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澤田知可子、洋楽のスタンダードを日本語で歌い継ぐ シリーズ第2弾に込めた決意

 昨年、デビュー35周年を迎え、作詞家・松井五郎氏のプロデュースによる洋楽カバーアルバム『Vintage』をリリースした澤田知可子。洋楽の名曲をオリジナルの英語歌詞の聴感も尊重しながら、日本語の歌としても歌いやすく聴きやすく制作された同作に、新たな価値と可能性を感じた彼女は、早くも第2弾の『Vintage II〜時がめぐるなら〜』を6月28日にリリースした。同シリーズによって歌うことの新たな快感に目覚めた澤田と、プロデュースと日本語詞を手掛けた、作詞家の松井五郎氏に制作の裏側を聴いた。

洋楽カバーアルバム第2弾『Vintage II〜時がめぐるなら〜』をリリースした澤田知可子

洋楽カバーアルバム第2弾『Vintage II〜時がめぐるなら〜』をリリースした澤田知可子

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■「時がめぐるなら」を歌うことで実感した30年という時間の重み

――今作『VintageII〜時がめぐるなら〜』は、昨年3月にリリースされた『Vintage』の第2弾です。洋楽の日本語カバーアルバムの中になぜ、澤田さんの代名詞ともいえる「会いたい〜ストリングス・バージョン」と、そのアンサーソング「時がめぐるなら〜Solitude」が収録されているのでしょうか。

澤田:そもそも『Vintage』の企画自体が、「会いたい」から始まっているんです。発売30周年を機に、ヒロインの30年後を綴った「時がめぐるなら」を松井先生に書いていただき、その人生をテーマにした朗読コンサート「時がめぐるなら〜あの頃へのラブレター〜」を松井先生の脚本・演出で、女優の音無美紀子さんの朗読と私の歌で開催しました。懐かしいメロディーに誘われ、過去・現在・未来を辿るといった構成で、それが『Vintage』制作の出発点になったのです。

――「会いたい」の30年後を描くにあたっては、どのようなイメージがあったのですか。

松井:亡くなった彼は永遠に若いままだけれど、残された彼女は、生きていかなきゃいけない。だからできるだけ、シンプルなストーリー展開を考えました。

澤田:そうですね。新しい物語を語らせていただけるのは楽しみでしたし、主人公には30年経っても、やっぱりいい人であってほしいという気持がありました。「会いたい」に共感してくださった方が、「時がめぐるなら」を聴いて30年の月日を想像してくださる……。そこには、聴き手によっていろいろな「会いたい」の人生が見えてくると思います。

松井:実は、「会いたい」と「時がめぐるなら」は、歌詞の文字数が、全く同じなんです。テーマが同じだけでもつまらないなと思って仕掛けを作ってみました(笑)。だから、「会いたい」のメロディーで「時がめぐるなら」が歌えちゃうし、その逆もしかり。ちゃんと時間の整合性みたいなものを考えて作っていて、大きなストーリーの中で出来上がっている2曲なのです。

澤田:曲を作ってくれた藤澤ノリマサさんがそのことを後から知って、めちゃめちゃ驚いていました(笑)。

松井:詞先(先にできている歌詞にあわせて曲を作る)だけれど、よくできているなと思います。藤澤くんは、僕が唯一褒めてくれた曲だと言っていましたね(笑)。

澤田:同じ主人公をイメージした歌で、30年という時の流れを表現できるって不思議ですよね。壮大な組曲を作っていただいたようで、感動しました。これまで30年、「会いたい」を歌い続けてきて、本当に良かった。ご褒美をもらったような気持ちです。主人公も、私と同様にちゃんと年を重ねたこの曲を歌うことによって、30年という時間の重みを改めて噛みしめました。

■原曲のメロディーを壊さずに日本語で歌える喜びや価値を見出す

――朗読コンサートでの洋楽カバーが『Vintage』シリーズの原点ということですが、なぜ、洋楽カバーだったのですか。

澤田:洋楽に大きな影響を受けてきた人生なのに、英語にコンプレックスがあって……。だからこそ、ずっと洋楽の名曲を日本語で伝えたいと思っていました。海外楽曲は楽曲使用許諾の手続きが複雑で、かつハードルが高いということはわかっていたのですが、松井先生の日本語詞、プロデュースという強力な味方を得て、日本語で歌い継いでいくプロジェクトにしたいと思いました。

――「許諾を得るのが大変」ということですが、Vol.2の準備はいつ頃から始めたのですか。

澤田:1作目の『Vintage』の制作と並行して許諾申請はしていました。それでもなかなか進まなくて。Vol.2は許諾をいただいた順にレコーディングを行いました。時間はかかりましたが、先般亡くなられたオリビア・ニュートンジョンへの追悼の意を込めて「そよ風の誘惑」を歌うことができましたし、バート・バカラックの「A House Is Not a Home」もそうですが、このタイミングでの大きなご縁というか、天国から「いいよ」と言ってもらったような気持ちです。

松井:僕は僕で、ジャズにしろ、スタンダードにしろ、英語の持っているグルーブに合った日本語詞をあまり聴いたことがないなと思っていて、自分だったらどう書くかに興味がありました。だからライフワークと言えるのかどうかわからないけれど、仕事とは別にコツコツ書きためていたんです。たまたま澤田さんと洋楽カバーの話になって、このプロジェクトが始まったのですが、昨年3月の1st『Vintage』を出す段階では、100曲くらいは作っていました。

歌い継ぐことがテーマと語る澤田知可子と松井五郎氏

歌い継ぐことがテーマと語る澤田知可子と松井五郎氏

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――松井さんと一緒に仕事をされて、改めて、プロデューサーとしての手腕をどのように感じられましたか。

澤田:何の不安もなく、安心して歌える気持ち良さがありました(笑)。それでいて断捨離していく作業、引き算の作業であったというか……。みんなが知っている絶対的なヒットソングに、私のアクは要らないんです。『Vintage』は、歌い継ぐことをテーマにしているので、カバーすることでメロディーを絶対に壊してはいけない。日本語で歌える喜びや価値をもっと見出してもらうためのレコーディングでした。

松井:澤田さんのスタイルがあるからこそ、「苦労したのだろうな」というのは感じていて(笑)。『Vintage』に関しては、英語のグルーブみたいなものを残しつつ日本語にしているので、日本語の歌を日本語で歌うのとは違う。ただ歌っているだけだとカラオケになっちゃうから、澤田知可子というアーティストの色合いを作らなければならない。パッと聴いた感じはすごく自然だけれど、ボーカリストとしては、結構チャレンジされているなと思いました。

澤田:そうですね、ジェーン・バーキンの「無造作紳士」のウィスパーは、匂いをかもし出す歌というか、私とは真逆の歌い方なので(笑)、大きな山に登っている感じがあり、ある意味、挑戦でした。バート・バカラックも、難しかったですね。やっとメロディーが体に染みついてきても、そのグルーブに日本語が乗ると、どうしても自分の声が出てしまって……。実は洋楽って、お腹から歌う人は多くなくて、軽く語るように歌うことで、すごくいい倍音が出ているんです。だから世界観を大事にするという意味で、声量を7分目くらいにすることを心掛けていました。しかも、メロディーが持っている力がすごいから何度も聴きたくなる。そんな楽曲たちを自分のものにできるって、本当に幸せです。

■歌詞を合わせる作業で感じたスタンダードになる曲のすごさ

――「歌い継ぐことがテーマ」ということですが、そのために大事にしていることとは?

松井:洋楽カバーって許諾の問題で、配信のアーカイブが残せないのです。だから、澤田さんの生歌を聴いてもらうこと、音源を聴いてもらうことがこのプロジェクトの原動力になっています。歌は生き物ですから、時代時代で新しく聴こえていくといいなと思っています。

――確かに、同じ曲も時代によって印象が変わりますよね。

松井:オリビア・ニュートンジョンやバート・バカラックなど、僕らの青春時代の思い出に残る人たちが旅立ったこともそうだし、ウクライナ戦争が起きている中で、反戦映画のの主題歌だった「ひまわり」を歌う意義もある。『VintageII』の「〜時がめぐるなら〜」という副題の通り、時間というものや、なぜ歌うのか、なぜ作るのか、ということを同時に感じながら、僕はこのアルバムを作らせてもらいました。

――松井さんが長年愛されてきた名曲を日本語にするにあたって、改めて感じたのはどんなことですか。

松井:歌詞についてより、曲について、作曲家について思うことがありました。歌詞を日本語にするのは、例えばバート・バカラックと 一緒に曲を作っているようなもの。「こういうコードで、こういうメロディーに行くんだ」と驚くことが多い。明らかに日本人の作り方と違うし、メロディーラインも違う。それに歌詞を合わせる作業をして、改めてスタンダードになる曲のすごさを感じました。もちろん日本にも素晴らしい曲がたくさんあるけれど、それとは違う快感を味わえた気がします。

――『Vintage』シリーズは、まだまだ続いていきそうですね。

澤田:そうですね。まだ80年代くらいまでの曲しか収録していないので、90年代、2000年代と続けていきたいです。

松井:まだ許諾待ちのものもあるし、作品となった2枚はバラードが多いけれど、許諾待ちのものには、アップテンポのものもありますしね。

――8月4日の『澤田知可子 Vintage Live 〜時がめぐるなら〜 60th Birthday!』を皮切りにコンサートもスタートします。

澤田:とにかく今年は、1人でも多くの方にこのアルバムを聴いてもらうためのコンサートを行いたいと思っています。

――ライフワークがあるって素敵ですね。

澤田:本当に幸せです。やるべく目標が常にある中で歩んでいられるので、 不安がなくなりました。次はどうしよう、どの曲をやろうと、よい意味で追われていて。それで忙しいのが嬉しくて、めちゃめちゃ幸せです。

今やスタンダードとも言える洋楽の名曲を日本語で歌い継ぐというこの試み。ただの訳詞に留まらない松井の歌詞には、日本語ならではの独特の世界観がある。許諾待ちの楽曲も複数あるということで、『Vintage』シリーズ第3弾にも期待がかかるが、まずは、本作のコンサートツアーで、懐かしくも新鮮な楽曲の数々を体験してみてはいかがだろうか。

文・坂本ゆかり

デビュー35周年記念アルバム「Vintage II 〜時がめぐるなら〜」

デビュー35周年記念アルバム「Vintage II 〜時がめぐるなら〜」

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<リリース情報>
デビュー35周年記念アルバム『Vintage II 〜時がめぐるなら〜』
2023年6月28日発売
FRCA-1320/価格3,300円(税込)
【収録曲】
1. I Need to Be in Love(青春の輝き)
2. Have You Never Been Mellow(そよ風の誘惑)
3. For the Peace of All Mankind(落葉のコンチェルト)
4. Rainy Days And Mondays(雨の日と月曜日は)
5. Loss of love(ひまわり)
6. So in Love
7. L'aquoiboniste(無造作紳士)
8. First of May(若葉のころ)
9. The Water Is Wide
10. The Look of Love(恋の面影)
11. I Wish You Love
12. A House Is Not a Home
13. 時がめぐるなら〜Solitude
14. 会いたい〜ストリングス・バージョン
15. As Time Goes By
■澤田知可子 オフィシャルサイト:https://chikaco.com/

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