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【インタビュー】清春『ETERNAL』 逆らい続けた少年の夢の形 未来はどうなるかより今を意識

 ここ数年、メデイアの中で「歌詞」の扱いが変わってきていると思う音楽ファンは多いのではないだろうか。先日も『この歌詞が刺さった!グッとフレーズ 春...出会いと別れに刺さる歌詞SP』がゴールデンタイムの長時間特番で放送されていた。
 なかでも思いがけなかったのは、今年3月に放送された『水曜日のダウンタウン』の企画「清春の新曲歌詞を全て書き起こせるまで脱出できない生活」だった。発売前の清春の11枚目のソロアルバム『ETERNAL』の中の「霧」の歌詞を何の事前情報もなく書き起こすことを課す。それは決して「聴きやすい」とは言えない彼のボーカルスタイルを逆手に取った企画。まさしく逆転の発想だった。

デビュー30周年を迎え4年ぶり通算11作目のアルバムをリリースした清春

デビュー30周年を迎え4年ぶり通算11作目のアルバムをリリースした清春

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■人の気持ちを揺さぶるのは言葉 歌詞はイメージを作る要素

「あの番組では以前にも聞き取りづらい、という企画で取り上げられてはいるんです。でもその時は数分のコーナーで今回は丸々でしょ。参加する前はひょっとしてやらせか、とも思ったんですけど、彼ら本当にやっていましたからね。オーっと思いました。ああいう歌い方は僕らの時代では普通だったので、そういうロックシンガーの在り方や時代性というのかな、ファンの人たちは知っていると思うんですけど、美学みたいなものが今とは違うということでしょうね。僕らの時代は一聴して何だこれ、という違和感がないと覚えてもらえない、識別してもらえない。それがいかに他と違うかが大事でした」

 言うまでもなく、J-POPというのは日本語の音楽だ。欧米で生まれたロックをどう日本語で表現するか。「歌詞」はその大命題の1つだった。言葉を分かりやすく伝えることより、声も含めてどこまで聴き手を捉えることができるか。彼の歌い方はそこを生き抜くための武器でもあった。

「僕の世代感覚で言うと歌詞カードがあるなら聞き取れなくてもいいと。今は違いますよね。言葉が当たり前に聞こえるというのが日本の歌の当たり前になっている。画面に歌詞が出て来て入ってきやすいみたいな。TikTokで使うんなら一聴して分かった方がキュンとするんでしょうけど。カラオケもそうかな。僕は最初からそのレースにいない(笑)」

 歌詞の面白さは「分かりやすさ」だけではないことは自明の理だ。とは言え、「聞き取りにくい」代表のように扱われる清春が言葉をないがしろにしていると思ってはいけない。むしろその逆だ。

「ボーカルダビングのときとか編集ミックスの時とか、僕なりに歌詞が聞こえるか聞こえないかはめちゃめちゃ気にしています、あれで、ですけど(笑)。言葉の1つひとつの発音とか滑舌とか。歌詞を書く時も母音を中心に書くようにするとか。そうじゃないと歌のテイクで鼻が詰まったように聞こえたりする。やっぱり人の気持ちを揺さぶったり支配したり、印象を操作するのって言葉でもありますからね。武器になる。あまり使わない言葉を調べたりもするので、読み物としても自信あるんですけど、そこだけフィーチャーされると気持ち的にはそれだけじゃないんだけどな、とも思います。ボーカリゼーションとして聞いてほしいしライブも見てほしいですからね」

ジャパニーズ・ロック・レジェンド・清春 写真 森好弘

ジャパニーズ・ロック・レジェンド・清春 写真 森好弘

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 彼の4年ぶりの新作アルバム『ETERNAL』は、「言葉」と「音」という意味での傑作だと思う。「歌詞」が単に「伝える」という所に留まっていない。曲や音と同じように1つのイメージを作る要素として作りこまれている。そして彼の声で歌われた時に「楽器」の音の1つのように響いてくる。

『水曜日のダウンタウン』の「課題曲」だったアルバムの5曲目「霧」は、実は「聞き取りやすい」方のバラードだ。それでも「明日は さあ去って」が「明日、明後日」に聞こえたりする。

 前者だと「明日」がいなくなってしまうという「混迷」の歌になるだろうし、「明日、明後日」だとまだ先があるという歌になる。同じ言葉でも聞こえ方で違う意味を持つことまで計算されている。英語にしても同じ発音で違うスペルの反意語が使われていたりする。

 アルバムのタイトルは「永遠」だ。どの曲にも「過去」「現在」「未来」、そしてその彼方にある「老い」や「死」など時間と人生という永遠のテーマが歌いこまれている。

 アルバムの収録曲は全17曲、でも歌詞のあるのは13曲。オープニングの「Carnival of Spirit」や曲の合間の3曲のインタールードがより情景感を増幅する。

 何よりも特筆しなければいけないのは、演奏に加わっているメンバーだろう。最後の曲「鼓動」以外はドラムとベースがいない。ギター、サックス、パーカッション、そして曲によってチェロやピアノが加わる。海外での活動経験も豊富なミュージシャンが醸し出す、アフリカや中近東、中南米の強烈な太陽の乱反射のような陰影の濃い乾いた空気感と清春の声と言葉の響きが溶け合っている。脱ロック、とでも言えばいいかもしれない。

「ちょっと前からロックバンドのギター、ベース、ドラム、もしくはキーボードという形からの離脱を図っていたんですね。いつまでそういう作り方をするんだろう。年齢的にも50歳を越えていつまでやれるんだろうと。それとコロナ禍で大きな音を出せないなかでの配信やライブで、バンドの幻が消えたというか、縛りがなくなった。音を大きくすればいいというんじゃない音楽をやろうと思ったこともありますね。このアルバムはバンド形態でガシガシやるのがロックというような次元は超越していると思うし予備知識がなくても聴いてほしい。でも、元から全部歌詞が聞き取れるというのはイヤだな。言っていることが分からないことがあった方がいいと思う(笑)」

多くのアーティストからリスペクトを受ける清春 写真 森好弘

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■バンドでもソロでも変わらない すべて自分が原型になっている

 アルバム『ETERNAL』を聞いていて黒夢の95年のアルバム『feminism』を思い出した。メジャー3作目で初のアルバムチャート1位を記録した作品だ。バンドのアルバムでありながら演奏は黒夢のベーシスト・人時(ひとき)と、ドラムのそうる透のみ。プロデユーサーの佐久間正英とほぼ2人で作り上げたトータルなイマジネーションアルバムという印象だった。

「そうかもしれないね。スキルは変わったんですけど、アルバムの入り口と出口までのストーリー性、ドラマというか場面の種類とか。全体のバランスもそんなに変わらないって思いますね。あの時もバンドっぽくないもっと楽曲中心のことをやろうと思っていたし。ギターがいなくなって2人になっちゃった時だったので、佐久間さんと一緒に作ろうと。人時くんも佐久間さんにどんどん入り込んでいって一番弟子みたいになりました。サポートメンバーを使うみたいな形態もあそこからですね」

 昨年、今年とデビュー30周年を迎えているバンドが多い中でも独自の存在感を放っているのが清春だろう。94年に黒夢でメジャーデビュー。99年に休止してロックバンド、SADSを結成。ソロになったのは2004年で、今年はソロデビュー20周年だ。それぞれの時代で発売したオリジナルアルバムは新作を入れて26枚。ミニアルバムやベスト盤を入れると優に30枚は超える。同程度のキャリアでこれだけコンスタントに作品を発表しているバンドやアーテイストが他にいるだろうか。改めてソロ時代とそれまでとの違いをどう思っているのか聞いてみた。

「最初はソロでやろうと思ったんですけど、当時のマネージャーやスタッフと話し合ってもう1回バンドをやろうとなったのが、SADSです。黒夢を辞めたのが29歳で上の子が生まれたばかり。最低でも40歳までは責任があるんじゃないかと。計算するとあと20年はある。いきなりソロで20年行けるのかと周りにも言われて。一発目はめちゃめちゃ売れるだろうけど、ワンクッションは挟もうということでSADSを結成。結局、そんなに続かないんですけど(笑)。アルバム1位も取りましたけど3枚目で売れなくなって。35歳の時にソロデビューしようって決めていました。ファンの人たちには黒夢時代、SADS時代という区切りはあるんだろうけど、今はバンドじゃないし、僕からすると全部僕が原型なので変わんないですね」

24年3月から25年2月まで1年間を通したツアーを開催中だ 写真 森好弘

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 もう一つ、30年間の彼の活動の中で触れておかなければいけないのがライブ活動だろう。年間120本を超えるツアーが何度かある。すでに3月末から始まっている『清春 debut 30th anniversary year TOUR 天使ノ詩 NEVER END EXTRA』は来年まで続く。6月29、30日、7月1日はSADS、最終日の2月9日は黒夢としてのライブというこれまでの集大成のようなツアーだ。

「年間120本というのは、ツアーがしたかったわけじゃなくて、テレビの音楽番組に出ないでやっていく活路を探していた時でした。あの頃に芸能界、音楽業界、メディアの仕組みのようなものが見えちゃった気がした。僕、今もそうなんですけど、大きな事務所に入っていないんです。自分で作った事務所にスタッフを呼ぶというスタイルでもう30年。そういうパターンはあんまりなかったと思いますね。今度のツアーはSADSの初期メンバーで2日、後期メンバーで1日。2月の黒夢は人時くんとサポートメンバーでやります」

 1968年生まれ。55歳。毎年バースディライブが行われている10月30日のツアースケジュールには「FC INOC MENBERS ONLY」と書かれている。

 アルバムのテーマは「永遠」。今、彼にとっての「永遠」とはどういうものなのだろう。

「永遠って何でしょうね。目的がなくなる怖さと対峙することかなとか、死にたくないと思うことなのかとか。死ぬまでにこれをやりたい、やりたいけどできないかもしれない、途中で死んじゃうかもしれないと思うことなのかとか。美しい言葉だけど気休めみたいな感もある。でも、今がある。未来はどうなるかより今を意識して話したり眠ったり起きたりすることでいいのかもしれないとか」

 今も歌われる黒夢の97年の曲「少年」に、“少年は誰の声より誰の夢より、逆らうことを信じていた”という趣旨の歌詞がある。

 逆らい続けた少年の今の夢の形。それがアルバム『ETERNAL』なのではないだろうか。

常に音楽的な進化を重ね表現し続ける清春 写真 森好弘

常に音楽的な進化を重ね表現し続ける清春 写真 森好弘

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文・田家秀樹

<リリース情報>
清春『ETERNAL』
【初回限定盤】CD+Blu−ray
発売日:2024年3月20日
品番:YCCW-10423/B/価格:8,250円(税込)

清春『ETERNAL』【初回限定盤】CD+Blu−ray

清春『ETERNAL』【初回限定盤】CD+Blu−ray

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<Blu-ray収録内容>
「SAINT」Music Video
「ETERNAL」Music Video
Music Video Making Movie
『The Birthday』@恵比寿ガーデンホール (2022.10.30)
 赤の永遠/アモーレ/グレージュ/悲歌/アロン/美学
『下劣』@Zepp Shinjuku (2023.04.26)
 少年/アモーレ/ガイア/妖艶/MARIA
<仕様>
スリーブケース

【通常盤】CD
発売日:2024年3月20日
品番:YCCW-10424/価格:3,300円(税込)

清春『ETERNAL』【通常盤】CD

清春『ETERNAL』【通常盤】CD

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<CD収録内容>※共通
全14曲収録 作詞・作曲:清春
01 Carnival of spirits
02 SAINT
03 RUTH
04 ETERNAL
05 霧
06 SWORD
07 ロープ
08 砂ノ河
09 DESERT
10 FRAGILE
11 狂おしい時を越えて
12 sis
13 鼓動
14 ETERNAL(reprise)

■清春 公式サイト:https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/artist/279?ima=0000
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