昨年デビュー25周年を迎え、なおも新たな歌の世界に挑み続ける山内惠介。今年2月に発表した「この世は祭り」がロングヒットを続けるなか、9月23日にはカップリング曲とアートワークを刷新した新装盤「恋盤」「人生盤」をリリースした。2023年の「こころ万華鏡」から始まった新たな表現への挑戦は、3年を経てどのような実を結んだのか。“山内惠介の祭り”が一つの形となった「この世は祭り」から、歌手生活26年目の現在地をたどる。
■「山内惠介の祭り」が結実 3年間で広げた表現の幅
「この世は祭り」は、どんな状況でも自らの力で道を切り拓いていく強い意志と、生きていくことの素晴らしさを歌った人生讃歌。歌手生活26年目を歩む山内の新たな一歩を印象づける1曲だ。力強く足を踏み鳴らすストンプから幕を開け、壮大なオーケストレーションにエネルギッシュなユニゾンコーラス、さらに和楽器が融合。スケールの大きなサウンドに、山内の伸びやかな歌声が重なる。
作詩を手がけたのは松井五郎、作曲・編曲は村松崇継。ふたりは2023年の「こころ万華鏡」、2024年の「紅の蝶」でも山内とタッグを組んだ。「紅の蝶」は『第66回 輝く!日本レコード大賞』の「優秀作品賞」に選ばれ、さらに『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』では「最優秀演歌・歌謡曲楽曲賞」を受賞。近年の山内の新たな魅力を引き出してきたコンビが、再び集結した。
実は、今回の“祭り”につながる構想は3年前からあった。
山内が40歳を迎えた2023年。新たな挑戦として発表したのが「こころ万華鏡」だった。それまで長く師匠の水森英夫をはじめとする作家陣と演歌を歌ってきた山内に、クラシックを思わせる壮大な楽曲を提供したのが村松だった。
この年に山内にインタビューした際、彼から明かされたのは村松による「山内惠介の祭りを作る」という構想だ。北島三郎なら「まつり」、美空ひばりなら「お祭りマンボ」。それらの名曲のように日本を元気にし、人々を盛り上げられる歌手になってほしいという思いが、村松にあると語っていた。
その第1弾ともいうべき歌が「こころ万華鏡」だったのだが、この曲は山内にとって簡単な作品ではなかったという。演歌では、たっぷり歌ったり、歌い手の間合いや節回しを生かしたりできる。一方、「こころ万華鏡」は複雑なメロディーに声を緻密にはめ込んでいくことを求められた。山内はその作業をオルゴールにたとえ、うまくはまったときの気持ちよさを知ったことで、「これができるようになったら、また違う歌が歌える」と感じたと振り返っている。
また、当時の山内は、歌手として表現の幅を広げるうえで「振り切る」ことの大切さを語っていた。思い切り振り切るからこそ、そこから真ん中へ寄せることもできる。中途半端にせず、まず自分の表現を大きく広げてみる。「こころ万華鏡」は、まさにそれを体現した作品だった。
そして翌2024年には、“山内惠介の祭り”というテーマを受け継ぐ「紅の蝶」を発表。2年続けて、それまでの演歌路線とは趣の異なる作品に挑んだ。
この2曲が山内にもたらしたものは大きかった。2025年に再び山内にインタビューした際には、「お客さまを引っ張っていく船頭は歌い手なのだと改めて実感した」と語っている。言葉数が多く、メロディーラインも複雑な歌を最後まで聴いてもらうには、歌い手自身が聴き手を歌の世界へ引き込まなくてはならない。「長い歌をあっという間に感じていただくにはどうすればいいのか」と考え、歌い方だけでなく、聴かせ方、見せ方まで意識するようになったという。
そして歌手生活25周年を迎えた2025年。「こころ万華鏡」と「紅の蝶」で培った表現力を携えて、山内は師匠・水森英夫作曲の「北の断崖(きりぎし)」で王道演歌を歌った。「北の断崖」は前2作とは対照的に、シンプルな四行詩をドラマチックに聴かせる歌。複雑な楽曲で聴き手を引き込む術を身につけた山内にとって、今度は短い歌のなかにどれだけ大きなドラマを描けるかが、新たなテーマとなった。
そして迎えた26年目。再び松井、村松と組んで送り出した歌が、タイトルにも歌詞にも「祭り」が真正面から登場する「この世は祭り」だ。
■演歌のDNAを胸に ジャンルという枠を越えて歌う
3年前、村松が思い描いていた“山内惠介の祭り”が、ここでひとつの形になったと考えると、この曲がまた違って聴こえてくる。
そこに描かれているのは、先行きの見えない時代を、それでも前を向いて生きていこうとする人間の姿だ。壁があれば越え、答えがひとつではないなら自ら探す。汗を流した先に実りがあることを信じ、一度きりの命を生き抜いていく。その生命力が、村松によるダイナミックなサウンドと山内の歌声によって解き放たれていく。
今作がリリースされた際に寄せた文章のなかで、松井は「例えば、演歌とはなにかとか、ロックとはなにかとか、型にこだわる考え方もある。それぞれに様式美があり、心打つ歌も多い。その意味で言えば、山内惠介は本来の演歌を深掘りしつつ、一方で型を破り、新しい様式美で、老若男女、常に先を見て歌を歌おうとしてるように見える」と綴り、「近年J-POPが世界で再評価されているが、日々グローバル化している音楽市場を考えれば日本の演歌のDNAを持つ歌ももっと世界に評価されていい。山内惠介はそれにもっとも近いチャレンジをしていると思う」と期待を寄せている。「こころ万華鏡」「紅の蝶」を経て生まれた『この世は祭り』は、そんな思いを象徴する1曲ともいえるだろう。
9月23日に発売された新装盤では、カップリング曲も新たに収録している。「恋盤」には、松井作詩、村松作曲・編曲による『あゝ通りゃんせ』。恋に臆病な男性の背中を押す、粋でいなせな歌詩と、どこか童謡を思わせる軽快なメロディーが心に残る。ジャズやラテンなど、さまざまなジャンルを取り込んだ独特のグルーヴにも注目したい。
「人生盤」には、美空ひばりが1970年に発表した名曲「人生一路」のカバーを収録。一度決めた道を信じ、苦難に耐えながら前へ進む。昭和から歌い継がれてきた人生歌を、26年目を歩む山内が力強く歌う。「この世は祭り」と併せて聴けば、“どう生きるか”というテーマも浮かび上がってくる。
2023年のインタビューで、山内は「歌は自分の子ども」だとも話していた。自分と歌が巡り合った以上、その作品を花開かせる責任が歌い手にはある。そしてステージでお客さまの反応を受け取りながら、ともに歌を育てていくのだ、と。2月の発売から半年以上にわたって歌い続けてきた「この世は祭り」もまた、山内と聴き手の間で育ち続けている1曲なのかもしれない。
40歳を迎えた2023年から、新たな表現に挑み続けてきた山内惠介。その歩みの先に生まれた「この世は祭り」もまた、歌うたびに新たな表情を見せていくことだろう。この歌とともに、26年目を歩む山内がどんな景色を見せてくれるのか楽しみだ。
文:森中要子
<作品情報>
■山内惠介「この世は祭り」
新装盤9月23日リリース
【恋盤】収録曲
1. この世は祭り (作詩:松井五郎 作曲・編曲:村松崇継)
2. あゝ通りゃんせ (作詩:松井五郎 作曲・編曲:村松崇継)
3. この世は祭り〜オリジナルカラオケ〜
4. この世は祭り〜インストゥルメンタル〜
5. あゝ通りゃんせ〜オリジナルカラオケ〜
【人生盤】
1. この世は祭り (作詩:松井五郎 作曲・編曲:村松崇継)
2. 人生一路 (作詩:石本美由起 作曲:かとう哲也編曲:上杉洋史) ※カバー曲・オリジナル歌手:美空ひばり
3. この世は祭り〜オリジナルカラオケ〜
4. この世は祭り〜インストゥルメンタル〜
5. 人生一路〜オリジナルカラオケ〜
<コンサート情報>
■『五大都市コンサート2026』
10月15日(木) 北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
10月16日(金) 北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
10月21日(水) 東京・東京国際フォーラム ホールA
10月28日(水) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
11月04日(水) 愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館
11月10日(火) 大阪・グランキューブ大阪
■「山内惠介の祭り」が結実 3年間で広げた表現の幅
「この世は祭り」は、どんな状況でも自らの力で道を切り拓いていく強い意志と、生きていくことの素晴らしさを歌った人生讃歌。歌手生活26年目を歩む山内の新たな一歩を印象づける1曲だ。力強く足を踏み鳴らすストンプから幕を開け、壮大なオーケストレーションにエネルギッシュなユニゾンコーラス、さらに和楽器が融合。スケールの大きなサウンドに、山内の伸びやかな歌声が重なる。
作詩を手がけたのは松井五郎、作曲・編曲は村松崇継。ふたりは2023年の「こころ万華鏡」、2024年の「紅の蝶」でも山内とタッグを組んだ。「紅の蝶」は『第66回 輝く!日本レコード大賞』の「優秀作品賞」に選ばれ、さらに『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』では「最優秀演歌・歌謡曲楽曲賞」を受賞。近年の山内の新たな魅力を引き出してきたコンビが、再び集結した。
実は、今回の“祭り”につながる構想は3年前からあった。
山内が40歳を迎えた2023年。新たな挑戦として発表したのが「こころ万華鏡」だった。それまで長く師匠の水森英夫をはじめとする作家陣と演歌を歌ってきた山内に、クラシックを思わせる壮大な楽曲を提供したのが村松だった。
この年に山内にインタビューした際、彼から明かされたのは村松による「山内惠介の祭りを作る」という構想だ。北島三郎なら「まつり」、美空ひばりなら「お祭りマンボ」。それらの名曲のように日本を元気にし、人々を盛り上げられる歌手になってほしいという思いが、村松にあると語っていた。
その第1弾ともいうべき歌が「こころ万華鏡」だったのだが、この曲は山内にとって簡単な作品ではなかったという。演歌では、たっぷり歌ったり、歌い手の間合いや節回しを生かしたりできる。一方、「こころ万華鏡」は複雑なメロディーに声を緻密にはめ込んでいくことを求められた。山内はその作業をオルゴールにたとえ、うまくはまったときの気持ちよさを知ったことで、「これができるようになったら、また違う歌が歌える」と感じたと振り返っている。
また、当時の山内は、歌手として表現の幅を広げるうえで「振り切る」ことの大切さを語っていた。思い切り振り切るからこそ、そこから真ん中へ寄せることもできる。中途半端にせず、まず自分の表現を大きく広げてみる。「こころ万華鏡」は、まさにそれを体現した作品だった。
そして翌2024年には、“山内惠介の祭り”というテーマを受け継ぐ「紅の蝶」を発表。2年続けて、それまでの演歌路線とは趣の異なる作品に挑んだ。
この2曲が山内にもたらしたものは大きかった。2025年に再び山内にインタビューした際には、「お客さまを引っ張っていく船頭は歌い手なのだと改めて実感した」と語っている。言葉数が多く、メロディーラインも複雑な歌を最後まで聴いてもらうには、歌い手自身が聴き手を歌の世界へ引き込まなくてはならない。「長い歌をあっという間に感じていただくにはどうすればいいのか」と考え、歌い方だけでなく、聴かせ方、見せ方まで意識するようになったという。
そして歌手生活25周年を迎えた2025年。「こころ万華鏡」と「紅の蝶」で培った表現力を携えて、山内は師匠・水森英夫作曲の「北の断崖(きりぎし)」で王道演歌を歌った。「北の断崖」は前2作とは対照的に、シンプルな四行詩をドラマチックに聴かせる歌。複雑な楽曲で聴き手を引き込む術を身につけた山内にとって、今度は短い歌のなかにどれだけ大きなドラマを描けるかが、新たなテーマとなった。
そして迎えた26年目。再び松井、村松と組んで送り出した歌が、タイトルにも歌詞にも「祭り」が真正面から登場する「この世は祭り」だ。
■演歌のDNAを胸に ジャンルという枠を越えて歌う
そこに描かれているのは、先行きの見えない時代を、それでも前を向いて生きていこうとする人間の姿だ。壁があれば越え、答えがひとつではないなら自ら探す。汗を流した先に実りがあることを信じ、一度きりの命を生き抜いていく。その生命力が、村松によるダイナミックなサウンドと山内の歌声によって解き放たれていく。
今作がリリースされた際に寄せた文章のなかで、松井は「例えば、演歌とはなにかとか、ロックとはなにかとか、型にこだわる考え方もある。それぞれに様式美があり、心打つ歌も多い。その意味で言えば、山内惠介は本来の演歌を深掘りしつつ、一方で型を破り、新しい様式美で、老若男女、常に先を見て歌を歌おうとしてるように見える」と綴り、「近年J-POPが世界で再評価されているが、日々グローバル化している音楽市場を考えれば日本の演歌のDNAを持つ歌ももっと世界に評価されていい。山内惠介はそれにもっとも近いチャレンジをしていると思う」と期待を寄せている。「こころ万華鏡」「紅の蝶」を経て生まれた『この世は祭り』は、そんな思いを象徴する1曲ともいえるだろう。
9月23日に発売された新装盤では、カップリング曲も新たに収録している。「恋盤」には、松井作詩、村松作曲・編曲による『あゝ通りゃんせ』。恋に臆病な男性の背中を押す、粋でいなせな歌詩と、どこか童謡を思わせる軽快なメロディーが心に残る。ジャズやラテンなど、さまざまなジャンルを取り込んだ独特のグルーヴにも注目したい。
「人生盤」には、美空ひばりが1970年に発表した名曲「人生一路」のカバーを収録。一度決めた道を信じ、苦難に耐えながら前へ進む。昭和から歌い継がれてきた人生歌を、26年目を歩む山内が力強く歌う。「この世は祭り」と併せて聴けば、“どう生きるか”というテーマも浮かび上がってくる。
2023年のインタビューで、山内は「歌は自分の子ども」だとも話していた。自分と歌が巡り合った以上、その作品を花開かせる責任が歌い手にはある。そしてステージでお客さまの反応を受け取りながら、ともに歌を育てていくのだ、と。2月の発売から半年以上にわたって歌い続けてきた「この世は祭り」もまた、山内と聴き手の間で育ち続けている1曲なのかもしれない。
40歳を迎えた2023年から、新たな表現に挑み続けてきた山内惠介。その歩みの先に生まれた「この世は祭り」もまた、歌うたびに新たな表情を見せていくことだろう。この歌とともに、26年目を歩む山内がどんな景色を見せてくれるのか楽しみだ。
文:森中要子
<作品情報>
■山内惠介「この世は祭り」
新装盤9月23日リリース
【恋盤】収録曲
1. この世は祭り (作詩:松井五郎 作曲・編曲:村松崇継)
2. あゝ通りゃんせ (作詩:松井五郎 作曲・編曲:村松崇継)
3. この世は祭り〜オリジナルカラオケ〜
4. この世は祭り〜インストゥルメンタル〜
5. あゝ通りゃんせ〜オリジナルカラオケ〜
【人生盤】
1. この世は祭り (作詩:松井五郎 作曲・編曲:村松崇継)
2. 人生一路 (作詩:石本美由起 作曲:かとう哲也編曲:上杉洋史) ※カバー曲・オリジナル歌手:美空ひばり
3. この世は祭り〜オリジナルカラオケ〜
4. この世は祭り〜インストゥルメンタル〜
5. 人生一路〜オリジナルカラオケ〜
<コンサート情報>
■『五大都市コンサート2026』
10月15日(木) 北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
10月16日(金) 北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
10月21日(水) 東京・東京国際フォーラム ホールA
10月28日(水) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
11月04日(水) 愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館
11月10日(火) 大阪・グランキューブ大阪
2026/10/09


