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コロナ禍ド真ん中世代バンド・EOWの“世界進出” NYでの『エンタメ修行』で見出した『音楽の意味』

 2019年2月に結成した5人組ロックバンド・EOW(エオ)。ブラックミュージックやゴスペルをメンバー共通のルーツとし、それに由来する強固なグルーヴや芯の通ったボーカルワーク、類まれなポップセンスを武器とする彼らは、結成からわずか1年で新型コロナウイルス感染拡大の多大な影響を被った。

コロナ禍ド真ん中世代バンド・EOWの“世界進出”

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 あらゆるエンターテイメントが“不要不急”とさた時期を「とにかく活動だけは止めない」という強い意思とクリエイティビティーで乗り越え、バンドは2022年末から本格的なライブ活動を再開。そして、今月3日に最新配信シングル「balloon」をリリースし、30日には自身初ホール会場でのワンマンライブを東京・渋谷PLEASURE PLEASUREで開催する。

 バンドとしてのエネルギーを明確に“外”へと向け始める中、今年2月にはLaco(Vo)とTomoaki(Gt)がルーツであるゴスペルを探求するため、米国・ニューヨークを訪問した。今回のインタビューでは、2人が17日間におよぶ“エンタメ修行”で何を見出したのか、その気付きをバンドにどう還元していくのかをテーマに話を聞く。

 “コロナ禍ド真ん中”で産声を上げたバンドは、新たなフェーズへ突入した音楽シーンの中でどんな未来を思い描いているのだろうか?

■バンド黎明期に直面したコロナ禍…「活動を止めない」ための模索

『EOWTIONAL TOUR 2023「PLAY HOPE」』渋谷公演より Photo by Sakata Yoshihiro

『EOWTIONAL TOUR 2023「PLAY HOPE」』渋谷公演より Photo by Sakata Yoshihiro

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――EOWが結成されたのは2019年2月。始動から1年ほどでコロナ禍に突入するというタイミングでしたね。

【Tomoaki】僕は大学を卒業した2020年に加入したんですけど、すぐに緊急事態宣言が出てしまったので、お客さんの前でライブをする機会は半年近くありませんでした。

EOW・Tomoaki(Gt)

EOW・Tomoaki(Gt)

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――コロナ禍ではすさまじいペースで配信リリースを重ねていましたね。2〜4ヶ月に1曲…多いときは3ヶ月連続、3週連続という時期もありました。

【Tomoaki】ライブの現場に出られないなら、音源で少しでもバンドのことを知ってもらおうと思ったんです。「とにかく活動を止めない」というのがチームの総意でした。リリースについては当時も今も年間プランを立てていて、「いい曲ができたから出す」のではなく、リリースに向けてみんなでテーマをもって励むという作り方が多いですね。

EOW・Laco(Vo)

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【Laco】だから歌詞も書き溜めるのではなくて、曲のテーマに合わせて狙い打ちで書いていきます。トラック自体は、テーマに対して全員がデモを作ってきて、バンド内コンペで一番当てはまるものを選ぶ感じです。

――1つのテーマに対して、メンバー間で解釈が異なることも?

【Tomoaki】完全にバラバラです(笑)。回を追うごとにテーマを絞るようになってきたんですが、最初の頃は「踊れるハッピーな曲」みたいなざっくりとしたテーマが多くて、それぞれが自分なりの踊れるハッピーな曲を作っていました(笑)。

EOW「balloon」ジャケット

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――4月3日にリリースされた「balloon」は通算20作目の配信シングルですが、1作目から19作目まで全曲でやっていることが異なります。

【Laco】よく言うとEOWは全員できることがすごく多くて、逆に言えばどれも上手くこなしちゃうからこそ、“これ!”といったものが作れずにいたんです。そこで、一度できることを全部やってみてから徐々に削ぎ落としていこうと。この5年間はそういう感じでした。

【Tomoaki】すごく模索した期間だった気がします。コロナをきっかけに、家にいながら音楽をディグる人が今まで以上に増えたじゃないですか。僕たちはその中でどういった曲が流行っているのか常々分析していて、その結果「EOWの本質を突いた曲を出すべきだ」と気づけたんですね。いろいろなトライをしたから音楽の作り方自体も上手くなっていったと思うし、これだけ時間を使ったからこそ今掲げている『踊れて泣ける音楽』に辿り着けたと思っています。

――コロナ以前と以後で、ライブの雰囲気は変わったと感じましたか?

【Tomoaki】僕らのライブに限らず、コロナ前と後でライブハウスに来るお客さんがすごく変わったなと思っています。コロナ禍はライブエンターテインメントがめちゃくちゃ減った期間でもあって、そこで一度リセットされたように感じるんです。だからこそ、今までライブハウスの文化に触れてこなかった人たちも足を運ぶようになってきたのかなと。

【Laco】EOWのお客さんは、特にそういった方が多いように感じますね。「音楽は好きだけど、ライブハウスには行ったことがない」という方や、「ミュージカルなどにはよく行くけど、音楽のライブはEOWが初めて」という方など…。すごくうれしいのと同時に、いわゆる“ライブハウスらしいノリ”を出しすぎないように注意しています(笑)。

■ルーツを探求する旅で再確認した“音楽を鳴らす意味”

ニューヨークでの“エンタメ修行”の様子

ニューヨークでの“エンタメ修行”の様子

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――今年の2月中旬からは、ニューヨークへ“エンタメ修行”に行かれたそうですが、どういった意図で実施したのですか?

【Laco】私たちはこれまでゴスペルをルーツにしていると公言してきたんですが、私とTomoakiだけは本場のゴスペルに触れたことがなくて、胸を張ってゴスペルというジャンルを掲げたいと思い、渡米を決断しました。ゴスペル音楽の聖地・ハーレムで教会の礼拝に参加したり、アポロシアターのオーディション企画『アマチュア・ナイト・オーディション』に挑戦したり、ライブハウスのセッションステージやオープンマイクに飛び込みで参加したり…。

――その中で得た気付きは?

【Laco】私たちが表現したいと思っていた『泣けて踊れる音楽』というものが、フワッとしたものだったんだなって痛感しました。というのも、ハーレムだともう…みんな本当に泣きながら踊っているんですよ。それで、打木希瑶子さんという日本人初の女性牧師さんと直接お話する機会がいただけたときに、「なぜこんなにも自分の声と体を使って音楽を楽しむ機会を作っているんですか?」とたずねてみたんです。

ニューヨークでの“エンタメ修行”の様子

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――どんな回答が?

【Laco】「今ある命はすべて見えない手でつながっていて、こうやって集まることができる瞬間の喜びと感謝を表しているんだよ」と。それを聞いたとき、めちゃくちゃ泣けてきたんです。日本の恵まれた環境にいると、どうしても命って当たり前にあるものだと感じてしまうんですが、体が脈を打っていることってやっぱりすごいことなんだなと。私は歌っている時に「生きている」と感じられて、その実感をみんなで分かち合いたいんですね。そういった根本の考え方に改めて向き合えたんですよ。

――ご自身のルーツや歌う意義も見い出せた?

【Laco】はい。今の日本には「命を燃やしている」という感覚のない人が多いような気がしていて。「それを私が燃やしたい」なんていうおこがましい気持ちではないんです。でも、「音楽には命が燃える感覚を呼び覚ましてくれる力がある」と信じているから音楽をやっているんです。

■現地ミュージシャンとの邂逅で気づいた“バンドスタイル”

ニューヨークでの“エンタメ修行”の様子

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――現地のミュージシャンとセッションを行った際、日本と違う感覚はありましたか?

【Tomoaki】個人的には、セッションの雰囲気も演奏技術もそこまで変わらないなと。ただ、1個だけ違うかもと思ったのは、言い方が難しいんですけど…「適当さ」でした。例えば、原曲がある曲でセッションするときも自分流でやる人が多かったんです。それこそコード進行から全然違うものにしてくることもあって(笑)。

【Laco】私はオープンマイクでバンドと一緒にやらせてもらったんですが、そこで今まではただ歌っていただけだったんだと感じました。もちろん、ボーカルも1つの楽器としてグルーヴを作る要素だってわかっているつもりだったんですけど、私はただ“前”にいただけだった。

――“前”とは?

【Laco】ボーカルって例えばステージ上の位置や音源の定位とかでは一番前にいる存在じゃないですか。だけど、グルーヴという点で言えば“ド真ん中”にいるべきなんだなと。現地のミュージシャンの方から「ベースの音を聞いた方がいいよ」とアドバイスをいただいて、そこにあまり気づけていなかったんだなとも思いました。

ニューヨークでの“エンタメ修行”の様子

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【Tomoaki】 “ボーカル込みのバンド”という構図だったんですよね。ボーカルに触発されてギターソロが入ったり、ベースのグリスにボーカルが乗っかって変化したり…。そういう一体感を強く感じました。

【Laco】その経験を通して、帰国後のライブが大きく変わりました。いろいろな音が自然と聞こえてくるようになり、よりライブが楽しくなりましたね。

――ニューヨークにはメインギターを持参していったようですね。

【Tomoaki】はい。2020年にフェンダーが30本限定で発売した、ブラックペイズリー柄のストラトキャスターです。僕は昔から好きなギタリストが使っているギターを買いがちで、ストラトもジョン・メイヤーの影響でずっとほしいと思っていました。

Tomoaki's Fender Limited Stratocaster HSS Rosewood Fingerboard Black Paisley

Tomoaki's Fender Limited Stratocaster HSS Rosewood Fingerboard Black Paisley

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――音色もバンドにマッチすると判断したんですか?

【Tomoaki】正直、バンドに合うと思えたのは最近です。「合わせられるようになった」と言うのが正しいのかな。買った当時はうれしくて使っていたんですけど、ギターの研究が全然足りていなかったんですよね。なので、その後いろいろなギターを使って試行錯誤していた時期があり、このストラトをメインに戻したのは去年くらいです。

Fender Limited Stratocaster HSS Rosewood Fingerboard Black Paisley(Pickups)

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――王道のモデルだからこそ難しい?

【Tomoaki】出せる音がすごく多いので、自分の出したい音が定まっていないと扱いきれないギターだなと思います。最近はそういったビジョンが徐々にまとまってきたんですよ。あんまり言葉にしたことがないんですけど、「誰よりもファンキーで、誰よりもロック」が僕のテーマなんです。

■ゴスペルから学んだ“ジョイ”の精神 新たな解釈で向かう大規模ワンマン

『EOWTIONAL TOUR 2023「PLAY HOPE」』渋谷公演より Photo by Sakata Yoshihiro

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――ニューヨークでは新曲「balloon」も披露されたそうですね。感触はいかがでしたか?

【Tomoaki】パーティーピーポー率が高かったので、「リリース前だけど初披露するぜ」みたいなことを言うだけで盛り上がってくれました(笑)。

【Laco】確かにそうだった(笑)。そこも含めて、言語は関係ないんだと感じたんですよ。現地でのライブでは1曲だけカバーをやって、その後はEOWのオリジナル曲をやっていたんです。すると、歌詞は日本語だとしても踊ってくれる人が多くて。本当に言語関係なく、グルーヴやリズムとして踊れる音楽であれば踊ってくれるんだなって実感しました。

――「balloon」はゴスペルらしいアレンジに振り切っています。

【Tomoaki】昨年末に出したアルバム『HOPE』のちょっと前ぐらいから、EOWの本質でかつメンバーそれぞれがルーツとして持っているものを突き詰めて、ゴスペルという“バンドの核”を作ることができたんです。今後もそれを大事にしていくという意思も込めて、こういったアプローチに振り切りました。

【Laco】「balloon」を録り終えてから渡米したんですけど、本場のゴスペルに触れたことで、私たちはゴスペルという音楽をエンタメとして捉えていたなと思ったんです。日本という文化が違う国にいるから仕方のないことかもしれないんですが、向こうの現地の人たちにとってゴスペルはエンタメじゃなくて、信仰心そのものなんですよね。

――なるほど。

【Laco】結果、胸を張って「ゴスペルをやっています」と言いたいから渡米したわけですけど、「言うべきではない」と思い至りました。ただ同時に、私たちがやりたいのはゴスペルから得られるジョイ(=喜び)だったり、スパークするエネルギーだったり、声が重なることで得られる感動といったゴスペルの要素だったんだということにも気づけたんです。

――最後に、新曲「balloon」を引っ提げて行われる4月30日のワンマンライブ『EOWTIONAL PARTY 2024 Voooooice!!!』への意気込みを聞かせてください。

【Tomoaki】すごく大きな意味で「来て良かった」と思えるライブにしたいなと思います。EOWのエネルギーに圧倒されて「見られてよかった」と思ってもらうのもいいし、「めちゃくちゃ踊れて楽しかった」とかでもいい。本当にどんな感じ方でもいいので、お客さんにとって明日の活力になる日にできたらいいなと思っています。

『EOWTIONAL TOUR 2023「PLAY HOPE」』渋谷公演より Photo by Sakata Yoshihiro

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【Laco】今回は初めてコーラス隊の方にも入っていただくので、自分たちが今までやりたかった…さっき話したようなゴスペルらしい人間のエネルギーや生命力を感じていただけると思っています。それをぜひ体感していただきたいですし、自分自身もそこにいられることをすごく楽しみにしています。

『EOWTIONAL TOUR 2023「PLAY HOPE」』渋谷公演より Photo by Sakata Yoshihiro

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■EOW 5th Anniversary『EOWTIONAL PARTY 2024 Voooooice!!!』
4月30日(火)東京・渋谷PLEASURE PLEASURE
OPEN 18:15/START 19:00

YouTube公式チャンネル「ORICON NEWS」


関連写真

  • コロナ禍ド真ん中世代バンド・EOWの“世界進出”
  • EOW「balloon」ジャケット
  • EOW・Laco(Vo)
  • EOW・Tomoaki(Gt)
  • EOW・Yutaro(Ba)
  • EOW・Otake(Dr)
  • EOW・mamushi(Key)
  • ニューヨークでの“エンタメ修行”の様子
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  • 『EOWTIONAL TOUR 2023「PLAY HOPE」』渋谷公演より Photo by Sakata Yoshihiro
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