日を夢見て」を歌い終えた神野は、「今月でデビュー7周年を迎えました。こうやって活動できていること、本当にみなさんのおかげです。その感謝を、今日は音楽でお伝えできたらと思います」とコンパクトなMCを挟むと、ZARDのシングル曲ではないものの、ファンの間で人気の高い楽曲「好きなように踊りたいの」へ。次に、波音のSEとラジオから鳴っているかのようなローファイなサウンドで始まったのは「夏を待つセイル(帆)のように」。神野はステージ中央の階段に座り、ゆったりと深みのある歌声を聴かせると、カラフルな照明でステージが彩られた「心を開いて [tribute 2024]」では観客と一緒に自身も手拍子をしながら笑顔を見せた。
冒頭から5曲続けてZARDのカバー曲を披露すると、神野は多くの観客が歌を口ずさむ様子に「一緒に歌ってる感じがすごく嬉しいです」と語り、MCへ。
「今回、『YOU ARE FREEDOM』というタイトルでツアーをやらせていただいています。自由に、心を解放して楽しもうという気持ちを込めてつけたタイトルですので、みなさんも自由に踊っちゃいましょう! そのためにも、振り付けを考えてきました」
こう告げた神野は、次の曲のサビの振り付けをレクチャー。手を高く上げる場面では、「日頃の嫌な事を“飛んでけ!”(と拳に込めて)」と、まさに観客の心を少しずつ解放させていく。するとそのまま、ツアータイトルの元となっている『TO MY FREEDOM』へ。ちょうど一年前にリリースした3rdオリジナルアルバム『故障した車』からの楽曲だ。こうして、ここからライブ中盤はSARD UNDERGROUNDのオリジナル曲コーナーとなっていった。
ビート感が加速していくポップナンバー「世界で一番遠い人」の間奏では、メンバー紹介を兼ねてベース、ギター、キーボード、ドラムの各ソロ演奏が披露されると、車のエンジン音とヘッドライトをイメージさせる照明から始まった「琵琶湖大橋」では、カーナビアナウンスを模した「まもなく目的地周辺です。東京、かつしか」という台詞を曲中に入れ、さらに両手を交互に動かす振り付けで会場を大いに盛り上げた。
■ZARDの継承と自身の表現 神野友亜が見せたボーカリストとしての進化
こうした「世界で一番遠い人」と「琵琶湖大橋」というオリジナル曲の間に歌われたのが、ミラーボールが美しくきらめいたZARDのカバー曲「この涙 星になれ」であった。
SARD UNDERGROUNDとしてはまだ公式に取り上げられておらず、このツアーで初披露となったカバー曲だが、このセクションが本ツアーの大きなポイントであった。
もちろん、会場に詰めかけたZARDファンに対するサプライズプレゼントであったという意味でも大きな一曲となったが、見逃せない点は、SARD UNDERGROUNDのオリジナル曲とZARDのカバー曲を交互に続けても、まったく違和感なく、見事にひとつのストーリーを紡ぎ出していたということだ。別の言い方をするならば、神野がボーカリストとして、真の意味でZARDの歌を自分のものとして、より高いレベルで昇華したシーンだったと言えるだろう。
“ZARDトリビュートバンド”と公言するSARD UNDERGROUNDにとって、ZARD、すなわち坂井泉水の歌を継承するという最重要テーマと、“神野友亜”という一人のボーカリストとして自己を確立するという命題は、ある意味で相反するとても大きな難題だ。単なるZARDの歌真似では、ボーカリストとしての存在感を確立するのが難しい。一方でオリジナリティを押し通す歌唱では、ZARDファンの支持は得られない。
この7年の間に彼女は、テクニカルな面でもメンタル面でも、この上ないプレッシャーと闘った時期もあったに違いない。だが今回のライブで神野の歌声を目の当たりにして感じたことは、ZARD・坂井の歌唱スタイルや歌い回しは継承しながら、坂井の歌の透明感とはまた個性の異なる独自の声色を十分に活かして、自分ならではの音楽的表現を行っていたということだ。つまり、90年代のZARDを2020年代に再現するのではなく、現代にアップデートさせて伝承させているのだ。
だからこそ、自身のオリジナル曲で聴かせてくれた歌声も実に生き生きとしており、それらがZARDのカバー曲と同じ線上に並んだ時にもとても輝いて聴こえてきた。まさに、神野の柔らかくも芯のある歌声を存分に聴かせてくれたバラード曲「輝く旅人よ」と、大楠のピアノと2人だけで歌われたZARDのカバー曲「翼を広げて」、そして切ないメロディを、温かく、艶のある歌声で聴かせてくれた「夏の終わりに…」といったライブ中盤の流れは、ボーカリストとしての神野の真髄が表れた、とても魅力的なパフォーマンスであった。
■会場をひとつにした歌声 “FREEDOM”を体現したフィナーレ
こうした思わず歌に聴き入ってしまうシーンから一転、「しあわせ」の2コーラス目にはステージ上空から無数の星型オブジェが舞い降りて、会場が明るい雰囲気に包まれると、神野はMCで、次に披露する「黒い薔薇」の思い出を語り出した。
「次の『黒い薔薇』は、私が作詞をすることになった初期に書いた曲です。同時進行で3曲の歌詞を書いていて、それが『黒い薔薇』と『ブラックコーヒー』と『イチゴジャム』でした。『イチゴジャム』は、最初は『この恋に鍵をかけて』というタイトル(の予定)で、最後の最後に急きょタイトルが変更になって。だから(書き換える)前の歌詞が今も頭に浮かんでくるんです」
こんなエピソードを明かした神野は、もともと書いていた、書き換える前の歌詞で「イチゴジャム」のワンフレーズを披露。その貴重な歌に客席から拍手が起こると、「すみません。次の曲と全然関係ない話をしちゃいましたけど(笑)、私が10代の頃に書いた曲です」と笑いを誘いながら、ラウドなバンドサウンドで「黒い薔薇」へ。このハードに歪んだギターがゴーサインとなり、ステージ最上段で歌う神野のハイトーンが力強く響いた「全部自己責任」、スネアドラムの4分のリズムが軽快だった「DAN DAN 心魅かれてく [tribute 2024]」と、ステージはさらなる盛り上がりを見せていく。
「ライブも終盤にさしかかってきました。もっと力をもらえますか? もっと声を出せますか!?」という神野のシャウトに観客が大きな歓声で応えて始まった、ポップでキュートな「イチゴジャム」では、神野に加えてベースの麻井とギターの栄先もステージフロントでプレイし、観客のテンションを上げていく。そこから、この曲の“お楽しみタイム”へ。サビのフレーズを即興で変える恒例のコール&レスポンス・コーナーだ。「二人で作ったイチゴジャム」というフレーズを「今年はツアーで東京2回来れました!」と変えて歌う神野のコールに観客がレスポンスすると、続いて神野に指定された各メンバーたちもその場のアドリブでコールを行い、会場全体が笑顔となるハッピーな空気で包み込んでいった。
会場の熱量がますます高まっていくと、「空っぽの心」の間奏では客席から「オイッ! オイッ!」のコールが自然発生し、続くアップテンポの「涙色で」では、神野もステージ上手から下手まで大きく動きながら熱唱する。ここまで19曲を全力で駆け抜けながら、声量、ピッチ、抑揚、そして表現力が揺らぐことなく、実に安定感のある歌を聴かせてくれたことは見事のひと言。むしろ、それを当たり前のこととして歌い上げる自信すら感じる堂々たるステージングであった。そんな中でラストは、大盛り上がりのZARDのカバー「マイ フレンド [tribute 2024]」でライブ本編が締めくくられた。あまりの盛り上がりに神野は、この曲を始める前に「最後の曲です」と言い損ねてしまったというハプニングもあったが、これもご愛敬。むしろ、これぞライブならではの醍醐味だ。
そして、鳴りやまない手拍子と「アンコール!」という歓声に応えて、再び神野はステージに姿を現した。
「本当に、年々一体感が増していきますね。みなさん最高です! 大好きです! さあみなさん、もう心は解放できましたか? 次は、もうこの曲を歌わないと終われないでしょうという曲をお届けしたいと思います。全力でいきます!」
こうしてフィナーレに歌われたのは、もちろんZARD不屈の名曲のカバー「負けないで [tribute 2024]」だ。間奏のギターソロが終わると神野は「一緒に歌いましょう!」とマイクを客席に向け、サビのワンコーラスを丸々観客が合唱。その合唱に再び神野が重なる形でホール全体がひとつの歌声となり、華やかにこの日のライブが締め括られた。
「本当に、SARD UNDERGROUNDとして活動させていただけて、そしてみなさんと出会えて幸せです。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします! また東京で会いましょう!」
こう語った後も、メンバー、スタッフ、観客に何度も「ありがとうございました」と感謝の言葉を発した神野。そして最後に、マイクを使わずに大きな声で「今日は本当にありがとうございました!」と言って一礼し、手を振りながら、彼女はステージ袖へと姿を消していった。
ZARDのカバーが10曲、オリジナルが11曲の計21曲をたっぷりと堪能させてくれた約2時間のライブ。ZARDのファンとして会場を訪れた観客の中にも、この2時間を通してSARD UNDERGROUNDそのものの魅力に引き込まれた人は少なくなかったのではないだろうか。2026年、まさしくSARD UNDERGROUNDにとっての“FREEDOM”を感じさせたツアーであった。
取材・文:布施雄一郎
■ 『SARD UNDERGROUND LIVE TOUR 2026[YOU ARE FREEDOM]』
9月25日(金) 東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
【SETLIST】
01. Get U’re Dream
02. 明日を夢見て
03. 好きなように踊りたいの
04. 夏を待つセイル(帆)のように
05. 心を開いて [tribute 2024]
06. TO MY FREEDOM
07. 世界で一番遠い人
08. この涙 星になれ
09. 琵琶湖大橋
10. 輝く旅人よ
11. 翼を広げて
12. 夏の終わりに…
13. しあわせ
14. 黒い薔薇
15. 全部自己責任
16. DAN DAN 心魅かれてく [tribute 2024]
17. イチゴジャム
18. 空っぽの心
19. 涙色で
20. マイ フレンド [tribute 2024]
encore
21. 負けないで [tribute 2024]
2026/10/14




