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林部智史、豪華アーティスト陣と“縁”が結ばれた新アルバム「僕のアーティスト像を決める1枚になった」【インタビュー】

 2024年は“カバーイヤー”と称し、2枚のカバーアルバムをリリースした林部智史が24日、2年ぶりにオリジナルアルバムをリリースした。『縁(えにし)』と題した本作は、昨年発表したカバーアルバム『カタリベ 〜愛のエクラン〜』に収録された楽曲を手がけた豪華アーティスト・作家陣が林部のために書き下ろした7曲に、自身作詞作曲の新曲1曲を収録。カバー曲を通じて“縁”で結ばれた偉大なる先人達へのリスペクトを込めたという林部に話を聞いた。

豪華アーティスト陣と“縁”が結ばれた新作アルバム『縁(えにし)』をリリースした林部智史

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阿木燿子との縁をきっかけに誕生したコンセプトアルバム

 オリジナルアルバムは、23年9月にリリースされたデビュー7周年アルバム『RAINBOW』以来2年ぶり。きっかけは、2018年の4thシングル「恋衣」、7周年アニバーサリーコンサートのために制作された「虹めいて」、アルバム『RAINBOW』に収録された「七つの子・その後」、そして今年6月リリースのシングル「ひまわり」の作詞を担当した阿木燿子との“縁”だった。

【林部】昨年の夏前くらいに、「究極の愛の歌をお願いします」と阿木さんにリクエストし、宇崎竜童さんとともに「ひまわり」を作っていただきました。ちょうどその頃、1988年以前の名曲をカバーした『カタリベ 〜愛のエクラン〜』(以下、『愛のエクラン』)をリリースしたのですが、そのなかに、阿木さん作詞の「夢一夜」と「よろしかったら」を収録していたこともあって、『愛のエクラン』に収録している楽曲を手がけた他の作家さんやアーティストさんにもオリジナル曲を書いてもらえたら素晴らしいコンセプトアルバムができるのではないかと思ったんです。

 その作家・アーティスト陣は、昭和の日本歌謡界の全盛期を築いてきた人ばかり。阿木燿子のほか、小椋佳松井五郎、鮎川めぐみにはこれまで楽曲提供を受けていたこともあり、すでに縁は結ばれていたが、加藤登紀子(「愛のくらし」「難破船」)、因幡晃(「忍冬」)、丸山圭子(「どうぞこのまま」)、南こうせつ(「夢一夜」)(※カッコ内は『愛のエクラン』でカバーした楽曲』)に楽曲を依頼するのは初めてだった。それでも全員が快く引き受けてくれたのは、林部自身がリスペクトを込めてカバーした「『愛のエクラン』の存在があったからこそ」と振り返る。

 豪華作家・アーティスト陣たちに書き下ろしてもらうにあたっては、1曲1曲オーダーの仕方も制作経緯も異なったという。

【林部】たとえば、小椋佳さんは、「いつも自分に向けて作品を書いているので、誰かに当てて書いたことはない」とおっしゃっていて、「祈り」については、タイミングよく小椋さんが作った楽曲をいただくことができました。一方で、阿木さんと宇崎さんは毎回、僕に当てて書いてくださっていて、今回は、先にも話したとおり「究極の愛の歌を」とお願いしました。丸山さんは、今までお会いしたことがなく、ツテもなかったので、最初はスタッフがHPを通じてコンタクトをとらせていただいたのですが、僕に寄り添った歌を含め、バリエーションに富んだ3曲を書いてくださいました。その中からあえて僕では書けないような歌を選ばせてもらいました。

 林部は自身で作詞作曲を手がけるだけに、他者に依頼する楽しみのひとつは、「自分からは出てこない言葉やメロディーを使っている楽曲に出合えること」だと語る。加藤登紀子作詞作曲による「忘却のタンゴ」もその意味で、“醍醐味あふれる1曲”だ。

【林部】登紀子さんには何の希望もお伝えしていなかったので、どんな楽曲が出来上がってくるのか本当に楽しみでした。いただいた楽曲がタンゴで、しかも、『愛のエクラン』に収録した登紀子さんの歌は2曲とも女性心を歌った曲だったのですが、本作は男性心の歌になっていて、とても嬉しい驚きでした。その後、僕の歌唱を聴いて、僕には歌いづらいかもしれないから歌詞の一部を直そうかと言ってくださったこともありましたが、もしかしたら10年後の僕にはフィットしているかもしれないし、何より曲が持っている力は最初に書いたものが一番強いと思っているので、あえて「そのまま挑戦させてください」とお伝えしました。

■楽曲を提供してくれた大先輩方からの手紙をHP上に公開

林部智史『縁(えにし)』

林部智史『縁(えにし)』

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 作者が楽曲に表現した世界観を大切にするという林部の思いは、因幡晃による「見えないね」にも表れている。

【林部】因幡さんが作曲し、ラララで歌唱してくださったデモ音源には、タイトルに「見えないね」と付いていました。「仮タイトルなので気にしないで作詞してください」とメッセージが添えられていたのですが、仮タイトルにしても作曲された時はその思いで作られているのだから、言霊じゃないですけど、曲霊みたいなものを感じて。それを大切にしたくて、鮎川めぐみさんには「見えないね」で詞を書いてほしいとお願いしました。

 因幡晃とはこんな印象深いエピソードもある。

【林部】因幡晃さんにはお会いしたことがなかったですし、楽曲を依頼しても受けてくださるか本当にわからなくて。でも、秋田出身でいらっしゃるので、なんとなく山形出身の僕は勝手に近さを感じていて、温かい人なのではないかという感覚を持っていました。その後、コンサートや、曲が完成してからはレコーディングにも来てくださったのですが、レコーディングでは聞き終えた後、涙ぐまれていまして。その時はひと言だけ「最高!」と言ってくださっただけだったのですが、その後いただいた“お手紙”に、レコーディングチームがみんなでいい作品に仕上げようとしてくれている雰囲気がすごく良かったと書いてくださっていて、僕自身、本当に心が温まる思いでした。

 その“手紙”とは、本アルバムの楽曲を手がけてくれた作家・アーティスト陣たちがライナーノーツのような形で林部にあてて綴ったもので、9月24日より公式HP上にて公開中。南こうせつからは、「林部さんは一見繊細で風に飛ばされそうな雰囲気があるけれど、僕にはお見通しです。とても真っ直ぐで、本当の強さを持ち合わせているアーティストです」との言葉が寄せられているのだが、そこにはこんなエピソードがあった。

【林部】こうせつさんとはコンサート等でご一緒することもあり面識があったので、僕が直接お願いしたのですが、なかなかお返事が来なくて。で、番組でご一緒した時に、テレビカメラの前の断れない環境下で「曲を作ってください」ってお願いしたんです(笑)。その後、僕のコンサートにいらした時に楽屋でギターを弾きながらラララで歌い、「こういうのはどう?」と言われたのですが、その楽曲に対して、僕は「最後はAメロで終わるのはどうですか?」とか大胆にも提案させてもらいまして。こうせつさんは懐広く、僕の意見を汲んで曲を仕上げてくださったのですが、お手紙の言葉はその時の僕に感じた思いだったのだと思います。

 南こうせつとの間柄を、「いい意味で、時に上司と部下だったり、得意先だったり、親と子だったり、でも、僕も大先輩に対して言いづらい気持ちはあっても、同じ土俵に立つアーティストとして、プライドを持ってやらないといけないなという気持ちもあって」と振り返る林部。勇気をもって意見をしてみたり、自分からは生まれない世界観にあえて挑戦してみたり、1曲1曲ごとに制作の過程は異なりながらも、本アルバムに収録された楽曲のすべてに共通しているのは、林部の「偉大な先輩たちへの最大限のリスペクト」が込められていることだ。

 その思いを集約したのが、本作のラストに収録した自身の作詞作曲による「遥か」だ。

■来年の10周年に向けて、自身のアーティスト像を決める1枚に

【林部】大先輩方による書き下ろしアルバムと謳いたかったので、最初は僕の曲は入れない予定だったのですが、結局、収録することになりました。ならばボーナストラックでと思ったのですが、まさかのトリになってしまって、すみませんっていう気持ちが正直なところです。「遥か」は、今回曲を書いてくださった皆さんへの感謝と尊敬の気持ちを歌にしたいなと思って作りました。もちろん、ただそれだけでは僕一人のエゴになってしまうので、聞いてくださる皆さんも思いを乗せられるよう親子の情を絡めながら書きました。

 来年はデビュー10周年となる林部。これまで自身の作詞作曲によるアルバムを3枚、カバーアルバムを3枚、小椋佳書き下ろしによるアルバム、叙情歌アルバムなど、さまざまな取り組みをしてきたが、「10周年はその集大成を見せなければならない年。そのためにも、今後、自分は何をしたいのか、オリジナルとカバーをどのようなバランスで歌っていくのか、まとめていかなければいけない。そんな場所に立っている僕にとって本アルバムは、間違いなく僕のアーティスト像を決める1枚になった」と目を輝かす。

 最後に、さらにこれまでカバーしてきた作家・アーティストの皆さんとの縁を広げていきたくなっているのではないかと聞いてみると、「そうですね。たとえばさだまさしさんとか徳永英明さんとか書いていただきたい方はまだまだいます。OKしてくださるかどうかわらないですけど」とはにかみながらも笑顔を見せる林部。

 “泣き歌の貴公子”の異名を背負い、着実に成長を重ねてきた林部の成長が感じられる本アルバム。そんな林部の魅力は、HPに公開されている作家・アーティスト陣たちからの“手紙”にもあふれているので、ぜひ、チェックしてほしい。

取材・文 河上いつ子

<作品情報>
林部智史『縁(えにし)
品番:AVCD-63762/価格:3200円

【収録曲】
01. 忘却のタンゴ(作詞・作曲:加藤登紀子)
02. 見えないね(作詞:鮎川めぐみ 作曲:因幡晃)
03. 追伸(作詞:松井五郎 作曲:南こうせつ)
04. 祈り(作詞・作曲:小椋佳)
05. 時が過ぎるまで(作詞・作曲:丸山圭子)
06. 小さい男(作詞:小椋佳 作曲:堀内孝雄
07. ひまわり(作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童)
08. 遥か(作詞・作曲:林部智史)

■『林部智史 CONCERT TOUR 2025・秋 〜 愛させてくれて ありがとう 〜』
9月27日(土)栃木・栃木県総合文化センター メインホール
10月2日(木)東京・東京国際フォーラム ホールC
10月5日(日)福島・けんしん郡山文化センター 大ホール
10月8日(水)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
10月13日(祝・月)北海道・札幌市教育文化会館 大ホール
10月18日(土)山梨・YCC 県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール)大ホール
10月21日(火)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
10月26日(日)宮城・東京エレクトロンホール宮城 大ホール
11月1日(土)福岡・福岡市民ホール 大ホール
11月2日(日)熊本・熊本県立劇場 演劇ホール
11月9日(日)群馬・太田市民会館
11月14日(金)神奈川・鎌倉芸術館 大ホール
11月16日(日)山形・やまぎん県民ホール 大ホール
11月23日(日)大阪・NHK 大阪ホール
※追加ファイナル公演
11月30日(日)東京・東京国際フォーラム ホールC
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