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【ライブレポート】WANDS第5期の音楽性とプライド 新しいストーリーがここから始まる

 開演時間の19時が迫り、フロアからは手拍子が自然発生する。会場の照明が消えてステージ上の赤いライトだけが照らされると、あのリズムが轟き始めた。「SHOUT OUT!!」だ。そのリズムが止まり、一瞬の無音を経て聴こえてきたのは、柴崎浩(Gt)が奏でるソリッドなギターのフレーズ。そして、センターに立つ上原大史(Vo)にスポットライトが当てられた。8月30日にリリースしたばかりの最新アルバム『Version 5.0』のオープニングと同じように、WANDSの全国ツアー『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』のファイナル、東京・Zepp Haneda公演は「We Will Never Give Up」から始まった。

『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)

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■会場を一体化させた「SHOUT OUT!!」 WANDS第5期の現在地とは

 2019年、新ボーカリストの上原、初期メンバーの柴崎、そして木村真也(Key/体調不良のため本ツアーには不参加)の3人編成で始動したWANDS第5期。先述の最新作を含め、既に2枚のアルバムをリリースし、ファンクラブイベントや横浜・名古屋・大阪のZeppツアーも行っている。ただ、観客の声出しが解禁され、全国6都市を巡る本格的なツアーの開催は、今回が初。リアルタイムWANDSの現在地は一体どこなのか。それを知ろうとする高い注目度と期待値は、ソールドアウトとなった満員の観客による大歓声からも、ひしひしと伝わってきた。

「We Will Never Give Up」に続いて2曲目「GET CHANCE GET GROW」が始まると、上原は上手、柴崎は下手へとステージを所せましと移動。上原は「(声を)聴かせてくれ!」と観客にマイクを向けると、柴崎は「時の扉 [WANDS第5期ver.]」でお立ち台に上り、タッピングを織り交ぜた超絶ギター・ソロを披露した。

柴崎浩(Gt)『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)

柴崎浩(Gt)『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)

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「ツアー・タイトル『SHOUT OUT!』に相応しいみんなの声が、しょっぱなから聴こえてテンション上がりました。ありがとう!」

 最初のMCで上原がそう語り終えると、始まったのは「賞味期限切れ I love you」。神田リョウ(Dr)、二家本亮介(Bs)という凄腕サポート・メンバーが生み出すグルーヴに、柴崎がブルージーなギターを乗せ、上原のボーカルが妖艶さを増していく。そしてWANDS第5期としては初パフォーマンスとなる「FLOWER」から、「Secret Night 〜It’s My Treat〜 [WANDS第5期ver.]」「もっと強く抱きしめたなら [WANDS第5期ver.]」と続く。いずれも90年代にWANDSが生み出した名曲ではあるが、単なる過去の再現ではなく、今、このステージにいる4人でしか生み出せないアンサンブルによって、これらの曲を今現在のWANDSの歌とバンドサウンドとして観客に届けてくれた。その後に、ポップさとジャズ・テイスト、バラード感を併せ持つ「空へ向かう木のように」を歌い終えた上原は、低い小声で「声出してもエエねんで」とささやく。そして続けざまに「まだまだ遠慮がみられるで!」と大声で笑うと、観客はひと際大きく盛り上がった。

『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)

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「ライブのタイトルは『SHOUT OUT!』。文字通り、叫ばなあかんのですよ。“感謝する”という意味もあるんですけど、ここでは叫ぶ、騒ぐ、そんな意味合いをみなさんに体現していただきたいんです。羽田の人にできるかなぁ? ……羽田、やれんのか!」

 上原の煽りに会場がヒートアップしていくと、彼がライブをイメージして作詞作曲をしたという「SHOUT OUT!!」へ。まさしく文字通りに“SHOUT OUT!”というコール&レスポンスで会場は力強い一体感に包まれる。そこから一転、ハイスピードの「官能SADISTICに濡れて」、色気のある上原のボーカルと、ベース、ドラム、そしてギターの各ソロをフィーチャーした「真っ赤なLip」、タイトなグルーヴが際立った「RAISE INSIGHT」を怒涛の勢いでプレイ。

「灼熱のライブにしようぜ。ブチ上がれ!」。上原の力強いシャウトで始まった「Burning Free」だが、間奏に入ると「浅草!銀座!渋谷!新宿!鶯谷!秋葉原!羽田!」と、公演地・東京にちなんだユーモラスなご当地コール&レスポンスを展開。直後のMCで「すごかったね。もう何がなんだか、ひっちゃかめっちゃか(笑)。でも最後は羽田で締めたで!」と観客の笑いと歓声を誘った。

『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)

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■WANDS第5期の強さと再生 圧倒的な歌の力とプライド

 ここからは、ライブ終盤戦。19thシングル「YURA YURA」を披露すると、アーミングを活かした柴崎の即興プレイから「カナリア鳴いた頃に」へとつながり、「愛を語るより口づけをかわそう [WANDS第5期ver.]」では、柴崎がベース二家本の横に行き、2人で動きを合わせるパフォーマンスで観客を沸かせる。一方の上原は、フロアにマイクを向け、会場全体での合唱を誘った。ストリングスが哀愁をもって響くロックバラード「愛を叫びたい」を歌い終えると、上原は「こうして生まれてきて、みなさんと同じ瞬間を共にし、みなさんの笑顔と声を聴いて、改めて人生って素晴らしいなと感動しています」と語り、ライブ本編を「WONDER STORY」で締めくくった。

 そのラスト。圧巻のロングトーンを会場に響き渡らせた上原は、一瞬、音が消えたブレイク部分で高々と天を指さす。背後からスポットライトを浴びて浮き上がる彼のシルエットからは、WANDSのボーカリストであることの誇りと覚悟がしっかりと伝わってきた。

上原大史(Vo)『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)

上原大史(Vo)『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)

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 一般的にバンドのメンバーが変われば、否応なしにその前後を比較されてしまう。しかもそれが音楽の主役であるボーカリストとなれば、なおさら避けては通れない道だろう。だがしかし。今回のツアーで一番強く印象に残ったのは、そんな比較すらも吹き飛ばしてしまうほどの上原の圧倒的な歌の力と、歴代ボーカリストに対するリスペクト。そんな彼の傍らで、「自分たちがWANDSだ」と宣言するかのようにギターを弾く柴崎の、現在、過去、未来をも背負ったWANDS第5期に対するプライドだ。

 上原の歌は、テクニック、声色、聴き手に伝える力、いずれも非常に質が高い。往年の名曲も完全に自分のものとしながら、当時からのファンをも納得させられるだけの歌の説得力を有しており、この日のライブでも、WANDS第5期としてリリースした楽曲と過去曲とを違和感なく紡ぎ、1つの新しいストーリーを生み出していた。もちろん、その道筋を明るく照らしているのは、柴崎による熟練のギタープレイだ。

『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)

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 アンコールに応えて再びステージに登場した上原と柴崎は、2人だけで、歌とアコギによる「ありふれた言葉で」をアコースティック・バージョンで披露。演奏後に柴崎は「(セルフ・カバーを)上原が歌ったら、すごくよくなるなと思って」と、選曲の理由と上原のボーカルを素直に称え、上原は「曲のおかげです」と少し照れながら返す。そのやり取りも微笑ましい。続けて柴崎は「もうすぐ終わっちゃいますね」とツアーが終わる寂しさを語った。すると客席から沸き起こる「ヤダ!」という声と一緒に、上原もオフマイクで「ヤダ!」と叫び、観客を笑わせる。それでも、上原と柴崎が今回のツアーで得た手応えは相当だったようで、その充実感は2人の表情から十分に見てとることができた。

「あと2曲、本当に思い残すことなく盛大に盛り上がっていただきたいと思います!」

 上原のMC通りに、まず「Jumpin' Jack Boy [WANDS第5期ver.]」で会場は大いに盛り上がり、そして「世界が終るまでは… [WANDS第5期ver.]」のラストで上原は、芯の太いハイトーンで驚異的なロングトーンを披露し、この日のライブ、そして『SHOUT OUT!』ツアーの大団円を迎えた。

 2019年にWANDS第5期として始動し、早4年。しかし、コロナ禍でライブに制限が課せられた期間が長かったこともあり、彼ら自身だけでなく、ファンにとっても、今回の『SHOUT OUT!』が、真の意味で心底ライブを楽しめた初めてのツアーだったのではないだろうか。しかも忘れてはいけないのが、ただ単に楽しいだけでなく、今回のツアーには上原と柴崎のキャラクターと音楽性がしっかりと盛り込まれており、“第5期”の基軸を感じ取ることができたという点にある。そう考えるとむしろこのツアーは、いよいよWANDSが新しいフェーズで開花していくための序章だったのかもしれない。さらにスケールアップしていくことは間違いないWANDS。ここからの展開がますます楽しみとなるライブであったと同時に、次に控える12月開催のファンクラブイベント『WANDER-LAND NEO「FANDS」MEETING 2023』にも期待が高まった夜であった。

『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)

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文・布施雄一郎

『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』
2023年9月26日(火)@Zepp Haneda(TOKYO)
■SET LIST
01. We Will Never Give Up
02. GET CHANCE GET GROW
03. 時の扉 [WANDS第5期ver.]
04. 賞味期限切れI love you
05. FLOWER
06. Secret Night 〜It’s My Treat〜 [WANDS第5期ver.]
07. もっと強く抱きしめたなら [WANDS第5期ver.]
08. 空へ向かう木のように
09. SHOUT OUT!!
10. 官能SADISTICに濡れて
11. 真っ赤なLip
12. RAISE INSIGHT
13. Burning Free
14. YURA YURA
15. カナリア鳴いた頃に
16. 愛を語るより口づけをかわそう [WANDS第5期ver.]
17. 愛を叫びたい
18. WONDER STORY
<encore>
19. ありふれた言葉で [Acoustic Version 5.0]
20. Jumpin' Jack Boy [WANDS第5期ver.]
21. 世界が終るまでは… [WANDS第5期ver.]

■WANDS Official Website:https://wands-official.jp/

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  • 柴崎浩(Gt)『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)
  • 上原大史(Vo)『WANDS Live Tour 2023 〜SHOUT OUT!〜』@Zepp Haneda(TOKYO)
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