4人組ロックバンド・a flood of circleが19日、東京・恵比寿ガーデンホールで主催イベント『A FLOOD OF CIRCUS 2024』を開催した。

【写真】その他の写真を見る

　『A FLOOD OF CIRCUS 2024』は、2016年にスタートしたa flood of circle主催の“ロックンロール・サーカス”。会場やステージにはサーカス小屋のような装飾が施され、例年は3〜6組のゲストを迎えて開催されてきた。

　コロナ禍を経て3年ぶりの開催となった今年は、全4ヶ所でそれぞれに対バン1組ずつを招く2マン形式となった。12日の新代田FEVER公演には時速36km、2月9日の東京キネマ倶楽部公演にはドミコ、2月14日のZepp DiverCity Tokyo公演にはUNISON SQUARE GARDENが出演。本公演のゲストには、LiSAを迎えた。

■ロックンロールの大先輩への“反抗”　全霊のパフォーマンスで挑んだLiSA

　トップバッターはLiSA。SNSを通じて「フルメンバーで参ります！」と宣言していた通り、6人のサポートメンバーとともに登場。「ようこそ『A FLOOD OF CIRCUS 2024』。きょうも最高に楽しんでいきましょう、ピース！」と高らかに“開幕宣言”を放ち、「best day, best way」「Rising Hope」といったライブのキラーチューンを次々に投下していった。

　4ビートで踊らせつつ、フロア後方までモッシュピットへと変貌させた「ROCK-mode」を終え、体力を残すつもりなど毛頭ないオーディエンスに向けて「きょうは私のライブを観に来てくれたんじゃないかと錯覚するくらい、みなさんのパワーがすごいですね」と、早くも勝ち名乗りを上げる。

　その発言の背景には、「2013年にアルバム『I'M FREE』で出会って、それからずっとずっとそちら（フロア）側でこのステージを楽しんでいました」と、LiSA自身が“先輩”との共演を待ち望んでいた事実がある。「あれから11年。今度は私がステージからお届けします」と共演の喜びを口にしつつ、「きょうは愛と感謝と尊敬と…ちょっぴり反抗の意味を込めて、ロックンロールの大先輩に反抗していきたいと思います」と不敵に笑い、「ANTIHERO」でライブを再開した。

　ピッチの正確さや声量に加え、楽曲やフレーズ、シーンごとにガラッと表情を変えていく表現力、対バン相手のファンすらも自身の世界へ即座に引き込んでいくパフォーマンスで魅了していく。「リスキー」では黒のカスタムギターを手にしてアンサンブルを強化し、「GL」では妖艶な空気を創出してオーディエンスの熱を一層上昇させる。かと思えば、直後にはピアノとの独唱から「炎」をスタートさせ、観客全員の耳を瞬時に奪ってみせる場面もあった。

　ワンマンでもフェスでもなく、2マンライブだからこそと言えるライブを届けていくLiSA。「あんまりこういう対バンに呼んでいただきづらい…」と冗談っぽく笑いながら、「だから今日は呼んでいただいて本当に本当に本当に…とてもとてもとても…うれしい。いつか一緒にやらせてもらいたいなと思いながら、ずっと企んでいました。きょう、やっと叶ったんです」と充実の表情を浮かべた。

　改めてa flood of circleとの出会いを振り返り、「佐々木亮介さんは本当にロックンロールヒーロー。テツさん（アオキ／Gt）が加入したときのO-EASTも見に行っていたんですけど、佐々木さんはいつもいろいろな人を巻き込みながら、温かく受け止めながら、そしてたくさんの愛情に支えられながら、ステージに立ち続けてくれている」とたたえ、「そして、そこにいた私のことも巻き込んでくれました」と感謝。

　そして、ステージ袖で見守る佐々木に視線を向け、「嘘のない男です。女でも憧れる男です。そんなロックンロールヒーローに書いてもらった曲があります」と「シャンプーソング」へ。「（佐々木の）マネをしてギター持ちます」とG＆Lのピンクのカスタムモデルを手にするが、“ヒーロー”を前にした演奏に「緊張してコードを忘れた…」とまさかのアクシデント。サポートを務めるPABLO（Gt／Pay money To my Pain）らが助け、温かな雰囲気が会場を包み込んだ。

　終盤では、「この後出てくるヒーローたちへ！」と叫びながら「だってアタシのヒーロー。」を届け、ファンのシンガロングも求めながら「紅蓮華」で締めくくった。

■渾身の演奏に焚きつけられた“ヒーロー”降臨　自由度と挑戦心を研ぎ澄ませたa flood of circleのステージ

　あふれんばかりの愛とリスペクト、少しの“反抗心”を受け取ったa flood of circleは、LiSAが憧れを口にしていた「I'M FREE」で開幕するという粋なはからい。渾身のパフォーマンスを披露したロックディーヴァへの敬意と、“先輩としての威厳”を刻みつける選曲に、会場のファンは割れんばかりの歓声を上げた。

　その勢いのまま渡邊一丘（Dr）がフロアタムで重厚なビートを刻み、HISAYO（Ba）が象徴的なリフを鳴らし、アオキのピックスクラッチが場内にとどろき、佐々木が「かかってこい！」と叫んだ「Dancing Zombiez」へ。ライブを終えたばかりのLiSAも、ステージ袖で両手を挙げて体を揺らし、すっかりライブキッズへと戻っていた。

　「如何様師のバラード」では、ハンドマイクスタイルに切り替えた佐々木が「俺の友だち、LiSAをみんなに自慢したい。LiSAにa flood of circleを自慢したい」とニヤリ。「LiSAはそっち側だったって言ってた。俺もそう。そっち側」と告げ、マイクと350ミリ缶を手に満員のフロアへと歩みを進めた。

　MCでは「LiSAと初めて会ったのは、（自分の腰辺りに手をかざしながら）身長がこれくらいのとき。大きくなったな！」と“親戚のおじさん”的に豪快に笑い、「まぁ昔からの付き合いなんで」と共演の喜びを静かにかみ締めながら、「俺もこの曲は好きなんだけど、彼女が好きだって言ってくれたんで」とリクエストに応えて「オーロラソング」をプレイ。そのままマイクを通さずに「この間観たLiSAのライブ、なんか人がいっぱいいた。宝石のようだなって思いました。金で買ったんじゃなくて、自分で磨いたんだと思う」と賛辞を送った。

　今回の『A FLOOD OF CIRCUS 2024』で唯一のホール公演となったこの日、彼らが見せたのは、“先輩バンド”としての姿だけではなかった。「俺らのことをカッコいいって言ってくれて、何年か前には一緒に曲を作ろうって話もくれて。で、きょう呼んだわけ。…まぁ、俺がLiSAだったら断るよね（笑）」と言い、自身らこそが挑戦者であると改めて心に刻む。そして、先輩バンド・ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文の胸を借りた新曲「キャンドルソング」を披露した。

　佐々木はGretsch製G7593 Black Falcon、アオキは1973年製Gibson Les Paul Custom、HISAYOはYamaha製BB2024。渡邊はGretsch製USA Custom Setと、デビュー15周年にして不動とも言える絶対的なサウンドを確立しながら、力強い決意表明とともにかき鳴らした「月夜の道を俺が行く」や「ベストライド」では、音源よりもはるかに速いBPMで、初期衝動のような勢いと熱をフロアに叩きつけた。

　アンコールでは、「伝説の夜を君と」のアウトロに名前を入れ込む形でステージ上にLiSAを呼び込み、レコーディングに臨んだメンバーで「シャンプーソング」を“カバー”。LiSAと佐々木で歌い分けるこの日限りのアレンジが施され、この日のハイライトの一つとなった。…かと思えば、「本当はここでしゃべろうって言っていたんだけど、もう一回やっていいかな？ただ俺が聞きたいだけ」と言い、まさかの「シャンプーソング」をおかわり。最後まで熱気と興奮度を高め続け、パワフルに疾走する「GO」で奇跡的な初対バンの幕を下ろした。

■セットリスト
【LiSA】
01. best day, best way
02. Rising Hope
03. ROCK-mode
04. ANTIHERO
05. リスキー
06. GL
07. 炎
08. シャンプーソング
09. say my nameの片想い
10. だってアタシのヒーロー。
11. 紅蓮華

【a flood of circle】
01. I'M FREE
02. Dancing Zombiez
03. ゴールド・ディガーズ
04. 如何様師のバラード
05. オーロラソング
06. 月面のプール
07. New Tribe
08. キャンドルソング
09. Boy
10. シーガル
11. 月夜の道を俺が行く
12. ベストライド
En1. 伝説の夜を君と
En2. シャンプーソング（Cover）feat. LiSA
En3. シャンプーソング（Cover）feat. LiSA
En4. GO